2024年4月17日水曜日

直角三角錐の面の4平方の定理とベクトルの外積

【問】下図の直角三角錐の斜面の三角形ABCの面積Sを計算せよ。

【解答】

(三角形ABCの面に垂直な法線ベクトルを導き出す)
三角形ABCを含む面の方程式は以下の式で表せます。

この式は、三角形を含む平面上の位置ベクトル(X,Y,Z)と他のベクトルの内積を表す以下の式です。

この式から、三角形を含む平面上の2つの位置を結ぶベクトル(その位置ベクトルの差)と所定ベクトルの内積が、いつでも0になる、以下の式が成り立ちます。


この式は、この所定ベクトルが三角形を含む平面に垂直である事を示しています。よって、この所定ベクトルが面ABCの法線ベクトルであることがわかります。

3次元の立体上の三角形ABCの面積は、XY平面上の三角形ABOを(1/cosθ)倍に逆射影して計算することができます。


(4平方の定理)
 この計算の途中で、以下の式であらわされる、
直角三角錐の3面の、直角三角形の面積の2乗の和が、直角三角錐の斜面の三角形の面積の2乗になるという、

ピタゴラスの定理に類似した公式(4平方の定理)が成り立っている。

《4平方の定理》

と表現することができる。
そうして、以下の式で計算できる。


(面積はベクトルで表現できる)
 4平方の定理が意味することは、空間における三角形の面積はベクトルで表現できるということを意味する。
(1)三角形の面積のXY平面への正射影は、ベクトルであらわした面積ベクトルのZ軸方向成分であり、
(2)三角形の面積のYZ平面への正射影は、ベクトルであらわした面積ベクトルのX軸方向成分であり、
(3)三角形の面積のZX平面への正射影は、ベクトルであらわした面積ベクトルのY軸方向成分である。

(平行四辺形の面積の計算)
 以下で、大学レベル以上での、2つのベクトルの張る平行四辺形の面積をベクトルで分解して計算する方法を書きます。
以下の考察の結論は、平行四辺形の面積は、ベクトルの演算によってあらわせるということです。
そのベクトルの演算が、ベクトルの外積を意味します。

 以下の内容は大学生でも理解が難しい事も含まれていると思いますので、理解出来なくても気にしないで下さい。


 平行四辺形を張るベクトルを要素に分解して要素のベクトルの張る平行四辺形の面積計算し、その要素の平行四辺形の面積を合計して元のベクトルの張る平行四辺形の面積を計算します。
 以下のように、座標系が回転しても結果が変わらないように面積の計算規則を定める点がポイントです。
 X座標軸を反時計まわりに90°回転させてY座標軸に重ねると、Y座標軸は反時計まわりに90°回転してX座標軸の負の方向を向いて重なる。そのため、XベクトルとYベクトルの張る(ベクトルの順と成す角の向きを考えた)平行四辺形の面積を正にした場合、このように座標を回転させても面積が変わらないようにするには、必然的に、ベクトルの順と成す角の向きを考えた、Yベクトルと、X方向の負の方向を向いたベクトルの張る平行四辺形の面積を正にする必要がある。それは、YベクトルとX方向の正の方向を向いたベクトルの張る平行四辺形の面積を負にしなければならない事を意味する。

 下図の様に、ベクトルAとBが平行な場合にベクトルAとBが張るつぶれた平行四辺形の面積は0である。
その平行四辺形の面積を、ベクトルAとBをそれぞれ、X方向のベクトルとY方向のベクトルの和で表し、その和のベクトルAとBの積を、X方向のベクトルとY方向のベクトルの積の和に展開して、以上で定めた計算規則に従って計算すると、その計算結果も0になる。
また、同じ方向を向くベクトルAとBが張るつぶれた平行四辺形は、その平行四辺形を回転させてどの方向を向かせても、同じ0の値の面積が計算できる。
 平行四辺形を張るベクトルA及びBをX方向のベクトルとY方向のベクトルに分解すると、ベクトルAの分解されたベクトルとベクトルBの分解されたベクトルの積の組み合わせが作る平行四辺形が4個できる。その4個のうち2つの平行四辺形は、同じ方向のベクトルの張るつぶれた平行四辺形であり、その面積が0なので無視できる。
そして、その4個の平行四辺形の面積の和で、ベクトルAとBの張る平行四辺形の面積を計算したい。
上の例では、少なくとも面積が0のつぶれた平行四辺形の面積の計算では、その0の面積が、ベクトルAの分解されたベクトルとベクトルBの分解されたベクトルの積の組み合わせが作る4個の平行四辺形の和と同じになる演算ができる様になった。

 次に、下図のように、ベクトルAとベクトルBの張る平行四辺形の面積を、同じ面積を維持するように高さを保たせて変形した平行四辺形にして面積を求める手法を、ベクトルAを分解したベクトルとベクトルBとの積の和を計算する手法に対応させて面積を計算する。
 上図の、平行四辺形の変形と分解操作に対応するベクトルの積の式の分解操作の計算が以下の式であらわせる。
 
式0の様に、ベクトルAとベクトルBの(順番を考えた)積はそのベクトルAを分解した各ベクトルとベクトルBの張る各平行四辺形の面積の和に対応付けられる。

すなわち:
(ベクトルAのベクトルBに対する垂直成分の長さ)×(ベクトルBの長さ)
が平行四辺形の面積を表す。
一方、ベクトルAを分解して、
ベクトルA=ベクトルA1+ベクトルA2
とすると:
ベクトルA1のベクトルBに対する垂直成分の長さと、
ベクトルA2のベクトルBに対する垂直成分の長さの和は、
ベクトルAのベクトルBに対する垂直成分の長さに等しい。
そのため、
ベクトルAとベクトルBが張る平行四辺形の面積
=(ベクトルA1とベクトルBが張る平行四辺形の面積)
+(ベクトルA2とベクトルBが張る平行四辺形の面積)
の関係が成り立つ。
その関係は、
ベクトルA×ベクトルB
=(ベクトルA1×ベクトル B)
+(ベクトルA2×ベクトルB)
に分解した式で表すことができる。

すなわち、ベクトルが張る平行四辺形の面積についての分配法則に対応して、ベクトルの加法と(ベクトルの順番を考えた)乗法についての分配法則が共に成り立っている。

 また、上図の様に、ベクトルAとベクトルBの張る平行四辺形を、
その平行四辺形を構成する2番目のベクトルBを、ベクトルAのk倍のベクトルを加えて、ベクトルAに対する高さを保たせて歪めたベクトルB2に変える。
そうして、ベクトルAとベクトルB2の張る平行四辺形を考える。
その場合、以下の式が成り立つ。
ベクトルの加法と乗法についての分配法則により、
ベクトルA×ベクトルB2
=(ベクトルA×ベクトルB)
+(ベクトルA×k(ベクトルA))
と表すことができる。

ここで、
(ベクトルA×k(ベクトルA))
は面積が0のつぶれた平行四辺形をあらわしているので、その面積は0である。

それゆえ、
ベクトルA×ベクトルB2=ベクトルA×ベクトルB
が成り立つ。
この式は、底辺の長さが同じで高さが等しい平行四辺形の面積が等しい事実と一致している。
この様に、平行四辺形の面積を表すベクトルの加法と乗法の分配法則が、変形した平行四辺形の面積の法則と一致して、成り立っている。

 以上の演算規則で定めた、X座標方向の単位ベクトルとY座標方向の単位ベクトルが作る平行四辺形の面積の符号に合わせて、エディントンの計算記号εmpを定める。
それにより、ベクトルAの分解されたベクトルとベクトルBの分解されたベクトルの積の組み合わせが作る4個の平行四辺形の面積の和は、
(m=1,2; p=1,2) {εmp}=a-a
で表せる。
この面積の和が、ベクトルAとベクトルBの張る平行四辺形の面積である。

(3次元空間の平行四辺形の面積を3次元ベクトルであらわす:ベクトルの外積)
 3次元のベクトルAとベクトルBの張る平行四辺形の面積が3次元ベクトルCであらわせる。
ベクトルCを、(C,C,C)とする。
 ベクトルCの各成分の、r=1,2,3 について、
3次元ベクトルAの分解されたベクトルと、ベクトルBの分解されたベクトルの成分の積の組み合わせが作る平行四辺形の面積の和を計算する。
その和は、
エディントンの3次元の計算記号εrmpを使って、
Cr= ∑(m=1,2,3; p=1,2,3) {εrmpAB

であらわせる。
(この計算規則が、ベクトルAとベクトルBの外積の計算規則である)


 この計算に利用する3次元の(3階の)計算記号εmprは、テンソルと呼ばれる。

エディントンの3次元の計算記号εmprの値を定める規則は単純であり、
(1) εrmpの添え字の値のどれかが等しければ、その値が0であり、
(2) また、
ε123=1であり、
(3) εrmpの任意の2つの添え字を入れ替えると、その値な正負の符号が変わる。
という規則に従って、全てのεrmpの値が定まる。
すなわち εrmpは、m=p or m=r or p=rの場合に、
εrmp=0
であり、
m≠p、m≠r、p≠rの場合に、
ε123=ε231=ε312=1
であり、
上の要素の座標の添え字を入れ替えた場合の、
ε213=ε321=ε132=-1
という様に値を負にする。

なお、以下の様に添え字を入れ替えていくと、
ε231=ーε213=ε123=1
と変換して値が求められる。

 そのように、3階のエディントンの計算記号εmprを定めて用いる事で、ベクトルAとBが張る3次元の平行四辺形の面の面積が、ベクトルAとベクトルBの外積で計算される3次元ベクトルCであらわせる。

【外積の具体的計算規則】
 ベクトルの計算は、下の図のように、ベクトルを縦ベクトルであらわして計算します。

この形にすれば、ベクトルの外積は以下のように計算しやすくなります。
ここで、ベクトルの一番下のZ成分を一番上のX成分の更に上にも書いて、外積の計算を記憶に頼らず計算できるように工夫します。
そして、計算した結果のベクトルを面の法線ベクトルとして使う場合は、使いやすいようにベクトルを単純化します。

【外積の演算を簡単にする工夫】



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