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2020年2月26日水曜日

初等関数で表せない不定積分のいろいろ

以下の不定積分は初等関数では表せません。
上の形の関数については、
「かろうじて初等関数で表される積分」や、
「かろうじて初等関数で表される積分(その2)」
のページに、もう少し詳しく説明しました。

 不定積分が初等関数で表せるためには、初等関数の関数を微分して作れる関数のグループに被積分関数が属していなければなりません。
 そういう微分で作れる関数から外れた形の関数は、その不定積分が初等関数で表わせません。
 不定積分が初等関数で表せる方がむしろ特殊な場合であって、不定積分が初等関数で表せない方が一般的であると考えます。

 以下に、それらの、初等関数では表せない不定積分の一覧を示します。

(注意)以下の特殊な形の関数の不定積分は初等関数で表せます。
初等関数で表せない不定積分のリストを続けます。

その他、比較的単純な形の被積分関数は、ここをクリックした先のサイトに式を設定して計算すると、不定積分が初等関数で表せるか否かがわかります。
 
 不定積分が初等関数で表せるためには、初等関数の関数を微分して作れる関数のグループに被積分関数が属していなければなりません。
 そういう微分で作れる関数から外れた形の関数は積分結果が初等関数で表わせません。

(事例1)
例えば、以下の様に初等関数を微分した関数を作れますが、その関数の各項は、他の関数の微分を組み合わせても作れ無いので、単独の各項の不定積分は初等関数で表せない。
この事例では、微分した項に不定積分すべき被積分関数に特徴的な部分のlog(x)が含まれるように原始関数Fを設定した。それが得られる原始関数はごく少数に限定されている。その原始関数を微分して、不定積分すべき被積分関数の項と、他の項を含む式を得た。

そうするために使える原始関数が少ないので、それらの原始関数を全て組み合わせても、不定積分すべき被積分関数だけが微分で得られる原始関数が存在しない。すなわち、不定積分を初等関数で表す原始関数が存在し無い事が比較的容易に判定できる。

(事例2)
xsin(x)は不定積分が初等関数で表わせます。この関数の不定積分が初等関数で表わせる理由は、xcos(x)という関数があって、その関数の三角関数のcos(x)を微分してsin(x)にしてxsin(x)という項が得られる。それ以外の微分は、xを微分して定数にしてxが消えてcos(x)という項が得られ、そのcos(x)には、sin(x)という不定積分が別にあって、sin(x)の微分がそのcos(x)を打ち消す事ができるからです。
そのため、xsin(x)は不定積分が初等関数で表わせます。
以下の関係で互いが生んだ微分を打ち消す他の相棒の初等関数がある場合も、その微分で得る複数項のうちの1つの項だけを微分で生じる事が出来る複数の項からなる関数がある。

 しかし、
sin(x)/x
は不定積分が初等関数であらわせません。
その理由は、(1/x)がsin(x) に掛かった初等関数が、それを微分した結果のいくつかの項の1つ(sin(x)を残した)が、
(1/x)sin(x)
にできる関数はありますが、その関数は、
(log(x))sin(x) 
という、sin(x)掛ける対数関数という、複雑な関数です。
その関数を微分した結果の項の、(1/x)sin(x)の項以外の項のsin(x)を微分して得た項は、
(log(x))cos(x)
という複雑な形の、また消すべき新たな関数を生じてしまいます。
結局、(xの関数)掛ける(三角関数の関数)という初等関数の和では、その関数を微分した項の総和が、
log(x)等の複雑なxの関数が消えた、
(1/x)sin(x)
だけ、
になる関数が無い。
そのため、
(1/x)sin(x)
は不定積分が初等関数で表わせません。
 また、
x/sin(x)
も不定積分が初等関数で表わせません。
その理由は、(1/sin(x))がxに掛かった初等関数が、それを微分した結果のいくつかの項の1つ(xを残した項)が、
x/sin(x)
にできる関数はありますが、その関数は
xlog(tan(x/2))
という、x掛ける(三角関数の対数関数)といった複雑な関数です。
その関数を微分した結果の、x/sin(x)の項以外の、xを微分して消した項は、
log(tan(x/2))
という複雑な関数になってしまいます。

その関数の不定積分は初等関数では表わせず、すなわち、別の初等関数を微分してlog(tan(x/2))にすることができない。
そのため、この複雑な関数は別の初等関数の微分によっては打ち消す事ができません。
結局、(xの関数)掛ける(三角関数の関数)という初等関数の多数の項の総和で表したどんな関数でも、
その関数の微分結果の各項にlog(tan(x/2))等の複雑な関数が出ても、各項同士でそれらが打ち消し合って消えて、
x/sin(x)
だけ、
になるというような関数が無い。
そのため、
x/sin(x)
は不定積分が初等関数で表わせません。
 ましてや、
1/{(x)sin(x)}
といった、
1/sin(x)という三角関数の有理関数の項に、(1/x)といった、その関数(1/x)を微分して定数にすることもできない関数を掛け算した関数は、
(xの関数)掛ける(三角関数の関数)という初等関数の多数の項の総和でどんな関数を作っても、
その関数の各項の微分結果にlog(x)等のxの関数と三角関数の積や、log(tan(x/2))等の三角関数の複雑な関数とxの関数の積が出る。それらの複雑な関数が一時的なもので各項同士で打ち消し合って消えるということは無い。

そのため、そのような多数の項の関数を微分しても、
1/{(x)sin(x)}
だけ、
になる関数が無いと考えます。
そのため、
1/{(x)sin(x)}
は不定積分が初等関数では表せないと考えます。


 ただし、この事例の様な、関係する原始関数を全部網羅して不定積分が初等関数で表せない事を判定する方法は、関係する原始関数が少ない場合にのみ有効な方法です。
「かろうじて初等関数で表される積分」
 に記載した形の被積分関数の積分を判定するのには向いていないので、注意が必要です。

(事例3)
以下の関数を微分して得た各項は、他の関数の微分を組み合わせることでは作れないので、単独の各項の不定積分は初等関数で表せない。

(事例4)
以下の関数を微分して得た各項も、他の関数の微分を組み合わせることでは作れないので、単独の各項の不定積分は初等関数で表せない。
以上の事例のように、被積分関数が複雑化すれば、その複雑な被積分関数を含む式が微分で得られる原始関数の数が少なくなる。
そのため、その原始関数を全て組み合わせても、微分すると被積分関数が単独で得られる原始関数が無い可能性が高くなる。すなわち、不定積分が初等関数で表されない可能性が高くなる。

リンク:
高校数学の目次
『楕圓函數論』竹内 端三 著の現代仮名遣い版

ラインセグメント日記2017年11月21日『楕円函数論』の現代語訳


2020年2月24日月曜日

点Cから三角形OABに下した垂線の足Hを求める

【基本的知識】
 下図のように原点をOとしたとき、点CからXY平面に下した垂線の足Hの座標は以下の図の式であらわせる。また、ベクトルOCとXY平面との成す角θは以下の図の式であらわせる。


【問1】

下図のように頂点の1つが原点Oにあり、他の3頂点が、AとBとCである三角錘OABCの頂点Cから底面OABに下した垂線の足HのベクトルOHをベクトルOAとOBであらわせ。(ベクトルOHはベクトルOCの平面OABへの正射影ベクトルである)
【解答1】
垂線の足Hの位置ベクトルOHを、ベクトルOAの未知数s倍とベクトルOBの未知数t倍の和であるとして、
ベクトル方程式を作る。
そのベクトル方程式を解いて未知数sとtを求める事でベクトルOHを求める。
この式2と式3の連立方程式を解いて未知数sとtを求める。


(解答おわり)


【解答2】
「90度回転したベクトルをベクトルの分解の公式であらわす公式」 が、2つの空間ベクトルの張る面内の空間ベクトルに対しても成り立つ。
すなわち、ベクトルaとbをその面内で90度回転したベクトルaとbは、
以下の式でベクトルaとbを用いてあらわすことができる。
計算の見通しを良くするために、ベクトルaとbを単位ベクトルにして考える。
ベクトルaとbを使って、以下の計算で係数sとtが求められる。
分母は、以下の式であらわせる。
(解答おわり)

【究極の方法】
 垂線の足Hの位置ベクトルを直交しないベクトルaと bとで表そうとするので難しくなった。
以下の様に、ベクトルbの、ベクトルaに垂直な成分のベクトルvを取り出すことができる。
そして、平面OABを構成する互いに直交するベクトルaとvを使えば、ベクトルOCの平面OABへの正射影ベクトルOHは、以下の式で簡単に表すことができる。


《平面の法線ベクトルh》
 また、ベクトルaとbの張る平面の法線ベクトルhはベクトルHCとして求められ、法線ベクトルHCが(ベクトルaとbの外積を計算しないでも)以下の式で計算できる。



 経験からすると、この究極の方法の方が、種々の問題を解く場合において、直交しないベクトル系で公式を駆使して問題を解くよりも速く解を得るために有用である。

《以下で、OHの長さの2乗とCHの長さの2乗を計算しておく》
〔OHの長さの2乗〕



〔CHの長さの2乗〕


CHの長さの2乗は以下の公式で覚えた方が良い。


リンク:
3次元ベクトルの分解の公式
高校数学の目次

2020年2月21日金曜日

対称性を用いた定積分

《関数を左右対称な関数に変換する》
 定積分の[0→b]の範囲で関数f(x)を積分するとき、
その範囲の関数f(x)を、
その積分範囲で、
(1)左右対称な関数の成分w(x)と、
(2)左右で関数値の正と負が反対の関数の成分
とが足しあわされた関数と考えます。
「(2)左右で関数値の正と負が反対の関数の成分」
については、その積分範囲で足すと値が0になります。
結局、その積分範囲で、
「(1)左右対称な関数の成分w(x)」
だけを積分すれば良い
という問題に問題が変換されます。

その問題の変換を行うのが、
x=b-t と置換して得た関数g(t)=f(b-t)と、
その置換を行う前の関数f(x)との和の関数

w(x)=(f(x)+g(x) )/2
=(f(x)+f(b-x))/2
を求めるという作業です。

その積分範囲で、
(1)左右対称な関数の成分w(x)
だけの関数の方が簡単な関数になるので、
定積分の問題が解きやすくなります。


【問1】f(x)を連続関数とすると、
が成り立つことを示せ。

この問題の解答はここをクリックした先にあります。
この問題を自力で解いた後で、解答ページも見てください。種々の解答方法を書きましたので参考になると思います。

リンク:
高校数学の目次

2020年2月11日火曜日

指数関数の合成関数の微分の公式

 高校2年の微分の授業で、対数微分を教えていない。
 そもそも、対数関数の微分を高校3年になってから数Ⅲでようやく教えている。
 しかし、対数微分を教えないと微分の重要な公式を導き出す(証明する)こともできない。証明していない公式を覚えさせて使わせるという、数学教育の崩壊に近いことも行われているようです。
 そういう不健全状態を改善するために、高校2年生も、対数微分を覚えるべきと考えます。

 対数微分法を使って、以下の、指数関数の合成関数の微分の公式を導きます。

【問題1】 
 以下の式1の、関数fの関数g乗である関数 h(x) を微分せよ。
ただし、f>0とする。

【解答】
関数 h(x) の対数をとる。
 この式2の両辺を微分する。
(対数関数の微分の公式を使う)

 この式を整理して関数 h(x) の微分の式を求める。
(指数関数の合成関数の微分の公式おわり)

(補足1)
この公式の第2項は、関数f(x)>x の場合で、g(x)=実数nの場合の、f(x)のn 乗の式の微分の公式をあらわす。

(補足2)
この公式の第1項は、以下の、f(x)=実数 a の場合の、aの g(x) 乗の式の微分の公式をあらわす。

(まとめ)
以上の補足1と補足2をまとめると、上記の指数関数の合成関数の微分の公式は、関数fかgの一方が定数の場合に、一方の項が消える形をした以下の形の公式:
 で覚えた方が覚えやすいと思います。
更には、大学1年生になると学ぶ、2変数関数の微分公式:
で覚える方が、もっと簡単だとも思います。
2変数関数の微分公式は、大学1年生向けの参考書:例えば:「やさしく学べる微分積分」(石村園子)などで学んでください。

(注意)
 なお、関数 h(x) がfのg乗であるからといって、
誤解した合成関数の微分の公式に従って、h(x)の微分を、
(fの(g-1)乗)×g×g'(x)
や、
(fの(g-1)乗)×g×f'(x)

であるという間違いをしないように注意してください。

合成関数の微分の公式は、変数xを完全に変数g(x)に置き換えて、その変数gによって、
h(x)=m(g)とあらわされる(関数m(g)の中に変数xが混在していない)場合に成り立つ公式です。
上の計算の誤りは、 
fのg乗=h(x)を、fを無視して良い関数m(g)だと誤解したところにあります。
その式は、以下の式に置き換えて考えるようにしてください。

fのg乗=h(x)が、変数xが混在していない、媒介変数gだけで表されている関数 m(g)に置き換えられた場合に合成関数の微分の公式を適用します。
そういう関数 m(g)が見つけられなければ、合成関数の微分の公式は使え無いのです。
(上の式の様に変換してしまえば、指数部分にxの全ての関数を押し込めたgが記述でき、簡単に微分計算ができます)
(厳密に言うと、関数m(g)が見つけられない場合は、2変数関数の微分公式を使うのです。) 
変数xが混在していない変数gだけの関数m(g)でh(x)が置き換えられた場合に、
dh(x)/dx=(dm(g)/dg) (dg/dx)
という式が成り立つというのが、
合成関数の微分の公式なのです。

(事例1)

(fのg乗)の関数が、変数fと定数aによって、
m(f)=fのa乗とあらわされる場合に、
合成関数の微分の公式を使って
dh(x)/dx=(fの(a-1)乗)(df/dx)
という計算ができます。

(事例2)

(fのg乗)の関数が、変数gと定数aによって、
m(g)=aのg乗とあらわされる場合に、
合成関数の微分の公式を使って
dh(x)/dx=(aのg乗)(log(a))(dg/dx)
という計算ができます。

上の事例1と事例2の様に合成関数の微分の公式が使える場合は、
関数fかgかの一方が定数である場合なのです。
(注意おわり) 


【問題2】 
以下の関数 h(x)を微分せよ。
ただし、x>0とする。

この問題の解答は、ここをクリックした先にあります。
この問題を自力で解いた後で、解答のページも見て下さい。
参考のために、合成関数の微分の公式を利用して解く解答も書きましたので、、、

リンク:
高校数学の目次