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複素数平面を使えばベクトルの計算が楽になります。
以下の難問を、複素数平面を利用して、ベクトルの内積を使って解きます。
【難問】三角形ABCにおいて
2cosA+cosB+cosC=2 (式1)
が成り立っていれば、
2sinA=sinB+sinC (式2)
が成り立つことを証明せよ。
(注意)この問題は、「加法定理」の例題として出されていましたが、
必ずしも加法定理を使って解くものとは限らない。
以下に説明する証明の計算で加法定理は使わないで証明する。
そして、三角形の正弦定理sinA/|a|=1/(2R)・・・を使うことが、解答のために本質的に重要。
【重要な注意】
式1のcosの式を、加法定理その他の三角関数の変換定理で変換しても、式2に至りません。そのように、三角関数の計算の自由度は低いです(加法定理などで変換できる式も少しはありますが)。
そのため、三角関数(特に三角形の角度の三角関数)の問題を自由に解くためには、三角関数の式を、なるべく、ベクトルの式やxy座標の式に変えて計算する必要があります。
(予備知識)
受験問題のときは、三角形の角度のsin、cos(三角関数)の式の証明問題は、三角関数の式をベクトルの式であらわして、図形で考えます。ベクトルを利用して図形の問題を考えることは、計算の見通しを良くするからです。
(問題をより易しい問題に変換してから解くこと)
証明すべき対象の
2sinA=sinB+sinC (式2)
を直接証明しようとする前に、この式を、図形の問題として、わかる限り、問題をかみくだいて易しい問題に変換しておいてから問題を解きます。
三角形の正弦定理sinA/|a|=1/(2R)・・・を使うと、
2sinA=sinB+sinC (式2)
は、以下の式に書き直せます。
2(|a|/(2R))=(|b|/(2R))+(|c|/(2R))
2|a|-|b|-|c|=0 (式3)
問題がここまで易しくなります。
三角形の辺の長さの関係の式3を証明すれば良いです。
(式1の変形の方針)
正弦定理を使って、証明するべき式2のsinを消去して易しくしたように、複素数平面上でのベクトルの内積の式を使って、元の条件の、式1のcosを消去します。
この式を使って、式1を以下のように書き直します。
これにより、式1から式3が導けた。
(ただし、ベクトルbとベクトルcが同一方向を向いて∠A=0の場合も解になります。)
(解答おわり)
(コメント)
以上の計算はベクトル記号を使って計算を記述して解答できます。
しかし、複素数平面上でベクトルを複素数で記述して計算する方が、(ベクトルの"→"記号を書く必要が無いので)式を書くのが楽になり、便利です。
リンク:
ベクトル記号を使った解答
高校数学の目次
【問1】座標原点を中心にする半径rの円(x2+y2=r2)と直線ax+by=cとの交点の座標を求めよ。
(地道な計算練習を心がけよう)
直観的に答えを求める解法を見つける感覚を磨くことも必要ですが、その他に、数学の力を薄っぺらな表面的なものにしないために、地道に方程式を解く計算練習を心がけましょう。
(1)方程式の難しい式を単純な形の式にして無理無く計算するコツを身につけましょう。
(方程式を計算するコツ)
複雑な式の項を新たな記号の項に置き換えるときは、用いる新たな記号は、その記号の値の単位を最小単位にする方が良い。
例えば、記号aやbやrの単位である[長さ]は最小単位です。一方、記号cの単位は[面積]であって、[長さ]の2乗であり、最小単位ではありません。
そのため、cは[長さ]の単位を持つαの2乗に置き換えることで、式の計算を見通し良くします。
方程式では、足し合わされる項は必ず単位の同じ項のみが足し合わされます。足し合わされる項の単位が食い違っている式は誤りです。
その単位の食い違い、すなわち式の間違いを発見し易くするために、できれば、式の全ての記号を、単位が[長さ]の記号に揃えることが望ましいのです。
(なお、単位が無い無次元量の記号もありますので、無次元量の記号には目印を付けて分かりやすくします)
【解答1】
(先ず、方程式を書きます)
この第1項の係数を単純化する記号dを以下で定義します。
このようにdの2乗の式で定義する理由は:
上の式のように、覚え易い整った式を導入するためです。
覚え易い式を導入することで、
この式を応用してaを直ぐにdに変換するアイデアを出やすくするためです。
特に、式(6’)の右辺の式が現れたら直ぐに気付いて1に単純化できるようにするためです。
式(5)に式(6)を代入して式の形を簡単にします。
以下で、この式(7)の右辺を単純化します。
上の式の計算では、式(6’)を想起して使いました。
上の式の中に式(6’)の形の項が現れた際に、それを速やかに発見して式を単純化できるためには、dを導入した際に生まれた式(6’)が覚え易い事が必要でした。
こうして得られた結果を式(7)に代入します。
この式(8)の記号dを元の記号に戻すため、記号dの式を整理します。
式(8)に、式(9)と式(3)と式(4)を代入します。
以下の計算でこのルートの中の式を何度も書く手間を省くため、√gを定義しました。
√gの形でgを定義する理由は、この√gは仮の形であって、計算の最後には速やかに元の式に戻すために、目印として√を加えてgを定義します。
以上の計算で得たxとyの式を以下の様に整理します。
このように地道に計算して、交点AとBの座標が求められた。
(解答おわり)
(ベクトルの概念で見ると方程式の風景が変わって見える)
次に、ベクトルの観点で問題の方程式を見ることで見える計算の道筋に従って、やはり地道に問題を解いてみます。
【解答2】
先ず、方程式1と2から始める。
この式2においては、記号aと似ている記号αを、記号wに書き換えて、記号を間違える計算ミスを防ぐようにしました。
次に、(a,b)というベクトルの単位ベクトル(長さが1のベクトル)の係数を使って式2を式3に書き直す。
次に、点(x.y)の座標を、座標系を、ベクトル(a,b)の方向のs座標軸と、それに垂直なベクトル(-b,a)の方向のt座標軸で表した点の座標(s,t)であらわす。
その点の座標値(s,t)と(x,y)は上の式4と式5で変換できる。
ベクトルの視点から見ると、式4と式5は合わせて、以下のベクトルの合成の式になります。
この式4と式5で定められる写像変換では、2つの(x,y)の点は2つの(s,t)の点であらわされるし、逆に2つの(s,y)の点は、2つの(x,y)の点であらわされ、(x,y)と(s,t)が1対1対応の写像変換で結び付いています。しかも、この変換は、単に回転させた座標軸でグラフの座標を見るのと同じ変換であって、癖の無い、筋の良い写像変換です。
この問題は、(x,y)であらわされる円の式と直線の式の交点を求めることです。
その問題を解くことは、(s,t)であらわされる円の式と直線の式の交点を求め、その解を使って式4と式5で求められます。
式4と式5を使って、式1の円の式を変数sと変数tで表してみます。
次に、式4と式5を使って、式3の直線の式を変数sと変数tで表してみます。
式6で円があらわされ、式7で直線があらわされました。
この直線の式7を円の式6に代入して、交点(s,t)の解を求めます。
式7と式9によって、
交点(s,t)の解が得られました。
この式7と式9を式4と式5に代入します。
式10と式11が求める交点の座標を与える解です。
このxとyの式は以下の式12に整理できます。
(解答おわり)
リンク:
高校数学の目次
佐藤の数学教科書「図形と方程式」編の勉強
【問1】座標原点を中心にする半径1の円(x2+y2=1)と、直線3x+2y=kとが接する場合のkの値を求めよ。
(地道な計算練習を心がけよう)
直観的に答えを求める解法を見つける感覚を磨くことも必要ですが、その他に、数学の力を薄っぺらな表面的なものにしないために、地道に方程式を解く計算練習を心がけましょう。
(1)方程式の難しい式を単純な形の式にして無理無く計算するコツを身につけましょう。
(2)式が急に易しくなる計算の大切な分岐点をしっかり覚えましょう。
【解答1】
(まず、方程式を書く)
上の計算では、計算の式をなるべく単純な形の式で記述するため、複雑な形の項をaとk2に置き換えて表します。
この整った式で、xの解が重根になり1つの値のみが解になる場合が、直線が円に接する条件を満足します。それは、上の式で右辺が0になる場合です。
右辺が0になるためには、右辺の分子が0になるだけで良いので、その分子を求めるために、以下の様に、分母を共通化させた式に変形します。
右辺が0になるためには、右辺の分子が0になるだけで良いので、以下の式に単純化されます。
ここで、aとk2の式(3)と式(4)を代入してkの値を計算します。
よって、もとめるkの値は、
k=±√13
の場合に、直線が円に接します。
これが直線が円に接する場合のkの値です。
(解答おわり)
(ベクトルの概念で見ると方程式の風景が変わって見える)
次に、ベクトルの観点で問題の方程式を見ることで見える計算の道筋に従って、やはり地道に問題を解いてみます。
【解答2】
先ず、方程式1と2から始める。
(3,2)というベクトルの単位ベクトル(長さが1のベクトル)の係数を使って式2を式3に書き直す。
次に、点(x.y)の座標を、座標系を、(3,2)の単位ベクトルの方向のs座標軸と、それに垂直な方向、すなわちベクトル(-2,3)の方向のt座標軸で表した点の座標(s,t)であらわす。
その点の座標値(s,t)と(x,y)は上の式4と式5で変換できる。
(これは、ベクトルによる座標軸の回転変換の公式の応用です)
ベクトルの視点から見ると、式4と式5は合わせて、以下のベクトルの合成の式に見えます。
この問題は、(x,y)であらわされる円の式と直線の式の交点が、2つの点では無く、1つの点になる条件を求めることです。
その問題を解くことは、(s,t)であらわされる円の式と直線の式の交点が、2つの点では無く、1つの点になる条件を求める問題を解くことと同じです。
なぜなら、2つの(x,y)の点は2つの(s,t)の点であらわされるし、2つの(s,y)の点の解があれば、2つの(x,y)の点の解があるからです。
(これは、(x,y)と(s,t)が1対1対応の写像変換で結び付いていることを意味します。)
式4と式5を使って、式1の円の式を変数sと変数tで表してみます。
次に、式4と式5を使って、式3の直線の式を変数sと変数tで表してみます。
式6で円があらわされ、式7で直線があらわされました。
この直線の式7を円の式6に代入して、交点(s,t)の解が1つだけになる条件を求めれば、それが問題の解です。
式7と式8によって、
交点(s,t)の解が、tの値がプラスとマイナスの2つの値になる解が得られました。
この交点(s,t)が1つだけになるのは、
t=0
になる場合です。
その場合は:
式10が与えるkの値が、求める解であり、
これが直線が円に接する場合のkの値です。
(解答おわり)
(備考1)
パラメータkを変えて、2曲線が接触する条件を求める問題では、kの値が所定の値で接点(x,y)が1つになり、その値の近くのkの値では、2曲線の交点(x,y)が複数の点になることで判定する。接点(x,y)のx座標かy座標の一方の座標値だけを見て、その座標値が1つになるか複数になるかだけで判定してはいけない。
(備考2:座標変換について)
このベクトルの視点に基づいた解き方では、式4と式5で定められる写像変換で座標値(x,y)を座標値(s,t)に変換しました。
この写像変換では、2つの(x,y)の点は2つの(s,t)の点であらわされるし、逆に2つの(s,y)の点は、2つの(x,y)の点であらわされ、(x,y)と(s,t)が1対1対応の写像変換で結び付いています。しかも、この写像変換は、回転させた座標軸でグラフの座標を見るのと同じ変換であって、癖の無い、筋の良い写像変換です。
この様に座標軸を回転させる写像変換以外に、座標軸を斜行座標軸に変換する写像変換を使うことでも、2つのグラフが接点を持つ条件を求める問題に使うことができます。
しかし、2つの(s,t)の点に1つの(x,y)の点が対応するような、1対1で無い写像変換は使えません。
また、座標点(s,t)がst座標平面上に描くグラフの形が、座標点(x,y)がxy座標平面上に描くグラフの形から大きく歪んで、
xy座標平面上で交差するグラフがst座標平面上で接するグラフに変換されるような写像変換も使えず、
xy座標平面上で接するグラフがst座標平面上で交差するグラフに変換される写像変換も使えません。
リンク:
ベクトルによる座標軸の回転変換の公式
高校数学の目次