2013年9月30日月曜日

ベクトルの使い道:問題をやさしくする数学


 数学は、本来、難しい問題をやさしく解く方法の探求によって生み出されてきた学問です。
 数学で何か新しい手法を学んだら、「その手法でどの問題がやさしくなるのだろうか」という価値判断で新しい手法を評価するのが良いと思います。

 以下、本シリーズでは、個々の数学手法が、数学のどの問題をやさしくするかという観点で、学んだ数学手法の使い道を解説していきます。

【ベクトルの使い道(1)】3点が1直線上にある証明が、図形の本質をつかんで論路的に証明できる。
 ここをクリックした先の事例が参考になると思う。


【ベクトルの使い道(2)】三角形の重心の計算が簡単になる。


【思い出してください】三角形の重心はベクトルで以下のように計算できたことを思い出してください。


先ず、実数変数のパラメータsを使ってあらわした、以下の直線ADの式1と、実数変数のパラメータtを使ってあらわした直線BEの式2をイコールで結んで計算する。
それだけで、2つの実数変数の値が確定して、それにより、その2つの直線の交点Gが計算できます。

式1と式2のベクトルをイコールで結ぶと、以下のように、2つの実数変数の値に関する連立方程式が得られ、それにより、2つの実数変数sとtが確定する。
 この計算で、直線ADと直線BEの実数変数sとtの値が確定し、それにより、交点Gをあらわす式が得られました。
 (解答おわり)

 直線ADと直線CFの交点Gをあらわす式は、ベクトルbとベクトルcを交換してあらわすことで得られます。その式は、上の計算で得たベクトルAGを表わす式と同じになります。よって、直線ADと直線CFの交点が、同じ点Gで交わることが証明できました。


(補足)
 なお、ベクトルであらわした2つの平面の交線を求めるときも同じで、実数変数のパラメータを使って面をあらわした、2つの面の式同士をイコールで結んで計算するだけで、3つの実数変数が消えて、1つの実数変数だけが残って、その実数変数であらわした交線の式が求まります。
 また、ベクトルであらわした3つの平面の交点を求めるときは3つの面の式を互いにイコールで結んで計算すれば良い。


  (むずかしい問題がやさしくなったか)
 三角形に描いた3直線が1点(重心)で交わる問題を図形の証明問題として解こうとするとけっこう難しい問題だったと思います。その難しい問題がベクトルを使うことでやさしくなりました。

【問】以下の図の面αと面βの交線を求めよ。

このような問題も、以下の式1と式2の様に、
実数変数のパラメータsとtを使って面αをあらわし、
実数変数のパラメータwとuを使って面βをあらわします。
以下の様に、その2つの面の式同士をイコールで結び、あとは、計算間違いをしないように細心の注意をして計算していくだけ(それが難しいので訓練が必要ですが)で答えが得られます。
このベクトル方程式のベクトルa、b、cが、それだけで三次元空間の全ての点をあらわすことができる、線形独立な(他のベクトルの線形結合ではあらわせない)場合に限り、以下の式が成り立ちます。
この、4つの実数変数sとuとtとwに関する3つの式の連立方程式を解いて、式1の2つの実数変数sとtの関係を求める。
上の計算で得た、実数の変数tを実数の変数sであらわす式3を、面をあらわす式1に代入して実数変数tを消去して、実数変数sだけで位置ベクトルをあらわす式4を得る。
式4bは、1つの実数変数sだけで位置ベクトルをあらわす式であり、その式は、直線(交線)の位置ベクトルの式である。
すなわち、実数変数sと、ベクトルcとベクトルaを使った式3bで交線があらわされた。
(解答おわり)

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