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2017年8月16日水曜日

連続関数の定義

https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/06/blog-post_2.html
https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/08/blog-post_17.html
(ページ内リンク先)
▽連続関数
▽1817年に歴史上初めて連続関数が正しく定義された
▽微分積分を使いものにする言葉

 ▽開区間での連続と閉区間での連続
 ▽区間の定義
▽連続関数の誤った定義 
▽連続関数の正しい定義 
▽連続関数の定義域 
▽第1の定義の連続(イプシロンデルタ論法)
 ▽(高校数学の迷信に注意)
▽第2の定義の連続 
▽連続の事例と、連続で無い事例 
▽一様連続性
▽関数の合成関数の例
▽微分積分の初心者には、位相空間論の議論が破綻しているように見える
▽位相空間論によって再構築した微分積分学
▽位相空間論の病根

《連続関数》
 微分積分の命綱を握っているのが
連続関数の概念です。
【被積分関数の単位】
 微分積分で扱う被積分関数は、均質な基本的な要素の単位で考える。
 具体的には、被積分関数を、全て、1つながりに連続する関数を単位にして考える。1つながりに連続する関数を扱うのであれば、積分の計算で誤りに陥る事を防ぐことができます。

その1つながりに連続する関数が、正しく定義された連続関数です。

その連続関数の高校数学での定義が間違っている事が、微分積分がわからなくなる原因ではないかと考えます。

 その連続関数の正確な定義を把握し、頭を整理しましょう。
「関数の連続性と一様連続性」のサイト(ここをクリックした先のサイト)が参考になります。
 そのサイトでの定義は、
『「関数がつながっている,ちぎれていない」のが連続関数。
(xの数直線上の点aでの)連続性の定義:
xの数直線上の点aで関数f(x)が連続であるとは、その点aを含む区間 I とセットで定義する。
その区間 I 内の任意の実数xと,任意の正の実数 ϵ に対して,ある δ が存在して
「 ∣x−a∣<δ なら ∣f(x)−f(a)∣<ϵ 」
が成り立つことが、点aでの関数f(x)の連続性の定義である。』
(点xや点aで関数f(x)が定義されていない場合はこの式が成り立たないものとする。その点でこの式が成り立たない場合はその点で関数f(x)が連続ではない。)
  また、所定の大きさの連結区間で、その区間内の全ての点aで、以上の式が成り立っていれば、その連結区間を定義域にした関数f(x)は連続関数である。

 そのサイトを見た後で、このサイトも読んでもらえると嬉しいです。

《原始関数》先ず、連続関数のうちの1つである「原始関数」(ここをクリックした先のページ)を学ぶと、連続関数の正しい定義を理解する助けになると思う。

 大学数学における、xの数直線上の点xでの連続性の定義、及び、区間での連続関数の定義では、区間の設定がキーポイントになっている。高木貞治の「解析概論」では、区間を「区域」と呼んでいる。区間は実数がすき間なくつまった1つの連結領域である。関数がちぎれる場合は、以下の図のように、関数のグラフの上方向にすき間を空けてちぎれる場合と、変数xの数直線の方向にすき間を空けてちぎれる場合との2通りのちぎれ方がある。


その2通りをともに判定できるようにするには、変数xの数直線上の実数がすき間なくつまった区間内の点毎に、ちぎれているか、連続であるかを把握することが好ましい。
 

 連続関数の定義は、1817年にBolzanoが中間値の定理を証明する前提条件に定義した連続関数の定義により、歴史上初めて連続関数が正しく定義された(その定義は関数の連続性を区間で定義するものである)。その歴史的経緯から、中間値の定理を成り立たせない関数を連続関数と呼ぶ日本の高校数学の連続関数の定義(世界の高校数学の連続関数の定義とは異なると思う)は偽物である。

〔連続関数の定義の役割〕
 連続関数とは、第1の条件として、関数の定義域が連結していること、第2の条件として、定義域の点毎に関数f(x) の値域が連結していること。その2つの条件が成り立ちグラフが1つながりに連結している関数f(x) をどのように表すかが連続関数の定義の役割である。

 日本の大学数学では、1817年にBolzanoが定義した連続関数を、「区間で連続な関数」と呼んでいる。

 関数の連続性に係る定理には、必ず「区間で連続な関数」という言葉が使われる。
日本では、定理を扱うときに、「連続関数」という言葉を使わず「区間で連続な関数」という言葉を使うように注意すること。

〔位相空間論での連続関数の定義から教える大学があるので要注意〕
 最近の大学数学の微分積分の講義は、微分積分を0から学び始めた初心者向けの古典的な(基礎的な)微分積分の概念は教えなくなっている大学も多いようです。 大学1年生の微分積分学において、しっかりと、古典的(基礎的)微分積分学の関数の連続性の定義から教える大学がある。一方で、 「微分積分の概念の正しい基礎は高校数学で学んで来たハズだから、大学では現代数学の微分積分を教える」という大学もあるようです。しかし、古典的な(基礎的な)微分積分の概念を知らずして現代数学の微分積分は理解できないと思います。 そういう状況なので、高校数学を学ぶ中で、古典的な(基礎的な)微分積分の概念を自力でしっかり学ぶしかないようです。

(質問)『分数関数は連続関数ですが、中間値の定理は成り立つのですか?x=0のときのグラフがないので成り立たない気がするのですが……。また、例えば

において、区間[-1,1]は連続なのでしょうか?』

という質問があります。その回答は:
(回答)『変数xの数直線上の点x=0において、f(x)=1/xの値が定義されていないので、その数直線上の点x=0で関数f(x)は連続ではありません。極限の点x=0で関数f(x)が定義されていなくても関数f(x)の極限値が定義されていることに注意。関数f(x)がx=0で連続である大前提は、そのxの点において関数f(x)が極限値を持つことです。点x=0で関数f(x)は極限値を持たない。そのため、その点で関数f(x)は連続ではありません。
区間[-1,1]におけるf(x)=1/xについては、中間値の定理は成り立ちません。その、区間[-1,1]における関数f(x)=1/xは連続関数ではありません。その関数は、その区間で「区間連続」ではありません。』
です。
 なお、関数は定義域と組み合わされて定義されています。
f(x)=1/x, (x>0)という連続関数があり、
それとは異なる関数である、f(x)=1/x, (x<0)という連続関数があり、
f(x)=1/x, (10<x<100)という連続関数もあります。
それぞれの関数は(定義域が異なるので)異なる関数です。

 xの数直線上のxの点の近傍の微小区間を定めてその区間で関数f(x)を解析することで、xの点での関数f(x)の連続性を判定する。
関数には、関数f(x)のグラフの形が設定され、関数値が定義される変数xの範囲(定義域)がある。
 あるxの値の点での関数f(x)の連続性を判定する場合に、そのxの値の近くの微小な区間を使う。関数の定義域が、その微小区間を完全に包含していない場合は、その点で関数f(x)は連続では無い。
 更に、xの数直線上でのある程度の大きさの広がりを持つ区間を定めて、その所定の区間内の全ての実数のxの点で関数f(x)が連続である場合に、その区間の関数f(x)が連続関数であると定義する
(高木貞治「解析概論」では、「関数が区域において連続」と表現している)。

 f(x)が連続関数であるためには、その定義域の全てのxの点が1つの連結区間でなければなければならない。定義域の一部にでも連結区間の外のxの点が入ってそのxの点と連結区間の間に定義域に属さない点があり、その点で関数の定義域がちぎれる場合は、その関数は連続関数では無いと判定される。

 下図の3つの原始関数F(x)が3つの連続関数です。

1つながりのグラフが1つの連続関数です。
上図のグラフでは3つの別々の連続関数があります。

 連続関数について、しっかりした説明が欲しいと思っている人には、参考書として、学生が微分積分を無駄なく学べるよう工夫がこらされている大学生向けの参考書:小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」をお勧めします。その本の80ページから88ページまで親切丁寧に連続関数を説明していますので、是非、そのページだけでも一読する事をお勧めします。

(微分積分を使いものにする言葉について)
 数学者の小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」では、連続関数を、連結区間で1つながりに連続する関数と定義しています。

高木貞治「解析概論」を読むと「連続点」や「連続では無い点」などの点は、変数xの数直線上の点(変数xが複素数の場合は、変数xを表す複素数平面上の点)を点と呼んでいる。点とは、関数をあらわすグラフ上の点ではなく、変数xの数直線上の点であることに注意すること。)

《開区間での連続と、閉区間での連続》
(1)第1の定義の連続関数:
(連結した)開放された区間(a<x<b)で連続な関数f(x)。その開放区間内の(xの数直線上の)どの点でも完全に連続な関数。
すなわち、両端が開放された連結区間で1つながりに連続する関数。
(2)第2の定義の連続関数:
(連結した)閉区間( a≦x≦b)で連続な関数。a<x<bとなる(xの数直線上の)どの点でもf(x)が完全に連続。x=aとx=bとの(xの数直線上の)端点では、片側連続である関数f(x)。
すなわち、端点を持つ連結区間で1つながりに連続する関数。

(1)と(2)との2通りの定義があるので要注意です。

《実数の連続性》
 実数には連続性がある。有理数には連続性が無い。
 実数の連続性とは、連続性の公理を満足することである。連続性の公理とは、
「実数の部分集合のうち、上に有界かつ空でないものは、必ず最小上界を持つ(連続性の公理)」
というものである。
 実数が連続性の公理を満足するという意味は、「独立変数xの実数値の数列が収束するときに、その収束先の極限が存在する」という意味である。独立変数xが実数で定義されていなければそうならない。
 例えば、以下の図の規則によってx=1から、x=2、次にx=3/2 というように有理数の値を変えてくと、限りなく近づく先の数が実数の中にあるが、有理数の中には無い。

このように、連続性の公理を満足しない数の集合(有理数)の場合では、限りなく近づける先の数がその数の集合(有理数)の中に無い。 その場合には、「限りなく近づける」先は、有理数以外の実数であると定義されている。実数の集合で考えるならば、限りなく近づける先の数も実数の集合の中にある。
 この実数の連続性公理が微分積分の概念の出発点になっている。

ーー【区間の定義】ーー
「区間」という数学用語は、変数xの数直線上の1つの範囲内の、実数のすき間がない1かたまりの数の集合をあらわす数学用語である。「数のすき間が無い」大前提のために、連続性の公理を満足する数(実数)の集合でなければならない。
《神奈川大学》【定義 14.2.4.】
 a, b を実数とする. a 以上かつ b 以下の実数をすべて集めた集合を [a, b] と書き, これを閉区 間と呼ぶ.
 a より大きくかつ b 未満の実数をすべて集めた集合を (a, b) と書き, これを開区間と呼ぶ.
----定義おわり----


「嶺幸太郎 著「微分積分学の試練」」の28ページにある区間の定義:
 実数の部分集合Iが次の条件を満たすとき、これを区間と呼ぶ。
”実数x,y,tについて、
実数xとyが集合Iの元であり、かつ、x≦t≦yならば、実数tが集合Iの元である。”
(定義おわり)

a≦x≦bを満足するxの区間という表現は、a≦x≦bの範囲内の全ての実数xという意味です。
-∞<x<∞という区間もあります。
区間はxの値の範囲を限定するためのa≦x≦bという式とは意味が異なることに注意する必要があります。
 「区間」という用語は、特に重要な関数である連続関数の連続性を定義するために必要な、連続関数f(x)の変数xの集合体がいつも持っていなければならない連続性という重要な性質が「区間」という概念を用いてあらわされていると思います。
 すなわち、変数xの「区間」の性質で大切なのは、
「区間」のなかに変数xの値が隙間なく存在すること。
つまり所定範囲内での隙間が無い全ての実数の集合という概念が「区間」という用語で定義されています。

(A)「0≦x≦2の区間の変数xで定義された関数f(x)がその区間の(xの数直線上の)各点で連続であるとき,f(x)は連続関数である」という文では、
f(x)は、0≦x≦2の区間で1つながりに連続した関数f(x)として定義されます。

一方で、区間の概念を用いない定義:
(B)高校数学での、誤った連続関数の定義

「変数xの0≦x≦2の範囲内の値で関数f(x)が定義されていて、その関数f(x)が定義域の各点で連続であるとき,f(x)は連続関数である」という高校数学の連続関数の定義では、f(x)は、例えば、
0<x<1で f(x)=0, この定義域内の各点で連続。
1<x<2で f(x)=1, この定義域内の各点で連続。
結局、0≦x≦2の範囲内の全ての定義域の各点で連続という関数も連続関数f(x)にされます。しかし、そのように、すき間をはさんだ2つの区間を合わせた複合区間を定義域とする関数は平均値の定理を満足しない。それは連続関数ではなく、その定義は正しい連続関数の定義ではない。

 この例の様に、「区間」という用語は変数xの数直線上の、すき間がない1かたまりの実数の集合をあらわす。変数xの数直線上の「区間」では、その変数xの範囲内に実数のすき間があってはいけない。
 区間a≦x≦bが命題の中に記載されている場合は、その範囲内の全ての実数xについて命題を検討する必要があります。被積分関数f(x)が定義されていない変数xの(数直線上の)点があっても、その(xの数直線上の)点も、その命題が検討されるべき(xの数直線上の)点の1つです。

【連続関数の誤った定義が問題を起こしている】
 高校の教科書では「定義域」という言葉を使って、
「関数 f(x) が、定義域のすべての x の値で連続であるとき、 f(x) は連続関数である、という。」 
と書かれていると思います。
(注)上の教科書の定義は誤っています。正しくは、「区間で定義された関数f(x)が区間のすべてのxの値で連続であるとき、f(x)は連続関数である、という。」と書くべきです。

 中学生のときから教わって来た「定義域」という言葉の定義が、高校以上の数学では、所定の区間を指すだけではない、区間内の数の集合の様々な部分集合を定義域にできるように変わりました。
変数xの数直線の中の自然数だけの集合の定義域もあります。
 一方で、関数の連続性は、変数xの区間の実数の連続性と、その変数xに対応する変数yの値域における連続性をあらわす概念です。
関数の変数xの1点での連続性の判定は、そのxの1点だけ見て判定するのではない。関数の連続性は、そのxの1点の近傍の、実数にすき間がない区間内の全ての点を見て判定します。


なお、y=f(x) ≡ 1/xは、x=0で不連続でグラフが途切れた関数ですが、
x=0は定義域に含まれず、x=0以外の、全ての定義域の点で連続なので高校数学の定義では「連続関数」と呼ばれています。
しかし、定義域の変数xの値の集合に含まれないxの値であっても、変数xの数直線上の値は存在します。

 連続は、変数xの数直線上の点毎にその点を含む微小区間で関数の極限を利用して判定する。上図の関数f(x) の変数xの数列の極限の宛先に点x=0が存在する。そのx=0の点に対してf(x) の極限の存在を判定できる。x=0の点ではこの関数の極限が存在しないと判定される。関数の連続性の判定は、その点での関数の極限の存在の判定よりも厳しいものである。x=0の点で関数の極限が存在しないので、x=0で関数が定義されていないという以前に、x=0の点において関数f(x) の極限が存在しないので、x=0の点では関数f(x) は連続ではない。このように、関数の定義域がx=0の点で分断されている関数f(x) を「連続関数」と呼ぶのは間違っている。


【閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理】
閉区間( a≦x≦b)で連続な関数f(x)は、
その区間内で有限の値の最大値と最小値を持つ。

(ここまでが定理)

 この定理は、誤った連続関数の定義と異なる、正しい連続関数の定義を前提にした定理です。

高校数学では、
y=1/xは、x=0以外の、全ての定義域の点で連続なので「連続関数」と呼ばれています。

また、高校数学では、閉区間( a≦x≦b)とは、変数xの値の範囲を限定する式のことであるという間違いが教えられています。

その誤った知識に基づくと、
【閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理】とは、

変数xの範囲(a≦x≦b)内に関数が連続である定義域を持つ連続関数f(x)は、
その範囲(a≦x≦b)内で有限の値の最大値と最小値を持つ。

(ここまでが定理)

という定理と解釈されます。

この「定理」には以下の反例があります。
関数f(x)=1/xは、
変数xの範囲
-1≦x≦1
内に定義域(ただしx≠0という定義域)が存在し、
-1≦x≦1
内で定義されているどの点でも連続なので、
連続関数です。
しかし、この連続関数f(x)は、
x→0の近くで∞と-∞に発散するので、
有限の値の最大値と最小値を持たない。
(反例1おわり)

(反例2)
関数f(x)=1/xは、
変数xの範囲
-1≦x≦1
内に定義域(ただしx≠0という定義域)が存在し、
-1≦x≦1
内で定義されているどの点でも連続なので、
連続関数です。 しかし、この連続関数f(x)は、

x→0の近くで∞に発散するので、
有限の値の最大値と最小値を持たない。
(反例2おわり)

 しかし、この定理の基礎となっている正しい連続関数の定義が高校数学での連続関数の定義とは違うので、これは定理の反例にはなっていません。 

(注意)
 「不連続点」の定義は、その不連続な値で関数値f(x)がある事と決められているため、上の例のx=0のように関数値f(0)が存在しない点は不連続点とは呼ばれません。
 連続点という概念は数学の重要な概念であって、数学的に厳密に定義されています。不連続点という言葉は、その重要な概念である連続点の定義に従属して、その反対の性質を持つ点として定義する必要があります。
 しかし、「不連続点」の定義では、そうせず、位相空間論の関数の値域のみの不連続点の定義(間違っている)に従って、上の例のように関数値が存在しない点は「不連続点」とは呼んでいません。
 そのように定義した「不連続点」という概念によっては、上のf(x)≡1/xという関数の例のように、xの数直線上のある値x0の点では、f(x0)が存在しないので連続では無いということが把握できなくなっています。


 関数f(x) のx=aの点での、関数の連続性の判定は、先ず、xの値が点aに限りなく近づくときのf(x) の値の極限値を求める。そして、その極限値とその点aでの関数の値f(a) が一致すれば点aで連続であるとする。そうならないx=aの点は連続で無い点であると把握されます。それは、その点x=aの関数値f(a) が存在しない場合にも当てはまり、関数値f(a) が存在しないx=aの点は、連続の条件が満足されないので連続で無い点と把握できます。
 

 数学センスがある学生は、関数の連続点の否定を表す「連続で無い点」を表すわけではない「不連続点」という言葉は数学的に無意味で数学研究に役立たないと見抜き、「不連続点」という言葉は使わず別の言葉「連続で無い点」を自分で独自に定義して自分の研究に役立てると思います。


 そのため、当ブログでは、上の図の例のx=0の点は、「連続で無い点」と呼び、「不連続点」という不完全な言葉は使わない事にする。
(不連続点の当初の定義も、連続で無い点の定義と同じでした。藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」によると、「f(x)がx=ξで連続でない場合に、x=ξをf(x)の不連続点という。」と定義されていました。)


 ここで、関数から所定の点を除去することで連続で無い点を作った場合を考える。
その場合に、その点は定義域から除外されるので、定義域の全てのxで連続であるから、依然として連続関数であるとするならば、下図のように:
xが整数の点が除外され、
整数で無いxについては、
y=1
という、 
xが整数の点が定義されていない、長さ1のグラフの集合の切れ切れのグラフの関数が考えられます。
(中学生のときには、その様な関数は教えられていませんでした。)
この切れ切れのグラフの関数も、定義域内のxで連続なので、連続関数という事になってしまい、不自然です。
これを連続関数とみとめてしまうと、
分母が10000の有理数n/10000の点を全て除去した関数も、定義域内のxで連続なので、連続関数であるとする事になってしまいます。
  また、下図の関数も、定義域内のxで連続なので、
-∞<x<∞
の範囲内で連続関数であるとする事になってしまいます。



また、下図のノコギリ状の関数は不連続関数ですが:
上図の関数g(x)の不連続点のx=0.5, 1.5, 2.5等を全て除去した関数f(x)を作れば、
その関数f(x)も、途切れた関数ではありますが、
定義域内のxで連続なので連続関数という事になってしまいます。
しかも、事態が深刻なのは、
「連続関数の積分は微分可能であり、微分積分学の基本定理が成り立つ」と教わった場合に、
その定理にこの切れ切れのノコギリ状の連続関数f(x)を適用した場合です。
f(x)を積分した関数F(x)を求めてみます。

ここで、f(x)を、定義積分されていないxの点を含めて積分することは、広義積分と呼ばれています。
「[軽装版]解析入門Ⅰ」の177ページの広義積分の説明において、
「f(x)はx=c1,c2,・・・で定義されていなくても良い」
と述べた文脈の中で、
「f(x)が有限個の(xの数直線上の)点x=c1,c2,・・・を除いて連続であるとき」
と述べ(xの数直線上の点x=c1,c2,・・・については、関数の定義域外なので連続ではない)、
その数直線上の点x=c1を含めて積分することを広義積分と呼んでいる。

 このように積分して求めた関数F(x)を微分すると、x=0.5, 1.5, 2.5等では、F(x)の微分係数が計算できません。

それは、「連続関数の積分は微分可能であり、微分積分学の基本定理が成り立つ」という教えと矛盾した結果になってしまいます。
すなわち、「微分積分学の基本定理:連続関数の積分は微分可能である」と言う教えが、この反例によって否定されてしまうという深刻な問題が起きます。
 そういう問題に直面した高校生に心から同情します。

 もう1つの反例を示します。
 関数f(x)の連続で無い点を定積分の範囲内に入れてしまうと以下の間違いをおかします。
F(x)=1/xをxで微分したら

になるので、
関数

の、複合区間を定義域にする誤った原始関数がF(x)=1/xです。そして、変数xの積分区間に、f(x)が不連続になるx=0を含めた、xが-1から1までの区間で、
関数f(x)の定積分を、複合区間を定義域とする誤った原始関数F(x)を使って、  F(1)-F(-1)=1-(-1)=2
という 計算で求めると、明らかに間違えます。


上の図で明らかな様に、-1から1までの範囲でのf(x)の積分はf(x)のグラフの面積にならなければなりません。そのため、定積分の答えは、マイナス無限大にならなければなりません。
しかし、複合区間を定義域とする誤った原始関数F(x)を使った上の計算結果はそれと全く違い、面積が正の値の2になり、
全く間違った答えになりました。
高校で習う、
「原始関数F(x)を使って、以下の計算で定積分する。」

に従って、
(高校で教えられていない必須作業の、関数f(x)が定積分の区間で連続か否かのチェックをしないで)
複合区間を定義域にする誤った原始関数F(x)の差を計算すると、上の計算の例の様に、
元の関数のグラフの面積が計算できず、
間違った答えになります。

 高校数学の誤った定義が固着した連続関数という言葉を使わずに、(大学数学が実行しているように)本来の連続関数をあらわす「区間で連続な関数」という言葉を使うと良い。

 連続関数を定義域で連続な関数として定義する事の重要な第1の欠陥は、連続関数という言葉を使ってあらわされている全ての定理は、それとは異なって定義された連続関数に対して成り立つ定理であるから、それらの定理全体を無視することを強いる事だからです。


 「関数の点での連続性」の定義では、変数xの数直線上のxの1点の左右の部分を含む微小区間において関数が定義されていることが大前提である。その微小区間で関数が定義されていない場合は、その1点での連続性が無いと判定する。

 xの1点の左右の部分を含む微小区間によって関数の連続性を判定する場合は、関数の点の右側極限と左側極限とその点での関数値が一致する事がその点での関数の連続性の条件である。

 xの数直線上のxの1点での関数値が存在しても、右側極限か左側極限の一方が存在しなければ、そのxの点で関数は連続ではない。
 一方、右側極限と左側極限が存在しても、その点での関数値が定義されずに存在しなければ、その点で関数は連続ではない。定義されていないことが点の連続性の判定に影響する。関数の極限によって見出されたその点は連続で無い点と判定される。

 連続関数は変数xの連結区間内でグラフの点が連続している関数と考えるのが自然な数学的発想である。変数xの数直線上の連結区間内のすべての点で、たとえそのxの点では関数の値が定義されず存在しなくても、xの点における連続性の条件を検査する。

 xの数直線上の所定の連結区間内の全てのxの点で連続な関数を連続関数と定義する(大学での)定義が、自然な数学的発想から導かれる正しい連続関数の定義である。

《連続関数の正しい定義》
小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」で定義されている連続関数の定義のように、大学では、定義域として、xの数直線上の実数を完全に含んで連結している1つながりの「区間」の全てのxの点で関数値が定義されている関数f(x) に限って連続関数を定義している。


小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」80ページ:
定義2.2
f(x)をある区間I(xの数直線上のある連結する範囲内の全ての実数xの集合)で定義された関数とする。
このとき、区間Iという集合の要素(実数x)の中の1つの実数 a において、
ならば、
  f(x)は 数直線上の点a で連続である。あるいは 、xの数直線上の点x=a で連続であるという。関数f(x)がそのxの区間Iに属する全ての(実数の)xの点で連続であるとき、f(x)を連続関数、または x の連続関数とよぶ。
(定義おわり)
 
「区間 I で定義された関数f(x)がそのxの定義域
I(すなわちxの区間 I)に属するxの数直線上のすべての実数の点で連続であるとき,f(x)を連続関数とよぶ」
という表現が正しい連続関数の定義です。
ここで、「区間」という言葉が使われた時点で、それは1つにまとまった連結区間であって、それは、ある点で切れてバラバラになった複数の領域のことでは無い事に十分に注意する必要があります。
 複数の(連結されない)区間で定義された関数という意味では無く、1つの連結区間で定義された関数に限る、という意味です。
「xの数直線上の連結区間Iの点xで定義された関数f(x)が、そのxの区間Iのxの数直線上のすべての実数の点で連続であるとき,f(x)を連続関数とよぶ」
という文で覚えた方が定義の勘違いを防げる。
連続関数のグラフは1つながりの曲線であらわされる。
 また、「区間」の定義は、その区間の範囲内に実数が隙間無く完全に密集して入っている変数xの範囲であると定義されています。そのため、「区間で定義された関数f(x)」と言う文の意味は、「区間の範囲内の全ての実数xに対してf(x)の値が有限の値で存在している」という意味を持っている。
 更に、「区間」の定義は、ある数aからbまでの連結した1つながりの連結領域が区間と定義されている事に注意して欲しいと思います。 閉区間[a,b]や、a,bを含めない開区間(a,b)等があるが。

小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の80ページでは、連続関数の定義を明確に
(1)第1の定義の連続関数
 「連結な開区間で1つながりに連続している関数」
(2)第2の定義の連続関数
 「連結な閉区間で1つながりに連続している関数」
に限っている。
すなわち、連結区間で連続な1つながりの関数のみを連続関数と定義し、それ以外の連続関数の定義を排除している。これは、微分積分の定理が連続関数を使うときに必ず使う形に整合させた連続関数の定義である。

 また、有理式:f(x)/g(x)のg(x)=0なる点は、連続では無いのであるから、「連続では無い点」である。
関数y=1/xのx=0となる点は連続では無い点である。

東海大学(貴田 研司)~連続関数の厳密な定義~
「関数f(x) がある区間 I に属するすべての値 x で連続であるとき 、f(x) は区間 I で連続である,または区間 I で連続関数であるという.」


高木貞治「解析概論」10.連続関数
の24ページで、
「或る区域内において、変数xが連続的に変動するに伴って連続的に変動する関数f(x),すなわち、いわゆる連続関数」
と言って連続関数を定義している。

26ページでは、
f(x)=(x^2-1)/(x-1)において、
x=1において、
f(x)は意味を有しないが、
x=1において、
「式の欠点から生ずる不連続」である
と述べている。
f(x)=(x^2-1)/(x-1)は、x=1において連続ではない。
x=1で関数f(x)が定義されていないということは、
x=1でf(x)が不連続であることを判定する妨げにはならない。

「解析概論」をもっと読んでいくと、
30ページで、
「12.区域・境界
区域、境界~、ここで少しくその意味を明確にしておこう」

32ページで、
「領域・閉域
区域というのは、一つの点集合である。・・・また区域が連結されていることを要求する」
と言っている。
ここまで読めば、
連続関数f(x)が
「或る区域内において、変数xが連続的に変動するに伴って連続的に変動する関数f(x)」
と言う定義の意味が、
連結した区域(区間)で連続関数f(x)が定義されている、
ことがはっきり分かる。

 大学数学における、xの数直線上の点x=aでの関数の連続性の定義、及び、区間での連続関数の定義では、「区間」がキーワードになっている。
 関数f(x)のグラフの形が設定され、また、関数値が定義されているxの値の範囲(定義域)がある。ここで、xの数直線上のx=aの点には、その点の近傍の定義域がその点を含む微小区間を含んでいない場合は、x=aの点で関数f(x)が連続では無いと判定する。
 また、x=aの点の近傍のその微小区間内の全ての実数のxの点で関数f(x)が連続である場合に、そのx=aの点で関数f(x)が連続関数であると判定する。

(1つ目の連続関数)
上図の関数で、連結区間x>0で定義されるy=1/xは(第1の定義の)1つながりの連続関数と定義される。
(2つ目の連続関数)
上図で、連結区間x<0で定義されるy=1/xも(第1の定義の)1つながりの連続関数と定義される。
これらの2つの連続関数は、それぞれ、連結区間で連続な1つながりのグラフの関数である。
それらの2つの連続関数がある。
 しかし、この2つの区間を合わせた複合区間を1つの定義域にした関数は、もはや、連続関数では無い。
-∞<x<∞で(x≠0)とする定義域は、x=0で切れているので1つながりの連結領域では無い。その関数の定義域が境界点x=0で分断されているので、連続関数では無いと判定される。
 以下の関数の例は、2つの区間を合わせた複合区間を1つの定義域にした関数が連続関数にならない例である。
(1つ目の連続関数)
連結区間x>0で定義されるy=(1/x)は(第1の定義の)1つながりの連続関数と定義される。
(2つ目の連続関数)
連結区間x<0で定義されるy=-100も(第1の定義の)1つながりの連続関数と定義される。
これらの2つの連続関数は、それぞれ、各関数が定義されている連結区間で連続な1つながりのグラフの関数である。
(定義域を合成すると)
 この2つの連続関数の定義域を合わせて1つの定義域(x≠0)にして定義した関数は、定義域内のどの点でも連続ではあるが、その定義域は複合区間であって、1つながりに連結した区間ではない。その関数は連続関数では無い。

定義域が1つの連結区間ではない関数を、高校数学で連続関数と定義することは誤っている。

 高校生も、連続関数とは定義域が連結区間で1つながりに連結している関数であると覚えるのが良い。

《連続関数の定義域の指定》
 また、連続関数は、所定区間とセットにして「連続関数」が定義され、その所定区間外で関数が連続で無い点を持つても良いことにも注意する必要がある。常に所定区間とセットで連続関数を考える。その所定区間を連続関数の定義域とするのである。
上図の関数f(x)は、X=0とX=2で不連続だが、
その0≦x≦2の区間内の部分の関数f(x)は、
閉区間0≦x≦2で定義された連続関数である(第2の定義の連続関数)。
 定義域に関する、このことも、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の82ページに書いてあった。

 不連続関数という表現は誤解を招く表現である。関数を扱う区間内に連続で無い点があれば「不連続関数」と表現できるが、その連続で無い点を避けた区間では、その関数は連続であって「連続関数」になるので、「不連続関数」という表現は不適切な表現であり、そういう表現は使わない方が良い。

【第1の定義の連続】
《極限の定義》《イプシロンデルタ論法を使う》
 先ずは、位相空間論での極限の定義を説明する。(例えば有理数の)集合Aを定義域にした関数f(x) の極限が以下のように定義される。(位相空間論では、定義域Aが有理数のみの関数でも極限が求められるのである)
 すなわち、関数f(x) の独立変数xの定義域が例えば有理数の集合Aであるとする。定義域Aのxの点(xは有理数)を考える。また、定義域Aと、変数xの点列がその外にも収束し得る宛て先の点(境界点)の集合の点aを考える。
A∍x
(A∪境界点)∍a
とする。なお、点aではあるが、点aがAに属さない境界点の場合は点aを点βとあらわすことにする。

 ここで、関数f(x) の変数xがx=aの点に限りなく近づくとf(x) がある実数bに収束する極限値bが存在するということを、以下のようにイプシロンデルタ論法で定義する。
 十分小さい正の実数εを考え、次に正の実数δを考える。
すなわち、ある実数bに対して、どのように小さい値のεに対しても、
ある値の実数δによって、a以外の集合Aの要素のどのxに対しても、
0<|x-a|<δ, x≠a,
ならば、
|f(x)-b|<ε
となるならば、f(x)のx=aの極限値bが存在するものとする。


(極限の定義おわり)
(補足)この極限の定義は、大学数学では、以下の論理記号を使った論理式で書かれることもあります。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,∀x∊A,{0<|x-a|<δ ⇒ |f(x)-b|<ε}
ここで、記号Rは全ての実数という意味です。
この論理式の記号の意味は、∃記号で書かれた要素(bとδ)は1つの値だけで論理式が成り立てば良い。しかし、∀記号で書かれた要素(εとx)は、その要素の全ての値の論理式が全て成り立たなければならない。すなわち、∀記号の要素の異なる値で表される複数の論理式(連立された論理式)が成り立たなければならないという意味の式です。

(注意)しかし、この位相空間論による極限の定義には、「aに近いどの実数に対してもf(x)の値が定義されていなければならない」という極限が存在するための基本的条件が抜けている。
関数f(x) のグラフの定義域が1点のみの孤立点を持つ関数f(x) の場合は、その孤立点x=aでの極限が無意味になる不具合がある。孤立点を持たない関数f(x) であれば不具合は無い。

《連続の定義》
 関数f(x) は少なくとも、微小な連結区間
a − δ<x<a + δ
の全ての実数の点で定義されている(1点のみは区間ではない)とする。(定義域Aはその区間だけを考えれば良い。)
(ここで、δは小さな正の実数)
そして、その関数f(x) で式(10a)の極限bが存在する上に、更に、
b=f(a)
となる場合は、
f(x)はx=aの点で連続であると定義する。
このように、微小な連結区間の全ての実数で定義された関数f(x) の極限を、式(10a)と式(10b)で求め、そのうちの式(10a)を用いて、関数f(x) の点aでの連続性を定義している。
極限の存在条件よりも条件が厳しくなったのがこの連続性の条件である。

(連続の定義おわり)

(定義の意味)この連続の定義の意味は、関数の極限が存在する条件よりも条件が厳しくなり,今度は、更に、
「f (x) は x =a の点aを含む微小区間で定義されている上に、f(a)=bでもある。」
という条件が、極限が存在する条件に追加して加えられた。すなわち、連続性の条件は極限の存在条件よりも厳しくなった。
 関数の極限の定義では、x=aにおいて、f(x)が定義されていなくても、f(x)のx=aにおける極限があるかないかを判定した。点aの近傍の全ての実数で関数が定義されている必要もなかった。
連続性の定義においては、x=aにおいてf(x)の極限が存在する条件に加えて、さらに条件がきびしくなったのである。もちろん、極限が存在しなければ、当然ながら、x=a で f(x) が定義されていてもいなくても、その点x=a で関数 f(x) が連続とは言えないのである。

(関数が点aで定義されていないと不連続)
 関数 f(x) の極限の存在することが判定されたx=aの点(その点aは関数の定義域Aの外にもなり得る)において、その点aで関数が定義されていない場合は、その点aで関数 f(x) が不連続である。

(点aを含む微小区間で関数が定義されていること)
 また、関数の連続性の定義では、点aを含む微小区間で関数が定義されていなければならないという条件が加わった。

 関数f(x) は少なくとも、微小な連結区間
a − δ<x<a + δ
の全ての実数の点で定義されている(1点のみは区間ではない)とする。(定義域Aはその区間だけを考えれば良い。)
(ここで、δは小さな正の実数)
ということを初めから前提にして、古典的(基礎的)微分積分学による関数の極限の定義と関数の連続の定義をイプシロンデルタ論法で表現すると、以下のようにとても簡単にあらわせる。(ただし、極限の定義の場合にはf(a) が定義されていないでも良いものとする)

《基礎的微分積分学による関数の極限の定義》
 関数f(x) がxの点列の収束するあるx=aの点で実数bに収束する極限値bが存在するということを、以下のようにイプシロンデルタ論法で定義する。
 x=aの点で、十分小さい正の実数εを考える。次に、正の実数δを考える。
そして、どのように小さい値のεに対しても、
ある値の実数δが存在して、
0<|x-a|<δ, x≠a,
を満足するa以外のxが存在し(当たり前)、この式を満足する全ての実数xで、
|f(x)-b|<ε
となるような実数bが存在するならば(またそうなる場合に限って)、f(x)の極限が存在するものとし、その極限値をbとする。
(極限の定義おわり)

《連続の定義》
 関数の定義域Aのx=aの点において、十分小さい正の実数εを考える。次に、正の実数δを考える。
そして、どのように小さい値のεに対しても、
ある値の実数δが存在して、
|x-a|<δ
を満足するa以外のxが存在し(当たり前)、この式を満足する全ての実数xで、
|f(x)-f(a)|<ε
となるならば(またそうなる場合に限って)、f(x)が点aで連続である。
(連続の定義おわり)


(高校数学の迷信に注意)
 高校数学では、
関数f(x)=1/xについては、
x=0では、
f(x)の連続性を判定しない、
と解釈しているようです。

 それは間違いで、
x=0の点は、関数の極限の存在を判定する対象の点であり、その点では関数の極限値が存在しない。極限値さえも存在しないので、
その点で関数f(x) は不連続である。

-----(連続の定義の言い換え)----
 この定義をハッキリ把握するために、想像力を膨らませて、この定義を、以下の様に噛み砕いて自分の言葉で言い換えて定義を覚えると良い。

(なお、この定義をかみ砕いて考える考え方が、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の80ページから81ページに詳しく書いてある。)

(0)
 この、関数の点aでの連続の定義は、関数の点aの近傍の幅を持った微小区間で連続を判定している。
 すなわち、関数の連続を確認する点x=a については、その点の座標の周りに広がりを持つ区間の、少なくとも、a− δ<x<a +δ
(ここで、δは小さな正の実数)
という連結区間の全ての実数値xで関数f(x)が定義されていることが大前提である。
「区間」と言う場合は、それは1つの連結区間であって、その区間内の全ての実数が関数の定義域である事を意味する。
(1)
次に、
aに近い(値aも含む)関数の定義域の変数xを考える。
(2)
aから、正の値δの範囲内でずれる、aも含む定義域の全てのxの値についてf(x)を考える。
 この定義における「全てのxの値」の意味は、aから、正の値δの範囲内でずれる値の定義域に属する全て変数xを考慮することを意味する。
(3)
その全てのxの値の関数f(x)の値のバラツキの誤差を求める。
その誤差<εとする小さな正の値εでバラツキの範囲を定める。
すなわち、点aの近傍の全ての変数x(ただし、x=aの場合も含む)の値の関数値f(x)について、
-ε< (f(x)-f(a))<ε
となる正の値εを定める。
(4)
点aの近傍のxの値の範囲を式:
a− δ<x<a +δ
で定める正の値δを十分小さくすれば、
その範囲内の全ての変数x(値aも含む)によるf(x)の値のバラツキが小さくなりバラツキの範囲の値 ε をいくらでも小さくできるならば;

f(x)はx=aで極限値bを持ち、かつ、その極限値bがf(a)に等しい。
その場合に、
関数f(x)は、
x=aで連続である。
(第1の定義の連続)。

言い換えると、
「点aでf(x)が連続であるとは、
どんなに小さい正の値εに対しても、
十分小さい正の値δを使ってxの区間を、
a − δ<x<a +δ 
(x=aとなる場合も含む)
に限定すれば、その区間内のどのxの値でも
-ε< (f(x)-f(a))<ε
が成り立つようにできる事である。」
----(定義の言い換えおわり)----------- 


(注意1)このε-δ論法による連続の第1の定義は、
xの微小区間の a − δ<x<a+δ の全ての実数についてf(x)の値が存在する(定義されている)事を条件にしている。そのため、関数値f(x)が区間で定義されていない場合は、連続であるとは定義しない。

(注意2)ここで、ε-δ論法が出て来たが、ε-δ論法というものは、εとδを使った極限の表現の手段であって、そのε-δ論法を使った「連続」の定義は、上の形の第1の連続の定義に限られない。
以下で説明する片側連続についても、第1の連続の定義とは形を変えた別のε-δ論法によって片側連続が定義される。

【第2の定義の連続】
  【関数が閉区間(a≦x≦b)で連続という定義】
 a≠bなる閉区間(a≦x≦b)で定義された、第2の定義の連続関数f(x)は、多くの場面で使われる。
閉区間(a≦x≦b)で連続な連続関数f(x) と呼ばれるが、
その定義域の端点では、片側連続であり、両側からは連続していなくても閉区間で連続と定義するので要注意である。

上図の関数f(x)は、X=0とX=2で不連続だが、
その0≦x≦2の区間内の部分は、
「区間0≦x≦2で定義された関数f(x)が区間0≦x≦2で連続な連続関数である」
と言う(第2の定義の連続関数)。

(第2の定義の連続関数の端点での連続の定義)
 閉区間a≦x≦b,(a≠b)で関数f(x) が定義されているとする。(xの1点だけの集合は区間ではない)
その与えられた区間内の x=cの点において、
どれだけ小さな正の実数 εに対しても、ある δ が存在して
∣x−c∣<δ
を満足する(与えられた区間内の)全ての実数 x に対して,
∣f(x)−f(c)∣<ε
が成り立つならば、関数f(x) は点cで連続である。
そして、与えられた区間内の全ての x=cの点でそれが成り立つならば、
関数f(x)は連続関数である。
(第2の定義の連続関数おわり)

そして、
閉区間の端点x=bの点で、
x → b− 0 またはx → b− と表わす左側極限値f(b-)がf(b)である左連続によって連続である。
すなわち、端点bでのグラフの点(b,f(b))が左側極限の点(b-,f(b-))と連続している(片側連続性)。

また、
閉区間の端点x=aの点で、
x → a+ 0 またはx → a+と表わす右側極限値f(a+)がf(a)である右連続によって連続である。
すなわち、端点aでのグラフの点(a,f(a))が右側極限の点(a+,f(a+))と連続している(片側連続性)。

そういうふうに、閉区間(a≦x≦b)で定義された関数f(x)は、その閉区間の端点a,b間で連続な関数f(x)であると定義されている。

関数f(x)が右側極限や左側極限で区間の端点に片側連続性で連続につながっているので、そういう表現をする理由になっている。
-----第2の定義の連続関数の説明おわり-----------

 以下では、第1の定義の連続の説明に戻ります。

《連続の事例と、連続で無い事例》
(不連続の事例1)
下図の関数は、x=0で関数f(x)が定義されてないので、x=0は連続で無い点です。

このように、連続関数から、1つの変数xの関数値f(x)を取り除くと、その除去された点で関数が連続とは言えなくなります。

(事例2)
下図の関数は、定義域が
0<x<1
なので、x=0は連続で無い点です。
(事例3)
下図の関数は、x=0でf(x)が存在するので、
x=0で不連続です。

この不連続な関数から、x<0の点を全て除去した下図の関数は、
閉区間での関数に係る(第2の定義の連続関数)の定義に従い:
連結区間0≦x≦1の端点のx=0で連続です。


(関数f(x)が連続な連結区間で連続関数を定義する)
 例えば、下図の関数f(x)は、x=0は連続で無い点ですが、その点以外の図の、関数が連続な連結区間a≦x≦bで関数f(x)を切り出して、
その部分を、第2の定義の連続関数であると定義できます。
すなわち、上図の、0<aである閉区間(a≦x≦b)で連続な第2の定義の連続関数であると定義できます。

(事例4)

(事例4その1)
上図のような関数f(x)の変数xの定義域の0≦x≦2内に、xの無理数の値に対する関数値f(x) が無い(定義されていない)部分がある場合は、その関数値f(x) が定義されていない部分では、変数xの有理数のどの値でも関数f(x)が不連続である。

 すなわち、関数f(x)が変数xが0≦x≦2において、変数xが有理数の場合だけで関数値が定義され、変数xの無理数の値に対する関数値f(x)が存在しない関数f(x)の場合は:
(注意:0≦x≦2という範囲は、そのxが全ての実数をあらわしてはいないので「区間」と呼ぶことはできません)
定義されている有理数の点x=aで関数f(x)が連続であるためには、少なくとも、
a-δ<x<a+δ  (式2-1)
の区間内の全ての実数で、
|f(x)-f(a)|<ε (式2-2)
となる条件を満足しなければならないのにもかかわらず、
この式2-1の区間内に、必ず無理数xがあり、
その無理数では関数f(x)が定義されていないので、式2-2を満足しない。
そのため、変数xの定義されている有理数のどの値でも関数f(x)が不連続である。

(事例4その2)
その1の場合の逆に:
上図で、関数f(x)が変数xが0≦x≦2において、変数xが無理数の場合だけで関数値が定義され、変数xの有理数の値に対する関数値f(x)が存在しない関数f(x)の場合は:
(注意:0≦x≦2という範囲は、そのxが全ての実数をあらわしてはいないので「区間」と呼ぶことはできません)
定義されている無理数の点x=aで関数f(x)が連続であるためには、少なくとも、
a-δ<x<a+δ  (式2-1)
の区間内の全ての実数で、
|f(x)-f(a)|<ε (式2-2)
となる条件を満足しなければならないのにもかかわらず、
この式2-1の区間内に、必ず有理数xがあり、
その有理数では関数f(x)が定義されていないので、式2-2を満足しない。
そのため、変数xの定義されている無理数のどの値でも関数f(x)が不連続である。

(備考1)
 この例の様に、連続性を判定する点x=aで関数の連続性(および極限)を考える場合に、定義域の変数として無理数だけ、あるいは有理数だけに限定された定義された数だけでは無く、
a-δ<x<a+δ  (式2-1)
の区間内の全ての実数について確かめて関数f(x)の連続性を判定します。関数f(x)の定義域でf(x)が定義されていない数であっても、区間内では全ての実数を考えて連続性を判定します。

(備考2)
 上の(事例4)の関数の姉妹の関数として、
変数xが有理数の場合に、
f(x)=x
となり、変数xが無理数の場合に、
f(x)=100
となる関数は、
明らかに、x=0で不連続です。

(連続性を考える場合の根本的な注意点)
 有理数全体は、x座標を表す直線上に密集している。しかし、有理数全体だけでは、直線上にすきま無く並べることができない。
 無理数全体も、x座標を表す直線上に密集している。しかし、無理数全体だけでは、直線上にすきま無く並べることができない。
 実数全体が、直線上にすきま無く並べることができるのである。

(備考)
 連続性は実数まで考えることで正しく定義できるので、関数を連続関数であると定義すると、その関数は、変数xの実数の連結区間で定義される必要があります。
 その変数xの値として有理数の値のみしか扱わず無理数の値を全く意識しない場合でも、微分される関数が実数でも定義されているというバックグラウンドをその関数に持たせる必要があると考えます。

(第2の定義の連続関数の連続な区間と定義域)
変数xが、
連結区間a≦x≦b
で関数f(x)が(第2の定義の連続関数として)連続であると定義された関数f(x)は、
関数f(x)の定義域は、
連結区間a≦x≦b
であり、
関数f(x)が完全に連続な連結区間は、
a<x<b
です。
そしてf(x)の右側極限f(b-)=f(b)であり、
f(x)の左側極限f(a+)=f(a)です。

(事例5:微妙に不連続な関数の例)
x≠0の場合:
f(x)≡ sin(1/x)
x=0の場合:
f(0)≡0

上図の関数 f(x) は
x→0で
Yの極限値が存在しません。
そのため、関数f(x)はx=x0 ≡0で不連続です。
関数f(x)は、xが0に近づくとー1と1の間を振動します。
 この関数f(x)は、xがx0 ≡ 0の値に無限に近い点で、f(x)の値が0になるかもしれないし、-1から1の間のどの値になるかもしれないので、
x→0+
における極限値が何になるかがわかりません。
そのため、
x→0+における関数値f(x)と、
x=0における関数値f(0)=0
が同じであるか異なるかどうかも分かりません。
それでも、関数の連続性の定義の【定義1.4 (連続関数) 】に従って、この関数f(x)がx=0で不連続であると言えます。
①先ず、関数f(x)は区間(x0 − δ, x0 + δ) で定義されています。
②x=0での関数の連続を定義する極限の式:
が成り立つかどうかを調べてみます。
x→0+におけるf(x)の値が振動して、極限値が存在しないので、
この式は成り立ちません。
そのため、この関数f(x)は、x=0で不連続です。

(事例6:極限が存在しない点が無限にあり不連続な関数)
上図のノコギリ関数g(x)を使って以下の関数を作ります。
この関数f(x)は、以下のx座標で極限が存在しない。
その他、
x=奇数/(整数×2)
の点では極限値が存在しない。
極限値が存在しないのであるから、その点では関数は連続ではありません。

 このf(x)のグラフは、関数f(x)の極限が存在しない有理数のxの値では、このグラフf(x)が不連続です。

 おもしろいことに、この関数f(x)のグラフは、
x=無理数の位置で「連続」です。
そのxの無理数の値から無限に近い距離にも、有理数の値のxでf(x)が連続で無い点があるにもかかわらずです。

(一様連続性:関数の値のバラツキが一斉に小さくなる事)
 f(x)が連結な閉区間a≦x≦bで1つながりに連続な関数であれば、閉区間で連続な関数の最大値・最小値の定理によって、f(x)の値はある最大値と最小値の間の値に限られている。
 そのように、ある最大値と最小値の間の値に限られている、閉区間で連続な関数f(x)の領域を以下の図の様に2等分する。
(ただし、二等分とは言っても、分割された領域の境界点は、それぞれの領域が共有するように分割する。)
そして、分割された領域毎に、関数の最大値と最小値の差Δを考え、全分割領域での、差Δの最大値Δ2を抽出する。
関数f(x)が連続関数の場合は、その差の最大値Δ2は、分割前の領域での関数の最大値と最小値の差Δ1よりも小さくなる。
更に、各領域を2等分する。
(ただし、二等分とは言っても、分割された領域の境界点は、それぞれの領域が共有するように分割する。)
そして、分割された領域毎に、関数の最大値と最小値の差Δを考え、全分割領域での、差Δの最大値Δ3を抽出する。
関数f(x)が連続関数の場合は、その差の最大値Δ3は、分割前の領域での差の最大値Δ2よりも小さくなる。
更に、各領域を2等分する操作を繰り返し、
差の最大値Δ4、Δ5、Δ6・・・
を求めて行く。
すると、関数f(x)が連続関数の場合は、領域を分割する毎に、全分割領域での差の最大値Δnは無限に小さくなって行く。(これは、以下のようにして証明できる)

(仮説)
 もし関数の最大値と最小値の差Δnが無限に小さくならないで、ある値β>0に留まるとする。
(仮説の検証)
 その場合は、どんなに区間を分割しても、関数値のばらつきがβである微小区間が残り続ける。
ばらつきがβ未満の微小区間を分割してもばらつきがβである微小区間が生まれる事はないので、関数値のばらつきがβである微小区間は、関数値のばらつきがβである微小区間の分割によって生まれる。
すなわち、関数値のばらつきがβである微小区間が、それを無限に分割しても、関数値のばらつきがβであり続ける。その微小区間は点に収束し、その点の近くで関数値のばらつきが0に収束する事はない。
 その場合は、その点で関数f(x)の連続の条件を満足しない。
これは、f(x)が連続である条件に反する。
 ゆえに、この仮説が成り立たず、
関数の最大値と最小値の差Δnは無限に小さくなっていく。

(一様連続性)
 以上の様に、ある関数f(x)の各分割領域を更に2分の1に分割する操作をn回繰り返していき、各分割領域の関数f(x)の最大値と最小値の差(関数の値のばらつき)Δを求める。
(1)そのとき、全ての分割領域での関数の値のばらつきΔの最大値Δnが有限の値で存在すること。
(2)この操作を繰り返して分割領域を無限に小さくすると、
全ての分割領域での関数の値のばらつきの最大値Δnが、無限に小さくなって行く。
(すなわち、全ての分割領域での関数の値のばらつきがΔnより小さく、そのΔnが無限に小さくなっていく)
これが成り立つ関数f(x)の性質を「一様連続」であると言います。

 この説明は、以下の様に定義されている一様連続の言い換えです。
「変数xの数直線上の区間[a,b]において、どんなに小さな正の値εについても、全ての分割領域での関数f(x)の値のばらつきがε以下にできる、分割領域の小さな幅δ=(b-a)/(2^n)が存在するとき、その関数f(x)は一様連続である。」
(一様連続の説明おわり)

《関数の合成関数の例》
 以下の関数f(x)とg(x)の合成関数f(g(x))を考える



すなわち、以下の式で表される合成関数になります。

大学数学で定義した正しい連続関数同士の合成関数f(g(x))であっても、関数g(x)の値域が関数f(x)の定義域からはみ出す場合には、上記の例のように、切れ切れの合成関数が得られます。関数を合成する場合には、関数g(x)の値域をf(x)の定義域の範囲内におさめる節度が必要です。

【微分積分の初心者には、位相空間論の議論が破綻しているように見える】
 これ以降は大学数学の話になります。高校生は読まないで良い話です。
(なお、大学数学を学ぶ大切な心構えは「人のせいにしない」です。自分が間違ったとき「教科書が間違いを教えていたから間違えた」とは言わないことです。「自分が間違えたなら、その間違ったことを受け入れた自分が悪い」と自覚することです。
《杉浦光夫著「解析入門Ⅰ」》
 〔杉浦光夫著「解析入門Ⅰ」51ページ〕では、位相空間論に基づく以下のような「極限」を定義している。
《位相空間論の極限の定義》
 位相空間論では、位相空間の数の集合を実数の集合Rとした上で、その集合の部分集合の(例えば有理数の)集合Aを定義域にした関数f(x) の極限が以下のように定義される。(定義域が有理数のみの関数でも極限が求められるのである)
 すなわち、関数f(x) の独立変数xの定義域が例えば有理数の集合Aであるとする。定義域Aのxの点(xは有理数)と、定義域Aを含む触点の集合(それは定義域Aと境界点の集合とを合わせた集合)に属する点aとを考える。
A∍x
(A∪境界点)∍a
とする。なお、点aではあるが、点aがAに属さない境界点の場合は点aを点βとあらわすことにする。
(参考)「嶺幸太郎 著:微分積分学の試練」の178ページに位相空間論での「触点」や「境界点」の定義がある。

 関数f(x) の変数xがx=aの点に限りなく近づくとf(x) がある実数bに収束する極限値bが存在するということを、以下のようにイプシロンデルタ論法により定義する。
 十分小さい正の実数εを考え、次に正の実数δを考える。
すなわち、ある実数bに対して、どのように小さい値のεに対しても、
ある値の実数δによって、a以外の集合Aの要素のどのxに対しても、
0<|x-a|<δ, x≠a,
ならば(上記の2つの教科書がともに、この式を間違えている)、
|f(x)-b|<ε
となるならば、f(x)のx=aの極限値bが存在するものとする。


(極限の定義おわり)

(注意1)この極限の定義で注意する点は、有理数の集合Aで定義された関数f(x) の極限値bを、有理数の集合Aに属する独立変数xのみで定義しているが、xの収束する先の数aは集合Aに属する点だけではなく、境界点βの場合もあることに注意すること。つまり、変数xが集合Aに属さない点(位相空間の数の集合には属する)の境界点βに収束する場合の、そのときの関数f(x) の極限も定義されている。
すなわち、式(10a)の極限の定義とともに、式(10b)で、点xの収束する先のβが(位相空間の数の集合に属するが)定義域の集合Aには属さない境界点βである場合もf(x) の極限が定義されている。極限の概念は関数の定義域Aに限定できないのである。

(参考)「嶺幸太郎 著:微分積分学の試練」の112ページに位相空間論での極限の定義がある。

(注意2)
 この定義によると、
例えば、
定義域の集合A={1,4}とし、f(1)=10,f(4)=20,という関数の例では。
点a=1においては、以下の理由で
b=20という極限値がある。
δ=4とすれば、
x=4では、0<|4-1|<4が成り立たつ。
それが成り立つならば、どのεの値についても、そのx=4について、
|f(4)-20|<ε
が成り立つ。
そのため、点a=1においてb=20という極限値がある。
(注意)この点a=1における極限値b=20は、点a=1における関数値f(1)=10とは異なる。そのため、極限値b=f(a) となることを関数の連続性の定義とするならば、点a=1において、関数f(x) は不連続である。

一方で、定義域の集合A={1}とし、f(1)=10,という関数の例では以下の不具合がある。
点a=1においては、
b=200とすると、
δが何であっても、
x=1では、0<|1-1|が成り立たない。
つまり、どのxについても、0<|x-a|<δが成り立たない。
((偽の命題)ならば(何かの命題)である。)
という命題は常に真である。
(何かの命題)が、|f(x)-200|<ε
である場合に、定義により、|f(x)-200|<εが成り立たなくても、極限値b=200である。
しかし、(何かの命題)が、|f(x)-400|<ε
である場合に、定義により、|f(x)-400|<εが成り立たなくても、極限値b=400である。
この場合に、極限値b=200でもあり、極限値b=400でもあることになり、極限値が何にでもなることになる。
そのように、極限値が無意味になる不具合がある。
(こうなるので、この極限の定義には不備がある。)

更に、定義域の集合A={1,4}とし、f(1)=10,f(4)=20,とした関数の例をもう1度考えてみる。
この関数については、先に、
点a=1において、δ=4に関して、b=20という極限値がある。
と結論付けた。
ここで、点a=1において、δ=1 に関して考察する。
δ=1の場合は、
x=1では、0<|1-1|が成り立たない。
x=4では、|4-1|<1=δが成り立たない。
すなわち、どのxについても、0<|x-a|<δが成り立たない。
((偽の命題)ならば(何かの命題)である。)
という命題は常に真である。
(何かの命題)が、|f(x)-200|<ε
である場合に、定義により、|f(x)-200|<εが成り立たなくても、極限値b=200である。
しかし、(何かの命題)が、|f(x)-400|<ε
である場合に、定義により、|f(x)-400|<εが成り立たなくても、極限値b=400である。
この場合に、極限値b=200でもあり、極限値b=400でもあることになり、極限値が何にでもなることになる。
そのように、この関数の場合でも、極限値が無意味になる不具合がある。
(こうなるので、この極限の定義には不備がある。)

この関数の、点a=1における極限を、以下で、ε-δ論法を数式化した論理式を地道に解くことで解析する。
f(x) の点aでの極限bの定義を表すイプシロンデルタ論法の論理式は以下の式である。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,∀x∊A,{0<|x-a|<δ ⇒ |f(x)-b|<ε}
この論理式は、以下の式に書き換えられる。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,∀x∊A,{(0<|x-a|<δ)で無い ∪ (|f(x)-b|<ε)}
この式を同値変形する。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,∀x∊A,{(0=|x-a|) ∪ (|x-a|≧δ) ∪ (|f(x)-b|<ε)}
 この論理式は、∀記号で表した要素のεとxの全ての値の組合せの論理式を連立した論理式である。
そのため、上記の関数におけるa=1での極限値bの解は、以下の連立論理式に展開して解くことができる。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,x=1,{(0=|1-1|) ∪ (|1-1|≧δ) ∪ (|10-b|<ε)}
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,x=4,{(0=|4-1|) ∪ (|4-1|≧δ) ∪ (|20-b|<ε)}
整理すると、
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,{(0=0)}
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,{(|4-1|≧δ) ∪ (|20-b|<ε)}
1つ目の論理式は常に真なので2つ目の論理式のみになる。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,{(|4-1|≧δ) ∪ (|20-b|<ε)}
この式を同値変形すると、
∀ε>0,{(3≧δ) ∪ (|20-b|<ε)}
更に式を同値変形すると、
(3≧δ) ∪ 20=b
この解は、以下の意味を持つ。
(解1) δ≦3の場合に、極限値bは任意の値を持つ。
(解2) δ>3の場合に、極限値b=20。
極限値bを与える条件のδの値はどの値にしても良いから、 極限値bの解は、
b=任意の値又はb=20である。
(極限bの解おわり)
(極限bの値が定まらないので、極限の定義には不備がある。)

 この極限の定義の不備については、位相空間論では、孤立点を関数が連続な点と定義し、極限値=f(a) と定義して、それ以外の定義を排除することで解消している。
極限の宛先の点aを集積点に限ることでも不備を解消できるが、それは単に孤立点aの極限が存在しないと定義して孤立点aは連続でないと定義することにすぎない。その場合は、イプシロンデルタ論法と論理式を使った極限の定義では孤立点の極限値が任意の値になることとの整合性が良くない。

《連続の定義》
そして、式(10a)の極限の定義を使って、
b=f(a)
となる場合は、
f(x)はx=aの点で連続であると定義する。
(連続の定義おわり)

 このように、有理数のみで定義された関数f(x) の位相空間の極限を式(10a)と式(10b)で定義し、そのうちの式(10a)を用いて、関数f(x) の点aでの連続性(値域の連続性と呼んだ方が良い)を定義している。
極限の存在条件よりも条件が厳しくなったのがこの連続性の条件である。(しかし、本物の連続性の条件にするには、点aの近傍の定義域が実数が連結した微小区間であるという第3の条件が不足している)


 このように関数f(x) の点aにおける連続性を定義するならば、
関数f(x) の(xの定義域の)内点でのf(x) の連続性の定義ができるのみならず、
f(x)のxの定義域の境界点においても、関数f(x) の連続性が定義できる。
 すなわち、内点の連続性と境界点の連続性の定義が1つの定義のみで定義できる。

しかし、この連続関数の定義には以下の難点がある。
定義域が、

である以下の関数f(x) を考える。

この関数f(x) は、定義域のx=1の点でも連続である。しかし、x=1の点では、左連続ではあるが右連続ではない。(十分小さいεに対応してはδ=1+0にして、δを1以上にし続ければ、式(4)の右極限が存在し、その極限値が0であると言える。しかも極限の定義には、そうしてはいけないという制約条件は無い。しかし、そういう「言い訳」ができる極限の定義の方が、微小量を考える極限の概念から外れている。自分で、その極限の定義を修正する等の創意工夫を加えて、この理論を理解し易くすると良いかもしれない。)

しかも、グラフが切れ切れである。

杉浦(位相空間論)は、関数f(x) のグラフが千切れていない関数の性質のためには、xの定義域の連結性という概念を定義している。しかし、グラフが千切れていない関数f(x) の連結性とは、もともとは連続関数f(x) の性質として定義されていたものである。

 また、定義域Aが{1} という1点のみの孤立点の関数では、極限が無意味になった。無意味になった極限を前提にして関数の連続性を定義する場合には、その連続性の定義が無意味になる。
(そのようなことが起こるので、連続性の定義に不備がある)。

 また、位相空間論の極限の定義が以下のように誤解される問題点がある。有理数で定義された変数xの値をあらわす数列xnが、nが無限に大きくなると√2 に収束する場合を考える。その場合に、極限を式(10a)のみで考えてしまうと、変数xの数列が無理数へ収束することを考える手段が無い。
 この不具合は、式(10b)で定義した極限を考えれば解消される。

自然数nの関数であるxの数列を考えることは、自然数nの関数x=k(n) を考えることである。nが無限に大きくなる場合にk(n) の値がβに収束していく関数k(n) を考えることができる。その関数k(n) の極限値βの点は、関数k(n) の値の属する集合Aの外の点になる場合もある。


 また、xの定義域Aが有理数のみの関数は積分ができない。そのため、定義域Aが有理数のみの関数f(x) を連続関数と名付けても、その関数は積分可能性という重要な性質を持っていない。
 杉浦(位相空間論)は、積分可能な連続関数としては、(1817年にBolzanoが定義した)実数の閉区間で連続な関数を積分用に使っている。微分にも積分にも共通して通用する連続関数は、1817年にBolzanoが定義した、実数の区間で連続な関数である。

 大学数学で、「杉浦光夫著「解析入門Ⅰ」」が良く理解できない場合、
「嶺幸太郎 著「微分積分学の試練」」 を学ぶと良い。

〔古典的(基礎的)微分積分学〕
 古典的(基礎的)微分積分学では、関数の連続性の定義は、〔定義の役割〕における2つの条件が満足されるように定義する。先ず、第1の条件を満足するために、変数xの点aの近傍で実数が連結する区間内(連結する全ての実数)での極限を用いる。次に、第2の条件を満足するように、εδ論法で定義される極限を使った式(10)によって関数f(x) の連続性を定義している。


「区間で定義された関数f(x)が、その区間のすべてのxの値で古典的(基礎的)な連続性があるとき、f(x)は古典的(基礎的)な微分積分学で定義された連続関数である」

 そして、実数上のx=aの点で関数f(x) の連続性の条件が満たされない場合を、その(実数上の)点aを、不連続点と呼んでいる。

 実数上のx=aの点は、関数f(x) の連続な点であるか、関数f(x) の不連続点(当ブログでは「連続でない点」と呼ぶ)かの2つの場合のどちらかである。
すなわち、あるxの点が不連続である条件は、そのxの点が連続でないことである。

 古典的(基礎的)微分積分学は、実数全体の数の集合に基づいて解析することで、関数の性質の解析の見通しを良くしている。

〔位相空間論によって再構築した微分積分学〕
 一方で、位相空間論によって再構築した微分積分学は、位相空間の数の集合(限定された数)のみに基づいて関数の性質を解析するので、関数の解析の見通しが極めて悪い。手探りで関数を解析するので間違え易いという特徴がある。

 位相空間論によって再構築した微分積分学では、関数の連続性の定義は、〔定義の役割〕における2つの条件のうちの第2の条件のみを満足する定義である。
すなわち、例えば位相空間の数の集合を有理数のみ(数の集合が連結しない)に定めても良く、関数f(x) の定義域Aはその数の集合の部分集合になる。定義域Aの連結性は要求されていない

 そして、εδ論法で定義される極限を使った式(10) によって関数の値域の連続性を定義する。

すなわち、独立変数x及び点aが、位相空間の数の集合(例えば有理数)に属する場合のみを考える。そして、関数f(x) の定義域Aは位相空間の数の集合の部分集合になり、点x及び点aは定義域A内の点である。式(10) は、その点xが限りなく点a近づくときに、f(x) が限りなくf(a) に近づくという関係があることによって関数f(x) の値域の連続性を表している。

「関数 f(x) が、その関数f(x) の定義域Aのすべての x =aの値で位相空間論的な連続性があるとき、 f(x) は位相空間論で定義された連続関数である」

 そして、例えば有理数の位相空間の数の集合に属するx=kの点で(定義域がAである)関数f(x) の連続性の条件が満たされない場合を、その点kを、不連続点と呼んでいる。
位相空間の数の集合(有理数)に属するx=kの点は
①関数f(x) の定義域Aに属さない点kの不連続点であるか、
②定義域A上の点kであって関数f(x) の連続な点であるか、
③定義域A上の点kであって関数f(x) の不連続点であるか、
の3つの場合のどれかである。
(4つ目の場合として、例えば無理数のx=βの点などの、有理数の位相空間の数の集合に属さない点βについては、位相空間の数の集合に属さないので存在しない数とみなす。その点βについては言及しない)

 位相空間論では、関数f(x)=1/x において、点x=0は、関数f(x) の定義域内の点ではないが、位相空間の数の集合(有理数や実数)に属する点なので、不連続点である。
すなわち、あるxの点が不連続である条件は、
(1)先ず、そのxの点が位相空間の数の集合に属する点であること。
(2)次に、そのxの点が値域の連続性の式(10)を成り立たせないこととの、
2つの条件を満足する必要がある。
点x=0は、その2つの条件を満足するので不連続点である。

(点の種別の定義付けの心)
 位相空間論での「不連続点」の厳密な定義は、定められた位相空間の数の集合だけで議論することである。その位相空間の数の集合に属するxの点は、関数f(x) の定義域に属するか、定義域に属さないかの何れかである。
 位相空間論は、変数xの定義域Aに属さない点kで位相空間の数の集合に属する点kによる、関数f(x) の定義域の外の「境界点」kを把握している。
その「境界点」kは連続な点ではないので「不連続点」である。かくして、位相空間論では、定義域Aの外の境界点kを「不連続点」と定義付けることができるし、そう定義すべきである。
 ただし、有理数のみを数の集合とする位相空間においては、以下の図の関数のx=√2 の点は無理数であって、その位相空間の数の集合に属さないということにも注意する必要がある。

この場合は関数f(x) の有理数の「境界点」が(位相空間の数の集合の中に)存在しない。そのため関数の定義域の不連続点が存在しないことに注意すべきである。古典的(基礎的)微分積分学の視点(実数を数の集合とする位相空間)で見ると、この図の関数(厳密に言うと±√2以外の無理数も定義域である関数)は、無理数±√2の境界点で分断された3つの異なる連続関数から成ることがわかる。

(注意)
 位相空間論の説明において、位相空間の数の集合に属する点であって「不連続点」の資格がある点の一部の、数f(x) の定義域に属する点のみを「不連続点」と説明する誤りが流通している。(そういう誤りを基礎的微分積分学(高校数学)に混ぜないでほしい)。そういう誤りに巻き込まれないために、古典的(基礎的)な微分積分学が定義する「不連続点」や、(位相空間論においても)定義域を分断する境界点の「不連続点」は、このブログでは、「連続でない点」と呼ぶことにして数学用語を明確にする。
(補足)
 なお、位相空間論で点の連続性を厳密に議論するためには、関数の定義域に属する「連続でない点」と、関数の定義域に属さない(位相空間の数の集合には属する)「連続でない点」とは、性格が異なる点であるので区別して考えた方が良い。
 特に、連続関数の連続性を、位相空間論では独立変数xの連結性と従属変数yの連結性(位相空間論の連続関数の定義による)に分けて扱った。そのため、関数f(x) が定義されている点の不連続点は、すなわち従属変数yの連結性のみが損なわれた不連続点は、「関数の値域のみの不連続点」と呼ぶのが適切であろう。関数f(x) が定義されない点などの、独立変数xの連結性が損なわれた点の不連続点は、xの連結性が損なわれているだけでなく同時にyの連結性も損なわれている場合(上図のグラフ:実数の位相空間の場合)もあるので、定義付けが難しい。「関数の定義域の不連続点」と呼ぶのが適切であろう。
〔不連続点の定義の誤り〕
 なお、位相空間論で、関数の定義域に属する点のみを「不連続点」と説明している誤りの原因は、位相空間論の「変数xの点」定義のあいまいさが原因である。位相空間論で「連続な点」と「不連続点」を定義付ける対象のxの点は位相空間の数の集合のすべての点を対象にすべきである。(それらの点のうち関数の極限にかかわる境界点は特に、連続性の判定対象にすべき点である)。しかし、それを、関数の定義域Aに属する点のみにしている不徹底さがある。そのため、「不連続点」の資格がある関数f(x) の境界点(下図のx=0の点)が、連続性を判定する対象にされなかった。

その結果、その点が「不連続点」とも「連続な点」とも呼ばれなかった。(位相空間論において「連続な点」とも「不連続点」ともされないで良い点は、位相空間の数の集合に属さない点だけである)
 位相空間論では、極限の概念を、例えば位相空間の数の集合を有理数のみとした場合には、変数xが限りなく近づく先を有理数のみに限定するなどの、極限の宛先を位相空間の数の集合に属する点kのみに限定する。位相空間の数の集合が有理数のみの場合には、数同士の距離が近いか遠いかの関係が有理数同士の間でのみ定義されているからである。しかし、そうだからといって関数f(x) の極限の宛先の点kが関数の定義域A内の数のみに限定されているわけではない。上図の場合では、関数f(x) の極限の宛先がx=0の点も対象になっている。上図の関数f(x) では、そのx=0の点で極限が存在しない。関数の連続性の条件は極限の存在条件よりも厳しいのであるから、x=0の点では、関数の連続性も満足されない。よって、x=0の点は、この関数の不連続点である。
 位相空間論では、例えば、位相空間の数の集合を有理数のみにしている場合に、その有理数の点の数列の極限を位相空間の数の集合以外の新たな数(無理数β)に向ける操作を認めない。(無理数βは有理数ではないのだから)数列の極限の数βが存在しないとみなして無視しその極限を排除する。そういうルールにより、極限の概念の適用を制限し、数学体系を再構築する。しかし、その制限を位相空間に属する数であって関数の定義域Aには属さない数に対して行うのは誤りである。
(厳密に言うと、極限の概念の元になっている数同士の近さの関係を、位相空間の数の集合に属する数同士の間にしか認めないのが位相空間の概念である。もし、近いと思われる新しい数を発見してそれを今までの位相空間の数の集合に加えることは、それまでとは異なる位相空間を設定することになる。なお、近いと思われる新たな数が発見されるならば、それまでの位相空間の数の集合に不備があった、と言える。)

 位相空間論は、そのように既存知識(数とは位相空間の数の集合に属する点=有理数)という思考の枠組みからはみ出さないように極限の操作を制限して構築した数学体系である。(しかし、その制限は、関数f(x) の定義域Aに属さない極限の数kを存在しない数として無視する制限ではない)。
それにより、独立変数xを既に定めている数の集合(有理数)の範囲に限定して抽象化した関数f(x) の値域の連続性の性質を調べている。
 この位相空間の考え方は、有理数の数列の極限が有理数でない場合に新しい数(無理数)が発見されたと考えて数の概念を有理数から実数へ拡張する従来の発想とは全く逆の、(知らない数は存在しないと考える)内向きの発想を基礎にした考え方である。

 位相空間論では、関数f(x) の点aにおける連続性の定義の式(10)の独立変数xの極限の宛先の数aはxの位相空間の数の集合(例えば有理数のみとする)の点に限定する制限を加えた極限を利用して、抽象化された「位相空間論の関数の連続性」(関数の値域の連続性と呼んだ方が良い)を定義する。(ただし、関数f(x) の定義域Aが有理数であるというだけであって、位相空間の数の集合は有理数に限定されずにすべての実数である場合には、式(10a)も式(10b)も成り立つ。そして、独立変数xの極限の宛先の数kは関数f(x) の定義域A(有理数)に属さない数kも対象になる。)しかし、そうして定義した関数f(x) の連続性には以下の難点がある。

 位相空間論での関数の連続性の定義では、以下のグラフであらわされる、有理数を位相空間の数の集合とし、その数の集合全てを定義域とする関数f(x) が、どの有理数の点aでも連続になる。しかしそのグラフが切れ切れである。

(参考)同様な議論が、「嶺幸太郎 著:微分積分学の試練」の130ページにある。
(130ページから引用)「なお,単に関数が連続だからといってグラフが繋がるとは限らない.次の例は、連続関数のグラフが繋がるためには定義域自身が繋がっている必要があることを示唆する:例8.5.2」

上のグラフで、x=√2 の点は、位相空間のxの数の集合(有理数)に属さない。位相空間論では、位相空間のxの数の集合に属さない点 x=√2 は、関数が連続とも、不連続とも評価しない(不連続点とは、位相空間の数の集合に属する点に対して言えることである)。
 上図の、位相空間の数の集合を有理数とした場合に、その数の集合をxの定義域とする関数f(x) は、定義域内(有理数)のどの点においても位相空間論の連続性が満足されている。
 図の通りに関数f(x) はf(x) の値がx=√2 の点でf(x) の値が極端にずれている。しかし、その点は位相空間の数の集合に属さない。この関数f(x) は、有理数の位相空間では連続関数である。位相空間論では、独立変数xの数列の極限値がxの位相空間の数の集合に属さない場合には、その値を数で無いとして無視する。位相空間論では、そのように極限の概念を制限する。有理数の位相空間の数の集合が連結しないことに起因して、この図のようにグラフが切れ切れで繋がっていないことは位相空間論の式(10a)の「連続性の定義」(関数の値域の連続性と呼んだ方が良い)によっては判別できず、この関数を連続関数と呼んでいる(値域に連続性がある関数と呼んだ方が良い)。
〔位相空間論の病根〕
 更に深い病根として、位相空間の数の集合が実数であって、関数f(x) の定義域Aの境界点が存在し、その境界点によって関数f(x) の定義域Aが分断されていることが分かる場合も、あえて、その関数を連続関数と呼んでいる(値域に連続性がある関数と呼んだ方が良い)。
 位相空間論の定義する連続関数のグラフが繋がるためには関数の定義域Aが連結している(〔定義の役割〕の第1の条件を満足する)必要がある。(有理数全体は連結していない)
 位相空間論では、上図の関数f(x) の定義域のxの集合の中の2つの独立したxの集合B(-√2<x<√2)と集合C(√2<x<3√2)を考える。集合BとCが、xの境界点β(x=√2 )をそれらの集合の共通の境界点としている。その境界点βが集合BにもCにも含まれない場合は、独立変数xの定義域の数の集合がその無理数βの点で分断され、連結していない。

---〔点xの定義域が連結しない条件〕---
 点xの定義域の集合は左側の集合Bと右側の集合Cに分割できる。左側の集合Bの点を右側に限りなく近づけた先の境界点βは集合Bにも集合Cにも属さない。また、その境界点βは右側の集合Cの点を左側に限りなく近づけた先の境界点でもある。その境界点βが集合Bにも集合Cにも属さないので、集合Bと集合Cを合わせた集合は連結しない。
(厳密な議論)
 境界点とは、有理数の位相空間の数の集合に属する有理数の点に限られる。数同士の距離が近いか遠いかの関係は、位相空間の数の集合に属する数同士の間でのみ定義されているからである。
 無理数βは有理数では無いので、有理数の位相空間の数の集合に属さず、境界点にならない。(注意:この点は、定義域に属さない場合でも、もし位相空間の数の集合に属するならば「境界点」になる)。そのため、集合Bと集合Cに分割した境目の境界点βは存在しないとみなされる。この場合に位相空間論では、集合Bと集合Cがともに開集合であることを理由にして(境界点βを考えないで)点xの定義域の数の集合が連結しないと認識する。
 古典的(基礎的)微分積分学では、定義域の数の集合が無理数の不連続点βによって分断されていると考えるが、位相空間論の微分積分学では、その「分断の原因」を考えない手探りで、定義域が「連結しない」と認識する。(しかし、ある数の集合に関する真実を記述する場合には、その集合を超える要素が必要になる場合があるので、このようなやり方で数の集合に係わる真実を把握することには危うさがある「間違えやすい」と考える)
---(点xの定義域が連結しない条件おわり)---

 有理数の変数xの定義域の数の集合が境界点βで分断されて連結していない(境界点βが無理数なので定義域に含まれない)ことが、古典的な微分積分学での「関数f(x) が点βで連続でない」に対応する。
 位相空間論には、フェリックス・ハウスドルフの貢献が大きい。
ハウスドルフの書いた集合論の教科書が位相空間論の基礎になっている。ハウスドルフの集合論の教科書を読むと、議論が破綻しているものになっていることに驚く。もちろん、議論の全体としては、(ある意味で?) 破綻をきちんと回避している。
 フェリックス・ハウスドルフの研究成果の位相空間論を簡単に理解できると安易には考えずに、その理論が教えようとする心を学んで欲しい。その心の理解のためには、位相空間論を学ぶ以前に、 古典的(基礎的)微分積分学の基礎になっている連続関数の概念は、区間で連続な関数のことである ことを学んでおいて欲しい。

 古典的(基礎的)微分積分学で、区間で連続な関数が千切れていなかった性質は、位相空間論によって、関数f(x) の独立変数xの定義域の連結性に依存していたことが浮き彫りになった。位相空間論によって、古典的(基礎的)微分積分学で連続関数と定義されていた、区間で連続な関数f(x) の性質が、関数の抽象化された値域の連続性の概念と、関数の独立変数xの定義域の抽象化された連結性の概念と、で構成されていることが浮き彫りにされた。

《位相空間論に対する感想1》
 位相空間の数の集合を実数全体とし、定義域Dを有理数とする関数f(x) の連続性を定義するには、現在の位相空間論での定義では無く、以下の式(10) と式(10b) で定義することを考える。ここで、 定義域Dに属する独立変数xの極限であって、位相空間の数の集合には属するが定義域Dには属さない無理数をβとする。式(10)と式(10b)で関数の連続性を定義すれば、有理数のみを定義域Dとする関数f(X) が無理数の点βで途切れることもない連続性が定義できる。なぜ、そのように関数の連続性を定義して理論を作らないのだろうか?式(10b)が成立していることをいちいち確認するのは面倒な作業である。それが、そうしない理由だと思う。


《位相空間論に対する感想2》
 関数f(x) の定義域を1点の実数aとする場合に、位相空間論の関数の極限の定義が無意味になり、連続性の定義も無意味になる。そのような不備のある定義は修正すべきである。 

《位相空間論に対する感想3》
 関数f(x) の変数xがx=aの点に限りなく近づくとf(x) がある実数bに収束する極限値bが存在するということを、以下のように定義する方が、関数の連続性の定義として適切だと考える。
 十分小さい正の実数εを考え、次に正の実数δを考える。
すなわち、ある実数bに対して、どのように小さい値のεに対しても、
ある値の実数δによって、集合Aの要素のxに対して、
0<|x-a|<δ, x≠a,
を満足するa以外のxが存在し、この式を満足する全てのxで、
|f(x)-b|<ε
となるような実数bが存在するならば(またそうなる場合に限って)、f(x)の極限が存在するものとし、その極限値をbとする。
(位相空間論の極限の定義の修正のおわり)
と定義するならば、定義域が1点のみの関数f(x) にはその1点の極限値bが存在しないことが明確になる。
 また、関数の点aにおける連続性の定義は:
 十分小さい正の実数εを考え、次に正の実数δを考える。
すなわち、ある実数bに対して、どのように小さい値のεに対しても、
ある値の実数δによって、集合Aの要素のxに対して、
0<|x-a|<δ, x≠a,
を満足するa以外のxが存在し、この式を満足する全てのxで、
|f(x)-b|<ε
となるような実数bが存在し、
その実数bがf(a) に等しいこと。
b=f(a)
そうなるならば(またそうなる場合に限って)、f(x) が点aで連続であるものとする。
(位相空間論の連続の定義の修正のおわり)
と定義するならば、関数の定義域Aが1点の1つの孤立点のみの関数がその点で連続でないことが明確になる。
なぜそのように定義しないのかが疑問である。

《位相空間論に対する感想4》
 古典的(基礎的)微分積分学の極限の定義や連続性の定義を、孤立点を含む定義域Aやあらゆる形の定義域Aに対して使える生きた要素にして新しい数学分野(位相空間論)を構築しようとする開拓者は、以下のように考えたのではないかと推測する。
「従来の古典的(基礎的)微分積分学の極限の定義や連続性の定義を忠実に真似した道具を使うよりは、いっそのこと、位相空間論で使いやすい都合の良い形にそれらの定義を作り変えてしまって、それらを土台にして理論を作った方が良い。(例えば「孤立点」の存在が各種の定義を無意味にすることがないように、「孤立点」はあらかじめ「連続な点」であると定義し、連続性の定義の後に、孤立点の極限値=f(a) であると定義しよう。そのような関数の連続性の定義によって、「孤立点」の極限値のこれ以外の定義を排除しよう。そうしておいて、それ以外の場合における関数の極限値を定義しよう)」
そのようにして、点a∊Aでの関数f(x) の連続性の定義(孤立点では、関数の極限の定義よりも優先する定義)を、イプシロンデルタ論法と論理式で定義すると以下の式になる。
∀ε>0,∃δ>0,∀x∊A,{|x-a|<δ ⇒ |f(x)-f(a)|<ε}
(ただし、定義域Aでの孤立点の連続性の定義を極限の定義より優先させるが、定義域Aに属さない境界点aでの関数f(x) の極限も定義する。)

《関数の連続性の条件》
 関数がある点aで連続であるとは、第1の条件として、関数の定義域が点aと、aの近傍で連結していることである。第2の条件として、点aで関数f(x) の値域が連結していることである。その2つの条件を満足しない点aは「連続でない点」である。

 第1の条件は、変数xの点aが関数f(x) の定義域に含まれることと、x=aの近傍の定義域は実数が連結したxの微小区間であることとを要請する(連結している数の集合は実数の区間だけである)。
 第2の条件は、式(10)であらわすように、点aに限りなく近づく関数f(x) の極限の値がf(a) であることを要請する。

 古典的(基礎的)微分積分学は、位相空間の数の集合を実数全体にした上で、実数の区間を定義域とする関数f(x) の微分積分学である。

リンク:
連続性公理と実数を定義する3つの方法 (初学者向けの話)
関数の極限の定義
関数の極限の厳密な定義
ε-δ論法~関数の極限と連続の定義~
関数の極限の再定義(ε-δ 入門5)
関数の極限と連続性
微分積分の礎の関数の連続性と現代数学の位相空間論
第3章 位相空間の基礎のキソ
高校数学の目次


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