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2020年1月31日金曜日

ベクトルの交点の公式の解き方のバラエティ

【ベクトルの長さの比の公式】
 以下の図の、同じ方向のベクトルBPとベクトルBDの長さの比は、直線ACを水平線にしたときの、ベクトルの水平線上の高さの比である。ベクトルの高さは、水平線ACの法線ベクトルavとベクトルの内積に比例する(この法線ベクトルavは、ベクトルACを左回りに90°回転したベクトルである)。

 BP/BDは、水平線AC上の高さの比である。水平線AC上の高さが、ベクトル BPとベクトルBAとベクトルBCで同じである。それらのベクトルと水平線の法線ベクトルavとの内積が同じ値である。
(ベクトルの長さの比の公式おわり)

(補足)
 ベクトルBPの高さをベクトルの内積で表す式は、複数の形であらわせる。それによって、この式を表す計算が複雑になり得るので、計算に注意が必要です。
計算が複雑になり得る(計算の森の中で迷子になり得る)のは、式が1つの形には定まらず、それが、式のバラエティをとても大きくするからです。)

【例題1】
 以下の図の(ベクトルBP)の(ベクトルBE)に対する比を求めよ。
(例題1おわり)

【例題1の解1】
 この問題をベクトルの長さの比の公式を使って解く前に、
先ず、オーソドックスな、ベクトル方程式を使う方法で解く。

求める比をxとあらわす。


(解1おわり)

【例題1の解2】

ベクトルの長さの比の公式により、
ベクトルBPは以下の式で計算できる。

(解2おわり)

【解3】
 ベクトルdへの垂直ベクトルを使う計算式は複雑でわかりにくかった。それよりももっと明確で簡単な解き方として、以下のように解く。
 先ず直線APDを水平線として、水平線の高さを0にする。それ以外の点の高さを、以下のようにして順次に定めていく。

(解3おわり)

【解4】
 以下のように、直線BEのベクトル方程式と直線ADのベクトル方程式を書いて、両方程式を連立させることで、速やかに直線の交点P(に係る係数の連立方程式)を求めることができる。

あとは、これを解けば良い。

(解4おわり)

【例題2】

上の図の三角形OABで、ADとBCの交点PのベクトルOPを、ベクトルaとベクトルbであらわせ。
(例題2おわり)

【例題2の解答(1)】
 以下の様にベクトルOPをあらわすベクトル方程式(1)と(2)の連立方程式を解いて未知数uとwを求める。そして、ベクトルOPを、定まった未知数を使ってベクトルaとベクトルbであらわす。
(1)=(2):
(解答(1)おわり)

(例題2の検算方法)
しかし、この公式は覚えられない。
また、この計算を実際に行う過程で、計算間違いをし易い。
その計算の検算を兼ねて、もっと速やかに計算できる方法の1つは、スーパーメネラウスの定理を使って、以下の様に計算します。


この、スーパーメネラウスの定理を使って、以下の計算でベクトルOPが計算できます。

この様にスーパーメネラウスの定理を使って答えが求められます。(この計算以外にも、もっと速やかに計算することもできます)。

(例題2の検算おわり)

 もっと簡単に、以下の図形の辺の長さの関係から、メネラウスの定理を使って、ベクトルOPを求めることができる。



【例題2の解答(2)】

 例題2の解答(1)のベクトルの係数の公式は複雑な式なので、覚えられませんでした。しかし、以下の解き方の途中で出てくる公式を覚えることはできると思います。

(解答はじめ)
 先ず、 ベクトルOPを以下の式(1)であらわします。

すると、点Pが線分AD上にあることと、ベクトルODがベクトルOBに平行であることから、以下の式が成り立つ。

同様にして、点Pが線分BC上にあることと、ベクトルOCがベクトルOAに平行であることから、以下の式が成り立つ。


----------------補足------------------------
 これらの式(3)と(5)は覚え易い。
xとyからsとtを表す公式は、以下の式(6)と(7)になる。これらの公式は覚えやすい。

すなわち、例題2の図でのベクトルOPからベクトルOCとベクトルODを求める公式は覚えやすい。その公式を覚えるには、先ず式(3)と(5)を導き出し、続けて式(6)と(7)を導き出す手順を覚えるのが、その公式の良い覚え方だと思う。
----------------補足おわり------------------

 式(3)と(5)を用いて、sとtからxとyを計算すれば、再び解答(1)と同じ解が得られる。

同様にして、(x,s)と(y,t)の対称性から、

(解答(2)おわり)

【例題2の解答(3)】 一番速い解き方。
直線ADに平行な直線EBを考え、それらの直線上の線分の長さの比を求める。

上図のように、直線ADに平行な直線EBを考え、三角形の辺の相似比を利用してAD:EB:APを求める。その比を利用してベクトルOPを求める。

(解答(3)おわり)

《補足1》
 ベクトル計算は図形の性質を解析する強力な手段ではあるが、従来の図形解析手段である、補助線を引いて図形の相似を利用して長さの比を求めるやりかたの方が速く答えを導き出せた。

【例題2の解答(4)】
 ベクトルPAのベクトルDAに対する比を、直線BCを水平線にしたベクトルの長さの比の公式を使って、以下のように計算する。


式(1)に式(2)を代入してベクトルPAを求める。

(解答(4)おわり)

《補足2》
 ベクトルの長さの比の公式を使う計算方法は、補助線を引いて図形の相似を利用して長さの比を求める計算と同じ筋道で計算する。

《補足3》
 この解き方で注目すべき点は、ベクトルの長さの比の公式を使う計算方法では、ベクトルaやベクトルbをそれぞれ90°回転したベクトルavやbvを具体的な成分であらわす計算はしていないことである。それらのベクトルavやbvが存在するものとして、それらのベクトルの存在を前提にして計算するだけで、ベクトルの長さの比が計算できる。
【空間ベクトルの長さの比の公式】
 以下の図は空間ベクトルをあらわし、点A,P,Cは空間直線AC上にあり、点D,P,Bは空間直線DB上にある。

同じ方向のベクトルBPとベクトルBDの長さの比は、平面DACにおいて、直線ACを水平線にしたときの、各ベクトルの、平面DACにおける、水平線AC上の点D側の方向の高さの比である。各ベクトルの高さは、平面DACにおける、水平線ACに垂直な方向のベクトルavと、各ベクトルの内積に比例する(このベクトルavは、平面DACにおいてベクトルACを左回りに90°回転したベクトルである)。
 BP/BDは、水平線AC上の高さの比である。水平線AC上の高さが、ベクトル BPとベクトルBAとベクトルBCで同じである。それらのベクトルとベクトルavとの内積が同じ値である。
(空間ベクトルの長さの比の公式おわり)

【解答(5)】これも、一番速い解き方。
 解答(4)の、ベクトルBCへの垂直ベクトルを使う計算式は複雑でわかりにくかった。それよりももっと明確で簡単な解き方として、以下のように解く。
 先ず直線BCを水平線として、水平線の高さを0にする。それ以外の点の高さを、以下のようにして順次に定めていく。

その高さの比④を利用してベクトルOPを求める。

(解答(5)おわり)

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線形変換を使って図形問題を易しくする

以下の問題を例にして、図形をやさしい図形に線形変換して問題を解く方法を説明します。

【問題1】

以下の図で、
三角形の頂点Aから対向する辺BCの中点Dまで引いた直線ADがあり、
頂点Bから対向する辺CAの中点Eまで引いた直線BEがあり、
頂点Cから対向する辺ABの中点Fまで引いた直線CFがある。
直線ADと直線BEの交点Pを直線CFも通る事を証明せよ。
(問題1おわり)

【ベクトルの線形変換の定理】解答で利用する定理
以下の図の様に、歪んだ三角形を正三角形に線形変換します。

この線形変換では、
ベクトルAB=ベクトルbを、
正三角形の辺A'B'を表す:
ベクトルA'B'=ベクトルβに変換し、
ベクトルBC=ベクトルcを、
正三角形の辺A'C'を表す:
ベクトルA'C'=ベクトルɤに変換します。
そして、
ベクトルbとベクトルcを以下の式1の左辺の式で合成して表される全てのベクトルを、
式1の右辺の式の、ベクトルβとベクトルɤで合成して表すベクトルに変換します。
その場合に、以下の関係が成り立ちます。

この式1の左辺の式でベクトルを合成して表わせるベクトルBCは、式1の右辺の式でベクトルを合成して表すベクトルB'C'に変換されます。

この式1を成り立たせて線形変換する場合には、
式1のベクトルをs倍したベクトルは以下の式2の左辺の式であらわされ、そのベクトルはその右辺の式に変換されます。

そのため、
式1の左辺のベクトルをs倍した式2の左辺のベクトルは、
式1の右辺のベクトルをs倍した式2の右辺のベクトルに変換され、
平行する2つのベクトルは、その長さの比が同じである平行する2つのベクトルに変換されます。

また、このベクトルの逆変換に対しても同様の関係が成り立ちます。

結局、線形変換によってこの正三角形を元の歪んだ三角形に逆変換すると、
(1)1つの点は1つの点に逆変換され、
(2)1つの直線は1つの直線に逆変換され、
(3)その直線上の線分同士の長さの比は変わらない、
ように図形が逆変換されます。
(ベクトルの線形変換の定理おわり)

【問題1の証明開始】
この「ベクトルの線形変換の定理」によって、
ベクトルA'F'はベクトルAFに逆変換され、
ベクトルA'E'はベクトルAEに逆変換され、
ベクトルA'D'はベクトルADに逆変換されます。
すなわち、
辺BCの中点がDであり、
辺CAの中点がEであり、
辺ABの中点がFである
関係が、
逆変換した元の歪んだ形の三角形でも、
成り立っています。

正三角形A'B'C'では「直線A'D'と直線B'E'の交点P'は直線C'F'も通る」関係が成り立つ事が一目で分かります。

この正三角形のベクトルA'P'はベクトルAPに逆変換されます。

「ベクトルの線形変換の定理」によって、
正三角形A'B'C'を逆変換した
正三角形ABCでも「直線ADと直線BEの交点Pは直線CFも通る」関係が成り立ちます。

(証明おわり)

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2020年1月30日木曜日

試験中に心を落ちつかせる:図形の線形変換

(試験中に心を落ち着かせるには)
 試験で図形の問題に出あったら、図形をやさしい図形に線形変換して考えます。

以下の問題を例にして、図形をやさしい図形に線形変換して考えるコツを説明します。

【問】以下の図で、

三角形の頂点Aから対向する辺BCの中点Dまで引いた直線ADがあり、
頂点Bから対向する辺CAの中点Eまで引いた直線BEがあり、
頂点Cから対向する辺ABの中点Fまで引いた直線CFがある。
直線ADと直線BEの交点Pを直線CFも通る事を証明せよ。
(問題おわり)

 この問題は、三角形の重心Pを3つの直線ADとBEとCFが通るという問題です。


 この問題の証明方法は、十分に勉強して来たと思います。
しかし、試験会場で試験の本番になると、頭がパニックになって、覚えている事を思い出せなくことがあります。

 そうならないように心を落ち着かせるために、以下の様に図形をやさしい図形に線形変換して考えましょう。

 以下の図の様に、歪んだ三角形を正三角形に変換するのが線形変換です。
三角形の形を正三角形に変換すると、この問題で証明するべき「直線ADと直線BEの交点Pを直線CFも通る」関係が成り立つ事が一目で分かります。

更に、辺BC上の直線FEの高さが点Aの高さの半分であることが分かる。点Pの高さは、直線FEの高さを1:2に分割した位置の高さ、すなわち、直線FEの高さの2/3であることも分かります。


 線形変換によってこの正三角形を歪めて元の歪んだ三角形に戻すと、
(1)1つの点は1つの点に変換され、
(2)1つの直線は1つの直線に変換され、
(3)その直線上の線分同士の長さの比は変わらない、
ように図形が変換されます。

そのため、上の図の正三角形で
「直線ADと直線BEの交点Pを直線CFも通っている」
ことと、
辺BCの中点がDであり、
辺CAの中点がEであり、
辺ABの中点がFである
関係が、
線形変換した元の歪んだ形の三角形でも、
成り立っていて、
「直線ADと直線BEの交点Pを直線CFも通る」
関係が成り立ちます。

 このように、先ず歪んだ三角形を正三角形に線形変換する。

次に、その正三角形では、証明するべき関係が成り立っている事を理解する。
そうして理解した後で問題を解くようにすれば、問題がずいぶんと易しくなり、心が落ち着きます。
それによって、覚えていた証明方法も思い出せるようになります。

 なお、上で説明した線形変換を、高校で習うベクトルの変換の関係であると理解している学生ならば、
上図の正三角形で関係が成り立つことを根拠に、
線形変換した歪んだ三角形でもその関係が成り立つ事を説明して、それだけで、この問題を証明する事もできます。


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