2021年4月25日日曜日

複数の玉を同時に取り出す確率の問題とコンビネーションを用いて良い定理

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▷複数の玉を同時に取り出す確率
▷コンビネーション(組み合わせ)を用いて良い定理

《複数の玉を同時に取り出す確率》

【問題1】
 白玉が5個、赤玉が3個入った袋の中から、玉を同時に2個取り出す。白玉と赤玉を1個ずつ取り出す確率を求めよ。

【注意】
 以下の解答は、この問題を例にして、複数の玉を同時に取り出す問題の解き方の例を詳しく解説する事を目的として、このページに書いたものです。
 そのため、先ずこの問題を自力で解いてみたい人は、以下の解答を見ずに問題を解いてから、このページに戻って来てください。

【複数の玉を同時に取り出す操作の意味】
 この問題で、2つの玉を同時に取り出す操作がどのように行なわれるかを考えます。
完全に同時に取り出す操作は、以下の様にして実現できると考えます。
 あらかじめ2つの玉を選んで準備しておいて、「その2つの玉を取り出す指令」を出します。その指令が発令された時刻が2つの玉を同時に取り出す時刻です。
 それでは、あらかじめ2つの玉を選んでおく操作はどうすれば実現するかを考えます。
 2つの玉を選ぶという事は、当然な事ですが、選ばれる玉が、同じ玉を2回選ぶのでは無く、異なる2つの玉を選ぶ必要があります。

 1つの選定方法は:
 他の玉に何が選ばれているかという情報無しに、同時にもう1つの玉を選んでしまうと、同じ玉が重ねて選ばれてしまいます。
 そのため、2つの玉を区別して異なる玉を選ぶために、先ず、1つの玉を選び、
 次に、その選ばれた玉が何であったかの情報を使って、その玉以外の残った玉から、もう1つの玉を選びます。
 これによって、同じ玉が重ねて選ばれる事が無く、異なる2つの玉を選ぶ事ができます。
 この作業によって、最終的に、白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ確率が、同時に白玉と赤玉を1個ずつ取り出す確率になります。
 この操作による2つの玉の選定作業は、順番に玉を選ぶ作業です。この操作によって2つの玉を選定する確率が、求める確率になります。

 2つ目の「同時に2つ選ぶ」玉の選定方法は:
 全部の玉を、両端に玉の出口があるパイプに入れて、そのパイプを回転させてパイプの両端に遠心力によって出て来る玉を選ぶことで「同時に2つ選ぶ」方法があります。
(このパイプは、玉の出口の両端以外では直径が太くてパイプの中で玉の順番を入れ替えて玉が混ぜられるパイプとする。そのパイプの中で玉を十分に混ぜた後で両端から玉を取り出す。)
その場合は、パイプの左端にある玉を1つ目の玉と名付け、パイプの右端にある玉を2つ目の玉と名付ける。

【解答】
2つの玉を選定する作業によって:
(1)
1つ目の玉に白玉を選び、2つ目の玉に赤玉を選ぶ確率=


(2)
1つ目の玉に赤玉を選び、2つ目の玉に白玉を選ぶ確率=


(集計)
  結局、白玉1つと赤玉1つを同時に取り出す確率は、上の2つの場合を合わせた確率であり、


です。
(解答おわり)

【別解】
 上の解答の論理が正しい事を確認するために、この問題を別の視点から見て解きます。
 白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ場合の確率は、
同じように確からしい事象の数の比で求められます。
 8つの玉から2つの玉を選ぶ、同じように確からしい場合の数は、


個あります。
 そのうち、白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ場合の数は、


個あります。
 そのため、
白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ場合の確率は、白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ場合の数を8つの玉から2つの玉を選ぶ場合の数で割り算した数であり、


で求められます。
(解答おわり)

別解でも同じ答えになりました。

「同時に取り出して」
という言葉は、2つの玉を取り出す玉同士の取り出す時間差、あるいは、2つの玉を選ぶ玉同士の、選ぶ時間差が僅かにあって、「同時にとりだした」と言っても、その時間差が大きくなった場合と確率が同じになり、結局、
「順番に2回選ぶ」のと同じ確率が計算されると考えます。
すなわち、
時間差があるので、「元に戻さず2回とる」
というのと確率が同じになると考えます。

 結論を言うと、時間差が必ずあると考えても、同時に取り出すと考えて計算しても、同じ結論、同じ確率が計算されます。そのため、時間差があると考えて計算するのが正しいのです。更に言うと、物理学の相対性原理では、異なる位置の間の時刻の差は、一定速度で運動する慣性系毎に異なって観測される。そのため、絶対的な同時刻というものは有り得ないということが分かっている。

 以下では、同時に取り出す、(と言うよりも、取り出す時刻をあいまいにして同時とみなして計算する方法を考えます。その計算方法であっても、結局は、時間差を持って玉を確認するという操作によって時間差が導入されることを示します。

 例えば、パイプの両端にある玉を取り出すことによって「取り出す時刻をあいまいにすることで、同時に取り出すように見える」操作をする場合を考えます。
 そのように「同時に取り出すとみなす」操作をする場合も、同時に2つ取り出した後で、以下で考えるように、その2つの玉が何であったかを時間差を持って順番に1つずつ玉を見て確認することを考えると、「同時に取り出す」ことが「順番に取り出す」ことと等価になることが理解できると考えます。

(研究課題)
 特に、全部の玉を両端に玉の出口があるパイプに入れてパイプの中で玉を十分に混ぜた後で、パイプを回転させる遠心力でパイプの両端の出口に玉を寄せる。そのパイプの両端の玉が白玉と赤玉になる確率を計算する場合は、別解の方法で考えた方が解き方が分かり易い。
 そして面白い研究課題として、パイプの左端の玉が白になり、右端の玉が赤になる確率が、


というように、左端の玉が白になる確率の次に右端の玉が赤になる確率を計算して両者の積で求められる。その計算では、右端の玉が赤になる確率は、左端の玉が白である条件の下に右端の玉が赤になる「条件付き確率」を計算する必要がある事が、この計算式から顕わに見える。一方で、パイプの左端と右端とは等価であって、どちらの端の確率を先に計算しても良いとも考える。

「2つ同時に取り出して」白玉と赤玉を得る確率の問題は、
取り出した2つの玉それぞれを、第1の玉、第2の玉、と名付けて玉を把握でき、以下の樹形図で表せる。その第1の玉と第2の玉の区別の実体は、以下のように考えられる。
 すなわち、袋から同時に2つの玉を取り出した後で、その2つの玉が何であったかを確認するために順番に玉を見る。その見る順番が2つの玉の区別であると考える。


『上図の樹形図は「樹形図の基本ルール」に従って、事象の連鎖の糸(太さ1s)を束ねて枝を作る。樹形図を横断する枝の太さの総和は事象の連鎖の糸の総数であり常に一定の太さ(56s)である。また、第1の玉が赤である糸が21本ある一方、第2の玉が赤である糸も21本あり、第1の玉と第2の玉のバラエティが同じという特徴がある。』
 「2つ同時に取り出して」白玉と赤玉を得る確率の問題は、上の樹形図から読み取れる:
(1)第1の玉が白になる確率に、第1の玉とは異なる第2の玉が赤になる条件付き確率を掛け算して得た確率と、
(2)第1の玉が赤になる確率に、第1の玉とは異なる第2の玉が白になる条件付き確率を掛け算して得た確率と、
の2つを足し算して確率が計算できる。

《玉を順番に取り出す場合》
 また、玉を順番に取り出す問題の場合でも、上の樹形図で、第1の玉が何か(例えば白)である確率に、その第1の玉の場合において第2の玉が何か(例えば赤)になる条件付き確率を計算する。その確率が、第1の玉を先に取り出した後に第2の玉を取り出す確率を計算することであると考えて確率が計算できる。

 更に、上図の樹形図が表す取り出した玉を見る順番が、玉を取り出す順番とは逆の場合は、上図の樹形図は、第2の玉を先に取り出した後に第1の玉を取り出す確率の問題の樹形図になります。
 樹形図は、事象の連鎖の糸を自由に枝に束ねて、しかも事象の発生順に従う必要も無く、再編成して樹形図を書くことができる自由があるからです。
 そのため、「玉を順番に取り出す問題の確率の答えは、その玉の取り出し順を逆にした問題の確率の答えと同じになる定理」も成り立っています。

 この定理は、確率の《くじ引きの公平性》の定理と同様な性格を持つ定理です。

《確率の解法にコンビネーション(組み合わせ)を用いて良い定理》

【問題2】
 白球が2個、赤球が3個入った袋の中から、球を順番に2個取り出す。白球と赤球を1個ずつ取り出す確率を求めよ。
(問題おわり)

 この問題を例にして、
コンビネーション(組み合わせ)を用いて解く解き方を詳しく解説します。

【解答方針】
 あらゆる取り出し方の組み合わせの数は、
与えられた球の群れの中で、選ばれた球の群を作り、
選ばれた球の群の各メンバーにあらゆる並び方をさせた数です。

3個ある赤球の中から1個取って、2個ある白球から1個取って作った球の群れの作り方の組み合わせの数は、

です。
その2個の群の球の群れのメンバーにあらゆる並び方をさせる場合の数は、

です。

一方で、
5個ある球から2個の球の群れを作るあらゆる球の群れの作り方の組み合わせの数は、

です。
その2個の群の球の群れのメンバーにあらゆる並び方をさせる場合の数は、

です。このように考えて導き出したこの式は、白球2個と赤球3個を合わせた異なる5個の球を順番に2個取り出すあらゆる場合の数=5×4と同じ式です。

3個ある赤球の中から1個取って、2個ある白球から1個取って作った球の群れのあらゆる並び方をさせる場合の数を、
5個ある球から2個の球の群れを作った球の群れのあらゆる並び方をさせる場合の数で割り算すると、

になります。これが、求める確率です。あとは、この式を詳しく計算するだけで良いです。この計算において:
2個の球にあらゆる並び方をさせる数(2!)が共通項としてあるので、
その共通項が約分されて消えました。


という計算式は、
3個ある赤玉の中から1個取って、2個ある白玉から1個取って作った球の群れの数を、
5個ある球から2個の球の群れを作った球の群れの数、
で割り算する式です。

この計算で分かったこととして、2個の球にあらゆる並び方をさせる数(2!)の共通項が約分されて消えるので、
確率を、球の群れの数の計算だけで(その球の取り出し順の順列の数の計算は省いて)、球の群れの数の比だけで計算して良いという定理(コンビネーションを用いて良い定理)が成り立ちます。
 すなわち、「球を順番に取り出す確率の問題」は、「球を同時に(順番を考えずに)取り出す確率の問題」と等価であると考えて解いても良いことになります。この定理が成り立つので、先の、【問題1】での、複数の玉を同時に取り出す確率の問題は、複数の玉を順番を考えて取り出す確率の問題と等価な問題だったのです。

リンク:
くじ引きの公平性
高校数学の目次

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