2019年12月17日火曜日

3次元ベクトルの分解の公式

【課題】
 以下の図の3次元ベクトルzを、3次元ベクトルaとbとcの方向のベクトルの和であらわす公式を導き出す。
(課題おわり)

《究極の方法:先ず第1には》
 空間ベクトルzは以下の様に3次元の直交ベクトル系a,h,avを定義して計算して、それらの直交ベクトル系の成分を計算する事で容易に成分の分解を行うことができます。


このベクトルa,h,avは、互いに直交する単位ベクトルであり、任意のベクトルzが以下の式で表せる。


 3次元ベクトルzは、この様に定義した直交ベクトル系a,h,avの成分を計算する事で容易に成分の分解を行うことができます。

 3次元の斜交座標系の各座標軸の方向を向く、線型独立(一次独立)した3つのベクトルaとbとcがある場合に、空間ベクトルzをベクトルaとbとcであらわす公式も、ベクトルzを直交座標系の成分へ分解して求めるのが基本です。それによって、空間ベクトルzを3つのベクトルaとbとcの和であらわす公式を導き出せます。
(究極の方法おわり)

 しかし、以下では、最初は、究極の方法以外の方法を使って、空間ベクトルzのベクトルa,b,cへの分解の公式を導き出します。

【2次元ベクトルの分解の公式の復習】
2次元ベクトルの分解の公式は、以下の図の様にあらわせる。

この図から類推すると、
3次元ベクトルの分解の公式は、以下の図の平行6面体の体積比を使ってあらわせる。
(3次元ベクトルの分解の公式)

この公式については各自で、もっと詳しい証明をしておいてください。
(ここをクリックした先に詳しい証明があります)

【第2の分解の公式】
また、以下の公式も成り立ちます。
(3次元ベクトルの第2の分解の公式)

この公式についても、各自で、証明をしておいてください。

【外積したベクトルを個々のベクトルで表すには】
 外積したベクトルを個々のベクトルで表す課題を、ベクトル計算で行なおうとすると大変多くの計算量が必要になり、ベクトルの公式の無力さを実感します。そのため、「外積したベクトルを個々のベクトルで表す公式」の方が他のベクトルの公式よりも基本的な公式ではないかと考えます。
 この様に基本的な公式を求めるには、ベクトルの公式を組み合わせた計算でその公式を導こうとするよりも、ベクトルを要素に分解して計算する方が良いと考えます。
 この公式を求める準備として、先ず、以下の、2つのベクトルの外積同士を内積した値を計算する公式を求めます。
 
【2つのベクトルの外積同士の内積の公式の証明(その1)】
(公式の証明(その1)おわり)
(この式1の公式は大学生になると学べます。大学生になると学ぶ三重積の公式を使う方が、もっと楽に証明できます)

《式1の検算》
 この式1の公式は、以下の計算のように、2つのベクトルa,bの外積の大きさが、その2つのベクトルa,bの大きさの積と、ベクトルaとbの成す角θのsin(θ)との積であるという公式を満足する。
この計算によって、式1が検算できる。

《式1の公式の証明(その2)》

 式1は、以下の様にして段階的に証明することができます。
先ず、以下の図の様に、XYZの3次元座標系の各座標軸方向の単位ベクトルX,Y,Zを考える。

この座標系で、以下の式が成り立つ。

この式が成り立つので、この式の対称性を守ってXYZを交換した以下の式も成り立つ。

これらの式が成り立つので、以下の式が成り立つ。

この式が成り立つので、この式の対称性を守ってXYZを交換した以下の式も成り立つ。

これらの式が成り立つので、以下の式が成り立つ。

この式が成り立つので、この式の対称性を守ってXYZを交換した以下の式も成り立つ。

これらの式が成り立つので、以下の式が成り立つ。

(式1の公式の証明(その2)おわり)


《ベクトルの外積同士の内積の公式の証明(その3)》
この公式は、ベクトルhを用いて以下の様に究極の方法の考え方で計算して証明できます。


下図のように、ベクトルAとベクトルBの外積を単位ベクトルhを使って表し、直交ベクトル系hとaとavを定義する。


そして、公式の左辺の式を、以下の様にベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルaとベクトルavであらわして計算する。


次に、公式の右辺の式を、ベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルAとベクトルBであらわして計算する。

式11と式12の値が等しいので、以下の式が成り立つ。

(公式の証明(その3)おわり)

 この「ベクトルの外積同士の内積の公式」を、3次元ベクトルの分解の公式に利用することで、
ベクトルの外積を個々のベクトルで表す公式が以下の様にして導けます。
【ベクトルの外積を個々のベクトルで表す公式】
(公式おわり)

 この計算で得た式2は、ベクトルaとの内積が0になり、ベクトルbとの内積も0になるので、少なくともベクトルaとベクトルbの外積に平行である事が確認できる。

(補足)
 この外積したベクトルを個々のベクトルで表す式2が複雑な式である事を見ると、外積したベクトルは、外積の形のままであらわした式の方が基本的な式になるように思います。
 2次元ベクトルでは、2次元ベクトルaとbを90度回転したベクトルaとbをベクトルaとbで表すよりも、ベクトルaとbのみで単純に表す方が優れた表現でした。
 それと同様に、3次元ベクトルa,b,cでも、3次元ベクトルの外積をベクトルaとbとcで表すよりも、外積の形のままの式を使って計算する方が良いように思います。
その外積の形の式同士の内積は、「2つのベクトルの外積同士の内積の公式」を使って、ベクトルa,b,cの単純な内積であらわせますので、問題無いと思います。
 
 実際、2つのベクトルの外積同士の内積の公式(式1)の第3の証明においても、2つのベクトルの外積を、そのままの形で1つのベクトルhと考えて計算を進めて証明できました。

なお、以下の3つの3次元ベクトルは、互いに直交するので、究極の方法によるベクトルの分解用に便利に利用できる。


【3次元ベクトルの恒等式の公式】

3次元ベクトルの分解の公式:
が成り立つことから、
以下の式が恒等式である事がわかる。
式の項の符号が、+と-が交替して繰り返す。
(3次元ベクトルの恒等式の公式おわり)

空間ベクトルの外積の公式は、ここをクリックした先のサイトのページが参考になります。

 この「3次元ベクトルの恒等式の公式」の様な複雑な公式の見通しを良くするためには、もう高校までの知識+個人の数学の力だけでは足りず、行列の知識など、大学で学ぶ数学の深い知恵が必要になります。
 行列を理解し易くするには、アインシュタインの縮約記法も学ぶ事が望ましいです。研究の先人から、その様に便利な手法を学ぶ事で数学の理解が深まります。

《付録》ベクトルの公式一覧

リンク:
点Cから三角形OABに下した垂線の足Hを求める
2次元ベクトルの合成の公式と分解の公式と2元連立方程式の解

高校数学の目次

2019年12月8日日曜日

立体図形の面の法線ベクトルの求め方のバラエティ

ページ内リンク:
▷課題
▷(外部リンク)点Cから三角形OABに下した垂線の足Hを求めて法線ベクトルを求める
▷面上の2つのベクトルとの内積が0の連立方程式で法線ベクトルを求める
▷面上の1つのベクトルに垂直な2つのベクトルmとnを使って法線ベクトルを求める
▷面の方程式の係数の作るベクトルが面の法線ベクトル
▷法線ベクトルhは、面上の2つのベクトの外積
▷面の点の座標の連立方程式を作って法線hを求める
▷面の座標軸との交点の座標値

【課題】
以下の四面体ABCDの面BCDに垂直な法線ベクトルhを求める。
【解答1】
四面体ABCDの点Aから三角形BCDに下した垂線の足Hを求める方法で、法線ベクトルAHを求めることができる。

 それ以外の方法では、以下の様にして法線ベクトルhを求める事ができる。

【解答1B】
(面上の2つのベクトルとの内積が0の連立方程式で法線ベクトルを求める方法)


法線ベクトルhの成分を以下の式A1で定義する。
以下のように、この法線ベクトルがベクトルBC及びベクトルBDに垂直であることを表すベクトル方程式を立てて、その解を求める。
ここで、法線ベクトルの成分の3つの未知数に対して方程式が2つなので、3成分を確定する方程式の数が不足している。しかし、法線ベクトルの3つの成分の比2つを求める方程式の数は2つで十分である。
法線ベクトルhの3成分に共通に掛かる 未知の係数kを導入して、以下のように、法線ベクトルの解を求める。
(解答1Bおわり)

【解答2】
(面上の1つのベクトルに垂直な2つのベクトルmとnを使って法線ベクトルを求める)

 法線ベクトルhに関して以下の式が成り立つ。
ここで、ベクトルBCに垂直な、以下の2つのベクトルmとnを考える。
式B1を満足する、ベクトルBCに垂直な全てのベクトルhは、係数sとtを使った以下の式であらわすことができる。
(場合1)ベクトルnが面BCDに垂直な法線ベクトルである場合は、それで法線ベクトルが定まる。その場合は、法線ベクトルhを表す上の式の係数 s=0 である。
(場合2)そうで無い場合:
以下の式B3で、未知の係数kを使って、法線ベクトルhに平行なベクトルを(改めてそのベクトルをhとして)以下の式(B3)であらわす。

この式B3であらわすベクトルhが法線ベクトルであるために、式B2も満足する必要がある。
式B2に係る、互いに垂直なベクトルの内積が0になる方程式に、式(B3)のベクトルhを代入する。
これで未知の係数kが求められた。このkを式B3に代入してベクトルhの成分を求める。
このベクトルを、以下の定数倍して整理したベクトルを求める。
このベクトルが、面BCDに垂直な法線ベクトルである。
(解答2おわり)

この解答2では、解答1よりも危なげなく解がえられた。
解答2は、先ずベクトルBCに垂直なベクトル2つを求め、その2つのベクトルの和でベクトルを求める、という見通しの良い計算をする解き方である。
そのように見通しが良いので、危なげが無い良い解き方である。

【解答3】
 以下の図のように、面の方程式の係数の作るベクトルが面の法線ベクトルであることを利用して問題を解く。


 以下の図のXYZ座標軸において、ベクトルBCとベクトルBDとのベクトルの組から、もっと分かり易いベクトル(Z成分かY成分が0のベクトル)を作る。そのX成分を1にする。
 点E(1,0,0)=位置ベクトルEを設定する。次に、位置ベクトルEから、先に作った分かり易いベクトルを引き算する。
それにより、その点Eを通る、ベクトルBCとベクトルBDの張る平面の、Y座標軸及びZ座標軸との交点F,Gを求めて、それらの座標軸との交点EFGを通る平面の方程式を求める。その平面の係数の作るベクトルが法線ベクトルである。





(解答3おわり)

【解答3b】
ベクトルBCとベクトルBDのいずれかが、初めから、ベクトルの1つの成分が0であった場合は、以下のようにして直ぐに法線ベクトルが求められる。
 (解答3bおわり)

【解答4】
 面BCDに垂直な法線ベクトルhは、面上のベクトルBCとベクトルBDの外積であらわされる。

下図のように、
x軸上の単位ベクトルx、
y軸上の単位ベクトルy、
z軸上の単位ベクトルz、
同士のベクトルの外積の以下の公式があります。
この公式を使うと、ベクトルBCとベクトルBDの外積が以下の式で計算できる。
(解答4おわり)

 この式8は、3次元ベクトルの外積の公式として知られています。

(補足1)
 面BCDに垂直なベクトルを表す公式は、2次元平面における直線に垂直なベクトルを表す公式が2つあるのと同様に、この外積の公式で表す以外にも、他の表現の公式も作れます。ベクトルには、観点を変えて異なる表現ができるという特徴があるからです。
 しかし、その観点を変えて表した「他の公式」は、公式の形が複雑になって、不便な公式であると考えます。
 便利な公式であるベクトルの外積の公式を覚えるだけで十分と考えます。

(補足2)
 この法線ベクトルhの公式を、ベクトルb,c,dの外積であらわすと以下の式9になります。

(補足3)
また、各ベクトルb,c,dと法線ベクトルhの内積は、各ベクトルの法線ベクトルへの正射影であるため、全て等しくなります。

【解答4b】
ベクトルBCとベクトルBDのいずれかが、初めから、ベクトルの1つの成分が0であった場合は、
以下のようにして、もう1つの、ベクトルの1つの成分が0であるベクトルを作って使うと、
ベクトルの外積の計算が楽になる。
(解答4bおわり)

【解答5】
以下の様に、3次元空間の面の点の座標の連立方程式を作って法線hを求める事もできます。(以下の式では、点Aを座標原点Oとみなします)。
式14は点Aを座標原点Oとした面の式です。
この面の式14に式11、12、13を代入して連立方程式を作って法線ベクトルhを求めます。
この式15から17を以下のベクトル方程式であると解釈して解きます。
この式20の分子と分母は、以下の式で計算できます。
h2とh3も同様にして計算できる。
(解答5おわり)

(補足4)
 この解答5の解の式20から22が解答4の解の式8と同じである事は、以下の様にして確認できる。
式20の分母は、以下の式23であらわせる。
また、分子は、以下の式24であらわせる。
(確認おわり)

【解答5の2】
解答5の連立方程式15~17の解は、以下の解き方で解くと、スムーズに解が得られます。
未知の係数kを導入して:
  未知の係数 s を導入して:
式41で法線ベクトルの成分比が求められた。
式41は、式8の法線ベクトルの成分表示と合っている。
(解答5の2おわり)

 この「解答5の解の式20から22が解答4の解の式8と同じ」である事実などの複雑な公式の見通しを良くするためには、もう高校までの知識+個人の数学の力だけでは足りず、行列の知識など、大学で学ぶ数学の深い知恵が必要になります。
 行列を理解し易くするには、アインシュタインの縮約記法も学ぶ事が望ましいです。研究の先人から、その様に便利な手法を学ぶ事で数学の理解が深まります。

【面の座標軸との交点の座標値】
上の面と各x,y,z座標軸との交点の座標値は、
(上の解答5の式14をよく見ると、法線ベクトルhの各x,y,z成分の逆数になります)
各座標軸毎に以下の式で計算できます。


この様に面と各座標軸の交点が、ベクトルの外積を使ってあらわされます。


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