2018年10月31日水曜日

分母がsin(B+C)の三角関数分数式変換公式

【公式1】
分数式の分母が0になる場合を除き、
角度Bと角度Cに関して、以下の式1:
が成り立つ事を証明せよ。

【公式2】 
分数式の分母が0になる場合を除き、
角度Bと角度Cに関して、以下の式2:
が成り立つ事を証明せよ。

【公式3】 
分数式の分母が0になる場合を除き、
角度Bと角度Cに関して、以下の式3:
が成り立つ事を証明せよ。

【公式4】 
分数式の分母が0になる場合を除き、
角度Bと角度Cに関して、以下の式4:
が成り立つ事を証明せよ。

【公式5】 
分数式の分母が0になる場合を除き、
角度Bと角度Cに関して、以下の式5:
が成り立つ事を証明せよ。

【公式6】 
分数式の分母が0になる場合を除き、
公式4の右辺を、以下の式6に変形しなさい。

これらの問題の解答は、ここをクリックした先にあります。

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2018年10月28日日曜日

三角形の頂角の二等分線の長さに係る証明


【問1】 
 上の三角形において、
三角形ABCの外接円の半径をRとすると、以下の式1:
が成り立つ事を証明せよ。

この問題の解答は、ここをクリックした先に書きました。

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2018年10月24日水曜日

ベクトルでの三角形の中線定理のやさしい覚え方

【中線の長さの公式(中線定理)】
上図のように、三角形ABCの辺BCの中点Mと頂点Aを結んだ中線AMの長さmに関して、上の式1又は式2が成り立ちます。
 この中線定理は、以下の様に、ベクトルbとcの計算だけから、容易に導き出せます。
(中線定理)

 中線定理は、上図の平行四辺形の対角線の2乗の和の定理だと考えると覚え易いと思います。
 
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2018年10月23日火曜日

三角形の部分の長さの各定理の速やかな導き出し方

 三角形の部分の長さの定理の式を覚えようとしても覚えられません(何度覚えても式を忘れます)。
 一方、そういう定理の全ては、以下の3つの図の相似な三角形の組み合わせのイメージを覚えるだけで、それらのイメージから得られる情報を使って、全てを求めることができます。

 そのため、それらの定理の式を実践の場で使える応用力をつけるために、以下の3つの図のイメージを覚え、その図のイメージの相似な図形の辺の比例の式(定理の式と同等)を図から導き出してください。それらの相似な図形の辺の比例の式は、定理の式が変形された定理の式と同等な式なので、それらの式を使えば、定理の式を使うのと同じく問題を解くことができます。

【定理の速やかな導出】
 定理が覚えられないという真実を知りました。その対策として、覚えられない定理を速やかに導き出す方法を知ることで、定理を覚えたのと同じ効果を得ましょう。
 以下で、その導出方法を記載します。
上の図の式を以下の式に変形します。
ここで、以下の関係が成り立ちます。
この関係を式1に代入する。
(定理の導出おわり)
 この式2によって、角の二等分線の長さmを、三角形の辺a,b,cで求める定理が得られました。
(この式2は覚える事はとても困難な式ですが、以上の手順でいつでも導き出すことができます。それは、定理の式を覚えているのと同じ事だと思います。)

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2018年10月20日土曜日

無数の解がある連立方程式の高校生の解答

中学生の時は、無数に解がある連立方程式は、
「解が無数にある」と言えば答えになっていました。

しかし、高校生になると、そのような答えでは不十分な答えになります。

例えば、以下の様な問題を解いてみます。
【問題1】
以下の連立方程式を解け。

【解答】
以上の計算により、式1と式2と式3の連立方程式に等価な連立方程式である、式4と式5と式6との連立方程式が得られました。
(式4と式5と式6を使って式1と式2と式3を再現することが可能です→補足1。) 
 ここで、式6は、式1の全ての変数をyに置き換えて、変数yだけの式にして、変数yの値を求めようとした式です。
 この式6でyの値が定まらないので、yの値は不定です。よって、yの値は、任意の値を取ることができます。
ゆえに、問題の解は、
任意の定数tに関して:
になります。
(解答おわり)

(補足1)
 式4から式6を使って、以下のようにして式1から3を導き出すことができます。
先ず、式1~3を使って式4~式6を導き出す計算を再現します。
(1)×2-(2):
3x-6y=0, (4')
(1)-(3)×2:
ー3y+z=0, (5')
(1)ー(4')×(2/3)+(5'):
4y-yー3y=0,
0y=0,  (6')

次に、この計算を逆にたどって、式4’~6’を使って式1~3を導き出す式を求めます。
(1)=(6')+(4')×(2/3)-(5'), (1)
(2)=-(4')+(1)×2
=-(4')+((6')+(4')×(2/3)-(5'))×2
=(4')×(1/3)+(6')×2-(5')×2, (2)
(3)=( (5')-(1))×(-1/2)
(5')×(-1/2)+(1)×(1/2)
(5')×(-1/2)+((6')+(4')×(2/3)-(5'))×(1/2)
-(5')+(6')×(1/2)+(4')×(1/3), (3)
この様に、式1~式3が、式4~式6を使って再現できる。
 そのため、式4~式6の連立方程式は、式1~式3の連立方程式に等価です。 

(補足2)
 式1~式3に対して、それらの式の和で作った式4~式6が等価な連立方程式と言えるのは、上の式の様に、式4~式6の式の和で式1~式3が作れるからです。その式を作る前に、式1~式3に対して、それらの式の和で作った式4~式6が等価な連立方程式と言えるか否かを判定できる条件は、大学に進学して線形代数学を学ぶことで学ぶことができます。
 詳しい内容は、その線形代数学で学んで欲しいと思いますが、式4~式6が、式1~式3の持つ式の特徴を余さず受け継いでいるように作られているか否かによって、式4~式6が式1~式3に等価な連立方程式と言えるか否かが定まります。
(式6が上の説明の様に作られずに、単に(1)-(1)で式6を作って0=0が得られるのが当たり前の計算する場合は、そうして作る式には、式1~式3の持つ特徴が受け継がれません)
 上の式の変形の様に、1つの変数で他の変数1つ1つを表わす式を作って、最後に、その式を元の式の1つ(どの式でも良い)に代入して1つの変数だけで表わした式6を作れば、それらの式4~式6の連立方程式は、その式6が0=0という式になったとしても、元の式1~式3の連立方程式に等価な連立方程式になります。

(補足3)定数と未知数の定義。
未知数→方程式の中で気にする数。
定数→方程式の中で気にしない数。
という違いがありますが、定数と未知数の区別はあいまいです。

問題の3つの式から成る連立方程式は、3つの変数x,y,zに関して、無数の解がある連立方程式です。
 このように解が無数にある連立方程式というものは、その変数のうちの1つの変数yを定数tであると考えて、残った未知数xとyを定数tを使った式で表す解:
を解とする連立方程式であると解釈する事ができます。
よって、この式が解になります。

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2018年10月13日土曜日

解の無い連立方程式

(連立方程式のうさん臭さ)
 中学生の数学で初めて連立方程式を学んだとき、何となくうさん臭く感じて違和感を感じた人もいるのではないかと思います。
 連立方程式をうさん臭いと感じたなら、それには以下の理由があるからです。
 連立方程式には、必ず解が計算できる(解がある)とは限らないという特徴があります。方程式で表現したら必ず解けるとは限らないのです。

例えば、以下の様な式も連立方程式です。
【解の無い連立方程式の例1】
x+y=3 (式1)
2x+2y=1 (式2)

 一見もっともらしく見えても、この式は互いに矛盾する関係が同時に成り立っているものと表現した、あり得ない、嘘の関係をあらわしています。

 なぜ、この式が嘘だと言えるかと言うと、
以下の様に式を置き変えてみればわかります。
z≡x+y (式3)
と定義します。
すると、式1と式2は以下の式になります。
z=3 (式4)
2z=1 (式5)

 この連立方程式は明らかに嘘の関係をあらわしています。
z=3 かつ、 z=1/2
であるという連立方程式なので嘘の関係です。

 数学的に表現したら必ず真実を表現していると信じていた人は、この表現で裏切られるという気持ち悪さがあります。

 こういう嘘を表現した方程式の解を求めると、
解がありません。
解が無い、すなわち、方程式が嘘をあらわしているというのはなるべく早めに見抜くように注意して下さい。

 また、嘘の関係を表わした方程式を無理やり展開すると、以下の場合の様に嘘の答えが出るという特徴がある事も知っておいてください。
式4を式5に代入してzを消去すると:
2×3=1
6=1 (式6)
(矛盾:嘘です)
このような答えが出てくると、導き出される数式がことごとく嘘になるので大問題です。

解の無い方程式は、成り立っていない嘘の関係を表わしている式なので、その方程式を組み合わせると嘘の式が現れるのです。

 解の無い連立方程式は、計算式に注入された毒薬のような物で、計算結果の信用を台無しにし、計算式をメチャクチャにします。
 そのため、解の無い連立方程式が注入されたその場で直ぐに見抜いて、その、解の無い連立方程式を取り除いて、計算の命を救う救急処置を取ってください。
 あるいは、その(解の無い)連立方程式が必須であって削除することができない性格の方程式であるならば、以下の様に対処してください。
①その連立方程式に使われている変数(xとy)の値が存在しない事が証明されたと解釈する。
②その変数(xとy)を1つでも使っている全ての方程式を凍結する。
そうして凍結した方程式が、その使っている変数の解が存在しない場合は式の存在意義が無くなり削除できる方程式は削除する。
③その凍結した方程式が、使っている変数の解が存在しないという事も大切な情報であって削除できない性格の方程式である場合は、その解の無い変数からその方程式を使って計算できる全ての変数(例えば変数z)を、同じく解が無い変数である、と解釈する。
④それにより、新たな変数zの解が無い事が分かった場合、その新たな変数zを使う他の方程式にも、②と③の処理を繰り返す。
(解の無い連立方程式は、たしかに毒薬だと思うでしょう)

 また、解があるのか無いのかが分からない連立方程式を扱っている場合は、その連立方程式に解があるのか無いのかを早急に求めてください。そして、解があることが確かめられた後で、それ以外の必要な計算を行なうようにしてください。

【解の無い連立方程式の形】
 解の無い連立方程式は以下の形をしています。
aX+bY=c
naX+nbY=d
d≠nc
(例2)
x+2y=1
3x+6y=1
すなわち、
① 2番目の式の変数で表した左辺の式が、1番目の式の左辺の式を数倍した形をしているのに、
② 2番目の式の定数で表した右辺の定数の値が、その倍率になっていない形をしています。

問題を解くために新たに作った連立方程式がこの形をしていたら、「解が無い」と即座に見抜いて、その連立方程式を即座に除去してください。

【解がある連立方程式の例1】
x+2y=1, (式11)
3x+ay=1, (式12)
(aはある定数)
 この連立方程式は、定数aの値が確定していないので、解がある連立方程式です。定数aの値は、計算の過程で、解があるように自動的に調整されます。
 そのことを確認するために、以下で、この連立方程式を解いてみます。

(解答始め)
3×(式11)-(式12):
6y-ay=3-1=2,
(6-a)y=2,
a≠6,  (式13)
 ・・・ここで、連立方程式に解があるようにaの値が調整された。
方程式を解く計算は、この式13を導いた様に、方程式に解がある条件を求めていく作業です。
解の無い連立方程式を除去する作業も、方程式を解く計算の一種と言えます。
y=2/(6-a), (式14)
式14を式12に代入する:
x+4/(6-a)=1,
x=(2-a)/(6-a),  (式15)
式14と式15が方程式の解である。
(解答おわり)
 この連立方程式を解く過程で、式13によって、連立方程式が解を持つように調整された。
 この例の様に、連立方程式の定数の中に、値が定まっていない定数(この例ではaがそれ)を持つ連立方程式は、解がある連立方程式です。

(補足)定数と未知数の定義。
未知数→方程式の中で気にする数。
定数→方程式の中で気にしない数。
という違いがありますが、定数と未知数の区別はあいまいです。

(連立方程式に解が無いようにする条件)
 この様に、式11と式12の連立方程式は、解がある連立方程式ですが、この連立方程式を解く過程で導き出した式13を先回りして否定する以下の条件を加えて、
a=6 (式16)
として、定数aの値を限定したら、この連立方程式は、解の無い連立方程式になります。
 解がある連立方程式が、今度は、解が無い連立方程式になったという矛盾を感じる方もいるかもしれませんが、以下の理由により、そこには矛盾がありません。
すなわち、式11と式12の2つの式の連立方程式には解がありますが、式11と式12と式16との3つの式の連立方程式には解が無いのです。
 よって、式11と式12の連立方程式は、解があるか無いかが分かる連立方程式であって、定数aが式13で限定されるという解も持つ、解がある連立方程式です。

 一方で、式12と式13に式16を加えた3つの式の連立方程式は、解が無い連立方程式です。

 一般的に言って、解がある連立方程式にもう1つの式を加えた連立方程式は、その式を加える前の連立方程式とは異なる連立方程式であるので、解が有るか無いかの性質も異なります。
例えば、
x=1,
y=2,
という2つの式の連立方程式は解がありますが、
この連立方程式に,
x=3,
という式を加えた3つの式の連立方程式には解がありません。

【解がある連立方程式の例2】

 この連立方程式は、定数aの値が確定していないので、解がある連立方程式です。定数aの値は、以下の計算のように、計算の過程で、解があるように自動的に調整されます。



x,yの解は、a=1の場合に、式(1)で束縛された無数の解がある。または、式(6)(9)の条件の下に、式(7)(10)で与えられる解がある。
(解答おわり)

 この連立方程式を解く過程で、式(6)(9)によって、連立方程式が解を持つように調整された。
 この例の様に、連立方程式の定数の中に、値が定まっていない定数(この例ではaがそれ)を持つ連立方程式は、解がある連立方程式です。
 この連立方程式は、解がある連立方程式ですが、この連立方程式を解く過程で導き出したa=1の場合を否定し、更に、それ以外の場合での式(6)(9)を否定する以下の条件を加えて、
a=0, or a=3
として、定数aの値を限定したら、この連立方程式は、解の無い連立方程式になります。


【解があるのか無いのかが直ぐには分からない連立方程式】
 以上で説明した様に、2つの変数xとyの連立方程式の場合は、その変数の解があるか無いかが直ぐに分かります。
 解があるか無いかが直ぐには分からない連立方程式の例を、以下で具体的に示します。
x+y+z=1, (式21)
x-y+z=2, (式22)
x+z=1,   (式23)
この連立方程式は、解があるのか無いのか直ぐには分かりません。
そのため、解があるのか無いのかを、以下の様に計算して、早急に求めておく必要があります。
(式21)+(式22):
2x+2z=3,
x+z=3/2, (式24)
この式24は、式23と矛盾します。
よって、この連立方程式には解がありません。
(解の有無の判定おわり)

【解が無い連立方程式の例3】
x=1,
x=2,
x+y+z=1,
という連立方程式は、
未知数の数が3つで方程式の数も3つで、その数が一致してはいますが、解が無い連立方程式です。 

【解が無い連立方程式の例4】
x=1,
x=2,
x=3,
というふうに未知数が1つしか無い式の群も連立方程式です。この連立方程式には解がありませんが、、、。
以下の式も連立方程式です。
x=1,
2x=2,
3x=3,
この連立方程式には解があります。

【解がある連立方程式の標準的な形】
 なお、以下の例の様に、変数の数よりも方程式の数が多い連立方程式は、解が無い連立方程式の形をしています。
ある定数aに関する、未知数xとyに関する連立方程式:
x+y+a=0, (式25)
x-y+a=2, (式26)
xー2a=1,  (式27)
この3つの連立方程式は、2つの変数x,yに関して、式の数が、変数の数より多い3つあるので、解が無い連立方程式の形をしています。
 ただし、
定数aの値が確定していないので、定数aの値を限定する解も持つ、解のある連立方程式です。
 すなわち、定数aの値も未知数と解釈してその値を求める式でもあると解釈すると、この連立方程式は3つの未知数x,y,aに関する3つの式の連立方程式なので、解がある連立方程式の形をしています。

(方程式の数が多すぎる連立方程式に解があるようにする条件)
 すなわち、a=0である場合に限り、
この3つの連立方程式は独立では無くなり、独立な方程式は2つだけになるので、その場合に限り、この連立方程式には解があります。
 この式25、26、27から成る連立方程式を解くと、自動的にa=0に調整されて、解が計算できます。
 この式25から式27の様に、未知数の数より方程式の数が多い連立方程式であっても、解がある連立方程式は、その解が自動的に計算できます。

【解がある連立方程式の例3】
 以下の式28と式29の連立方程式の様に、変数の数よりも方程式の数が多い連立方程式であっても、複数の方程式が独立で無い事が明らかな方程式は解がある連立方程式です。
ある定数a(例えばa=1)に関する、未知数xに関する連立方程式:
x+2a=1, (式28)
3x+6a=3, (式29)
この2つの連立方程式は、1つの変数xに関して、式の数が、変数の数より多い2つありますが、式29は式28を3倍しただけの、式28と同じ式であるので式29を削除できます。式29が削除できるので、これは、解がある連立方程式です。
この方程式を解くと、
x=1-2a
という解が得られます。

(解が無限にある連立方程式の未知数の一部を定数扱いする)
 ここで、式28と式29の定数aを未知数yに置き換えて、未知数xとyに関する連立方程式を作ると:
x+2y=1, (式28’)
3x+6y=3, (式29’)
この連立方程式は、式29’が削除できて式28’だけになるので、未知数の数より方程式の数の方が少なくなるので、解が無数にある連立方程式になります。

 解が無数にある連立方程式というものは、未知数の数よりも(実質的な)方程式の数が少ない方程式です。
 それを考えると、式28’と式29’の様に解が無数にある連立方程式というものは、その変数のうちの1つの変数yを定数aであると考えて、残った未知数xを定数aを混ぜた式で表す解:
x=1-2a
がある連立方程式であると解釈する事ができます。 

(解が無い連立方程式が作られる場合)
 高校に入学すると、実際、式1と式2の様な解が無い連立方程式を、ふざけて作るのでは無く、真面目に作る事があります。それは、2つの直線のグラフの交点の座標を求める問題で、有り得るのです。2つの直線には普通は交点がありますが、2つの平行する直線には交点という解がありません。そのとき、上に示した式の形をした、解の無い連立方程式が作られるのです。

(解の無い方程式を取り除く例)
  以下の図形で、点Aの座標が分かっていて、直線EFの式と直線BCの式が与えられている場合に、線分の長さを与える定数aとbから線分AEの長さxを求める問題を考えます。
直線EFと直線BCの交点Dを求めてから、式31のメネラウスの定理を使ってこの問題を求めようとすると、直線EFと直線BCが平行な場合は、以下の問題が発生します。

 直線EFの式と直線BCの式との連立方程式を立てて、交点Dの座標を計算すると、平行な直線は交わらないので、点Dの解が有りません。
 その点Dを求めるために作った、解が無かった連立方程式は、2直線が交差しない、すなわち、その2直線が平行であるという事実を導き出すという役割はあります。
 点Dの解が無いので、点Dを使っている、式31のメネラウスの定理は、意味を成さないので、式31を除去します。式31は、点Dが存在しないならば意味を成さない式であるので、除去する事に何も問題ありません。
(こうして、解の無い方程式31を除去しました。)
 点Dは存在しないので、この問題は、点Dを使わずに解きます。先に得た、直線EFと直線BCが平行であるという結論は、この問題を解く役に立ちます。
(解の無い方程式を取り除く例おわり)

(解の無い方程式の解を有るようにする例)
高校生になってから以下の事を学びます。
(y)の二乗=-1
という方程式に、一見解が無い様に見えても、
y=虚数i
という解があることにし、虚数という新しい種類の数を定義して問題を解決します。

 しかし、式1と式2の連立方程式に解が無い問題は、簡単には解決しません。
式6が決して導き出されないようなしくみを導入するか、又は、式6が嘘で無いとする新たな数の体系の数に置き換えて計算しない限り、解はありません。

(解の無い連立方程式も、射影幾何学を使って、その解を有るようにする事はできる)
 なお、式6を嘘で無いとして式1と式2の連立方程式の解を存在できるようにする新たな数の体系があります。それは、大学の数学科に進学して、「射影幾何学」の「射影座標系」の射影座標を解の数とすることで可能になる事を学ぶことができます。射影幾何学では、2つの平行する直線は無限遠で交差する事にし、その交点を無現遠点の射影座標であらわすのです。
(ただし、「射影幾何学」の場合は、扱う数自体を別の物に置き換えて、一見、式6の形を許容する式を成り立たせているだけですので、そのように数自体を別物に変換しない限りは、式6はあいかわらず嘘の式です。)

【解が無い連立方程式を利用して問題を解く例5】
 未知数の数が2つで、方程式の数が3つの連立方程式のように、方程式の数の方が未知数の数よりも多い連立方程式には解が無い可能性が高い。以下の問題例5は、それを利用して問題を解き易くする例である。

この連立方程式は、3つの未知数に対して3つの方程式があり、少なくともx=1,y=1,z=1という解がある方程式である。この方程式は、以下のように変形して計算すると解き易くなる。

以上のような未知数の置き換えを行うと、以下の連立方程式が得られる。(途中計算の式の表示を省略)

この連立方程式は、X=0,Y=0,Z=0という解がある。一方:
Z≠0と仮定すると、以下の連立方程式が得られる。

以下の未知数の置き換えを行うと分かりやすくなる。

この連立方程式は、2つの未知数に対して3つの方程式があり、方程式の数の方が未知数の数よりも多いので解が無い可能性が高い。この方程式を以下の計算で変換する。



ここで得た方程式15、16、17の3つは、元の式12,13,14を同値変形した式の組であって、式12,13,14で解ける問題は、式15,16,17で解けます。
 また、式16と式17は、1つの未知数に対して2つの式がある連立方程式であり、その式16と17の連立方程式には解が無い可能性が高い。この式16と式17の連立方程式は、以下の連立方程式に同値変形できる。

ここで得た、方程式16、19の2つは、元の式16、17を同値変形した式の組であって、式16、17で解ける問題は、式16,19で解けます。

ここで得た、方程式20、21の2つは、元の式16、19を同値変形した式の組であって、式16、19で解ける問題は、式20,21で解けます。
 しかし、この2つの式20、21の連立方程式は解の無い連立方程式である。よって、式20と式21の連立方程式は解けない。さかのぼって、式15、16、17の連立方程式は解けない。式12、13、14の連立方程式は解けない。式7b、8b、9bの連立方程式は解けない。結局、Z=0と仮定して得た連立方程式は解けない。
 よって、Z=0であり、そのとき、X=0,Y=0である。そして:
x=1,
y=1,
z=1,
(解答おわり)

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2変数の3つの方程式の互除法で問題を解く
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2018年10月7日日曜日

三角形の3つの正弦の積の公式

【問題作り】
以下の三角形について以下の式が成り立ちます。
これを利用して、三角形ABCの面積を計算すると、
以下の公式3が成り立っていることがわかります。
この式3を証明せよ、と言われた場合に、
上の考察の手順を書いて解答することもできると考えますが、
三角関数の和と積の公式を使ってこの式3を導き出す事もできるように、自力で式3を導き出す練習をしておいて欲しいと考えます。

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2018年10月3日水曜日

サイコロの目が2種類出る確率

【問題】
1個のサイコロを4回投げる時、出る目の最小値が1、かつ最大値が6である確率を求めよ。


この問題の解答は、ここをクリックした先にあります。

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微分積分学の基本定理からまぼろしの基本定理まで

(微分積分学の基本定理の正しい定義の開始)
 関数y=f(x)が、
a≦x≦b
上で連続とする。

その条件が成り立つならば、必ず、 
という計算をすることができる。
そして、次のことが成り立つ。
(1)不定積分S(x)はf(x)の原始関数の1つである。
(原始関数は連結区間で1つながりに連続な関数であって全ての点で微分可能な関数)
(2)F(x)をf(x)の任意の原始関数とすると、
 が成立する。
(定理の定義おわり)
  すなわち、基本定理の意味は、その定理の命題が、S(x)の式の積分計算を可能にする十分条件(関数が連続である)を述べたものであることがわかります。
 この基本定理の命題が正しいか否かは、連続関数(その領域内で関数が連続)が、「関数の積分を可能にする十分条件」になるか否かによって決まる、そして、関数はその関数が連続な領域で積分可能なので、微分積分学の基本定理が成り立つ、ということがわかります。

(まぼろしの基本定理の予感)
 微分積分学の基本定理をこの形で表現すると、微分積分学の基本定理の抱える問題点が良く分かると思います。
連続関数(その領域内で関数が連続)については、積分して微分すると元の関数が得られるという便利な特徴がありますが、他の関数にも、そういう特徴を持つ関数が無いか、調べてみましょう。
 下図の関数F(x)とF’(x)=f(x)を考えてみます。
関数F(x)はx=0で連続な関数です。
この関数F(x)を微分すると、下図の関数f(x)が得られます。
この関数f(x)はx=0では連続ではありません。
しかし、この関数f(x)を積分すると、F(x)を得ることができます。
この関数f(x)はx=0で連続で無いので、x=0を含むxの範囲で微分積分学の基本定理が適用できません。
しかし、
x=0を含む範囲で、微分積分学の基本定理の結論である:
 が成立します。
このことから、
以下のまぼろしの基本定理がありそうです。
【まぼろしの基本定理】
関数y=F(x)が、
a≦x≦b
上で連続とする。

関数F(x)が、
a<x<b
で微分可能で、その範囲内で、
F’(x)=f(x)になるとする。

 ここで、関数f(x)の値が存在しない境界点のx=a又はbがある場合:
関数f(x)の値が存在するxの値の範囲がa<x<bならば、そのxの値の範囲の境界点の極限値のaとbが考えられる。
その関数f(x)の値が存在するxの値の範囲a<x<bの範囲内で関数f(x)を積分した結果のF(x)の値の、
x→a の極限を、F(a)とし、
x→b の極限を、F(b)とし、
a<x<bでの積分範囲の極限の、a≦x≦b
での積分を、
F(b)-F(a)
と定義する。そう定義すると:
 が成立する。
(まぼろしの基本定理の定義のおわり)

このまぼろしの基本定理は、数学者の藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」に、以下の通りに書いてありました。

不連続関数f(x)の積分を広義積分と呼び、
その積分において、関数f(x)の積分範囲
a≦x≦b
内で連続な不定積分(その積分範囲内に微分不可能な点があっても良い)F(x)が得られたら、
(1)それは、不連続関数f(x)が積分可能である証拠であり、
(2)以下の計算で定積分を計算して良い事が書いてあります。
F(b)-F(a)
よって、
不連続な関数f(x)に対して、
その積分区間で連続な不定積分F(x)が見つかったなら、
その不定積分F(x)を使って定積分を計算して良いです。
(しかもそのF(x)はその積分区間内で微分不可能な点があっても良い)  

また、小寺平治・著「はじめての微分積分15講」(2,200円)の103ページにも、このことが書いてあります。

「やさしく学べる微分積分」(石村園子)の106ページの形の微分積分学の基本定理を使うと、以下の定理がすぐに導き出せる。
【定理】
a≦x≦b
の範囲で連続な関数f(x)がある場合、


a<x<b
の範囲で、
F’(x)≡f(x)>0
ならば、
a≦x≦bの範囲で、
f(x)の原始関数F(x)は単調増加である。
(定理の定義おわり)

(証明開始)
関数f(x)が
a≦x≦b
で連続であるので、
a≦x<x≦b
なるxとxに関して、
微分積分学の基本定理により、

よって、
F(x)は単調増加である。
(証明おわり)


 高校で扱う連続関数(その領域内で関数が連続)はこの定理の条件を満足するので、この定理があれば十分と思いますが、

藤原松三郎の「微分積分学 第1巻」に書いてあったまぼろしの基本定理:
被積分関数f(x)が連続関数(その領域内で関数が連続)で無くても、
その様に不連続な関数f(x)に対して、
その積分区間で連続な不定積分F(x)が見つかったなら、
その不定積分F(x)を使って以下の計算で定積分を計算して良い。 
F(b)-F(a)
が使えます。

 実際、以下の定理があります。
【定理】
a≦x≦b
の範囲で連続な関数F(x)がある場合、


a<x<b
の範囲で、
F’(x)≡f(x)>0
ならば、
a≦x≦bの範囲で、
関数F(x)は単調増加である。
(定理の定義おわり)


 この定理の証明に、「まぼろしの定理」を使えますが、先ずは、それを使わずに、伝統的に確立されている平均値の定理を使って、この定理を証明しておきます。
(証明開始)
a≦x≦b
の範囲で連続な関数F(x)が:

a<x<b
の範囲で微分可能で、
F’(x)=f(x)
の場合、
平均値の定理によって、
a≦x1<x2≦b
なるx1とx2に関して、
(F(x2)-F(x1))/(x2-x1)=f(x)
となるxが、
a≦x1<x<x2≦b
に、少なくとも1つ存在する。
その範囲で、
f(x)>0
なので、
F(x2)>F(x1)
である。
よって、F(x)は単調増加である。
(証明おわり) 
  このように証明できるこの定理は、まぼろしの基本定理を支える基礎の1つになっていると考えても良いと思います。

(備考2)
 なお、全ての種類の関数における、積分前の関数f(x)と、微分前の関数F(x)との、変数xの一部の定義域での微分積分のあり得る関係が以下の図であらわせます。
(なお、F(x)として考えられる関数の、関数が連続な領域内の至るところ微分不可能な関数であるワイエルシュトラス関数等は、不連続点を持たないが、微分不可能です。)
(上図で、関数f(x)は、除去可能な不連続点を除去した関数です。関数F(x)は、関数F(x)の不連続点を除いた変数xの範囲でf(x)の不定積分であるとともに、f(x)の不定積分でもあります)

 上図の、f(x)とF(x)の関数のセットの例:
以下で定義する関数のセットでは、f(x)にx=xで除去不可能な不連続点があって、f(x)は不連続関数(その点で関数が不連続な関数であって、その点以外の領域では関数が連続な連続関数である)です。
 しかし、この不連続点を持つ関数f(x)を、その不連続点を含む範囲で定積分することで定義した関数F(x)が、その不連続点の位置xでも変数xで微分可能で、F(x)を微分すると再び不連続点を持つf(x)が得られます。
(F(x)の定義)
x≠0の場合:
x=0の場合: F(0)=0,

(導関数f(x))
この関数F(x)はx≠0の場合も、x=0の場合も、微分可能で、
その導関数f(x)は、以下の式であらわせます。
x≠0の場合の微分:
になり、xが0に近づくとー1と1の間を振動します。
この導関数が含むcos(1/x)の関数が以下のグラフであらわす形の関数になるからです。
X=0の場合にも、F(x)は微分可能で:
というように、0になります。
そのため、この導関数f(x)は、x=0で連続ではありませんが、F(x)を微分することで得られます。
この導関数f(x)は積分可能であり、積分するとF(x)になります。 

 この関数F(x)はx=0で連続な連続関数(その点で関数が連続)です。


 F’(x)=f(x)はx=0で微分可能では無く不連続なので、x=0を含むxの範囲では微分積分学の基本定理が適用できませんが、「まぼろしの定理」が適用できるように思います。

 この様な複雑な関係の中から、比較的に扱い易い連続関数(その領域内で関数が連続)を使って従来の微分積分学の基本定理が定められています。

 また、大学以上の微分積分学では、積分の定義をどんどん拡張して、何でも積分できるようにして、ある関数f(x)を積分して不連続点を持つ関数F(x)を得ることができるようにし、その不連続点を持つ関数F(x)を微分して関数f(x)を得ることができるように、微分の定義も拡張するというような事も行なわれます。
 そのように微分・積分の定義を拡張する入口に、微分積分の基本定理が置かれています。
 そのため、微分積分学の基本定理の:
という式の意味することは:
この公式の前提条件以外の条件によってこの式と異なる結果が得られるわけでは無く、
この式を成り立たせるように、f(x)とF(x)を対応させる規則である微分と積分とを矛盾が生じ無い様に定義を修正して、この式を成り立たせているのです。
 そういうわけなので、
a≦x≦bの範囲で、
F(x)が連続な関数とし、


そのF(x)が、
a<x<bの範囲で微分可能で、
f(x)=F’(x)
が有限な値で存在する場合は、
f(x)の積分の範囲の取り方を、
f(x)が、x=aやx=bで存在しない場合にも、
f(x)をaからbの範囲で積分可能にするように積分の定義を微妙に修正するだけで、
という式を計算可能にする「まぼろしの定理」を作りあげることができます。
そういう、積分の定義の修正を加えるだけで、「まぼろしの定理」が適用可能になります。
 「やさしく学べる微分積分」(石村園子)の107ページの説明にある、106ページの形の微分積分学の基本定理への感想:「この定理は、f(x)の原始関数を定積分を使って定めてあるところがすばらしい」と書いてあるとおり、
素晴らしい表現だと思います。
という形の定積分を使ってf(x)原始関数F(x)を定めている本質的な表現をしているので、微分積分学の基本定理の前提である:
連結区間a≦x≦b
で関数f(x)が連続であれば:

という条件は、定積分を可能にしている条件に過ぎないことが顕わに見えています。

【まぼろしの基本定理の厳密な定義】
 定積分の定義が修正されて、従来の積分の定義では不定積分F(x)が定義できなかった関数f(x)を、同じ形の定積分で不定積分F(x)を定義できるように積分の定義を修正すれば、微分積分学の基本定理が適用できる関数f(x)の種類を拡大して「まぼろしの基本定理」を構成できることが分かります。
(1)そして、そのように積分の定義を修正し、F(x)が連続関数(その領域内で関数が連続)であるという条件だけを定め、

f(x)が連続関数(その領域内で関数が連続)で無くても(積分範囲内にf(x)の関数値が存在しない不連続点があっても)積分を適用できるようにする。
(2)更に、 微分する点を含む領域内で連続な関数F(X)の微分により得ることができる関数f(x)を、以下の処理で定義することができます。
(2-1)すなわち、ある関数f(x)の不連続点x=x0で関数が極限値を持つ場合、その不連続点での関数f(x0)の値をその極限値に修正して不連続点を解消する。
(2-2)その他の不連続点については、その不連続点x=x0 を含む領域で関数f(x)を積分して関数F(x)を得て、関数F(x)を微分した場合の不連続点x=x0で導関数の値が元のf(x0)と異なる場合(例えばF(x)がx0で微分不可能で関数値が無い場合)には、関数f(x)の関数値f(x0)を、その導関数の値に修正する。
(2-3)以上の処理で定義した関数f(x)を、「まぼろしの基本定理」を適用する対象の関数f(x)とします。すなわち、定理の対象にする関数f(x)を、連続関数F(x)を微分することで得られる関数に限定します。
 また、定理の対象にする連続関数F(x)も、それを微分した関数を積分することで再び得られる関数に限定します。詳しくは、連続関数F(x)を、それが微分不可能な点が散在するにしても、大部分のxの値で微分可能な連続関数F(x)に限定します。
そのように限定した関数f(x)に対して、その修正した定義による積分の計算をすると:
が成り立ち、また、次のことが成り立つ。
(3)S(x)はf(x)の不定積分である。
S(x)は連続関数(変数xの連結区間内で関数が1つながりに連続)になる。
(4)連続関数F(x)をf(x)の任意の不定積分とすると、
 が成立する。
(まぼろしの基本定理の定義おわり)

 このまぼろしの基本定理が 成り立つ条件を整えるために、f(x)を積分した結果の(xの連結区間内で)連続な関数F(x)を微分した導関数の関数値がf(x)の関数値と同じになるという特徴がある関数f(x)を選びました。(そうならない関数もありますが、そういう関数f(x)は除外してあります)

 この「まぼろしの基本定理」を使えば:
【定理】
a≦x≦b
の範囲で連続な関数F(x)がある場合:


a<x<b
の範囲で、
F’(x)≡f(x)>0
ならば、
a≦x≦bの範囲で、
関数F(x)は単調増加である。
(定理の定義おわり)

という定理を、微分積分学の基本定理を使った証明の場合と同様な手順に従って、まぼろしの基本定理を使って証明することができます。
 ただし、この様に定義した関数f(x)に対して、このように修正した積分方法で積分することで得られる連続関数F(x)に限定された証明にはなります。例えば、関数が連続な領域のあらゆるところで微分不可能な関数であるワイエルシュトラス関数等は連続関数F(x)の候補として使えませんが、、、(例え候補になれても、微分が不可能なので、その関数はこの定理のF(x)の条件から外れる)。 
 こうして、この定理が対象にする連続関数(所定領域内で連続な関数)F(x)が、その様に定義された関数f(x)から積分することで得られる連続関数F(x)に限定されます。そして、関数が連続な領域の至るところ微分不可能な関数が定理の対象とする連続関数F(x)から除外されます。そういうふうに、まぼろしの基本定理が対象にできる連続関数F(x)が制限されている、定理の限界によって、この証明方法で証明されるのは、そういう連続関数F(x)に係る場合だけに限定されるので、この証明方法は、全ての連続関数F(x)について定理を証明したわけでは無く、この証明は不完全です。
 しかし、これにより、この定理の確からしさを確認でき、この証明方法によって定理の持つ意味が分かると考えますので、この証明方法の価値があると考えます。
 また、F’(x)がa<x<bで微分可能であるという条件があるので、その条件が加わった連続関数F(x)は、まぼろしの基本定理の対象にする連続関数の集合に含まれることを証明できそうだと考えます。それが証明できれば、以上の証明方法は、「完全な証明」になり得ると考えます。

 なお、この定理の対偶も正しく成り立ちますが、その対偶の一部の、正しく成り立つ定理を、以下の様に表現することができます。
【定理の対偶(の一部)】
a≦x≦b
の範囲で連続な関数F(x)であり、

 a<x<b
の範囲で微分可能な関数F(x)が、

a≦x≦bの範囲で、単調増加で無い
(例えばある領域でF(x)が同じ値に停留したり、減少したりする)
ならば、
a<x<b
の範囲内に、
F’(x)≡f(x)≦0

となる点が必ず存在する。
(定理の定義おわり)

(注意)先の定理(命題)の対偶は、以下の様に、定理の前提条件(関数F(x)が所定領域内で連続であること等)を否定した場合も想定した命題になります。
【定理の対偶】
a≦x≦bの範囲で、
関数F(x)が
単調増加で無い
(例えばある領域でF(x)が同じ値に停留したり、減少したりする)
ならば、
(場合1)
a≦x≦b
の範囲で、関数F(x)が連続で無いか、

(場合2)
関数F(x)はその範囲で連続ではあるが、
 a<x<b
の範囲で微分不可能な点があるか、

(場合3)
関数F(x)はその範囲で連続で、
かつ、 a<x<b の範囲で微分可能
ではあるが、  
a<x<b の範囲内に、
F’(x)≡f(x)≦0

となる点が必ず存在する。
かの何れかである。
(定理の定義おわり)

 先の【対偶の一部】は、この【対偶】における場合3を述べた命題でした。
 ここで、条件付きで定義した命題は、
その条件が成立しないときには、その命題の結論が成立しない事もあるという意味を含んだ命題になりますので、
結局、上の場合1と場合2の想定は、条件付きで定義した命題の意味の中に含まれていることになります。
そのため、先の、【定理の対偶(の一部)】の命題は、
結局、定理の対偶によって表現される内容の全部を含んでいます。そのため、定理の対偶の一部では無く、定理の対偶の全体をあらわすものでした。
 定理の成立条件の位置付けをこの様に解釈すると、この「定理の対偶」の定理(命題)の対偶が、以下の様にあらわせます。
【定理】
a≦x≦b
の範囲で連続で、

a<x<b
の範囲で微分可能な関数F(x)が、
 

その範囲での微分係数が全て、
F’(x)≡f(x)>0

ならば、
その関数F(x)は、a≦x≦bの範囲で、単調増加である。
(定理の定義おわり) 
 この命題は、元の定理ですので、元の定理が「対偶の対偶」によって再現できました。

 なお、
「まぼろしの定理」 を使えば、単調増加関数F(x)の範囲を拡張した以下の定理もやさしく証明できます。
【定理】
a≦x≦b
の範囲で連続な関数F(x)がある場合:


a<x<b
の範囲で、
F’(x)≡f(x)≧0

であり、
そのうち、
f(x)=0となる点は有限個数存在するだけならば、
a≦x≦bの範囲で、
関数F(x)は単調増加である。
(定理の定義おわり)

という定理も簡単に証明できます。
積分範囲内に、F’(x0)=0となる点
x=x0が、
a≦x≦b内の、
c<d
となるcからdまでの領域内の全ての点でF’(x)=0であれば、
そのcからdまでの積分結果=0
となります。
しかし、有限の幅を持った領域にわたっては
F’(x)=0
とはならず、
所定領域内に、
F’(x)=0となる点が有限の個数有るだけならば、
その領域での積分結果>0
になるからです。

もう1つ、以下の関数F(x)が単調増加であることも、
「まぼろしの定理」を使ってやさしく証明できます。
(関数F(x)の定義)
x=0のとき: F(x)=0,
0<x≦1において、
F’(x)=1+cos(1/x),
この関数F(x)は、
0≦x≦1
の範囲内に、 無限個のF’(x)=0となる点がありますが、
0≦x≦1
の範囲内で連続、かつ、単調増加です。

このことは、
「まぼろしの定理」を使ってF’(x)を積分してF(x)を求める計算式を書けば分かります。

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