2017年7月29日土曜日

関数の極限の定義

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▷数列による極限の定義とεδ論法の極限の定義が必要十分な関係にある証明
▷位相空間論での極限の定義

 高校2年になり学ぶ「極限」は、微分の計算をする上で必要になった計算技術です。

 そのため、微分の計算を先にして、計算に困ったときに「極限」を学ぶという勉強スタイルでも良いと考えます。

そういう計算の役に立つように、頭を整理することが、極限を学ぶということです。

 高校2年の微分積分の勉強のためには、「やさしく学べる微分積分」(石村園子)を読むと、内容がわかり易くて良いと思います。その4ページには、ε-δ論法を使わないで、極限値を簡単に定義しています。

 高校生は、極限を学習する初めには、数列の極限を学ぶと思います。数列の極限を理解するために、証明が済んでいる頼れる定理はなるべく多く用意して考えの支えに使うのが良いと思います。推薦できる高校数学の参考書:「生き抜くための高校数学」(芳沢光雄)の「数列の極限」は、その入門用のいくつかの定理が書いてあるので参考になると思います。
それを見た後で、ここをクリックした先の、数列の極限を詳しく書いてあるサイトの情報を参考にして、
その後に、数列の極限に係る多くの定理の情報を得るため、ここをクリックした先のサイトに数列の極限に係る定理の情報が多いので参考にしたら良いと思います。

 高校3年になって本格的に微分積分を学びたくなった学生は、学生が微分積分を無駄なく学べるよう工夫がこらされている本:小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」を読むと、微分積分が無駄なく勉強できて良いと思います。その22ページに数列の極限値の定義が書いてあり、76ページに、ε-δ論法を使った極限値の定義が書いてあります。
 ただし、数列の極限値についての参考書は、高校生は、先ず、推薦できる高校数学の参考書:「生き抜くための高校数学」(芳沢光雄)の「数列の極限」に関する説明を読むのが良いと考えます。それを理解した後で、小平邦彦「[軽装版]解析入門Ⅰ」の22ページの数列の極限値の説明を読むようにした方が良いと思います。

〔極限の定義の役割〕
 点aでの極限とは、第1の条件として、点aが関数の定義域Aの要素の集積点であること、第2の条件として、点aで関数f(x) の右側極限値と左側極限値が一致していること。その2つの条件が成り立っている関数f(x) の点aにおける関係を表すことが極限の定義の役割である。

関数の極限の定義は:
(1)第1の定義の極限:
開放された区間(a<x<b)の関数f(x)でxの右側極限と左側極限が一致する場合に極限があるものとする極限の定義。
(2)第2の定義の極限:
閉区間( a≦x≦b)の関数f(x)の、x=aとx=bとの区間の端点では、片側極限があるだけで、極限があるものとする極限の定義。
との2通りの定義があるので要注意です。

《実数とは》
 例えば、以下の図の規則によってx=1から、x=2、次にx=3/2 というように有理数の値を変えていくと、限りなく近づく先の数が有理数の中には無い。しかし、そのように限りなく近づく先の数が存在すると考えた。その数を実数と呼ぶ。

 このように、「限りなく近づける」操作(極限の操作)が、数の概念を拡張することを要請し、そうして拡張された新たな数が実数であった。この拡張された数である実数から成るとされる数直線には数の連続性があるとされた。このように極限の操作によって数の概念が実数にまで拡張され、それが数の連続性と微分積分の礎になった。

《数列の極限》
 項が限りなく続く数列x1, x2, x3, ・・・, xn, ・・・を無限数列と言う。xnをその第n項といい、この無限数列を{xn}であらわす。また、an を自然数nの式であらわしたものを数列{xn} の一般項という。
 「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の定義は、数の集合Aにおいて、以下のことが成り立つこととして、極限を定義する。
【数列の極限の定義】
 数xの集合Aが全ての有理数であるとする。その場合に、以下の図で、点a以外の値の数xの無限数列{xn}を考える。

この数列{xn}では、自然数nが限りなく大きくなるとき、第n項は限りなく値aに近づく。
 一般に、数xの集合Aの要素の数列{xn}において、nが限りなく大きくなるにつれて、xn が一定の値aに限りなく近づくとき、数列{xn}はaに収束する、または、数列{xn}の極限はaであるという。その値aを数列{xn}の極限値であるという。(点aは数の集合Aの要素で無くても良い)。
 数列{xn}の極限値がaであるとき、次のように書く。


 すなわち、「集合Aの要素の数xが限りなく点aに近づく」という極限の概念を、点aに収束する、数の集合Aの要素のxの無限数列を使って数学的に定義した。
 その結果、数xが限りなく近づく先の数の点aは、すなわち、数xの極限の数の点aは、
数の集合Aの要素の数xの無限数列の集積点であるという結論が得られる。
--(集積点の定義)--
  実数の集合Rの部分集合の数の集合A(例えば有理数の集合)を考える。
(1)実数の点aが数の集合Aの集積点であるとは、
点aの値以外の数の集合Aの要素の点xn による、点aに収束する無限数列 {xn}が存在すること(点aは、数の集合Aの要素とは限らない)である。
(2)なお、数の集合Aの要素のある点(数y)が集積点ではないとき、その点yを数の集合Aの孤立点と呼ぶ。

--(集積点の定義おわり)---

《関数の極限》
 関数f(x) の定義域のxの数の集合Aが集積点aを持つ場合を考える。その場合に、集合Aから、値が集積点aと異なる要素xn を順に選んで、点aに収束するxの無限数列{xn}を作れる。その無限数列{xn}が点aに収束するのにともなって、 f(x) が値Cに収束するということが、x→aで関数f(x)に極限が存在するための基礎条件である。
関数f(x) において、変数xがaと異なる値をとりながら限りなくaに近づくとき、f(x) の値が一定の値Cに限りなく近づくならば、
x→aのときf(x) の極限値がCである。
といい、次のように書く。

また、この場合、”x→aのときf(x) はCに収束する”という。

【関数の極限の定義(第1の定義)】
 変数xがaと異なる値をとりながら限りなくaに近づくとき、関数f(x) の値が一定の値Cに限りなく近づくという関数の極限は、以下のように定義する。
 関数f(x) の定義域の集合Aを、区間とする。そして、「変数xが限りなくaに近づくとき関数f(x) に極限値Cが存在する」ことの数学的定義を:
「区間A内の点xの、点aに収束する全ての無限数列{xn}で共通して、関数f(x) が同じ値Cに収束する」ことと定義する。
 そう定義する理由は、関数f(x) によっては、点aに収束する各無限数列{xn}毎に、関数f(x) が異なる値Cに収束したり、収束しなかったりすることがあるからである。

ーー【区間の定義】ーー
「区間」という数学用語は、変数xの数直線上の1つの範囲内の、実数のすき間がない1かたまりの数の集合をあらわす数学用語である。「数のすき間が無い」大前提のために、連続性の公理を満足する数(実数)の集合でなければならない。
《神奈川大学》【定義 14.2.4.】
 a, b を実数とする. a 以上かつ b 以下の実数をすべて集めた集合を [a, b] と書き, これを閉区 間と呼ぶ.
 a より大きくかつ b 未満の実数をすべて集めた集合を (a, b) と書き, これを開区間と呼ぶ.
----定義おわり----


a≦x≦bを満足するxの区間という表現は、a≦x≦bの範囲内の全ての実数xという意味です。
-∞<x<∞という区間もあります。
区間はxの値の範囲を限定するためのa≦x≦bという式とは意味が異なることに注意する必要があります。

 「区間」という用語は、特に重要な関数である連続関数の連続性を定義するために必要な、連続関数f(x)の変数xの集合体がいつも持っていなければならない連続性という重要な性質が「区間」という概念を用いてあらわされています。
 すなわち、変数xの「区間」の性質で大切なのは、
「区間」のなかに変数xの値が隙間なく存在すること。
つまり所定範囲内での隙間が無い全ての実数の集合という概念が「区間」という用語で定義されています。
 例えば:
f(x)=1/xの定義域を(0,∞) (={x|xは0より大きい実数})
とすれば、f(x)は区間で定義された関数です。
g(x)=1/xの定義域を(-∞,0)∪(0,∞)(={x|xは0でない実数})
とすれば、g(x)は区間で定義された関数ではない。
(f(x)とg(x)は定義域が異なっているため、f(x)とg(x)は同じ関数ではない)

(A)「0≦x≦2の区間の変数xで定義された関数f(x)がその区間の各点で連続であるとき,f(x)は連続関数である」という文では、
f(x)は、0≦x≦2の区間で1つながりに連続した関数f(x)として定義されます。

一方で、
(B)「変数xの0≦x≦2の範囲内の値で関数f(x)が定義されていて、その関数f(x)が定義域の各点で連続であるとき,f(x)は連続関数である」という高校数学の連続関数の説明文では、f(x)は、例えば、
0<x<1で f(x)=0, この定義域内の各点で連続。
1<x<2で f(x)=1, この定義域内の各点で連続。
結局、0≦x≦2の範囲内の全ての定義域の各点で連続でありx=1では連続で無い関数を誤って、連続関数f(x)であると定義しています。
 この例の様に、「区間」という用語は変数xの集合をあらわす用語であって、変数xの範囲をあらわす用語では無いことに注意する必要があります。
----------区間の説明終わり-------------

【直感的極限値】
 関数f(x) において, x をx0 に限りなく近づけていくとき,
f(x) がある値C に限りなく近づくならば,値Cをx がx0 に近づくときのf(x) の極限値といい,
で表わします.

 さて,ここで限りなく近づくというのはどういうことでしょうか. x がx0 に限りなく近づくとは,以下の2つの考え方で定義できます。
《x がx0 に限りなく近づくことの定義(その1)》
 古典的(基礎的)微分積分学においては、x がx0 に限りなく近づくとは,関数f(x) の変数xの定義域の集合Aを区間とし、その区間Aに関して:
 点x0 に収束する、区間Aの要素のxの点の無限数列が存在する。すなわち、点x0 が区間Aの要素の集積点になるということと同じだと考えて良い。
 そして、その点xの数列がx0 に収束するのにともなって、 f(x) が値Cに収束することが、x→x0 でf(x)に極限値が存在するための基礎条件である。そして、区間Aの要素のxの点の、x0 に収束する全ての無限数列で、関数f(x) の値が同じ値のCに収束する場合にf(x) のx0 での極限が存在する。それが、厳密な(第1の)極限の定義である。

《x がx0 に限りなく近づくことの定義(その2)》
 また、古典的(基礎的)微分積分学のもう1つの考え方では、集合Aの要素の点x が集積点x0 に限りなく近づくとは,
 絶対値|x−x0| を限りなく小さくできる(そういう条件を満たす値xが集合Aの要素に存在する)ということと同じだと考えてもよい.集合Aが区間であれば、それは、いつでも成り立っている。

 そして, f(x) が値Cに限りなく近づくということも
|f(x) − C| を限りなく小さくできることだと考えてもよい.

〘関数の極限の第2の定義〙
 《関数のxの定義域の集合Aは区間とする》
 集合Aが区間であって、区間Aの要素のxの値が集積点x0に近い全ての点x(x0 に近い区間A内の全ての実数の点x)において、すなわち、十分小さい正の値δに関して、|x-x0|<δの範囲内の全ての点xにおいて、f(x)がCに近い値になることが、x=x0でf(x)に極限値Cが存在することの厳密な(第2の)定義である。この(第2の)定義は、(第1の)定義と、必要十分な関係にある。

《第2の定義が第1の定義と必要十分な関係にある証明》
 この証明は、
「『増訂解析概論』高木 貞治 著の現代仮名遣い版」の、
「6.収束の条件.コーシーの判定法」
https://linesegment.web.fc2.com/books/mathematics/zouteikaisekigairon/zouteikaisekigairon_006.html
の定理8の証明の内容に含まれている。
その証明で言う数列an が、関数f(xn) の値であり、変数xは、数列xn として考えられている。
0<|x-x0|<δ
という条件は、数列xn が限りなく点x0 に近づくという意味である。
変数xの数列{Xn}が限りなくx0 に近づくということについては、
n>N(δ) ならば、変数xに関して、必ず、
|xn-x0|<δ
となることが、
x→x0
の意味である。そのことは、
「4.数列の極限」の定理4
https://linesegment.web.fc2.com/books/mathematics/zouteikaisekigairon/zouteikaisekigairon_004.html
に書いてある。

〘証明問題1〙点aが集合Aの集積点であるならば、第2の定義の極限があれば第1の定義の極限が存在する。
(1)関数f(x)のxの定義域の集合Aが区間であって、その区間Aの集積点aに関して、ある値Cにより、どれだけ小さな正の値εに対しても、十分小さい正の値のδによって、集合Aの要素の点xに関して、
0<|x−a|<δ ならば |f(x)-C|<ε, (1)
となる(第2の定義の極限がある)ならば、
(2)集積点aに収束する、区間Aの要素のxの点の無限数列{xn}に対して、数列{f(xn)}は値Cに収束する。そして、値aに収束する全ての無限数列に対して関数f(x) の値が同じ値のCに収束する(第1の定義の極限がある)ことを証明せよ。

【証明開始】点aが集合Aの集積点であることが必要
 点aが集合Aの集積点であることが前提条件になっているので、点aに収束する、点aと異なる集合Aの要素から成る無限数列{xn}が少なくとも1つは存在する。
その無限数列{xn}は、点aに収束しているので、
任意の正の実数δに対して、以下の条件を満足する自然数n0(δ)が存在する。
n>n0(δ) を満足する自然数nがあり、その自然数nの全てで、
0<|xn−a|<δ が成り立つ。
これを式(1)に代入することで、
|f(xn)-C|<ε が成り立つ。
すなわち、どれだけ小さな正の値εに対しても、ある自然数n0(δ)が存在し、
n>n0(δ)なる全てのnで、 |f(xn)-C|<ε が成り立つ。
このため、数列{f(xn)}は値Cに収束する。
 以上の結論は、集合Aの要素で作られる無限数列であって、点aに収束する全ての無限数列{xn}で同様に成り立つ(第1の定義の極限がある)。
(問題1の証明おわり)

〘証明問題2〙点aが集合Aの集積点であるならば、第1の定義の極限があれば第2の定義の極限が存在する。
(1)集積点aに収束する、区間Aの要素のxの点の全ての無限数列{xn}に対して、数列{f(xn)}は値Cに収束する。
すなわち、どれだけ小さな正の値εに対しても、ある自然数Nが存在し、
n>Nなる全てのnで、|f(xn)-C|<ε, (2)
が成り立つ。
そして、値aに収束する全ての無限数列に対して関数f(x) の値が同じ値のCに収束する(第1の定義の極限がある)ならば、
(2)関数f(x)のxの定義域の集合Aが区間であって、その区間Aの集積点aに関して、ある値Cにより、どれだけ小さな正の値εに対しても、十分小さい正の値のδによって、集合Aの要素の点xに関して、
0<|x−a|<δ ならば |f(x)-C|<ε, (1)
となる(第2の定義の極限がある)ことを証明せよ。

【証明開始】点aが集合Aの集積点であることが必要
 点aが集合Aの集積点であるので、値aに収束する無限数列{xn}が存在する。
 この問題を、結論を否定する仮定を設定し、その仮定によって矛盾を生じることを示して結論の否定が誤りであることを証明する。
〔仮定〕
(1)値aに収束するどの無限数列{xn}に関しても、どれだけ小さな正の値εに対しても、ある自然数Nが存在し、
n>Nなる全てのnで、|f(xn)-C|<ε, (2)
が成り立つときに、
(2)どれだけ小さな正の実数εに対しても、ある正の実数δが存在し、集合Aの要素のどのxの値に対しても、
0<|x−a|<δ ならば |f(x)-C|<ε, (1)
が成り立たないことがあることを仮定する。
すなわち、
(3)ある正の実数εに対して、どの正の実数δであっても、集合Aの要素のあるxの値に対して、
0<|x−a|<δ かつ |f(x)-C|≧ε, (3)
となる事がある。
と仮定して、そう仮定すると矛盾が導かれることを示すことで、この証明問題2を証明する。
(矛盾の導出開始)
 (1)を満足する、ある正の実数εに対しては、正の実数δを、自然数nに関して、
δ=1/n,
としたときにも、
(仮定により)
集合Aの要素のある値xn に対しては、
0<|xn−a|<1/n かつ |f(xn)-C|≧ε, (4)
となる。
つまり、δ=1/nを与える自然数n毎に、式(4)が成り立つある値xnが必ずある。
ここで、この、n毎に定まるある値xnを使って 数列{xn}を作る。
この数列{xn}は、式(4)によって、
0<|xn−a|<1/n
が成り立つので、
nが大きくなるにつれて点aに収束する無限数列である。
値aに収束するどの無限数列に対しても式(2)が成り立つので、 数列{xn}についても、
正の値εに対しても、ある自然数Nが存在し、
n>Nなる全てのnで、|f(xn)-C|<ε, (2)
が成り立つ。
これは、式(4)の、|f(xn)-C|≧ε,と矛盾する。
よって、仮定が否定された。
ゆえに、
(2)どれだけ小さな正の実数εに対しても、ある正の実数δが存在し、集合Aの要素のどのxの値に対しても、
0<|x−a|<δ ならば |f(x)-C|<ε, (1)
が成り立つ(第2の定義の極限がある)。
(問題2の証明おわり)

微分積分学を厳密化するしくみ
 初期の微分積分学では,「限りなく近付ける」という概念を使って来た。この極限の最大の問題点は、「限りなく近づく」という表現の曖昧さです。その概念を具体的に数学的に明確な概念にするのが「ε-δ論法」です。
 コーシー(1789-1857)は不等式を使ったε-δ論法を導入した。
コーシー以前たとえばラグランジュが「無限小」や「極限」を曖昧なものとして数学の記述から排除しようとしたのに対して、コーシーは動的な表現が不等式評価と結びつくことを洞察して積極的に数学の記述に取り込んだ。不等式評価と結びついていることが把握されてさえいれば、動的表現自体を排除する必要はない。


 極限の概念を明確にすると、(1) コーシーらの開拓した古典的(基礎的)微分積分学のイプシロンデルタ論法による極限の表し方と、(2) 位相空間論に係わり再構築した微分積分学のイプシロンデルタ論法による極限の表し方との、異なる2つの極限の表し方があります。そのようにイプシロンデルタ論法によって明確に表した極限の概念は複数あるのです。その2つを合わせて「限りなく近付ける」と言っていたのですから、その表現がいかにあいまいであったかが分かると思います。

 先の(第2の)定義は、古典的(基礎的)微分積分学の極限の定義であり、以下のように表現できる。

《ε-δ論法(その1)》
(1)
 どんな小さな正の数 εを比較の相手と選んでも,|f(x) − C| をそれよりも小さくできることを以下のように表現する。
 すなわち、区間Aを定義域とする関数f(x) に関して、その区間Aの変数xと、x0 との差の絶対値|x-x0|がある正の値δ以下であれば(そうなる変数xの値が区間A内に必ず存在することが必要)、ある値C(その値Cは、εの値によらない固定値)に関して、
|f(x) − C| をεよりも小さくできるならば,

(2)
関数値f(x)の値のバラツキを表す|f(x) − C| を限りなく小さくできるといえる.

 この考え方が数学でいうところの限りなく小さいということの第2の定義です.

 これを用いて関数の極限をもう一度定義します.
この定義はε − δ論法と呼ばれる証明法のもとになっていますが,難しく感じる人は,直感的極限値で十分です.

(注意)
 ただし、直感的極限値で考える場合でも、変数xの値がx0に近いどの実数にした場合でも、
(条件1)
f(x)が(無限大では無い)ある値Cに近づく事。
(条件2)
そして、x0の近傍の微小区間(x0が関数f(x) のxの定義域の端点の場合は、x0の片側の微小区間)のどの実数に対してもf(x) の値が定義されていなければならないという事が、
極限が存在するための基礎条件であると認識しておくこと。
(注意すべき点)
 x=x0での関数f(x)の極限を求める場合、変数xの値がx≠x0となる値x0の近傍(x0がf(x) の定義域xの端点の場合は片側の近傍)の範囲内の全ての実数ですきま無く関数値f(x)が定義されている関数f(x)についてのみ、極限が存在し得るものとして極限が定義されている。

【極限が存在しない例】
関数f(x)が、xが有理数の場合は
f(x)=x
であり、
xが無理数の場合は、
f(x)=100
とする関数がx=0での極限値を持つかどうかを考えます。

【解答】
自然数mで表す
x=1/m
を限りなく0に近づけて行くとき、
f(x)が限りなく0に近づきます。
しかし、
限りなく小さな値の無理数xに対して、
f(x)=100
になり、
その限りなく小さな値の無理数では、
f(x)は0に近づかないので、
f(x)は、
x→0の場合に、 f(x)→0となるとは言えません。
よって、この関数f(x)には、 x=0での極限値がありません。
(解答おわり)

(極限を考える場合の根本的な注意点)
 極限を、x0の近傍(x0が関数f(x) の定義域Aの区間の端点の場合は片側の近傍)のどれだけx0 に近い位置にも定義域Aの点がある(点x0 が集合Aの集積点である)事は、極限の定義の姉妹にあたる関数f(x) の連続性の定義でも、すなわち、変数xの値x0における関数の連続性の定義が、x0 が関数f(x) の定義域Aの集積点でなければならない事と対応しています。

【問題1】
関数f(x)は、整数mと、0以外の整数qに関して、
有理数x=m/qの場合に、
f(x)=0
となる関数である。それ以外のxの場合にこの関数f(x)は値を持たない。
この関数f(x)は、
x→0における極限値を持つか?

【解答】古典的(基礎的)微分積分学の答え
 この関数f(x) はx=0の近傍で微小区間で関数が定義されていないので古典的微分積分学での極限の定義の条件を満足しない。つまり、この関数f(x)の値を与える有理数x=m/qが何であっても、その有理数xの値より0に近い無理数yが必ず存在する。そして、その無理数yに対して値f(y)を持たない。そのため、f(x) は、x=0の近傍で微小区間では関数が定義されていない。
よって、この関数f(x)は、xを限りなく0に近くしても関数値が定まらず、極限値が存在しない。
(解答おわり)
 このように、古典的(基礎的)微分積分学の極限の定義においては、関数f(x) の変数xの定義域が有理数のみであって無理数を含まない関数には極限がありません。
 しかしながら、点aが関数f(x) の定義域Aの集積点である場合には、定義域Aが有理数のみであっても、第1の定義の極限と第2の定義の極限が必要十分な関係になり、点aでの関数f(x) の極限を定義し得る、ということにも注意する必要がある。


《実数が、直線上にすきま無く並べる事ができる》
 有理数全体は、x座標を表す直線上に密集している。しかし、有理数全体だけでは、直線上にすきま無く並べることができない。
 無理数全体も、x座標を表す直線上に密集している。しかし、無理数全体だけでは、直線上にすきま無く並べることができない。
 実数全体が、直線上にすきま無く並べることができるのである。

《点aがxの定義域Aの集積点ではない関数は点aで微分不可能》
  点aが関数g(x) の変数xの定義域Aの集積点である事が、関数g(x) の微分係数g’(x)を計算できる前提条件になります。そのため、点aが関数g(x) の集積点ではない点では、関数g(x) は微分可能ではありません。


【ε-δ論法による極限の定義(その1)】
 関数f(x) の定義域Aの集積点がx0 であって、少なくとも集積点x0 の近傍の定義域が微小区間であるものとする。その集積点x0 に対して、ある値Cによって、
任意の正の実数ε に対して,ある正の実数δによって、
0 < |x − x0| < δ となるxの値が定義域A内に必ず存在し、かつ、この式を満足する関数f(x) の全ての実数xで、

|f(x) − C| < ε が成り立つならば、
そうなるような正の実数δ が選べるならば、集積点x0 での関数f(x) の極限が存在し、その極限値がCである。
(すなわち、f(x) が、x0 の近傍の微小区間の実数xで定義されていて、かつ、その点xでの関数値f(x) に関して上の式が成り立っているならば、)

である。
----極限の定義おわり---------

《「ならば」という言葉を使う命題に要注意》
 「AならばBである」という命題の論理は、「(Aで無い)∪(Bである)」という論理式であらわされることに注意が必要である。この命題が真であるのは、「AであるときにはBである」、という場合以外に、「Aで無ければ、Bがどうにでもなり得る」という意味もある。この「Aで無ければ、Bがどうにでもなり得る」という含意があることに要注意です。
0<|x-a|<δ ならば |f(x)-C|<ε
という命題の意味には、どの値のxにおいても|x-a|≧δ でありさえすれば、他はどうでも良い、という意味が含まれている。(その意味を否定するには、0<|x-a|<δを成り立たせる定義域内のxの値が必ず存在する、という制限条件が必要)。そのため、上に述べた命題で極限を定義する場合には、「点aが関数f(x) の定義域Aの集積点である」という制限条件が必ず必要である。aを関数f(x)の定義域の集積点にしない場合、例えば定義域が[-1,1]の関数f(x)=x の場合に、a=100 の場合には、xが定義域内のどの値であっても|x-a|≧99なので、δ<99なるδに関して、xの値が定義域内の何であっても|x-a|≧δになる。そのため、その場合に、「Aで無ければ、Bがどうにでもなり得る」が成り立つ。
すなわち、a=100 の場合には、例えばC=10 として、全てのε>0 に対して、あるδ=98について、
0<|x-a|<δ ならば |f(x)-10|<ε
が成り立つ。
これが成り立つからと言って、
定義域が区間[-1,1]の関数f(x)=x のx→100 の極限値がC=10 になる、
と言ってはいけない。
(要注意おわり)

 ここで、極限を定義するε-δ論法(その1)が出て来ましたが、ε-δ論法というものは、εとδを使って極限を表現する手段であって、ε-δ論法を使った極限の定義は、上の形の表現に限られません。

後で説明する、区間の端では、片側極限について、上の表現とは形を変えた別のε-δ論法(その2)によって片側極限が定義されます。

-----(極限の定義を言い換えて定義を理解する)----
 大学1年生が、初めてこの極限の定義を学んだとき、定義の意味が分からず、微分積分学が分からなくなり脱落する大学1年生が多いらしい。

 この定義を理解するには、想像力を膨らませて、この定義を、以下の様に噛み砕いて自分の言葉で言い換えると、この定義の意味が理解でき、定義がすんなり覚えられるようになると思います。

先ず、以下の図のようなメチャメチャな関数f(x)で、ただ1つの点のx0=0の点で極限を調べる事をイメージしましょう。x0=0の点以外では関数f(x)が連続でも無いというメチャメチャな関数を考えます。
上図の様にメチャメチャな関数で、x=x0の近くの関数値は、任意のバラバラな数値で考えても良い関数を考えます。そのため、順次に取り出す関数値を、単なる数列の数値の順列と考えるのと同じになります。そして、数列の極限を考えるのと同じように関数の極限を考える事ができます。

(1)
どんなに小さな正の数 εを比較の相手と選んでも,
充分小さい正の微小量δを選べば、
ーδ<x-x0< 0 及び、 0<x-x0<δ
を満足するx0に近い、x0では無い全ての実数値のxを漏らさず調べた関数値f(x)が、
ある値C(その値Cは、εの値によらない固定値:この値は複素数であっても良い)に関して、
全て、
|f(x) − C| < ε
を満足するということが、
関数f(x)にx0の極限値が存在するという事である。
その値Cを点x0での関数f(x)の極限値と定義します。

(1-1)
すなわち、関数f(x)の値が存在する変数xが、
x0に近いがx0では無い、x0に近い全ての実数xの範囲が、
言い換えると、
(A)充分小さい正の微小量δによる、
0 < |x − x0| < δ
となる範囲の全ての実数が関数の変数xの定義域に含まれている。
(B)また、上の式(満足させる目標をあらわす式):
|f(x) − C| < ε
を満足するある値C(εの値にかかわらず固定した値)が存在する。
ということが、
関数f(x)のx0の極限が存在するという事である。
(1-2)
 極限の定義において、xをx0に限りなく近づけてf(x)を考える際に、x0の点を除外して考えることが極限の概念の本質的な特徴になっていますもし、x0の点を除外しないで”極限”の有無を調べることにすると、それは、関数の”連続性”の有無を調べることになります。極限の概念は、関数が連続で無い場合も視野に入れた関数の特徴の把握のために、x0の点を除外して考えるという特徴を本質的に持っています。
 すなわち、関数f(x)の極限を求める点x0で関数f(x)が連続で無くても極限値が存在し得るのです。

(2)
 ここで、x0から、実数値δの範囲内でずれる、x0では無い全ての実数xについてf(x)を考えなければならない。
 この定義における「全ての実数x」の意味は、他の制限、例えば関数の変数の定義域を有理数だけに定めて定義域外の無理数の変数に対する関数値を考え無い事にした関数では、考えるべきxの実数値が定義域から除外されてしまっているので、そういう関数f(x) には極限が存在しないことを意味します。
(3)
その全てのf(x)の値(その値は複素数であっても良い)のバラツキの誤差を求める。
その誤差<εとするεでバラツキの範囲を定める。
(4)
(4-A)xの値のx0からずれる範囲の値δを十分小さくすれば、
その範囲内の全ての実数値のx(ただし、値x0は除外)によるf(x)の値のバラツキが小さくなり、
そのバラツキの範囲の値 ε は、
いくらでも小さな値εが得られる、
という条件が満足されるならば;
(4-B)また、そのどの実数値x(ただし、x≠x0)についても、
-ε< |f(x)-C|<ε
となる値C (この値は複素数であっても良い)が、どのように小さなεの値についても、
変わらない確固とした値で存在するならば;
その関数の値の極限が存在し、
その確固とした値C が極限値である。
----(定義の言い換えおわり)-----------

(疑問に思う点)
 そのある値Cをどの様にして見つけたら良いのだろうかという疑問がわくと思います。
ε-δ論法によって極限値を定義しても、ある値Cが分からなければ、極限値の存在が確かめようが無いのではないか。
ある値Cを仮定して、定義にあてはめても、ある程度小さいεまでは確かめられても、それ以降は、定義通りにならず、その値Cは、結局は極限値では無い事がわかるという事になるのではないか。
その極限値Cを確かめる試行錯誤を無限に繰り返せと言うのかといった腹立ちを感じるのではないでしょうか。

その疑問に対しては、以下の様に考えたら良いと考えます。
極限値Cを確かめるには、単に、xをx0に近づけて関数値f(x)を求めて行くだけで良いのではないか。
極限が有るか無いかの問題は、その方法で極限値を求める事ができる関数であるか、そうで無いかを判定できるだけで良いと考えます。
(A)先ず、その様にして求める事ができる極限値Cが存在する事が第1に必要な条件です。
(B)次に、その極限値Cが存在するとして、関数f(x)は、その極限値Cにどの様に近づいていかねばならないかの、関数の構造を知る事が第2に必要な条件と考えます。

極限が存在する関数が満足させるべき目標をあらわす式:

|f(x)-C|<ε,
を以下の様に変形して考えます。
-ε<(f(x)-C)<ε,
C-ε<f(x)<C+ε,
f(x)-ε<C<f(x)+ε,

この(満足させる目標をあらわす)式によって、ある値C(その値Cは、εの値によらない固定値)が、関数値f(x)の誤差εの範囲で求められる事が、極限値Cが存在し得るという事です。

その誤差εは、xをx0に近づける事で小さくできれば、極限値Cが存在し得ると言えます。
すなわち、
0 < |x − x0| < δ
となる誤差δの範囲内のxの値が必ず存在し、かつ、その全てのxについて、
上の式が成り立ち、誤差δを小さくすればいくらでも誤差εを小さくできれば極限値Cが存在すると言えます。


関数の構造を調べるために全てのxについてのf(x)を考えるのが大変なので、以下の様に考えて関数の構造を調べます。
全てのf(x)のうち、
f(x)の上限値を求めf2とする。
f(x)の下限値を求めf1とする。

(端点が開放された区間では、開放された端点の近くで関数f(x)が上限値f2に限りなく近づくが決してf2になる事が無い事が起き得る事に注意する)
全てのf(x)について、
f1≦f(x)≦f2です。
そうすれば、全てのf(x)について満足させる目標が:
f2 -ε<C<f1+ε,
という関係だけを満足させる事を考えれば良い事になります。


(補足)
 ここで、想像力を働かせて、一番突飛な例を想像しましょう。
 例えば、誤差δを小さくすれば、f(x)のグラフの最大値 f2 がx0の左にあったり右にあったりし、x0の前後のxの順では、f1,f2の順になったり、f2,f1の順になったりする突飛な関数の事例を想像してイメージを膨らませましょう。
---補足おわり--------------

この(満足させる目標をあらわす)式
f2 -ε<C<f1+ε,
によって小さい値εの小ささの限界が決められます。
先ず、必須の条件に、
2ε>f2-f1
があります。

しかし、これだけでは、満足させるべき目標が達成できません。
そこで、
ε=(f2-f1)+(0+)
とすると、
f2 -ε<C<f1+ε,
は、
f1-(0+)<C<f2+(0+),
になり、また、以下の式にもなります。

f1≦C≦f2, 

(極限値Cが存在する事を前提として考えて)この式は必ず成り立つ関係を表していると考えられますので、この式なら目標の式を満足させることができます。
(また、後で説明するように、この様に値Cのバラツキの範囲を定めるならば、数直線上の区間を考える場合、最小値f1と最大値f2を両端に持つ区間を、その区間の幅を無限に小さくしていくことができる関数の場合は、その幅を無限に小さくする各段階での値f1及び値f2とは独立した値の極限値Cが存在する事が証明できます。)
そのため、誤差εは、
ε=(f2-f1)+(0+)
に決めることができます。 

これにより、このε-δ論法による極限の定義は、
以下の定義と等価だと分かりました。
【等価な極限の定義】 
0 < |x − x0| < δ となる関数f(x) の定義域xの値が必ず存在し、
(すなわち、関数f(x) のxの定義域Aの要素の集積点がx0 であり
(A)
そのδで制限された範囲内の定義域のxの関数f(x)の下限値をf1とし上限値をf2とするときに、
f2-f1をいくらでも小さくするxの範囲を定める正の実数δ を選べることができるならば,
(B)
f1≦C≦f2
となる値Cで、f2-f1を小さくする各段階でのf1及びf2の値とは独立して存在する値Cを見つけて、その値Cを極限値と定義する。
そして、
と記述する。
----等価な極限の定義おわり-------

誤差εをどんどん小さくしていっても、
0 < |x − x0| < δ
となる範囲内の全てのxの関数f(x)の上限値f2と下限値f1が、
δを十分に小さくすることで、f1とf2の差が十分小さくなるなら、そのf1とf2の間に求める極限値Cが存在すると言えると考えます。
そのように、f1とf2の差をどんどん小さくしていくことができるならば、
xをx0に近づけて関数値f(x)を求めて行くだけで、
極限値Cが求められると言えると考えます。


(極限値Cの存在の証明)
 なお、このようにxの範囲の幅のδを小さくしてxの範囲の領域の幅を無限に小さくし続けて、その範囲内の関数f(x)の下限値f1と上限値f2を求めて、Y=f(x)の区間で、f1とf2を両端に持つ区間を考え、そのY座標でのf1からf2までの区間の幅を無限に小さくし続けることができるなら、その場合に、そのY座標の、f1からf2までの区間が、1点の極限値Cに収束する事が証明できます(ここをクリックした先の定理18)。 

 このように、f1とf2の差≒ε がいくらでも小さくできる条件が成り立つならば、関数f(x)の値が極限値Cに近づいていき極限値Cが求められるので、これによって、極限値が存在する条件が正しく表わされている様に思います。

(注意)以下の様なメチャメチャな関数の場合:
xをx0の近傍の誤差δの範囲に近づけて、その範囲内の全ての関数値f(x)の上限値f2と下限値f1を調べるので、作業量はとても多い大変な作業が必要です。
 ただし、その作業量の多さは、元のε-δ論法でも、xをx0の近傍の誤差δの範囲に近づけて全ての関数値f(x)で|f(x)-C|<ε を調べる作業量も同じ多さです。
 極限値Cの定義は、最悪なメチャメチャな関数の極限値を求める場合を想定した場合の極限値の求め方をあらわしたものであって、現実的な素直な関数の極限値Cの求め方を表したものでは無かったのです。
 素直な関数ならば、上限値f2と下限値f1を求めてから極限値Cを求める作業は比較的楽になると思います。

(注意)
 ここで、極限を定義するε-δ論法(その1)が出て来ましたが、ε-δ論法というものは、εとδを使って極限を表現する手段であって、ε-δ論法を使った極限の定義は、上の形の表現に限られません。
後で説明する片側極限についても、上の表現とは形を変えた別のε-δ論法(その2)によって片側極限が定義されるのです。

(極限の定義の第1のポイント)
 上のε-δ論法による極限の定義の第1のポイントは:
「f(x)の値のバラツキを表す正の数ε をどれだけ小さくしても,関数値f(x)を必ずそのバラツキ内に漏れなく入れることができるx0に近い実数xのバラツキの範囲を表す正の値δが必ず存在することである。

すなわち、その正の数εのバラツキ内に関数値を漏らさず入れる、x0に近い、関数の定義域の区間A内の全ての実数xの範囲を
0 < |x − x0| < δ
とする正の数δ が必ず存在すると言うことである。

0 < |x − x0| < δ の条件を満足する区間Aの全ての実数xの関数値f(x) において、条件を満足するならば、
という説明が隠れて入っているので「全て」というキーワードを忘れないようにしましょう。

この極限の定義は、関数f(x) がx0の近傍の区間Aで定義されていなければならないという事を前提にしている。

(極限の定義の第2のポイント)
 上のε-δ論法による極限の定義の第2のポイントは、
x→x0 を、
0 < |x − x0| < δ
すなわち、x ≠ x0 の場合に)
と定義し、
一方で、
f(x)→Cを、
|f(x) − C| < ε
(すなわち、f(x) = Cの場合を含む
と定義して
極限を定義していることです。
これにより極限の意味を明確にしていることです。
すなわち、
x→x0 (x≠x0となる場合のみ)と、
f(x)→C (f(x)=Cとなる場合も含む)は、
同じ「→」であらわしていても、
意味が異なっていることを明確にしています。

《ε-δ論法(その2)》
(右側極限値と左側極限値)
 また、以上で説明したε-δ論法(その1)による極限の定義によると、変数xの値が、x0から微小な値 δ 以内の誤差の全ての実数xの値に対してf(x)が定義されていなければ、x0で関数f(x)の極限値が存在しない。

 そのため、関数f(x)の変数xの実数の定義域の境界x0 では、

x0から微小な値 δ 以内の実数の領域の半分が関数f(x)の定義域からはみ出して、定義域内に存在しないので、定義域の実数の境界x0 では関数f(x)に極限値が存在しないことになってしまいますが、以下の第2の定義(ε-δ論法(その2))の様に、閉区間の端点での極限値の定義を修正し、閉区間の端点で極限値がある、と定義します。

(第2の定義の極限の条件)
関数f(x)が、a≦x≦bで定義されている場合、
そういう閉区間(a≦x≦b)で定義された関数f(x)の端点については、以下の条件を満足する左側極限値、または、右側極限値が存在すれば、その端点で極限があると定義されています。

(1)左側極限値
どんなに小さな正の数 εを比較の相手と選んでも,
充分小さい正の微小量δを選べば、
ーδ<x-b< 0
を満足するbに近い全ての実数値のxが、
ある値C(その値Cは、εの値によらない固定値)に関して、
|f(x) − C| < ε
を満足するということが、
関数f(x)のbの左側極限が存在するという事である。
その値C =f(b-)
とあらわす。
この極限を、
x → b− 0 またはx → b−
のとき、
f(x)→ f(b-)
であると表現する。
f(b-)が存在するならば、端点bで関数f(x)に極限値があると定義します。

(2)右側極限値
どんなに小さな正の数 εを比較の相手と選んでも,
充分小さい正の微小量δを選べば、
0<x-a<δ
を満足するaに近い全ての実数値のxが、
ある値C(その値Cは、εの値によらない固定値)に関して、
|f(x) − C| < ε
を満足するということが、
関数f(x)のaの右側極限が存在するという事である。
その値C =f(a+)
とあらわす。
この極限を、
x → a+ 0 またはx → a+
のとき、
f(x)→ f(a+)
であると表現する。
f(a+)が存在するならば、端点aで関数f(x)に極限値があると定義します。

【等価な片側極限の定義】
 上に記載した片側極限(のうちの1つ)を、以下の、等価な定義であらわすこともできます。 

0<x-a<δとなる全ての実数xに対してf(x)の値があり
(すなわち、x < aであるxで、上式の条件を満たす全ての実数xについて、必ずf(x)が定義されていて)
(A)
そのxの範囲内のf(x)の下限値をf1とし上限値をf2とするときに、
f2-f1をいくらでも小さくするxの範囲を定める正の実数δ を選べることができるならば,
(B)
f1≦C≦f2
となる値Cで、f2-f1を小さくする各段階でのf1及びf2の値とは独立して存在する値Cを見つけて、その値Cを極限値と定義する。
そして、
x → a+ 0 またはx → a+
のとき、
f(x)→ f(a+)=C
と記述する。
----等価な片側極限の定義おわり-------

  (極限値が存在しない点が有限個ある関数)
 以下の図の関数f(x)のグラフを考えます。
(その1)この関数は、xの定義域をー100から100までで考えると:
x=0の点での極限とx=2の点での極限が存在しません。
x<0で、x→0とすると、f(x)→0になり(左側極限値)
x>0で、x→0とすると、f(x)→1になります(右側極限値)
関数の定義される領域の端点以外の点で、左側極限値と右側極限値が一致しない場合は、極限値が存在しません。

(その2)この関数は、xの定義域を0から2までで考えると:極限の第2の定義を適用し:
閉区間 0≦x≦2
において、その端点x=0もx=2も、片側極限が存在するので、端点での極限が存在し、閉区間全体で極限が存在します。

(注意)上で説明した、その1とその2の関数は定義域が異なるので異なる関数です。
異なる関数ですので、その1とその2で、x=0及びx=2の極限の有無の判定が異なっても、問題ありません。

関数の極限値が存在しないもう1つの例として、以下の図の関数 Y=sin(1/x) は
x→0で
Yの極限値が存在しません。
(この関数Yは、x→0において、ー1から1まで振動し、安定しません)
(極限値が存在しない点が無限にある関数の例)
 例えば、xが有理数の場合のf(x)の値とxが無理数の場合のf(x)の値が1以上異なるような関数には極限が存在しません。
どの位置においても関数の極限値が存在しない関数は、例えば下のグラフの関数のようになります。
(極限値が存在しない点が無限にあるが積分可能な関数)
上図のノコギリ関数g(x)を使って以下の関数を作ります。
この関数は、以下のx座標で極限が存在しない。
その他、
x=奇数/(整数×2)
の点では極限値が存在しない。

《下図に各種の関数の集合の包含関係をまとめた》

【問題】
「下図の様に、線を曲げて上下に段差があるグラフを作る。
そのグラフの段差の間隔を、先のグラフの間隔より狭めて変形したグラフを作る。
この作業を無限に繰り返して段差の間隔を無限に狭めたグラフの関数f(x)を作ったら、そのグラフは段差の部分で連続か否か?」
(問題おわり)

という問題を問われたら、
「 いや、そうなったら、それは、もはや、その無限にグラフの段差を狭くしている点x=0で、グラフの極限が存在しなくなりグラフが不連続になります。」(事実はこの通りですが)
と即答できるでしょうか。

 こういう問題に論理的に(数学的に)返答できるようにするため、極限を厳密に定義したのです。

【解答】
上図の様に、x=0でのグラフの段差を無限に狭くしたら、
(1)
 どんな小さな正の数 εを比較の相手と選んでも,
|f(x) − 0| < ε
とできるような、x0に近い実数xの範囲が存在しない事が以下の様にして証明できます。
(2)
以下の式で定義する実数xの範囲δをいくら狭くしても、すなわち、
0 < |x − x0| < δ となるxの範囲をいくら狭くしても、
上のグラフの関数f(x)の段差が無限に狭くなって、
0 < |x − x0| < δ となる範囲内にグラフの段差が包含されてしまいます。
(3)
グラフの段差が、
0 < |x − x0| < δ となるxの範囲内に包含される結果、
その範囲内のxに、
|f(x) − 0| の大きさが段差の高さ(の半分)くらい大きいxの値があります。
それゆえ、そのxの値では、小さな正の数 εによって、
|f(x) − 0| < ε
とする事ができません。
そのため、x=0で極限が存在しません。 極限が存在しないので、極限を使って定義した連続性も無く、この関数はx=0で不連続になります。
(解答おわり)

【位相空間論での極限の定義】
 これ以降は大学数学の話になります。高校生は読まないで良い話です。
《杉浦光夫著「解析入門Ⅰ」》
 〔杉浦光夫著「解析入門Ⅰ」51ページ〕では、位相空間論に基づく以下のような「極限」を定義している。
《位相空間論の極限の定義》
 位相空間論では、位相空間の数の集合を実数の集合Rとした上で、その集合の部分集合の(例えば有理数の)集合Aを定義域にした関数f(x) の極限が以下のように定義される。(定義域が有理数のみの関数でも極限が求められるのである)
 すなわち、関数f(x) の独立変数xの定義域が例えば有理数の集合Aであるとする。定義域Aのxの点(xは有理数)と、定義域Aを含む触点の集合(それは定義域Aと境界点の集合とを合わせた集合)に属する点aとを考える。
A∍x
(A∪境界点)∍a
とする。なお、点aではあるが、点aがAに属さない境界点の場合は点aを点βとあらわすことにする。
(参考)「嶺幸太郎 著:微分積分学の試練」の178ページに位相空間論での「触点」や「境界点」の定義がある。

 関数f(x) がある実数bに収束する極限値bが存在するということを、以下のように定義する。
 十分小さい正の実数εを考え、次に正の実数δを考える。
すなわち、ある実数bに対して、どのように小さい値のεに対しても、
ある値の実数δによって、a以外の集合Aの要素のどのxに対しても、
0<|x-a|<δ, x≠a,
ならば(上記の2つの教科書がともに、この式を間違えている)、
|f(x)-b|<ε
となるならば、f(x)のx=aの極限値bが存在するものとする。


(極限の定義おわり)

(注意1)
 この極限の定義で注意する点は、有理数の集合Aで定義された関数f(x) の極限値bを、有理数の集合Aに属する独立変数xのみで定義しているが、xの収束する先の数aは集合Aに属する点だけではなく、境界点βの場合もあることに注意すること。つまり、変数xが集合Aに属さない点(位相空間の数の集合には属する)の境界点βに収束する場合の、そのときの関数f(x) の極限も定義されている。
すなわち、式(10a)の極限の定義とともに、式(10b)で、点xの収束する先のβが(位相空間の数の集合に属するが)定義域の集合Aには属さない境界点βである場合もf(x) の極限が定義されている。極限の概念は関数の定義域Aに限定できないのである。

(参考)「嶺幸太郎 著:微分積分学の試練」の112ページに位相空間論での極限の定義がある。

(注意2)
 この位相空間論に係わる極限の定義には、古典的(基礎的)微分積分学でのxの極限の存在条件である「点aに収束するxの無限数列の値xでf(x) が定義されていなければならない(点aが集積点でなければならない)」、という基本的前提条件が抜けて、点aが孤立点の場合でも極限を定義している。そして、「点aに近い微小区間のどの実数に対してもf(x) の値が定義されていなければならない」、という古典的(基礎的)微分積分学における、関数f(x) の極限が存在するための前提条件が抜け落ちている。

(注意3)
 この定義によって、以下の例のように極限値bを求めることができる。
定義域の集合A={1,4}とし、f(1)=10,f(4)=20,とする。
点a=1において、以下の理由で
b=20という極限値がある。
δ=4とすれば、
x=4では、0<|4-1|<4=δが成り立つ。
それを満足するx=4ならば、
どのεの値についても、
|f(x)-20|<ε
が成り立っている。
そのため、点a=1における関数の極限値bは20である。

一方で、集合A={1}とし、f(1)=10,とする例では以下の不具合がある。
点a=1においては、
b=200とすると、
δが何であっても、
x=1では、0<|1-1|が成り立たない。
つまり、どのxについても、0<|x-a|<δが成り立たない。
((偽の命題)ならば(何かの命題)である。)
という命題は常に真である。
(何かの命題)が、|f(x)-200|<ε
である場合に、定義により、|f(x)-200|<εが成り立たなくても、極限値b=200である。
しかし、(何かの命題)が、|f(x)-400|<ε
である場合に、定義により、|f(x)-400|<εが成り立たなくても、極限値b=400である。
この場合に、極限値b=200でもあり、極限値b=400でもあることになり、極限値が何にでもなることになる。
そのように、極限値が無意味になる不具合がある。
(こうなるので、この極限の定義には不備がある。)

更に、定義域の集合A={1,4}とし、f(1)=10,f(4)=20,とした関数の例をもう1度考えてみる。
この関数については、先に、
点a=1において、δ=4に関して、b=20という極限値がある。
と結論付けた。
ここで、点a=1において、δ=1 に関して考察する。
δ=1の場合は、
x=1では、0<|1-1|が成り立たない。
x=4では、|4-1|<1=δが成り立たない。
すなわち、どのxについても、0<|x-a|<δが成り立たない。
((偽の命題)ならば(何かの命題)である。)
という命題は常に真である。
(何かの命題)が、|f(x)-200|<ε
である場合に、定義により、|f(x)-200|<εが成り立たなくても、極限値b=200である。
しかし、(何かの命題)が、|f(x)-400|<ε
である場合に、定義により、|f(x)-400|<εが成り立たなくても、極限値b=400である。
この場合に、極限値b=200でもあり、極限値b=400でもあることになり、極限値が何にでもなることになる。
そのように、この関数の場合でも、極限値が無意味になる不具合がある。
(こうなるので、この極限の定義には不備がある。)

この関数の、点a=1における極限を、以下で、論理式を解いて地道に解析する。f(x) の点aでの極限bの定義を表す論理式は以下の式である。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,∀x∊A,{0<|x-a|<δ ⇒ |f(x)-b|<ε}
この論理式は、以下の式に書き換えられる。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,∀x∊A,{(0<|x-a|<δ)で無い ∪ (|f(x)-b|<ε)}
この式を同値変形する。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,∀x∊A,{(0=|x-a|) ∪ (|x-a|≧δ) ∪ (|f(x)-b|<ε)}
 この論理式は、∀記号で表した要素のεとxの全ての値の組合せの論理式を連立した論理式である。
そのため、上記の関数におけるa=1での極限値bの解は、以下の連立論理式に展開して解くことができる。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,x=1,{(0=|1-1|) ∪ (|1-1|≧δ) ∪ (|10-b|<ε)}
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,x=4,{(0=|4-1|) ∪ (|4-1|≧δ) ∪ (|20-b|<ε)}
整理すると、
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,{(0=0)}
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,{(|4-1|≧δ) ∪ (|20-b|<ε)}
1つ目の論理式は常に真なので2つ目の論理式のみになる。
∃b∊R,∀ε>0,∃δ>0,{(|4-1|≧δ) ∪ (|20-b|<ε)}
この式を同値変形すると、
∀ε>0,{(3≧δ) ∪ (|20-b|<ε)}
更に式を同値変形すると、
(3≧δ) ∪ 20=b
この解は、以下の意味を持つ。
(解1) δ≦3の場合に、極限値bは任意の値を持つ。
(解2) δ>3の場合に、極限値b=20。
極限値bを与える条件のδの値はどの値にしても良いから、 極限値bの解は、
b=任意の値又はb=20である。
(極限bの解おわり)
(極限bの値が定まらないので、極限の定義には不備がある。)

《位相空間論の極限の定義に対する感想1》
 関数f(x) の変数xがx=aの点に限りなく近づくとf(x) がある実数bに収束する極限値bが存在するということを、以下のように定義を修正する方が適切だと考える。
 十分小さい正の実数εを考え、次に正の実数δを考える。
すなわち、ある実数bに対して、どのように小さい値のεに対しても、
ある値の実数δによって、定義域の集合Aの要素のxに対して、
0<|x-a|<δ, x≠a,
を満足するa以外のxが存在し(点aが集合Aの集積点であること)、この式を満足する全てのxで、
|f(x)-b|<ε
となるような実数bが存在するならば(またそうなる場合に限って)、f(x)の極限が存在するものとし、その極限値をbとする。
(位相空間論の極限の定義の修正のおわり)
と定義するならば、1点のみの関数には極限が存在しない。すなわち、1点のみの関数の極限が無意味になる不具合が無くなる。
なぜそのように定義しないのかが疑問である。

《位相空間論に対する感想2》
 古典的(基礎的)微分積分学の極限の定義や連続性の定義を、孤立点を含む定義域Aやあらゆる形の定義域Aに対して使える生きた要素にして新しい数学分野(位相空間論)を構築しようとする開拓者は、以下のように考えたのではないかと推測する。
「従来の古典的(基礎的)微分積分学の極限の定義や連続性の定義を忠実に真似した道具を使うよりは、いっそのこと、位相空間論で使いやすい都合の良い形にそれらの定義を作り変えてしまって、それらを土台にして理論を作った方が良い。(例えば「孤立点」の存在が極限の定義を無意味にすることがないように、「孤立点」はあらかじめ「連続な点」であると定義し、孤立点の極限はf(a) であると決めてしまって、「孤立点」については、それ以外の定義を排除しよう)」

《位相空間論に係わる関数の連続性の定義》
 位相空間論に係わる微分積分学による関数の連続性の定義は、正確には、式(10):

によっては定義されていない。
 εδ論法(イプシロンデルタ論法)で関数の(値域の)連続性を、極限の概念を経由せずに、以下のように定義する。
関数f(x) の定義域をAとする。(Aは有理数のみでも良い)
ある点a∊Aにおいて、(点aは孤立点であっても良い)
『どのようなε>0に対しても、
あるδ>0において、
全てのx∊Aに対して、
|x-a|<δ
となるならば、
|f(x)-f(a)|<ε
となる。』
という命題が成り立つならば、
f(x)は点aで「(値域の)連続性」がある。
という定義である。
(関数の連続性の定義おわり)

「関数 f(x) が、その関数f(x) の定義域Aのすべての x =aの値で位相空間論に係わる連続性があるとき、 f(x) は位相空間論に係わる連続関数である」
(この位相空間論に係わる連続性の定義には、孤立点に連続性があるという定義が含まれている。孤立点の極限は、連続性の定義を経由して定義する。)これにより関数の極限の定義が完全になる。関数の連続性がある点aには、必ず関数の極限値が存在することになる。逆に、ある点kに関数の極限値が存在しなければ、その点kで関数は連続ではない。
 この関数の連続性の定義は、正確には、位相空間論の連続写像の定義の基礎となる定義であって、位相空間論の連続写像の定義そのものではない。実数R全体での点aでのこの連続性の定義が満足される関数ならば、実数全体での位相空間の連続写像と同値になる。
(連続の定義おわり)

 このように、関数f(x) の点aでの連続性(値域の連続性と呼んだ方が良い)を定義している。
極限の存在条件よりも条件が厳しくなったのがこの連続性の条件である。(しかし、本物の連続性の条件にするには、点aが定義域Aの要素の集積点であり、更に、点aの近傍の定義域Aが区間であるという極限の定義の役割の第1の条件が不足している)

リンク:
実数上関数の収束と数列の収束の同値性とその証明
連続性公理と実数を定義する3つの方法 (初学者向けの話)
極限と連続性
極限の厳密な定義(最低限)
実数
『増訂解析概論』高木 貞治 著の現代仮名遣い版
初等解析学 (微分積分学) 入門 §1 はじめに
初等解析学 (微分積分学) 入門 §4 数列の極限
初等解析学 (微分積分学) 入門 §6 実数の性質
【微分積分学】イプシロンエヌ論法をわかりやすく丁寧に~数列の極限の定義~
ε-δ論法の論理式の意味
【微分積分学】上に有界な単調増加数列は収束することの証明
【微分積分学】ボルツァノ–ワイエルシュトラスの定理とその証明
【微分積分学】コーシー列とは~定義と収束性の証明~
高校数学の目次


2017年7月27日木曜日

合成関数の微分の公式の信頼性

https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/06/blog-post_2.html
https://schoolhmath.blogspot.jp/2017/08/blog-post_17.html
 ページ内リンク:
▷絶対値で表した関数を含む合成関数の微分
▷合成関数の全ての変数の範囲の微分が合成関数の微分の公式では求められない例

 以下の合成関数の微分の公式があります。
この式で、左辺のyは、
y=f(g(x))=h(x)という合成関数をあらわしています。
また、右辺の導関数(dy/dt)のyは、
y=f(t)という関数をあらわし、
公式の左辺の関数y=h(x)とは異なる関数をあらわしています。 

すなわち、この合成関数の微分の公式は、
関数f(t)とg(x)があり、
その関数の合成関数の、
y=f(g(x))=h(x)
という関数を作った場合に、
f’(t)=(dy/dt)と、
g’(x)=(dt/dx)との積が、
h’(x)=(dy/ dx)になる、
という公式です。

どの関数f(t)とg(x)についても、公式の成立条件が満足されれば、公式が成り立つ、という公式です。

この公式には一定の縛り(成立条件)があります。それは、「(dy/dt)=f’(t)の有限の微分係数が存在し、(dt/dx)=g’(x)の有限の値の微分係数が存在する(微分可能)」という前提条件です。
 
「関数が微分可能(有限の値の確定した値の微分係数が存在する)」という意味は、
「関数が、その変数のその値に限って、その変数で微分可能であれば良く、その変数のその他の値での関数の微分可能性は関係しない」
という意味です。

《絶対値で表した関数を含む合成関数の微分》
 以下の合成関数 f(x) を微分します。

この合成関数は、絶対値記号まで関数と見て絶対値記号をつけたまま微分して掛け合わせます。


(合成関数の微分おわり)

《合成関数の全ての変数の範囲の微分が合成関数の微分の公式では求められない例》
 関数の微分が存在しない例として、以下の2つの図の関数:

y=f(t)
t=g(x)
の合成関数を使って、
合成関数の微分の公式の信頼性を調べてみます。
y=f(t):

(図1)

t=g(x):
(図2)

関数f(t)はt=0でtによる微分が存在しません。
そのため、t≠0の場合だけに、合成関数の微分の公式を適用します。

 ここで、この問題の意図が良く分かるようにするため、この合成関数の形を下図に描きます。
y=f(g(x))=h(x):
(図3)

この合成関数h(x)の、xがー1から1までの間の関数の値は良く分からないので、点線でごまかしました。

 このあいまいさが気持ち悪い人のために、関数f(t)を以下のグラフのように定義することができます。 
(図4)

 この場合に、関数t=g(x)は図2の関数を用いると、合成関数h(x)=f(g(x))は、以下の図5になります。
(図5)

以下で、関数f(t)の微分で、有限の確定した微分係数が存在する変数 t の定義域である、
t≠0
の場合だけに合成関数の微分の公式を適用します。
先ず、t=g(x)≠0を満足する条件の1つの、
x<-1の場合を計算します。
次に、t=g(x)≠0を満足する残りの条件の、
 x>1の場合を計算します。
以上で得た結果をまとめると、
関数y=f(t)については、(dy/dt)=f’(t)の有限の微分係数が存在するtの範囲は、t≠0である範囲である。
関数t=g(x)については、xのどの値でも有限の微分係数が存在するので問題無い。
制限された範囲であるt≠0を満足するt=g(x)のxの範囲は、
x<-1 or x>1
である。
そのxの範囲内で、
合成関数の微分を計算すると、以下の結果が得られた。
(計算おわり)

(補足)
 ここで、合成関数y=h(x)が図5の形になる場合に、
-1<x<1の間で
h’(x)=0
になっています。
しかし、合成関数の微分の公式では、
-1<x<1の間で
h’(x)=0
となることを導き出すことができませんでした。

 このことから、
合成関数の微分の公式では、0を0で割り算することになる部分で、合成関数の一部の微分係数が計算できないことがある、
ということがわかりました。

(補足2)
 以上の調査の結果を見ると、
合成関数の微分の公式の縛り(成立条件)である
「y=f(t)の微分が存在し(確定した有限値になる)、
t=g(x)の微分が存在する(確定した有限値になる)」
という前提条件は、
「式を0で割り算する計算をしてはいけない」
という計算の縛りと同じ様な意味を持っていることがわかります。

 すなわち、「微分可能」という前提条件は、
「0で割り算しない場合に限る」という前提条件 、
言いかえると、
「計算の違反が無い計算に限る」という前提条件、
を加えて微分の式を書くことだと考えます。

 そういう「万能の条件」を正しく組み込んで計算するならば、どの様な計算もできてしまいます。
(その条件を正しく組み込まないでその計算をまねした計算は計算違反がある誤った計算になります)
その通りに、どの様な計算もできるのが、合成関数の微分の公式やその他の公式が成り立つ根拠だと考えます。

リンク:
高校数学の目次

2017年7月25日火曜日

逆関数や合成関数の概念



(ページ内リンク先)
▽はじめに
▽関数の定義
 (外部リンク)連続関数の正しい定義 
  微分積分を使いものにする言葉  
  「区間」という用語の意味
  連続関数の合成関数
 (外部リンク)原始関数とは何か
▽逆関数 
▽合成関数 
▽逆関数定理 
▽陰関数 
▽値域に虚数を含む関数g(x)の逆関数 

(はじめに)
高校1年に2次関数を学びましたが、
高校2年になると、3次関数や4次関数や分数関数を学び、
三角関数も学びました。

そして、指数関数や対数関数も学びます。

高校2年では、このように多くの関数を学びますが、
以下の関数の概念も覚えましょう。

大学生向けの参考書「微分積分学入門」(著者:横田 壽)の18ページ近くに、関数の定義が書いてあります。

(大学1年生向けの参考書の「やさしく学べる微分積分」(石村園子) ¥2000円 も、間違いが無く、高校2年生が初めて関数及び微分積分を勉強するのにも、適切な参考書だと思います)

《1.1 関数の定義(definition of function)》
 2 つの集合の間の関係を決める規則を関数といいます.ここでは,実数の集合を考えます.
Rを実数全体の集合とします.
ある実数の集合D に属する各数x に対して,実数y が1 つ定まるような規則 f を、
D からR への1 価関数(single-valued function),または、1変数(の1価)関数(←「やさしく学べる微分積分」2ページ)、または単に関数といいます.

すなわち、「ある装置にxを入力すると、それに応じた数yが出力されるとき、そのy=f(x)を与える装置f()を関数と呼びます」。

「微分積分学入門」(著者:横田 壽)(又は、「やさしく学べる微分積分」(石村園子))は、とても明瞭(かつ、正確)に数学の関数・極限・微分・積分を説明してくれていますので、
高校2年生でも、関数や微分・積分がよくわかるようになると思います。

【困った問題】
 高校数学での、数学用語「関数」の定義では、以下の点があいまいにされていて関数の定義が不完全になっているという問題がある。正しくは、所定の関数を定める(所定の関数を定義する)場合に、関数のグラフの形を自由に定めるのと同時に、関数の定義域を自由に定める。つまり、所定の関数のグラフの形とその定義域を一体のものとして定めて所定関数が定まる(所定関数が定義される)のである。
 『関数の定義と値、定義域・値域と最大・最小』のサイトを参照すると、「所定の関数の定義域は、関数のグラフの形を定めるのと同時に自由に定める」ことが明示されていない。そのように、高校数学の関数の定義が不完全という問題を抱えている。そのため、異なる2つの関数である、f(x)=1/x, (x≠0)という関数(連続関数では無い)と、g(x)=1/x, (x>0)という関数(連続関数)が高校数学では区別ができないという問題を抱えている。
 そのように、高校数学の範囲内では正しい数学が教えられていないので、数学の天才であっても、良い先生から正しい数学を教わる必要があります。


《関数値が複素数の関数もある》
 関数の定義によると、実数の変数xに対して、複素数のyの値の関数値f(x)を与える関係f(x)も関数です。 

 関数f(x)=xというように、数xを使った演算式によって値を求める演算が関数であるというように感じていた人も多いと思います。その様に変数xの式によって定義されている関数は、xが複素数であっても、その演算結果が定義され、その演算が可能なあらゆる数をxとして使って良いです。そのxの値に対してf(x)という式の演算の結果の値を関数値y=f(x)として対応付ける関数です。

 上で定義した関数の定義では、変数xの演算が明確な式で表せ無くても、変数xに対してf(x)の値を対応付ける関係さえ定めてあれば、それも関数であると定義しています。そのようにして、関数の概念を広く定義しています。
 そのように関数の概念を広くした結果、変数xに対応する関数値を定義する変数xの集合の範囲(変数xを想定する範囲)を明確化する(変数xの「定義域」を指定する)必要が生まれました。

 それにより、有理数の変数xに対してのみ、実数のyの値の関数値g(x)を与える関係g(x)も関数であると定義できます。その関数の変数xの定義域は「有理数」であって、その変数xの定義域には無理数は含まれていません。

 また、変数xを実数に限り、変数xが実数以外の複素数の場合については考えない関数も定義できます。(そういう関数の方が、普通に考えられている関数のイメージに近いと思います。)

《変数zの定義域が複素数の関数もある》
変数z=x+iy,
という複素数zに対して、複素数:
F(z)=f(x,y)+ig(x,y),
という複素数F(z)を対応させる関数もあります。
この関数F(z)は、実数の2変数関数f(x,y)とg(x,y)を使って表されますが、
f(x,y)とg(x,y)の式の組み合わせによっては、以下の例のように、zという1つの文字で表された演算式 h(z) の形では関数値を表せない(h(z)≠f(x,y)+ig(x,y))複素数変数の関数もあります。


《定義域が異なる関数は、異なる関数》
 また、関数は変数xの定義域の各変数値に対して関数値f(x)を対応付けさせる関係の事ですので、f(x)をxで演算する演算が同じであっても、定義域が異なれば異なる関数である事になり、関数が変数xの定義域の数だけ複数の関数が作れる事になります。


【連続関数の正しい定義】
 特に、微分積分の命綱を握っているのが連続関数の概念です。
その連続関数の高校数学での定義が間違っているので注意が必要です。

【原始関数とは何か】
後に積分を学ぶ際に、原始関数を学びますが、その関数の定義があいまいで不正確なので要注意です。

《(1)逆関数》
逆関数という関数の概念があります。

「微分積分学入門」(著者:横田 壽)の21ページ近くに、逆関数の定義があります。

逆関数(inverse functions)
関数 f の定義域D(f) 内の任意の2 数x1, x2 に対して,
x1 ≠ x2 ⇒ f(x1) ≠ f(x2)
が成り立つとき, f は1 対1 の関数(one-to-one function) であるといいます.
(f は(写像として)単射である (injective) とも言います。)


ここで、
x1 ≠ x2 ⇒ f(x1) ≠ f(x2) とは,
x1 とx2 が異なるならば, f(x1) とf(x2) は異なることを意味しています.
この場合,値域R(f) の各数y に対して, y = f(x) であるようなx を1 つ定めるような規則が考えられます(なぜでしょうか).
これをf の逆関数(inverse function)とよび,
f には逆関数が存在するといいます.
 関数 f の値の集合を「値域」と呼びます。その値域が、 f の逆関数の定義域になります。そして、 f の逆関数の値域が、関数 f の定義域になります。


y=f(x)
という関数があれば、
関数の値が減少から増加に転ずる点がある場合は、1対1の関数関係がある部分だけに関数を限定するために、
その点で関数を2つに分割する必要があります。
そうしないと、
その点の前後で複数のxに同じyが対応することになってしまうからです。
複数のxに同じyが対応してしまうと、その関数には逆関数が作れなくなってしまうので都合が悪いからです。

そのようにて、1対1対応の関数として定義した関数には「逆関数」が存在します。
x=f -1(y)
という逆関数があります。

逆関数は、変数xとyの立場を入れ替えることで作れます。
その逆関数の形を以下の式3のグラフで描くことができます。
式3が逆関数の形をあらわしています。上図のように、逆関数のグラフは、直線y=xに関して、元の関数f(x)のグラフに対して対称なグラフになります。

上図のグラフのように元の関数と逆関数が交差する場合もあります。

 下図のグラフのように不連続な元の関数f(x)と、その逆関数が交差する場合もあります。


「ある関数 f に対して逆関数 f-1 が存在する」という表現はくせものです。
なぜなら、ある関数 y=f(x) のグラフがあれば、そのグラフのxとyを入れ替えたグラフを考えて、その入れ替えたグラフから、以下のようにして、逆関数 f-1 のグラフを考え出すことができるからです。
(1)逆関数 f-1 のグラフが1つの変数に対して2つの値を持つ場合には、グラフを分割して、分割された逆関数 f-1 のグラフでは、1つの変数に対して1つの値しか持たないようにする。そして、その元の関数 y=f(x) のグラフもそれに対応して分割する。
(2) そうすれば、分割された元の関数 y=f(x) が、分割された逆関数 f-1 のグラフに対応する逆関数 f-1 を持つ。
(3)そうすれば、どの関数も逆関数を持つことにできるのではないか?
という疑問が生まれるうさんくささがあるからです。

しかし、以下の事例のように、グラフを分割する操作では対応し切れず、本当に逆関数が存在し得ない場合もあります。

下の図のグラフのように、xの値が少し変わっても t の値が同じ値になる関数の部分では、
複数のxに1つの t が対応します。

その関数の部分には逆関数が存在出来ません。
無理に逆関数のグラフを作ろうとすると、そのグラフは下の図のように、垂直に立つグラフになってしまい、1つの変数 t に対して複数の値が与えられることになってしまうからです。
1つの変数に1つの値を対応させる関数のグラフにすると下の図のように、形が変わってしまいます。
この場合には、絶対に逆関数が存在し得ないグラフの部分(関数の一部分)がありました。

 関数f(x)が1つながりに連続な関数であって、単調増加な関数である場合には、その逆関数が存在します。
【関数f(x)が単調増加とは】
 x1<x2なならば、f(x1)<f(x2)となる関数f(x)を単調増加な関数と呼ぶ。
------単調増加の定義おわり-------------

 一方で、以下のグラフの不連続関数f(x)であっても逆関数を持ちます。
 以下のグラフの不連続な点を持つ関数f(x)も1つの一体の関数として逆関数を持ちます。
 次に、以下のグラフA(E)BCDで表す不連続な点を持つ関数f(x)は、所定の点で2つの関数に分割することで、分割されたそれぞれの関数が逆関数を持つようにできます。
f(x)の定義域を限定することで関数が逆関数を持つようにする場合。その定義域を限定した関数にする、元の関数f(x)を分割する点は、点Eで関数f(x)を分割しても良いし点Cで関数f(x)を分割しても良いです。

《(2)合成関数》
 合成関数という関数の概念があります。

「微分積分学入門」(著者:横田 壽)の21ページ近くに、合成関数の定義が書いてあります。 

合成関数(composite functions)
 関数どうしのつなぎ方として,
合成法則(composition) とよばれる方法について考えます.
まず, f(x) とg(x)2 つの関数を用意します.
次に任意のx に対して規則g を用いて1 つの実数g(x) を取り出します.
もしこのg(x) が関数f(x) の定義域に入っていれば,
規則f を用いて1 つの実数f(g(x)) を取り出すことができるでしょう.
ところで,この実数f(g(x)) は何なのでしょうか.
もしg(x) の値域がf(x) の定義域に含まれていれば,
g(x) の定義域内の各数x に対して, f(g(x)) を作ることができます.
これはg(x) の定義域内の各数x に対し,ただ1 つの実数f(g(x)) を定める規則と考えられます.
よってこの規則をf とg の合成関数(composite function) といい,
f ◦ g で表わすと(f ◦ g)(x) = f(g(x)) となります.


(例1)以下に合成関数の例をあげます。

 上の式はxの関数hを合成関数の形で表現しました。
関数hは、gというパラメータ関数を使って、式1と式2とであらわした、結局は式3の形のxの関数です。
hは、式1の形と式3の形との2つの形の式であらわすことができます。
 この関数hは、以下の形の合成関数の形であらわすこともできます。
 式3の形の関数hは、sというパラメータ関数を使って、式4と式5であらわすことができます。
hは、式4の形でもあらわせます。
パラメータ関数を自由に選ぶことで式3のxの関数hは、式1や式4の形やその他の形の無限に多くの形であらわすことができます。

(例2)もう1つの合成関数の例をあげます。

 ここで、関数g(t) については、g(t) の値域がf(x) の定義域に含まれていなければ、合成関数とならない。
つまり、x=g(t) の定義域内の各数t に対して, f(g(t)) を作ることができるためには、
x=g(t) の値域がf(x) の定義域(x≠0)に含まれている必要がある。
 そうなるために、

という具合に、合成関数を作る計算をさかのぼって考え、
x=g(t) の定義域が、
t≠1
でなければならない。


【逆関数定理】
x1 ≠ x2 ⇒ f(x1) ≠ f(x2)
が成り立ち, f が1 対1 の関数(one-to-one function) であるとき、以下の図の1対1の写像の関係があります。

1対1の写像をする関数 f には逆関数が定義できます。
そこで、関数 f で1対1の写像をした後で、逆関数で定義される1対1の写像をする、合成関数の写像をすれば、以下の図の様に元に戻ります。
また、逆写像の変数yの定義域の変数yに対して逆写像で1対1の写像をした後で、関数 f で定義される1対1の写像をする、合成関数の写像をすれば、以下の図の様に元に戻ります。
これは、逆関数定理と呼ばれています。

(陰関数の定義)
微分積分学入門」(著者:横田 壽)の192ページに、陰関数の定義が書いてあります。

6.8 陰関数(implicit functions)
 方程式3x+2y +1 = 0 から,

x の関数としてのy、
つまりy = −(1 + 3x)/2 を考えることができます.
 

 一般に2 変数関数 f(x, y) に対して,1 変数関数 y = g(x) が常に f(x, g(x)) = 0 を満たすとき,
y = g(x) を、

方程式 f(x, y) = 0 から定まる陰関数(implicit function) といいます.

方程式 f(x, y) = 0 から定まる陰関数 y = g(x) を求めることは, f(x, y) = 0 をy について解くことと同じです.

『増訂解析概論』高木 貞治 著
では、以下のように陰関数を定義している。
82.陰関数
 二つの変数x,y,に関係式F(x,y)=0 が与えられるときは,xとyとが各別に任意の値を取ることは出来ない.もしもxの関数y=f(x) をyに代入するとき,上記の関係がある区間において常に成り立つならば,f(x) はF(x,y)=0 によって陰伏的に定められるという.もしもこのような関数f(x) が二つ以上あるならば,それらを陰関数の枝という.その場合,それらの枝を総括してyをxの多価関数という.
 簡単な一例として,x+y=aを取る.このとき、

が区間[-a,a]における陰関数yの二つの枝である.符号±によって二つの枝を区別するのは連続性の要求に基づく(もしも連続性を要求しないならば,xの各々の値に対して任意に符号をきめても差し支えないはずである).

また、高校生向けサイトでも:「陰関数定理」の章で:
「F(x,y)=0とする。実数のある開区間で定義された連続関数 y=φ(x)であって、 F(x,φ(x))=0を満足するφ(x)が存在する場合に、
φ(x)を、方程式F(x,y)=0が定める陰関数と呼ぶ」
と説明しています。


(円の方程式の陰関数の例)
円の方程式は、
f(x, y) ≡+yー1=0 (1)
ですが、
この方程式から求める、
f(x, g(x)) = 0 を満たす1 変数関数 y = g(x) が、
この円の方程式から定まる陰関数です。露わな形の関数g(x)を使ってy=g(x)という式であらわせた場合のg(x)は「陽関数」とも言います。y=g(x)が有りそうだがその関数g(x)の式の形が分からない段階では、その分からない式を「陰関数」と呼び、g(x)の式が露わに分かったら、その式g(x)を「陽関数」と呼ぶのが良いと考えます。

円の方程式自体は、方程式なのであって、それ自体は陰関数とは呼ばないのです。「陰関数表現である」と言います。

《虚数を値域に持つ関数g(x)》
1 変数関数 y = g(x) の値域に、

虚数のyの値を持つ、以下の図の様な、(円の方程式(1)において、xの二乗>1の場合の虚数の値のg(x)を値域に持つ)関数が作れます。
この式2aと式2bで定めた1変数関数
y=g(x)
は、常に f(x, g(x)) = 0 を満たすので、円の方程式(1)から定まる陰関数です。ただし、ここでは、g(x)の式の形が露わに分かったので、もう、このg(x)を陽関数と呼んだ方が良いとも思います。
 この関数g(x)の変数xの定義域は、マイナス無限大からプラス無限大までの全ての実数であり、
値域は0から1までと、k≧0で範囲が指定された虚数 ik です。

《値域に虚数を含む関数g(x)の逆関数》
 上記の関数g(x)は、以上の定義域で定義された関数ですが、xの異なる値に対して同じyの値が対応するので、この関数g(x)の逆関数は無い。しかし、関数g(x)の変数xの定義域をx≧0に限定すれば、以下の逆関数があります。

元の関数の定義域を限定する g(x), (x≧0)

この逆関数の定義域はg(x)の値域であり、逆関数の定義域の実数は0から1までしか無く、それ以外の定義域は純虚数です。そして、逆関数の値域はg(x)の定義域であり、0以上の実数です


なお、円の方程式(1)を満たす陰関数の式は、上の式だけでは無く、以下の式2c、2dも円の方程式(1)を満たします。
これらの式2cと2dを使って、円の方程式(1)を満たす他の陰関数も作れます。
 また、式2aと式2cを一緒に使った関数を作って、変数xの1つの値に対して関数値g(x)が2つある2価関数(円全体を表す式)を作ることもできます。 
 また、関数値を虚数だけにした、式2bと式2cを一緒に使った関数を作って、変数xの1つの値に対して関数値g(x)が2つある虚数の関数値を持つ双曲線の形をした2価関数を作ることもできます。

(補足)
 方程式3x+2y +1 = 0 から,
変数変換して、
変数t≡3x+2y の関数としてのy、
すなわち、t=-1を考えることができます。
この方程式は、特定のtの値に関するyの値が無限に多くあることをあらわす直線の式です。

この直線の式は、ty-座標平面において、傾きが無限大の直線をあらわしています。
この直線の式をあらわす関数は、もはや、tの1価関数ではありません。
なぜなら、t=-1に対する、yの値が2個以上あるからです。

このように、1価関数であるか否かということは、観察する座標系をどう定めるかによって変わる関係なのです。
また、関数とは、座標系を変える事によって変わる、座標系の「変数」を与える座標軸の座標値と、「関数値」を与える座標軸の座標値との関係なのです。

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