2011年11月23日水曜日

(5)複素数平面での軌跡




佐藤の数学教科書「式と証明・複素数」編の勉強
第6講 複素数平面

【問1】実数の媒介変数tを-∞から∞まで変化させたとき、
z=1+i・t (式1)
であらわされる複素数zが複素数平面で描く軌跡を示せ。

【問2】実数の媒介変数tを-∞から∞まで変化させたとき、
z=1/(1+i・t) (式2)
であらわされる複素数zが複素数平面で描く軌跡を示せ。

この問題の解答はここをクリックした先にあります。
 
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2011年11月20日日曜日

(3)複素数の掛け算で三角関数の加法定理を導く




佐藤の数学教科書「式と証明・複素数」編の勉強

s=w・z
というように、複素数wに複素数zを掛け算して複素数sを計算する場合を考えます。
上図で e はネイピア数です。
また、 e の虚数乗がcosとi・sinで表される公式はオイラーの公式と呼ばれている、とても便利な公式です。

(複素数の極形式のパラメータの定義)
複素数平面で複素数zが、0と1を結ぶ線分(実軸)から、0を中心に角度θ回転した位置にあるとき、
その角度θを偏角と呼び、
θ=arg(z)とあらわします(左回りを正の角度にします)。

また、複素数zの絶対値は|z|とあらわします。

先ず、各複素数の偏角を以下のように名づけておきます。
arg(s)≡α
arg(w)≡β
arg(z)≡θ
これらを使って各複素数が以下のようにあらわせます(複素数の極形式での表示)。
s=|s|cos(α)+|s|sin(α)・i
w=|w|cos(β)+|w|sin(β)・i
z=|z|cos(θ)+|z|sin(θ)・i

その複素数の掛け算s=w・zの場合には、以下の公式が成り立ちます。
arg(s)=arg(w)+arg(z)
|s|=|w|・|z|

上の2つの式を書きかえると以下の式になります。

α=β+θ   (式1)
|s|=|w|・|z|   (式2)

佐藤の数学教科書では、三角関数の加法定理を使って、(式1)が成り立つことを説明しています。
つまり、(式1)の公式は三角関数の加法定理と深い関係があります。
それで、上の(式1)を利用すると、三角関数の加法定理が以下のようにして簡単に導き出せるので三角関数の加法定理が覚えやすくなります。
 ただし、複素数平面の計算によって三角関数の加法定理が導き出せはしても、それは加法定理の証明にはなりません。複素数平面の計算の礎(いしずえ)を加法定理が支えているからです。一方で、ベクトルの内積の計算から三角関数の加法定理を導き出すことができ、それは加法定理の証明になっています。


以下で、複素数wとzの掛け算を計算して、その結果を複素数sと比較します。
ここで、加法定理との関係を分かり易くするため、複素数wとzの絶対値の
|w|=|z|=|s|=1
とする。

複素数w・zと、それに等しい複素数sとは、その実数部分が等しいので、その関係をあらわす1つの式を導き、更に、その虚数部分が等しいので、その関係をあらわす1つの式を導きます。それにより、以下の2つの関係式が導き出せます。
角αについて(式1)の関係があるので、それを代入して上の2つの式を書き直します。
上の式6がcosの加法定理であり、式7がsinの加法定理です。
cosの加法定理とsinの加法定理を、以上の手順で素早く導き出せるように、以上の導き方を覚えておきましょう。
そうすれば、覚えるのにとても苦労する三角関数の加法定理が、覚えやすくなります。

【複素数平面の礎(いしずえ)の再構築】
 複素数平面の計算の礎を、加法定理を用いずに構築します。そうすることで、複素数平面の計算を用いて加法定理を導き出すことが可能になります。以下では、加法定理を用いずに複素数平面の計算の礎を再構築します。


s=w・z
というように、複素数wに複素数zを掛け算して複素数sを計算する場合、
複素数平面で複素数zが、0と1を結ぶ線分(実軸)から、0を中心に角度θ回転した位置にあるとき、
その角度θを偏角と呼び、θ=arg(z)とあらわします(左回りを正の角度にします)。
また、複素数zの絶対値を|z|とあらわします。

その複素数の掛け算については、以下の公式が成り立ちます。
arg(s)=arg(w)+arg(z)
|s|=|w|・|z|
以下で、これが成り立つ根拠を、加法定理を用いずに示します。

《例1》

上図のように、
複素数 w=1+i
に、実数3/2を掛け算すると、
複素数wは、実軸と成す角度が変わらない。長さ(絶対値)は3/2倍になる。

《例2》

上図のように、w=1に虚数z=iを掛け算すると、
掛け算の結果s=iになり、
数W=1と原点0を結ぶ線が左回りに90度回転する。
上図のように、w=iに虚数z=iを掛け算すると、
掛け算の結果s=-1になり、
数W=iと原点を結ぶ線が左回りに90度回転する。

《例3 w=1+iの場合》 wを更に変えて考える。

上図のように、w=1+iに虚数z=iを掛け算すると、
掛け算の結果s=-1+iになり、
数W=1+iと原点を結ぶ線が左回りに90度回転する。

《例4 w=(1+3i)/2の場合》

上図のように、w=(1+3i)/2に虚数z=iを掛け算すると、
掛け算の結果Wi=S=-(3/2)+(1/2)iになり、
複素数W=(1/2)+(3/2)iと原点を結ぶ線が左回りに90度回転する。

【重要なポイント】
 複素数Wが何であっても、それにiを掛け算した複素数は、複素数Wよりも偏角が90°回転する。その理由は、複素数Wのベクトルの実数成分も、虚数成分も、同じく90°回転した成分に変換されるからである。

【視点を変えて考える】
 虚数iに複素数Wを掛け算した複素数は、虚数iの偏角の90°よりも複素数Wの偏角だけ回転した複素数に変換される。そして、実数1に複素数Wを掛け算した複素数は、実数1の偏角の0°よりも複素数Wの偏角だけ回転した複素数に変換される。そのため、どの複素数Zの実数成分も虚数成分も、同じく複素数Wの偏角だけ回転した複素数に変換される。
 そのため、その実数成分と虚数成分を合成して構成される複素数Zも、複素数Wを掛け算すると、その複素数Z自体が複素数Wの偏角だけ回転する。
 ゆえに、複素数Zに複素数Wを掛け算した複素数は、複素数Zの偏角と複素数Wの偏角の和の偏角を持つ。
《以上の議論によって、複素数平面の礎が、加法定理を用いずに再構築された》

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(2)1のn乗根を複素数平面で求める




佐藤の数学教科書「式と証明・複素数」編の勉強
第5講 高次方程式

《ページ内リンク》
▷1の4乗根
▷1の5乗根
▷1の3乗根(ページ外にリンク)
▷実数の指数法則と複素数の指数法則

【問1】X=1の解を求めよ。
-1=0

この方程式の4つの解を複素数平面上で表示すると、以下の図のようになります。

上の図で、
=1,X=i,=-1,X=-iが、
-1=0
の4つの解です。
は、複素数平面上で、0と1を結ぶ実軸上の線分から原点を中心にして単位円上を左回りに90度(π/2ラジアン)回転した位置にあり、更に、順次に90度回転した位置が、この方程式の解です。

と0を結ぶ直線が0と1を結ぶ実軸上の線分と成す角90度を4倍すれば360度になり、実軸に戻ります。
と0を結ぶ直線が0と1を結ぶ実軸上の線分と成す角180度を4倍 すれば360度×2になり、実軸に戻ります。
と0を結ぶ直線が0と1を結ぶ実軸上の線分と成す角270度を4倍 すれば360度×3になり、実軸に戻ります。

複素数を4乗するということは同じ複素数を4回掛け算することであり、複素数の掛け算では偏角が足し算されるので、複素数を4乗すれば、その複素数の偏角が4回足し算されて4倍になりました。
すなわち、
=1の複素数の解は、1の偏角を360度、360度×2、360度×3と考えて、その偏角を4分の1の90度、180度、270度にし、その偏角を持つ絶対値1の複素数の値を図から求めれば、それがX=1の複素数の解になります。

【問2】X=1の解を求めよ。
-1=0

この方程式の5つの解を複素数平面上で表示すると、以下の図のようになります。

上の図で、

が、X-1=0
の5つの解です。
は、複素数平面上で、0と1を結ぶ実軸上の線分から原点を中心にして単位円上を左回りに2π/5ラジアン回転した位置にあり、更に、順次に2π/5rラジアン回転した位置が、この方程式の解です。

と0を結ぶ直線が0と1を結ぶ実軸上の線分と成す角2π/5ラジアンを5倍すれば2πになり、実軸に戻ります。
と0を結ぶ直線が0と1を結ぶ実軸上の線分と成す角2π×(2/5)ラジアンを5倍すれば2π×2になり、実軸に戻ります。
以下、同様に、XとXは、2π×3、2π×4になり、実軸に戻ります。

結局、
=1の複素数の解は、2π/5ラジアン×整数倍の偏角を持つ絶対値1の複素数の値を図から求めれば、それがX=1の複素数の解になります。

同様に考えることで、
=1の複素数の解は、2π/nラジアン×整数倍の偏角を持つ絶対値1の複素数の値を図から求めれば、それがX=1の複素数の解になります。
すなわち、値1の点を頂点の1つにする正n角形の各頂点が、その方程式の解になります。 

【問2(b)】X=1の解を、三角関数の値も計算して求めること。

この解の求め方を次のページで解説します。

 しかし、次のページを直ぐには見ないで、
しばらくここに留まって、この解を自力で求める努力をしてください。

《実数の指数法則と複素数の指数法則》
 なお、1の3乗根の基本単位や1の5乗根の基本単位は以下の式で表すのが良いと思います。


そうすると、1の2乗根の基本単位の値も、1とするよりは、以下の式で表した方が良いと思います。

そして、以下の演算が成り立つと考えられます。

今後は、以下の様に、1の2乗根は基本単位で表して計算すると良い。そうすると√ は正の値を表すものとした表現ルールに合わなくなる(そもそも正の数では無い虚数を√ 記号で表した時点でルール違反)ので√ 記号は使わず2分の1乗記号で表した1の2乗根の基本単位を使って計算した方が良いと思います。

しかし、指数法則

が使えるためには、

と展開しても矛盾させないために、

(1の有理数乗や実数乗は全て1)とせざるを得ないので、悩ましい問題です。

という矛盾も起こさないようにする必要もあります。

という矛盾もだめです。
 それらの矛盾を回避するためには、指数法則


と、

は、
a>0, b>0, (指数の底は必ず正にする)
の場合に限って使えるように制限することによって、上の式の問題を回避します。これが、実数の指数法則です。
 一方、虚数iの演算は、虚数記号iを使って、その記号の演算ルールで計算することにし、実数の指数法則は虚数の演算には関与させない(複素数の指数法則は後で説明する)ことで問題を回避します。
 複素数の指数法則は、以下の様に実数の指数法則を拡張します。複素数zは、以下の式のように、ネイピア数(正の実数です)の複素数乗であらわします。


この形で表した複素数は、ネイピア数が正の数なので、指数の底が正の実数であるという指数法則の基本条件を満足しています。指数関数の底は正の実数のままにして、指数だけを複素数まで拡張して指数法則を拡張します。複素数の指数法則の下でも、1の複素数乗は1になります。
そして、1の2つの2乗根を以下の計算で求めます。


1の2乗根を求めるために指数法則を適用する1は底がeであって、指数が異なる2つの数に分けて扱います。こうすれば、1の2乗根の1つを-1にでき、もう1つを1にできます。
 また、以下の計算のように指数法則を矛盾を生じないように使えます。以下の計算の一番左側の項の(-1)の2分の1乗は、√(-1)という表現と同じく間違った表現です。(-1という数は、指数が異なる2つの数に分けて扱うべき)。しかし、(-1)の2乗根を表すために、あえて間違った使い方をしました。


上の式で(-1)をeのπi乗であらわしましたが、(-1)は、eの(-πi)乗でも表されます。そのように表された2つ目の(-1)の2分の1乗は-iになります。

 以下のように、1の2乗根の2つを、指数法則を使って寄り道して計算することもできます。(以下の計算式の一番左側の項の1の2分の1乗は1です。しかし、1の2乗根を表すために、あえて間違った使い方をしました)。この指数法則の計算では矛盾が生じていない。


(補足)なお、指数法則が、高校2年生までは、指数関数の指数が整数である場合に限って、指数法則の基本条件が緩められて、指数関数の底は0で無いこと。底が負でも良いとされていました。しかし、指数が有理数になると、その条件では指数法則が成り立たなくなり、指数関数の底は正の実数であるという基本条件を満足する必要があります。指数法則のこの基本条件は、指数が実数や複素数になっても変わりません。
(蛇足)ちなみに底が0の場合は、以下のようになると考えられる。



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「n乗根1」大学入試から学ぶ高校数学

(1)1の三乗根を複素数平面で求める




佐藤の数学教科書「式と証明・複素数」編の勉強
第5講 高次方程式

【問】次の式を因数分解してx=1の解を求めよ。
-1=0

この式は以下のように変形して解きます。
-1
=(x-1)(x+x+1)
=(x-1){(x+(1/2))-(1/2)+1}
《公式P-Q=(P-Q)(P+Q)を使う。その準備》
よって、x=1の解は
上のようにして因数分解することで、x=1の複素数の解が得られました。この3つの解を複素数平面上で表示すると、以下の図のようになります。

上の図で、x=1,A=ω,B=ω2 が、x=1の3つの解です。
Aは、複素数平面上で、0と1を結ぶ実軸上の線分から0を中心にして左回りに120度(2π/3ラジアン)回転した直線上にあり、Bは右回りに120度(左回りに240度)回転した直線上にあります。

Aと0を結ぶ直線が0と1を結ぶ実軸上の線分と成す角120度を3倍すれば360度になり、実軸に戻ります。Bと0を結ぶ直線が0と1を結ぶ実軸上の線分と成す角の、右回りに120度(左回りに240度)を3倍すれば右回りに360度(左回りに720度)になり、実軸に戻ります。

複素数を3乗するということは同じ複素数を3回掛け算することであり、複素数の掛け算では偏角が足し算されるので、複素数を3乗すれば、その複素数の偏角が3回足し算されて3倍になりました。
すなわち、
=1の複素数の解は、1の偏角を360度及び-360度と考えて、その偏角を3分の1の120度(点A)や-120度(点B)にし、その偏角を持つ絶対値1の複素数の値を図から求めれば、それがx=1の複素数の解になります。

 こうして答えを求める方法は、昔は、「禁じられた複素数平面の教え」だったので、そうやってその答えを出したと解答に書く事が出来ませんでした。最初に書いた、教わった範囲の解き方で解答するのが昔の高校生のやり方でした。

  この教えは、2011年度からは禁止が解けました。
2011年度から、高校3年の数Ⅲで複素数平面を教えるようになりました。
そのため、高校3年からは、複素数平面の考えで問題を解いたと解答に書いても、合格点をもらえるようになりました。

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(2)複素数を掛け算すると偏角が足し算される

https://schoolhmath.blogspot.jp/2011/11/blog-post_20.html
https://schoolhmath.blogspot.jp/2015/03/blog-post.html


佐藤の数学教科書「式と証明・複素数」編の勉強

 以下の内容は、むかしは、高校の検定教科書では教えないことになっていました。多分、これを教えると、その説明が分からない人が続出して、先生までも分からなくなる恐れもあり、学校にとってとても危険な教えだから、教える事が禁じられていたのかもしれません。
そのため、むかしは、以下の内容は、禁止された教えであるので、この教えを知っている事を隠して生活するのが望ましかったと考えます。

 また、以下の内容が理解できなくても、それは、”正常”な人のあかしですので、理解できなかったからといって、決して、理解できなかった事を恥じたりしないで欲しい。また、理解できないからと言って、決して、理解できた人を迫害したりしないで欲しいと思います。

s=w・z
というように、複素数wに複素数zを掛け算して複素数sを計算する場合、
複素数平面で複素数zが、0と1を結ぶ線分(実軸)から、0を中心に角度θ回転した位置にあるとき、
その角度θを偏角と呼び、θ=arg(z)とあらわします(左回りを正の角度にします)。
また、複素数zの絶対値を|z|とあらわします。

その複素数の掛け算については、以下の公式が成り立ちます。
arg(s)=arg(w)+arg(z)
|s|=|w|・|z|
以下で、これが、どうして成り立つかを説明します。

《例1》

上図のように、
複素数 w=1+i
に、実数3/2を掛け算すると、
複素数wは、実軸と成す角度が同じまま、長さ(絶対値)が3/2倍になります。

《例2》

上図のように、w=1に虚数z=iを掛け算すると、
掛け算の結果s=iになり、
数W=1と原点0を結ぶ線が左回りに90度回転します。
上図のように、w=iに虚数z=iを掛け算すると、
掛け算の結果s=-1になり、
数W=iと原点を結ぶ線が左回りに90度回転します。

《例3 w=1+iの場合》 wを更に変えて考える。

上図のように、w=1+iに虚数z=iを掛け算すると、
掛け算の結果s=-1+iになり、
数W=1+iと原点を結ぶ線が左回りに90度回転します。

《例4 w=(1+3i)/2の場合》

上図のように、w=(1+3i)/2に虚数z=iを掛け算すると、
掛け算の結果Wi=S=-(3/2)+(1/2)iになり、
複素数W=(1/2)+(3/2)iと原点を結ぶ線が左回りに90度回転します。

【重要なポイント】
 複素数Wが何であっても、それにiを掛け算した複素数は、複素数Wよりも偏角が90°回転する。その理由は、複素数Wのベクトルの実数成分も、虚数成分も、同じく90°回転した成分に変換されるからである。

 また、複素数Wに掛け算する複素数Zがその純虚数から正の実数まで変われば、複素数Wに複素数Zを掛け算した値WZは、複素数Wの偏角から90°回転するものから0°の回転まで変化する。そのことから、複素数Wが回転する角度は、それに掛け算する複素数Zの偏角と等しいだろうと容易に想像できる。

【視点を変えて考える】
 虚数iに複素数Wを掛け算した複素数は、虚数iの偏角の90°よりも複素数Wの偏角だけ回転した複素数に変換されると言える。そして、実数1に複素数Wを掛け算した複素数は、実数1の偏角の0°よりも複素数Wの偏角だけ回転した複素数に変換されると言える。そのため、ある複素数Zの実数成分も虚数成分も、同じく複素数Wの偏角だけ回転した複素数に変換される。
 このことから、複素数Zに複素数Wを掛け算すると、複素数Zが複素数Wの偏角だけ回転すると言える。ゆえに、複素数Zに複素数Wを掛け算した複素数は、複素数Zの偏角と複素数Wの偏角の和の偏角を持つと言える。

《例5 wの値もZの値も任意の場合》

上図を用いて、どのような複素数WとZについても、
複素数WZは複素数Wよりも、偏角が複素数Zの偏角θだけ大きくなり、また、その絶対値は |Z| 倍になることが証明できます。

(証明開始)
上図で、線分OAの長さの実数に複素数zを掛け算して得た複素数の点をCとする。

線分OBの長さの虚数に複素数zを掛け算して得た複素数の点をDとする。

複素数wは線分OAの長さの実数+線分OBの長さの虚数倍を足した値です。

複素数wに複素数zを掛け算した値Sは、C点の複素数にD点の複素数を足した値になる。

そのため、複素数S=WZは、ベクトルOCとベクトルODを合成したベクトルの先端位置Sに来る。すなわち複素数S=WZを表す点は、上図の長方形ODSCの頂点Sの位置に来る。


三角形OCAと三角形ODBは、Oとzと1を結んだ三角形に相似な三角形です。そのため:
辺OCの長さは、辺OAの長さの|z|倍であり、
辺ODの長さも、辺OBの長さの|z|倍です。

長方形ODSCは、長方形OBWAに対して、対応する辺OC:辺OAと、辺OD:辺OBが同じ相似比の|z|倍です。そのため両者は相似な長方形です。
また、長方形ODSCは、長方形OBWAをzの偏角θだけ回転した形をしています。

その長方形ODSCの一部のベクトルOSは、長方形OBWAの一部のベクトルOWを、zの偏角θだけ回転したベクトルになります。また、ベクトルOSの長さは、ベクトルOWの|z|倍のベクトルになります。


ベクトルOSは複素数WZです。すなわち、複素数WZは複素数Wよりも偏角がθ大きくなり、また、その絶対値は |Z| 倍になります。
(証明終わり)

このことを、数式を用いて表現すると、
arg(s)=arg(w)+arg(z)
|s|=|w|・|z|
と表現できます。

 以上の証明により、WにZを掛け算すると偏角がZの偏角θだけ増えることが証明できた。以下では、そのことがどういう事を意味するかを例6で示します。

《例6》

例えば、上図のように、zが(1+i)/√2の場合は、

0とzと(1)を結んだ三角形は、頂角が45度の二等辺三角形になります。
そして、上図のように、wに偏角が45°の複素数Z=(1+i)/√2を掛け算した場合は、
0と(wz)とwを結んだ三角形は、頂角が45度の二等辺三角形になります。

 また、uにz=(1+i)/√2を掛け算した場合は、
0と(uz)とuを結んだ三角形は、頂角が45度の二等辺三角形になります。

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