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2017年1月4日水曜日

条件付き確率の難問の計算手法

《条件付き確率とは》
 事象Aと事象Bが独立していない、事象Bの起き方が事象Aが起きることに影響される場合は、
事象Aが起き、かつ、事象Bが起きる確率は以下の式であらわせる。
Aかつ Bの確率=
=(Aが起きる確率)×(Aが起きた場合においてBが起きる確率)
=P(A)×P(B),
とあらわす。

(B) は、{Aが起きたという条件を前提条件にして、その条件が成り立つ場合において、Bが起きる確率、という条件付き確率}
をあらわす。
 条件付き確率とは、発生し得る全事象のうち、一部の事象の集合に事象の範囲を制限した場合の、その事象の集合の範囲内での所定の事象の発生確率が「条件付き確率」である。

 その事象の集合の範囲を規定する条件が、条件付き確率における「条件」である。

 「サイコロの目が4以上であった場合において」~といった問題における「サイコロの目が4以上」が条件です。

 「サイコロの目が、4以上であると言える5の目が出た場合において」~といった問題においては、定まった条件「サイコロの目が5」こそが条件です。

 ここで、以下の用語の定義をハッキリさせておく。
「事象の排反」は,
「ある試行において、一方の事象が起こったときに
他方の事象は決して起こらない」ことである。

「試行の独立」は,
「2 つの試行が互いに影響を及ぼさない」ことであり,
「ある試行が他の試行とお互い影響しない」
ということである。

これに対して
「事象の独立」は、
「試行の結果として,起こりうる事象が、お互いの起こり方が他方に影響を与えない」ということであり,
「どちらも起こっている」ことが前提になっている。




直ぐ上の式と直ぐ下の式とが、より正しい式である。


 しかしながら、上の式らも、完全に正しい式であるとは言えない。
上の式らで計算する確率P(A)の値は必ず有理数になる。
しかし、以下の例のように、値が無理数になるのでその式では表せない確率の値P(A)もあるからである。

ビュフォンの針
平面上に間隔dで平行線を引く。長さL(≦d)の針を適当に投げたとき,針が線と交わる確率P(A)の値は、

である。(ここで、πは無理数3.14・・・である)

この確率P(A)は無理数になるので、

という式は、確率P(A)を定義する完全な式では無い。
完全な式は、n(□)を使わない式であり、確率の式同士の演算を表す式が、完全な式である。

(事象の独立の様子)
p(A∩B)=p(A)p(B)となる、事象Aと事象Bが独立な場合の樹形図は:
以下の図でs=abとなる場合である。



【例題1】

 プレーヤーの前に閉まった3つのドアA,B,Cがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれを意味するヤギがいる。プレーヤーは新車のドアを当てると新車がもらえるイベントが行なわれた。
 

(場合1)
 当事者プレーヤーが1つのドア(そのドアをドアAと名付ける)を選択した後、選択されたドアAに鍵がかけられた。
そうしたらもう1人のプレーヤーが間違えて、ドアを開こうして、鍵がかかっているドアは開かないので、鍵がかかっていない残りの2つのドアのうちの1つを開けてしまった。そのドアをドアBと名付ける。
(その開かれたドアBが正解であった場合は、このイベントは中止された。)
 ここでは、その開けられたドアBが不正解であった場合を前提条件にし、
その場合における:
(1-1)プレーヤーが最初に選んだ選択ドア(ドアA)が正解である条件付き確率と、
(1-2)開かずに残ったもう1つのドアC(残りドア)が正解である条件付き確率と、
を計算せよ。

(場合2)
 当事者プレーヤーが1つのドアを選択した後、選択されたドアには鍵をかけなかった。
そうしたら他人のプレーヤーが間違えて、ドアを開けてしまった。そのドアをドアBと名付ける。
(その開かれたドアBが正解であった場合は、このイベントは中止された。また、その開かれたドアBが、当事者プレーヤーが選択したドアAであった場合も、このイベントは中止された。)
 ここでは、その開けられたドアBが不正解であった場合を前提条件にし、
その場合における:
(1-1)プレーヤーが最初に選んだ選択ドア(ドアA)が正解である条件付き確率と、
(1-2)開かずに残ったもう1つのドアC(残りドア)が正解である条件付き確率と、
を計算せよ。

【解答】
(樹形図を使う計算手法(公式)の説明)
 以下で、この問題の条件付き確率を計算するのに便利な計算手法(公式)を、この問題に当てはめて使うことで、その計算手法(公式)を説明する。
下図の縦線は、○印で交差する横線の樹形図の枝を束ねた部分的枝をあらわします。
 この問題では、
(1)どのドアが正解ドアであるかという「正解事象グループ」と、
(2)(正解ドアを知らない者が)ドアの正解の当否を確認するためにどのドアを開くかという事象グループと、
は、独立していて、
両者の事象グループの要素の事象の間に依存関係は無く、
それらの要素の事象は全く独立に無作為に発生する。
 そのように、事象グループの関係が独立な場合は、
上の樹形図のように、
(3)「ドアの正解の当否を確認するためにドアBを開く 」という行為に対して、
(4)「正解事象グループ」の事象は、
全くランダムに生じる。
 ここで、ドアBを開いて、それが正解で無い場合の条件付き確率を調べるためには、上の樹形図のように、
(5)単にドアBを開く場合だけを記述した樹形図を作って、条件付き確率を調べて良い。
(6)更に、「正解事象グループ」の要素のうち、イベントが中止になるため、関心の外にある「ドアBが正解」である事象要素を除去して、残りの2つの要素の、「ドアAが正解」「ドアCが正解」だけを記述した樹形図を作って、
条件付き確率を調べても良い。
(手法(公式)の説明おわり) 

(場合1)
 この樹形図を使うことで、
選択ドア(ドアA)が正解である条件付き確率=もう1つのドアC(残りドア)が正解である条件付き確率
=1/2である。

(場合2)
 場合2も、同じこの樹形図を使うことで、
選択ドア(ドアA)が正解である条件付き確率=もう1つのドアC(残りドア)が正解である条件付き確率
=1/2である。
(解答おわり)

【別解】 
(場合1)
下図の縦線は、○印で交差する横線の樹形図の枝を束ねた部分的枝をあらわします。

 この基本樹形図を使うことで、
選択ドア(ドアA)が正解である条件付き確率=もう1つのドアC(残りドア)が正解である条件付き確率
=2/4=1/2である。
(解答おわり) 

(基本樹形図の変換)
 ここで、この基本樹形図は、ドアを無作為に開く事象は、正解ドアがどれであるかの事象と独立である特徴がある。そのため、この基本樹形図は、以下の様に変換することができる。
  先ず、「ドアB」と「ドアC」それぞれのドアの名前を付け変えて事象を記述しても、確率を計算する樹形図の事象間の関係の構成は変化しない。そのため、基本樹形図を、「ドアBを開く」場合1つだけを表示する樹形図に変換して「ドアCを開く」場合を省略しても良い。
 よって、以下の様に変換した樹形図を作って、この樹形図を使ってこの条件付き問題を解くことができる。
 下図の縦線は、○印で交差する横線の樹形図の枝を束ねた部分的枝をあらわします。
 この樹形図を使うことで、選択ドア(ドアA)が正解である条件付き確率=もう1つのドアC(残りドア)が正解である条件付き確率
=1/2である。
(解答おわり) 

(場合2)
 下図の縦線は、○印で交差する横線の樹形図の枝を束ねた部分的枝をあらわします。
 この基本樹形図を使うことで、
選択ドア(ドアA)が正解である条件付き確率=もう1つのドア(残りドア)が正解である条件付き確率
=2/4=1/2である。
(解答おわり) 

(基本樹形図の変換)
 ここで、この基本樹形図は、ドアを無作為に開く事象は、正解ドアがどれであるかの事象と独立である特徴がある。そのため、この基本樹形図は、以下の様に変換することができる。
  先ず、「ドアAを開く」場合は全て、「中止」になるので、関心の対象外なので、基本樹形図から「ドアAを開く」事象を除去した樹形図を書いても良い。
 また、「ドアB」と「ドアC」それぞれのドアの名前を付け変えて事象を記述しても、確率を計算する樹形図の事象間の関係の構成は変化しない。そのため、樹形図を、「ドアBを開く」場合1つだけを表示する樹形図に変換して「ドアCを開く」場合を省略しても良い。
 よって、以下の様に変換した樹形図を作って、この樹形図を使ってこの条件付き問題を解くことができる。
 下図の縦線は、○印で交差する横線の樹形図の枝を束ねた部分的枝をあらわします。
この樹形図を使うことで、
選択ドア(ドアA)が正解である条件付き確率=もう1つのドア(残りドア)が正解である条件付き確率
=1/2である。
(解答おわり)

【公式の成立条件が成り立っていない問題例】
(場合3)
 先の公式は、他の事象と独立な事象グループがある問題の場合に限って使えるものである。
 以下の、「場合3」のように、正解を知っている司会者が間違いをせずに、正解ドアで無いドアを開くという、「正解事象グループ」と、司会者が開くドアの事象との間に独立性が無い問題には、この公式が使えない。

 すなわち、その場合には、ドアを開く事象が無作為では無く、正解ドアがどれであるかに依存する関係があるので、開くドアをドアBのみにすると、事象の依存関係ゆえに「正解事象グループ」の要素が除去されて樹形図の事象の発生のバランスが変えられてしまう。
 そのように事象の発生のバランスを変えた樹形図を使って条件付き確率を計算してはいけない。

(場合3)
 当事者プレーヤーが1つのドア(そのドアをドアAと名付ける)を選択した後、 
プレーヤーが正解のドアを選んでいてもいなくても必ず、正解ドアを知っている司会のモンティが、プレーヤーがドアを選んだ後に、残りのドアのうち必ずヤギがいる1つのハズレのドアを間違えずに開けてヤギを見せた。そのドアをドアBと名付ける。
 その場合に開かずに残ったもう1つのドアC(残りドア)が正解である条件付き確率を計算せよ。

 「場合3」では、以下のように、「正解事象グループ」の要素の事象を全て書き出して、事象の間の依存関係をきちんと盛り込んだ基本樹形図を作って考えなければならない。
(場合3)
 下図の縦線は、○印で交差する横線の樹形図の枝を束ねた部分的枝をあらわします。
残りドアが正解である確率は2/3である。
(解答おわり)
 
場合3のこの基本樹形図は、場合1や場合2のように、「ドアBを開く」場合だけを表示した樹形図に変換して使ってはいけない。
 その理由は、この図では、ドアを開く事象は、正解ドアがどれであるかの事象と依存関係にある(正解ドアは開かない)ためである。
 そのため、ドアを開く事象の中の「ドアBを開く」事象だけを抽出することで、他の、依存関係にある事象とのつながり関係を変えた樹形図に変換してはいけない。

(禁止の理由は「難しいから」)
 この場合3において、ドアを開く事象は、正解ドアがどれであるかの事象と依存関係にある(正解ドアは開かない)ことにより、樹形図の変換が禁止されるのには、論理的根拠はありません。禁止の理由は、「他の事象との依存関係を変えない正しい変換を行なうことが難しい」からです。

 以下で、場合3の基本樹形図を変換してみます。
 正解ドアがAのときに、ドアBを開く場合と、ドアCを開く場合を対等にする。そうすることで、「ドアBを開く」場合1つだけを表示し、「ドアCを開く」場合も代表させて確率を計算する樹形図を作ることができる。
 下図の縦線は、○印で交差する横線の樹形図の枝を束ねた部分的枝をあらわします。
 そのようにドアBとドアCが平等に扱われている事を前提条件にして基本樹形図を以下の樹形図に変換する。
この樹形図で、
ドアAが正解の場合にドアBが開かれる確率は1/2である。
一方、ドアCが正解の場合にドアBが開かれる確率は1である。
 この樹形図から、(ドアBを開いた)条件付きの、ドアCが正解である確率は
である。
(解答おわり) 

(補足)
 この場合3における部分樹形図は、正解ドアがAの場合にドアBを開く場合の枝の太さが、正解ドアがCの場合にドアBを開く場合の枝の太さの半分であるという特徴があります。この特徴が場合1及び場合2と異なります。
 同じドアBを開きそのドアBがハズレという結果が同じなのに、なぜ、場合3の樹形図が場合1及び2の樹形図と異なるのか?
 その理由は、場合3では、ドアBは、ドアCが正解の場合には、必ずドアBを開き、その場合にドアCが開かれることが無いという、正解ドアの存在に依存してドアBの開かれる事象が多くなる事象の偏りがあるためです。

(禁止の理由は「基本樹形図を考えないから」)
 この場合3において、ドアを開く事象は、正解ドアがどれであるかの事象と依存関係にある(正解ドアは開かない)ことにより、基本樹形図を考えずに、いきなり、条件付き確率用の樹形図を作ることが禁止される。

 条件にする事象が、正解事象グループと依存関係にある場合は、基本樹形図から変換する作業をしないで上に書いた樹形図の様な樹形図をいきなり書いてはいけない。
 その理由は、今回も、「正しい樹形図を考えるのが難しいから」です。

 上の樹形図(ドアBを開く事象を条件にする)をいきなり書いて、その樹形図に、正解ドアがAの場合の事象の線の重みの確率p=1/2と、正解ドアがCの場合の事象の線の重みの確率p=1の違いに気付けますか?
という理由です。

 それに対して、場合1や場合2の様に、条件にする事象(ドアBを開く事象)が、正解事象グループと独立な関係にある場合は、(ドアBを開く事象を条件にする)樹形図をいきなり書いて確率計算をしても、正解事象グループの事象の発生のバランスが変えられないので、問題ありません。

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