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▽置換積分法
▽被積分関数を0で割り算して良いのか?
▽広義積分
〇変換された被積分関数の性質が変わる
▽積分できる区間の範囲に注意すること
▽広義積分を前提にした置換積分の計算事例
▽広義積分を利用する置換積分の事例2
高校生用の微分積分の教科書や参考書は不正確で、勉強用に不適切だと思います。高校2年生が微分積分を勉強するのに適切な参考書は、大学1年生向けの参考書:「やさしく学べる微分積分」(石村園子) ¥2000円 が良いと思います。
【置換積分法】
不定積分∫f(x)dx を求めるときに,積分変数を変換して積分する事を置換積分法といいます。
(広義積分に注意)置換積分では被積分関数を変形する計算をします。被積分関数を変形する際に広義積分を利用する計算が頻繁に行なわれています。広義積分は大学で学ぶ概念であり高校数学では説明されていません。しかし、積分の式の変形計算を理解するためには、避けて通れない概念です。積分の計算処理を理解するために、広義積分についても学んでおく必要があります。
(置換積分法の第1の定理)
関数f(x)が、変数xのある連結した区間内の全ての実数で定義された、1つながりに連続な関数である場合、
変数xを、微分可能な関数g(t)で、x=g(t)という式で変数tに変換すると、
が成り立つ。
(置換積分の第1の定理おわり)
(置換積分法の第2の定理=逆向きの定理)
置換積分法には、以下の、逆向きの置換積分の定理があります。
「生き抜くための高校数学」(芳沢光雄) の417ページに逆向きの置換積分の使い方の説明があります。
xで微分可能な関数s(x)でs=s(x)とした変数sを使った置換積分によって、以下のように変数xを変数sに変換して積分できます。
この、置換積分の第2の定理では、dx部分をdsに置き換えるのと同時に、f(x)部分をp(x)に置き換える際にf(x)をs'(x)で割り算してp(x)にしている。
あるx=aの点でs'(a)=0となる場合、そのx=aの点で、式を0で割り算する計算をしているので、これは、式の同値変形では無い。
しかし、被積分関数の分母にs'(a)=0という関数があっても、広義積分によって、積分した結果の関数が、x=aで極限値を持てば、その極限値をx=aでの積分の値であると定義できる。
そのため、s'(a)=0となる関数が分母に来て、積分の定義域からx=aとなる点が除外されても、広義積分によって、x=aでの関数の極限値が存在すれば、x=aの点を定義域に復活できる。また、その極限値が存在しないならば、x=aとなる点で関数が定義され無いことがそのままで正しいのです。そのため、s'(a)=0となる関数s'(x)が分母に来ても良いのです。
(置換積分の第2の定理おわり)
《被積分関数を0で割り算して良いのか?》
以下の事例を考えてもう少し詳しくこの問題を考える。
《第1の事例》
置換積分の第2の定理ではs'(x)で割り算していることが顕著な事例として、「被積分関数p(x)がx=x0において1/0という計算をする、以下の例の様な置換積分の事例があります。以下の式の最後の式は、広義積分によって、積分範囲のxの上限が0に近づくいた積分の値の極限値を、x=0に至る積分範囲での積分と定義して解くことができます。
上の式の最後の式は、広義積分によって解くことはできますが、広義積分は大学生になって初めて学ぶことです。そのため、高校生は、広義積分をあまり良く知らないので、「x=0では被積分関数が定義されていないので、x=0までの定積分はできない」と答えるまでで留めれば良いと思います。
この事例から、置換積分の第2の定理ではp(x)=f(x)/s'(x)という計算をしている事が明らかになりました。
同様に、この事例ほど顕著でない場合の、「積分記号の中で、f(x)を、x=x0 で0になる式s'(x)で割り切った式p(x)=h(t)に置き換える場合」も、広義積分によって、そうする計算が無条件で許されています。そのため、逆向きの置換積分の公式を、s'(x)≠0という条件を付けずに使っています。
《第2の置換積分の計算では、なぜ逆向きの置換積分によって、 あたかも0を0で割り切るような式の変形をして良いのか?》
積分の計算で、0を0で割り切る形をした式の変形をして積分する事が許される根拠は広義積分です。
0を0で割り切る式では、分母が0になる点では被積分関数が定義されない。その点をx=x0 とすると、
その点を除いた x0 の左右の連結区間では、被積分関数p(x)=h(t)は、分母と分子をs'(x)で割り切った式である。
そのx=x0の左右の連結区間でp(x)=h(t)を不定積分する。
そして、広義積分によって、その連結区間の境界を x0 に近づけた場合の被積分関数p(x)=h(t)の積分の極限値を、点x0での積分の値であると定義する。
そうして、x=x0の左右の連結区間における2つの不定積分を1つながりに連続な関数に連結する広義積分を行う。
すなわち、s'(x)が0となるx=x0で定義されない関数f(x)/s'(x)=p(x)を、x=x0での値をp(x0)と定義してしまって、x0 をまたいで不定積分できる。
このように、広義積分によって、
「積分記号の中の被積分関数が、x=x0 で0になる式s'(x)で割り算して割り切ってしまって式p(x)にした被積分関数は、x=x0の点を含む、その点をまたいだ区間で積分できる。」
法則が成り立っている。
この法則は、この関数s'(x)に限られず、
「積分記号の中の被積分関数が、x=x0 で0になる式(x-x0)の項を分母と分子に持ち、それを約分して式p(x)の形にできる場合は(x=x0でp(x)が定義されている場合は)、その積分は、約分した形の被積分関数p(x)を、x=x0の点をまたいだ区間で積分して良い。」
これが、積分記号の中の被積分関数では、無条件で、0を0で割り算した計算で式を変形して良い理由です。
《広義積分》
上のグラフは、不連続な関数f(x)のグラフですが、無理やり積分して積分可能なグラフの例を示しています。
上の図の関数f(x)がリーマン積分可能なのは、変数xの全区間の部分区間毎です。
(1)第1の部分区間:
-∞<x<A
(2)第2の部分区間:
A’≦x≦C
(点Aで関数は不連続であり、また、極限も存在しませんが、
-∞<x≦C
まで合わせた区間でも、関数の区間を細分した各小区間での関数の値の和が一通りに定まるので、その連続で無い点Aを範囲内に持つ区間でもリーマン積分可能です。)
(点Bでは、関数が無限大になるので積分ができません)
(3)第3の部分:
D≦x<+∞
(注意1)
リーマン積分では、点A’から点Dまで、関数f(x)の値が無限に大きくなる点Bを範囲内に持つ区間で関数f(x)を積分することができません。
その理由は:
無限に関数値が大きくなる点Bを積分の範囲内に持つと、その点Bを中に持つxの小区間で、
細分の幅Δxがどれだけ小さな値であっても、
(1/Δx)≪f(ξ)
となる関数値f(ξ)を選ぶことができるからです。
そういう関数値f(ξ)を選んでしまうと、関数値の総和が定まらなくなってしまうからです。
(広義積分によって、「積分可能性」の定義を拡大する)
しかし、上図の関数f(x)は、以下の2つの条件を満足するならば、以下のように広義積分することが可能です。
(条件1)
B点の左側の区間で、X=A’からx=Cまでの積分の値の、Cを無限にBに近付けた極限の有限の値を持つものとする。
(条件2)
また、B点の右側の区間で、X=DからX=+∞までの積分の値の、Dを無限にBに近付けた極限の有限の値を持つものとする。
「そのように左側の区間のC点及び右側の区間のD点をB点に近付けた極限での積分の値が存在するならば、
B点の左側の区間の積分値と、B点の右側の区間の積分値の和を、点Bを範囲内に持つxの区間での積分とする(広義積分)」
と言うように、関数f(x)の「積分可能性」の定義を拡大することができます。
また、グラフが積分可能な範囲は、変数を置き換える置換積分によって、変数を変え、被積分関数の形を変えると、
積分可能な範囲が変わることがあります。
例えば、以下の図の、
関数f(x)≡1/√(-x)
は、xが-1から0未満の数までの範囲で定積分可能ですが、
xが-1から0までの範囲では、x=0に近づくと被積分関数の値が無限に大きくなるので、定積分できません。(ただし、これは広義積分によって定積分が可能になります。)
図:被積分関数f(x)のグラフ
しかし、
新たな変数t≡-√(-x)
を使って、変数tで積分する式に変換する(置換積分)と、
以下の図の様に、被積分関数が定数2に変換されます。
そのため、その場合は、
xがー1から0までの範囲に対応する、
tが-1から0までの範囲で、
「積分可能」に変わります。以下で、その理由を詳しく説明します。
この被積分関数の計算では、先ず、置換積分によって、t=0の場合には定義されない関数 t/t を含む被積分関数ができます。
関数t/tは、t=0では定義されていないので、この積分は、t=0を積分範囲に含めることはできません。
しかし、次に、t/tの式を約分して1にして、t=0で定義された関数のみを残しています。t/tの約分の結果、被積分関数はt=0でも定義されている関数に変わります。
その関数を積分する際に、被積分関数が定義されていなかった点t=0の点を、広義積分によって積分可能な領域に加える処理を行っています。
被積分関数が定義されているt=0の点を積分可能な領域に加えるのは当然のように見えます。しかし、t=0の点を積分可能な領域に加えるのは、背後にある広義積分により行われています。
また、この関数f(x)に対して以下の図のグラフの不定積分F(x)を考えてみます。
(不定積分の求め方)
この不定積分の求め方は、上図の被積分関数f(x)の部分毎に原始関数=不定積分F(x)を求め、それらの不定積分を、連続になるようにつなげば、以下のグラフのように、総体の不定積分が出来上がります。
定義域x<0の被積分関数f(x)の原始関数のF1(x)=-2 と、
定義域x>0の被積分関数f(x)の原始関数のF2(x)=2 と
を独立にY方向に平行移動させて、x=0で連続につないで不定積分を求めます。
この不定積分F(x)は、不定積分が、被積分関数f(x)の定義域のx<0だけで定義されることになるのが気持ち悪かったので、被積分関数f(x)のx>0の範囲を勝手に定義して、その全体の不定積分を作りました。被積分関数f(x)の部分毎に作った原始関数を、連続につないで総体の不定積分を作りました。
このグラフの不定積分F(x)を微分してみます。
この不定積分F(x)は、1つながりの連続関数であって、
また、x=0以外の点で微分するとf(x)になります。
この不定積分F(x)が1つながりに連続な変数xの範囲では、関数f(x)が積分可能です。
(その理由は、以下で、藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」を解説して説明します)
そして、関数f(x)の定積分は、
不定積分F(x)が1つながりに連続な範囲の:
a≦x≦b
の区間では定積分でき、その定積分の値は:
F(b)-F(a)
で計算しても良いです。
関数f(x)が積分可能な条件は、f(x)の不定積分F(x)が、f(x)の積分区間において1つながりに連続である事です。
このように、広義積分を利用することで、積分可能の条件が広くされました。
----(補足)------
また、-1≦x<0で定義された
関数f(x)≡1/√(-x)
の定積分を計算する場合に、上図の不定積分F(x)の他に以下の図の様に不定積分F(x)と、それを微分した関数f(x)を考えて、それらの定義域を、元の関数f(x)の定義域にまで縮小して考えても同じことになります。
つまり、被積分関数f(x)のx>0の範囲に接続する勝手な関数を別の関数に変えて、その全体の不定積分を作りました。関数f(x)の全体の定義域の部分の定義域毎の原始関数を、連続になるようにつないで総体の不定積分を作りました。
この関数F(x)は、x=0で連続な1つながりな連続関数です。
この関数F(x)を微分すると以下の関数f(x)になる。
そのため、F(x)は、そのf(x)の不定積分です。
この不定積分F(x)の定義域を、
x≦0
にすれば良い。
ここで、x<0で定義される被積分関数f(x)に、x>0で定義される勝手な被積分関数f(x)を加えて、被積分関数f(x)を、その定義域を広げた異なる関数に変えて、その全体の不定積分F(x)を作りました。そして、最終的に、その不定積分の定義域は削除するので、X>0の定義域の不定積分は、気休めに加えたものにすぎません。
ただし、いずれの作り方で作るにしても、不定積分F(x)の定義域はx≦0にでき、被積分関数f(x)の定義域はx<0ですので、不定積分F(x)の定義域の方が被積分関数f(x)の定義域よりも広く作れました。
----補足おわり--------
これらの事については、数学者の藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」が、
連結区間a≦x≦b内で定義される関数f(x)が、その連結区間内に有限個の連続で無い点を持つ関数f(x)である場合に、
その区間a≦x≦bでのf(x)の積分を広義積分と呼び、
関数f(x)の不定積分F(x)が求められて、
関数f(x)の積分範囲
a≦x≦b
内で不定積分F(x)が(端点では片側連続である)1つながりに連続な関数ならば、
(その積分範囲内にF(x)が微分不可能な点、それは被積分関数f(x)が連続で無い点、があっても良い)、
(1)それは、不連続関数f(x)が積分可能である証拠であり、
(2)以下の計算で定積分を計算して良い事が書いてあります。
F(b)-F(a)
よって、
不連続な関数f(x)に対して、
その定義域を、関数f(x)の連続で無い点を除外した連結区間に分割し、
それら各連結区間毎に原始関数を計算し、
得られた各原始関数を連続につないで不定積分を構成します。
その1つながりに連続な不定積分を使って上の式で定積分を計算して良いのです。
また、小寺平治・著「はじめての微分積分15講」(2,200円)の103ページにも、このことが書いてあります。
小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の182ページにも、このことが書いてあります。
【積分できる区間の範囲に注意すること】
(積分区間を分割して、それぞれで積分する)
区間[a,b]に限ってx=g(t)で定義される変数 t で置換積分して不定積分を求める。その区間[a,b]に隣接する区間[c,d]でx=h(u)で定義される変数 u で置換積分して不定積分を求める。それらの不定積分の関数同士が、閉区間が隣接する境界の極限で1つながりに連続に連結できるかを考える。
すなわち、不定積分の部分として、確実に置換積分可能に範囲を狭めた連結区間[a,b]や連結区間[c,d]での不定積分の部分を複数求め、その関数を連続につないで1つながりに連続した不定積分を作るという広義積分を行なえば良いのです。
【定積分する積分区間を間違えないコツ】
後で説明する、置換積分を媒介する関数g(t)の条件を緩められる事の説明の中の事例のように、被積分関数が不連続であっても積分できることがある。
そのため、被積分関数が連続であるか否かという、積分可能の判定条件は、広義積分を利用する積分では、便宜的な十分条件であって、積分可能のための必要条件ではありません。
この、
「積分結果の不定積分の関数F(x)が積分区間[a,b]で1つながりに連続する」
という条件が、
広義積分の公式においても、積分値が有限である区間[a,b]を定めるための必要十分条件であると考えます。
(積分できない変数xの範囲に気をつける)
下図の関数f(x)は、x=0の点では関数f(x)の値が-∞になり、関数が定義されていないで、関数が不連続です。そして、この関数では、x=0を含んだ範囲で積分することはできません。
上図の関数を、上図の様にx=0を含む区間で定積分したら、マイナスの無限大になるので、積分が不可能です。
そのため、上図の関数を、例えば-1から1までの区間で積分する事も不可能です。
そのため、この関数f(x)の不定積分の変数xの定義域の閉区間は、x=0を含む事ができません。
これを無視して、関数f(x)の不定積分F(x)の変数の定義域にx=0を入れてしまうと以下の間違いをおかします。
F(x)=1/xをxで微分したら
になります。
そして、変数xで積分する区間内に、f(x)が発散する点のx=0を含めた、xが-1から1までの区間で、
関数f(x)の定積分を、F(x)を使って、 F(1)-F(-1)=1-(-1)=2
という 計算で求めると、明らかに間違えます。
上の図で明らかな様に、-1から1までの範囲でのf(x)の積分はf(x)のグラフの面積にならなければなりません。そのため、定積分の答えは、マイナス無限大にならなければなりません。そのため、 F(1)-F(-1)=2は、明らかに間違っています。
なお、関数が不定積分できた積分変数xの積分区間の判定方法は:
不定積分ができた積分変数xの範囲は、
不定積分の関数が、1つながりに連続な連結区間です。
不定積分が1つながりに連結する積分変数xの区間を1単位にし、
その1単位毎の関数は、異なる不定積分の関数とします。
上の例:
(第1の積分)
(第2の積分)
では、
x<0, での t+C という不定積分と、
x>0, での t+C という不定積分とは、
異なる関数だと言えます。
(不定積分を表す関数の変数tの定義域が異なれば異なる関数だからです)
【広義積分を前提にした置換積分の計算事例1】
以下の不定積分を考えます。
(第1の解)
この不定積分は以下のように解けます。すなわち、先ず、元の式を以下の式に変形します。
ここで、以下の式で変数tを定義します。
以下のように積分の変数xを変数tに置き換えた積分に変換します。
(第1の解おわり)
(第2の解)
この解は、以下のように、広義積分の概念を用いて解けます。
先ず、元の式を以下のように変形します。
(補足)ここで、被積分関数の分母と分子に、x=0で値が0になる関数を掛け算しています。こうすると、被積分関数が、x=0で定義されていない関数に変わってしまいます。これは、式の同値変形では無い。(大学で学ぶ)広義積分によって、関数が定義されないx=0の点も、後で、積分可能な変数の領域に加える処理が行えます。そのため、0/0となる関数を掛け算して被積分関数の定義域を変えてしまう処理をしても良いのです。後に、広義積分がそのx=0の点を積分可能な領域に加えることができるからです。
次に、この積分を以下の式に変形します。
ここで、以下の式で変数tを定義します。
以下のように積分の変数xを変数tに置き換えた積分に変換します。
(第2の解おわり)
ここで、第2の解が得られたのですが、その解の、積分定数C以外の部分の以下の関数を考えます。
この関数は以下に示すように、x=0では定義されていないと分かります。第1の解が、x=0でも定義されているにもかかわらずです。
この関数は、以下の式に変形できます。
この関数のx=0における極限は、以下の式になります。
広義積分によって、積分結果の関数が定義されていないx=0における関数の値は、その関数のx→0における極限値であるものと解釈します。
そのため、この第2の解は、x=0の値においても、第1の解と等しい解であると解釈します。
広義積分によって、そのように積分結果の解を解釈できるので、この積分結果を以下の様にコメントを入れた上で変形するならば減点されないと考えます。
この関数のx→0の極限値をx=0での値とする:
(注意)しかし、この計算を、積分結果以外の式で行ない、x=0の場合に0を0で割る約分によって式を変形すれば、減点されてしまいます。広義積分を適用することで通用した上の式の計算は、式の同値変形では無いので、積分とは無関係な式の計算では通用しないのです。しかし、上の式の積分結果の式を変形する処理で、分母と分子をsin(x/2)で割り切って約分する、同値変形では無い式の変形をする際に、
「この関数のx→~の極限値をx=~での値とする:」
と一言書いてから式を約分すれば良い。そうすれば、このように同値変形では無い計算をすること、更に、関数の定義域にx=0の点も加えている処理が減点されないと思います。
【減点されない式変形】積分記号の中ならば0を0で割る式が自由に使えるので、積分記号の外に出さずに式を変形する。これならば減点されない。
(計算おわり)
【広義積分を利用する置換積分の事例2】
この積分を、以下の変数変換をする置換積分法で解く場合を考えます。
(注意)この変数tは、x=π/2の場合に無限大になってしまうので、この計算では、x=π/2の点を含む区間では積分ができない事に注意。すなわち、変数xが、
の(1つながりに連結する区間の)範囲内のみで、置換積分が可能であり、その区間の外の値の変数xでは置換積分ができないのです。
この関数のcosx→0となるxでの極限値をそのxでの値F(x)とする:
ここで、
cosx=0, 例えばx=π/2の場合の積分結果を求めるために、
以下の(関数の極限値を求める)広義積分を行う。
この様に広義積分を行うことで、変数tを利用した積分ではx=π/2では積分結果が定義されていなかった積分結果も定義でき、変数tを利用した積分が不十分だった積分結果を補うことができた。
(計算おわり)
【減点されない式変形】積分記号の中ならば0を0で割る式が自由に使えるので、積分記号の外に出さずに式を変形する。これならば減点されない。
(計算おわり)
(注意1)
なお、この積分は、広義積分が必要になるように、わざと難しい解き方をしました。
《事例2の別解》
事例2は、このように難しく解く必要は無く、以下のように解ける事を注意しておきます。
事例2の積分は、
変数2x=(π/2)−2y,
という変数変換をして、
1/sin(2y)のyによる積分に変換した上で、
tan(y)=t
とする変数tを導入するのが普通の解き方です。
(参考例がここをクリックした先にあります)
ただし、そのようにする場合の変数tの導入でも、
y=π/2を含む区間では積分できません。
ただし、
被積分関数の1/sin(2y)は、元々
y=π/2の点で、分母が0になって、関数値が無限大になるので、
y=π/2の点を含む区間では積分できない関数でした。
そのため、ここで、この変数tを導入しても、新たに積分区間を制約することにもならないので、この変数tの導入方法は良い解き方です。
変数yをこの変数tに変換して解く積分の場合は、後で、広義積分する必要も生じないので、良い解き方です。
《事例2のその他の別解》
また、以上の別解とは異なる変数の変換をして、以下のように置換積分をしても、広義積分する必要も生じない解が得られます。
(計算おわり)
この積分結果の式は、「三角関数の分数式の変換公式」の公式4の式6を参照すると、先の計算の解の式と同じ式になることがわかる。
リンク:
高校数学の目次
高校2年生も覚えるべき置換積分法
▽置換積分法
▽被積分関数を0で割り算して良いのか?
▽広義積分
〇変換された被積分関数の性質が変わる
▽積分できる区間の範囲に注意すること
▽広義積分を前提にした置換積分の計算事例
▽広義積分を利用する置換積分の事例2
高校生用の微分積分の教科書や参考書は不正確で、勉強用に不適切だと思います。高校2年生が微分積分を勉強するのに適切な参考書は、大学1年生向けの参考書:「やさしく学べる微分積分」(石村園子) ¥2000円 が良いと思います。
【置換積分法】
不定積分∫f(x)dx を求めるときに,積分変数を変換して積分する事を置換積分法といいます。
(広義積分に注意)置換積分では被積分関数を変形する計算をします。被積分関数を変形する際に広義積分を利用する計算が頻繁に行なわれています。広義積分は大学で学ぶ概念であり高校数学では説明されていません。しかし、積分の式の変形計算を理解するためには、避けて通れない概念です。積分の計算処理を理解するために、広義積分についても学んでおく必要があります。
(置換積分法の第1の定理)
関数f(x)が、変数xのある連結した区間内の全ての実数で定義された、1つながりに連続な関数である場合、
変数xを、微分可能な関数g(t)で、x=g(t)という式で変数tに変換すると、
が成り立つ。
(置換積分の第1の定理おわり)
(置換積分法の第2の定理=逆向きの定理)
置換積分法には、以下の、逆向きの置換積分の定理があります。
「生き抜くための高校数学」(芳沢光雄) の417ページに逆向きの置換積分の使い方の説明があります。
xで微分可能な関数s(x)でs=s(x)とした変数sを使った置換積分によって、以下のように変数xを変数sに変換して積分できます。
この、置換積分の第2の定理では、dx部分をdsに置き換えるのと同時に、f(x)部分をp(x)に置き換える際にf(x)をs'(x)で割り算してp(x)にしている。
あるx=aの点でs'(a)=0となる場合、そのx=aの点で、式を0で割り算する計算をしているので、これは、式の同値変形では無い。
しかし、被積分関数の分母にs'(a)=0という関数があっても、広義積分によって、積分した結果の関数が、x=aで極限値を持てば、その極限値をx=aでの積分の値であると定義できる。
そのため、s'(a)=0となる関数が分母に来て、積分の定義域からx=aとなる点が除外されても、広義積分によって、x=aでの関数の極限値が存在すれば、x=aの点を定義域に復活できる。また、その極限値が存在しないならば、x=aとなる点で関数が定義され無いことがそのままで正しいのです。そのため、s'(a)=0となる関数s'(x)が分母に来ても良いのです。
(置換積分の第2の定理おわり)
《被積分関数を0で割り算して良いのか?》
以下の事例を考えてもう少し詳しくこの問題を考える。
《第1の事例》
置換積分の第2の定理ではs'(x)で割り算していることが顕著な事例として、「被積分関数p(x)がx=x0において1/0という計算をする、以下の例の様な置換積分の事例があります。以下の式の最後の式は、広義積分によって、積分範囲のxの上限が0に近づくいた積分の値の極限値を、x=0に至る積分範囲での積分と定義して解くことができます。
上の式の最後の式は、広義積分によって解くことはできますが、広義積分は大学生になって初めて学ぶことです。そのため、高校生は、広義積分をあまり良く知らないので、「x=0では被積分関数が定義されていないので、x=0までの定積分はできない」と答えるまでで留めれば良いと思います。
この事例から、置換積分の第2の定理ではp(x)=f(x)/s'(x)という計算をしている事が明らかになりました。
同様に、この事例ほど顕著でない場合の、「積分記号の中で、f(x)を、x=x0 で0になる式s'(x)で割り切った式p(x)=h(t)に置き換える場合」も、広義積分によって、そうする計算が無条件で許されています。そのため、逆向きの置換積分の公式を、s'(x)≠0という条件を付けずに使っています。
《第2の置換積分の計算では、なぜ逆向きの置換積分によって、 あたかも0を0で割り切るような式の変形をして良いのか?》
積分の計算で、0を0で割り切る形をした式の変形をして積分する事が許される根拠は広義積分です。
0を0で割り切る式では、分母が0になる点では被積分関数が定義されない。その点をx=x0 とすると、
その点を除いた x0 の左右の連結区間では、被積分関数p(x)=h(t)は、分母と分子をs'(x)で割り切った式である。
そのx=x0の左右の連結区間でp(x)=h(t)を不定積分する。
そして、広義積分によって、その連結区間の境界を x0 に近づけた場合の被積分関数p(x)=h(t)の積分の極限値を、点x0での積分の値であると定義する。
そうして、x=x0の左右の連結区間における2つの不定積分を1つながりに連続な関数に連結する広義積分を行う。
すなわち、s'(x)が0となるx=x0で定義されない関数f(x)/s'(x)=p(x)を、x=x0での値をp(x0)と定義してしまって、x0 をまたいで不定積分できる。
このように、広義積分によって、
「積分記号の中の被積分関数が、x=x0 で0になる式s'(x)で割り算して割り切ってしまって式p(x)にした被積分関数は、x=x0の点を含む、その点をまたいだ区間で積分できる。」
法則が成り立っている。
この法則は、この関数s'(x)に限られず、
「積分記号の中の被積分関数が、x=x0 で0になる式(x-x0)の項を分母と分子に持ち、それを約分して式p(x)の形にできる場合は(x=x0でp(x)が定義されている場合は)、その積分は、約分した形の被積分関数p(x)を、x=x0の点をまたいだ区間で積分して良い。」
これが、積分記号の中の被積分関数では、無条件で、0を0で割り算した計算で式を変形して良い理由です。
《広義積分》
上のグラフは、不連続な関数f(x)のグラフですが、無理やり積分して積分可能なグラフの例を示しています。
上の図の関数f(x)がリーマン積分可能なのは、変数xの全区間の部分区間毎です。
(1)第1の部分区間:
-∞<x<A
(2)第2の部分区間:
A’≦x≦C
(点Aで関数は不連続であり、また、極限も存在しませんが、
-∞<x≦C
まで合わせた区間でも、関数の区間を細分した各小区間での関数の値の和が一通りに定まるので、その連続で無い点Aを範囲内に持つ区間でもリーマン積分可能です。)
(点Bでは、関数が無限大になるので積分ができません)
(3)第3の部分:
D≦x<+∞
(注意1)
リーマン積分では、点A’から点Dまで、関数f(x)の値が無限に大きくなる点Bを範囲内に持つ区間で関数f(x)を積分することができません。
その理由は:
無限に関数値が大きくなる点Bを積分の範囲内に持つと、その点Bを中に持つxの小区間で、
細分の幅Δxがどれだけ小さな値であっても、
(1/Δx)≪f(ξ)
となる関数値f(ξ)を選ぶことができるからです。
そういう関数値f(ξ)を選んでしまうと、関数値の総和が定まらなくなってしまうからです。
(広義積分によって、「積分可能性」の定義を拡大する)
しかし、上図の関数f(x)は、以下の2つの条件を満足するならば、以下のように広義積分することが可能です。
(条件1)
B点の左側の区間で、X=A’からx=Cまでの積分の値の、Cを無限にBに近付けた極限の有限の値を持つものとする。
(条件2)
また、B点の右側の区間で、X=DからX=+∞までの積分の値の、Dを無限にBに近付けた極限の有限の値を持つものとする。
「そのように左側の区間のC点及び右側の区間のD点をB点に近付けた極限での積分の値が存在するならば、
B点の左側の区間の積分値と、B点の右側の区間の積分値の和を、点Bを範囲内に持つxの区間での積分とする(広義積分)」
と言うように、関数f(x)の「積分可能性」の定義を拡大することができます。
また、グラフが積分可能な範囲は、変数を置き換える置換積分によって、変数を変え、被積分関数の形を変えると、
積分可能な範囲が変わることがあります。
例えば、以下の図の、
関数f(x)≡1/√(-x)
は、xが-1から0未満の数までの範囲で定積分可能ですが、
xが-1から0までの範囲では、x=0に近づくと被積分関数の値が無限に大きくなるので、定積分できません。(ただし、これは広義積分によって定積分が可能になります。)
図:被積分関数f(x)のグラフ
しかし、
新たな変数t≡-√(-x)
を使って、変数tで積分する式に変換する(置換積分)と、
以下の図の様に、被積分関数が定数2に変換されます。
そのため、その場合は、
xがー1から0までの範囲に対応する、
tが-1から0までの範囲で、
「積分可能」に変わります。以下で、その理由を詳しく説明します。
この被積分関数の計算では、先ず、置換積分によって、t=0の場合には定義されない関数 t/t を含む被積分関数ができます。
関数t/tは、t=0では定義されていないので、この積分は、t=0を積分範囲に含めることはできません。
しかし、次に、t/tの式を約分して1にして、t=0で定義された関数のみを残しています。t/tの約分の結果、被積分関数はt=0でも定義されている関数に変わります。
その関数を積分する際に、被積分関数が定義されていなかった点t=0の点を、広義積分によって積分可能な領域に加える処理を行っています。
被積分関数が定義されているt=0の点を積分可能な領域に加えるのは当然のように見えます。しかし、t=0の点を積分可能な領域に加えるのは、背後にある広義積分により行われています。
また、この関数f(x)に対して以下の図のグラフの不定積分F(x)を考えてみます。
(不定積分の求め方)
この不定積分の求め方は、上図の被積分関数f(x)の部分毎に原始関数=不定積分F(x)を求め、それらの不定積分を、連続になるようにつなげば、以下のグラフのように、総体の不定積分が出来上がります。
定義域x<0の被積分関数f(x)の原始関数のF1(x)=-2 と、
定義域x>0の被積分関数f(x)の原始関数のF2(x)=2 と
を独立にY方向に平行移動させて、x=0で連続につないで不定積分を求めます。
この不定積分F(x)は、不定積分が、被積分関数f(x)の定義域のx<0だけで定義されることになるのが気持ち悪かったので、被積分関数f(x)のx>0の範囲を勝手に定義して、その全体の不定積分を作りました。被積分関数f(x)の部分毎に作った原始関数を、連続につないで総体の不定積分を作りました。
このグラフの不定積分F(x)を微分してみます。
この不定積分F(x)は、1つながりの連続関数であって、
また、x=0以外の点で微分するとf(x)になります。
この不定積分F(x)が1つながりに連続な変数xの範囲では、関数f(x)が積分可能です。
(その理由は、以下で、藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」を解説して説明します)
そして、関数f(x)の定積分は、
不定積分F(x)が1つながりに連続な範囲の:
a≦x≦b
の区間では定積分でき、その定積分の値は:
F(b)-F(a)
で計算しても良いです。
関数f(x)が積分可能な条件は、f(x)の不定積分F(x)が、f(x)の積分区間において1つながりに連続である事です。
このように、広義積分を利用することで、積分可能の条件が広くされました。
----(補足)------
また、-1≦x<0で定義された
関数f(x)≡1/√(-x)
の定積分を計算する場合に、上図の不定積分F(x)の他に以下の図の様に不定積分F(x)と、それを微分した関数f(x)を考えて、それらの定義域を、元の関数f(x)の定義域にまで縮小して考えても同じことになります。
つまり、被積分関数f(x)のx>0の範囲に接続する勝手な関数を別の関数に変えて、その全体の不定積分を作りました。関数f(x)の全体の定義域の部分の定義域毎の原始関数を、連続になるようにつないで総体の不定積分を作りました。
この関数F(x)は、x=0で連続な1つながりな連続関数です。
この関数F(x)を微分すると以下の関数f(x)になる。
そのため、F(x)は、そのf(x)の不定積分です。
この不定積分F(x)の定義域を、
x≦0
にすれば良い。
ここで、x<0で定義される被積分関数f(x)に、x>0で定義される勝手な被積分関数f(x)を加えて、被積分関数f(x)を、その定義域を広げた異なる関数に変えて、その全体の不定積分F(x)を作りました。そして、最終的に、その不定積分の定義域は削除するので、X>0の定義域の不定積分は、気休めに加えたものにすぎません。
ただし、いずれの作り方で作るにしても、不定積分F(x)の定義域はx≦0にでき、被積分関数f(x)の定義域はx<0ですので、不定積分F(x)の定義域の方が被積分関数f(x)の定義域よりも広く作れました。
----補足おわり--------
これらの事については、数学者の藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」が、
連結区間a≦x≦b内で定義される関数f(x)が、その連結区間内に有限個の連続で無い点を持つ関数f(x)である場合に、
その区間a≦x≦bでのf(x)の積分を広義積分と呼び、
関数f(x)の不定積分F(x)が求められて、
関数f(x)の積分範囲
a≦x≦b
内で不定積分F(x)が(端点では片側連続である)1つながりに連続な関数ならば、
(その積分範囲内にF(x)が微分不可能な点、それは被積分関数f(x)が連続で無い点、があっても良い)、
(1)それは、不連続関数f(x)が積分可能である証拠であり、
(2)以下の計算で定積分を計算して良い事が書いてあります。
F(b)-F(a)
よって、
不連続な関数f(x)に対して、
その定義域を、関数f(x)の連続で無い点を除外した連結区間に分割し、
それら各連結区間毎に原始関数を計算し、
得られた各原始関数を連続につないで不定積分を構成します。
その1つながりに連続な不定積分を使って上の式で定積分を計算して良いのです。
また、小寺平治・著「はじめての微分積分15講」(2,200円)の103ページにも、このことが書いてあります。
小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の182ページにも、このことが書いてあります。
【積分できる区間の範囲に注意すること】
(積分区間を分割して、それぞれで積分する)
区間[a,b]に限ってx=g(t)で定義される変数 t で置換積分して不定積分を求める。その区間[a,b]に隣接する区間[c,d]でx=h(u)で定義される変数 u で置換積分して不定積分を求める。それらの不定積分の関数同士が、閉区間が隣接する境界の極限で1つながりに連続に連結できるかを考える。
すなわち、不定積分の部分として、確実に置換積分可能に範囲を狭めた連結区間[a,b]や連結区間[c,d]での不定積分の部分を複数求め、その関数を連続につないで1つながりに連続した不定積分を作るという広義積分を行なえば良いのです。
【定積分する積分区間を間違えないコツ】
後で説明する、置換積分を媒介する関数g(t)の条件を緩められる事の説明の中の事例のように、被積分関数が不連続であっても積分できることがある。
そのため、被積分関数が連続であるか否かという、積分可能の判定条件は、広義積分を利用する積分では、便宜的な十分条件であって、積分可能のための必要条件ではありません。
この、
「積分結果の不定積分の関数F(x)が積分区間[a,b]で1つながりに連続する」
という条件が、
広義積分の公式においても、積分値が有限である区間[a,b]を定めるための必要十分条件であると考えます。
(積分できない変数xの範囲に気をつける)
下図の関数f(x)は、x=0の点では関数f(x)の値が-∞になり、関数が定義されていないで、関数が不連続です。そして、この関数では、x=0を含んだ範囲で積分することはできません。
上図の関数を、上図の様にx=0を含む区間で定積分したら、マイナスの無限大になるので、積分が不可能です。
そのため、上図の関数を、例えば-1から1までの区間で積分する事も不可能です。
そのため、この関数f(x)の不定積分の変数xの定義域の閉区間は、x=0を含む事ができません。
これを無視して、関数f(x)の不定積分F(x)の変数の定義域にx=0を入れてしまうと以下の間違いをおかします。
F(x)=1/xをxで微分したら
になります。
そして、変数xで積分する区間内に、f(x)が発散する点のx=0を含めた、xが-1から1までの区間で、
関数f(x)の定積分を、F(x)を使って、 F(1)-F(-1)=1-(-1)=2
という 計算で求めると、明らかに間違えます。
上の図で明らかな様に、-1から1までの範囲でのf(x)の積分はf(x)のグラフの面積にならなければなりません。そのため、定積分の答えは、マイナス無限大にならなければなりません。そのため、 F(1)-F(-1)=2は、明らかに間違っています。
なお、関数が不定積分できた積分変数xの積分区間の判定方法は:
不定積分ができた積分変数xの範囲は、
不定積分の関数が、1つながりに連続な連結区間です。
不定積分が1つながりに連結する積分変数xの区間を1単位にし、
その1単位毎の関数は、異なる不定積分の関数とします。
上の例:
(第1の積分)
(第2の積分)
では、
x<0, での t+C という不定積分と、
x>0, での t+C という不定積分とは、
異なる関数だと言えます。
(不定積分を表す関数の変数tの定義域が異なれば異なる関数だからです)
【広義積分を前提にした置換積分の計算事例1】
以下の不定積分を考えます。
(第1の解)
この不定積分は以下のように解けます。すなわち、先ず、元の式を以下の式に変形します。
ここで、以下の式で変数tを定義します。
以下のように積分の変数xを変数tに置き換えた積分に変換します。
(第1の解おわり)
(第2の解)
この解は、以下のように、広義積分の概念を用いて解けます。
先ず、元の式を以下のように変形します。
(補足)ここで、被積分関数の分母と分子に、x=0で値が0になる関数を掛け算しています。こうすると、被積分関数が、x=0で定義されていない関数に変わってしまいます。これは、式の同値変形では無い。(大学で学ぶ)広義積分によって、関数が定義されないx=0の点も、後で、積分可能な変数の領域に加える処理が行えます。そのため、0/0となる関数を掛け算して被積分関数の定義域を変えてしまう処理をしても良いのです。後に、広義積分がそのx=0の点を積分可能な領域に加えることができるからです。
次に、この積分を以下の式に変形します。
ここで、以下の式で変数tを定義します。
以下のように積分の変数xを変数tに置き換えた積分に変換します。
(第2の解おわり)
ここで、第2の解が得られたのですが、その解の、積分定数C以外の部分の以下の関数を考えます。
この関数は以下に示すように、x=0では定義されていないと分かります。第1の解が、x=0でも定義されているにもかかわらずです。
この関数は、以下の式に変形できます。
この関数のx=0における極限は、以下の式になります。
広義積分によって、積分結果の関数が定義されていないx=0における関数の値は、その関数のx→0における極限値であるものと解釈します。
そのため、この第2の解は、x=0の値においても、第1の解と等しい解であると解釈します。
広義積分によって、そのように積分結果の解を解釈できるので、この積分結果を以下の様にコメントを入れた上で変形するならば減点されないと考えます。
この関数のx→0の極限値をx=0での値とする:
(注意)しかし、この計算を、積分結果以外の式で行ない、x=0の場合に0を0で割る約分によって式を変形すれば、減点されてしまいます。広義積分を適用することで通用した上の式の計算は、式の同値変形では無いので、積分とは無関係な式の計算では通用しないのです。しかし、上の式の積分結果の式を変形する処理で、分母と分子をsin(x/2)で割り切って約分する、同値変形では無い式の変形をする際に、
「この関数のx→~の極限値をx=~での値とする:」
と一言書いてから式を約分すれば良い。そうすれば、このように同値変形では無い計算をすること、更に、関数の定義域にx=0の点も加えている処理が減点されないと思います。
【減点されない式変形】積分記号の中ならば0を0で割る式が自由に使えるので、積分記号の外に出さずに式を変形する。これならば減点されない。
(計算おわり)
【広義積分を利用する置換積分の事例2】
この積分を、以下の変数変換をする置換積分法で解く場合を考えます。
(注意)この変数tは、x=π/2の場合に無限大になってしまうので、この計算では、x=π/2の点を含む区間では積分ができない事に注意。すなわち、変数xが、
の(1つながりに連結する区間の)範囲内のみで、置換積分が可能であり、その区間の外の値の変数xでは置換積分ができないのです。
この関数のcosx→0となるxでの極限値をそのxでの値F(x)とする:
ここで、
cosx=0, 例えばx=π/2の場合の積分結果を求めるために、
以下の(関数の極限値を求める)広義積分を行う。
この様に広義積分を行うことで、変数tを利用した積分ではx=π/2では積分結果が定義されていなかった積分結果も定義でき、変数tを利用した積分が不十分だった積分結果を補うことができた。
(計算おわり)
【減点されない式変形】積分記号の中ならば0を0で割る式が自由に使えるので、積分記号の外に出さずに式を変形する。これならば減点されない。
(計算おわり)
(注意1)
なお、この積分は、広義積分が必要になるように、わざと難しい解き方をしました。
《事例2の別解》
事例2は、このように難しく解く必要は無く、以下のように解ける事を注意しておきます。
事例2の積分は、
変数2x=(π/2)−2y,
という変数変換をして、
1/sin(2y)のyによる積分に変換した上で、
tan(y)=t
とする変数tを導入するのが普通の解き方です。
(参考例がここをクリックした先にあります)
ただし、そのようにする場合の変数tの導入でも、
y=π/2を含む区間では積分できません。
ただし、
被積分関数の1/sin(2y)は、元々
y=π/2の点で、分母が0になって、関数値が無限大になるので、
y=π/2の点を含む区間では積分できない関数でした。
そのため、ここで、この変数tを導入しても、新たに積分区間を制約することにもならないので、この変数tの導入方法は良い解き方です。
変数yをこの変数tに変換して解く積分の場合は、後で、広義積分する必要も生じないので、良い解き方です。
《事例2のその他の別解》
また、以上の別解とは異なる変数の変換をして、以下のように置換積分をしても、広義積分する必要も生じない解が得られます。
(計算おわり)
この積分結果の式は、「三角関数の分数式の変換公式」の公式4の式6を参照すると、先の計算の解の式と同じ式になることがわかる。
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高校2年生も覚えるべき置換積分法
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