2021年5月23日日曜日

2乗の引き算の式の変換公式

以下の式のように、1以外の定数aを使って2乗の引き算の式が変換されます。

このように、2乗の引き算の式は同類の式を持っています。

 なお、以下のように計算して、2乗の引き算の式の変換公式を導き出すこともできます。



(類似した公式)この公式とは独立した、単位ベクトルの要素の2乗の差の公式が、ここをクリックした先にあります。

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2021年5月19日水曜日

実数の指数法則と複素数の指数法則

【整数の指数法則から有理数の指数法則への移行に注意】
 指数法則が、高校2年生までは、指数関数の指数が整数である場合に限って、指数法則の基本条件が緩められて、指数関数の底は0で無いこと。底が負でも良いとされていました。しかし、指数が有理数になると、その条件では指数法則が成り立たなくなり、指数関数の底は正の実数であるという基本条件を満足する必要があります。指数法則のこの基本条件は、指数が実数や複素数になっても変わりません。

《指数法則とは》
 そもそも、指数法則とは、累乗の関係式です。下記に指数法則の一覧を示します。

例えば

【指数法則の例外】
 上記の指数法則は、
指数mとnが整数(負でも良い)であるならば、
底が複素数であっても成り立っています。
この「指数法則の例外」にも留意すべきと思います。

《実数の指数法則と複素数の指数法則》
 思考実験をしてみます。1つの仮説として考えられることとして、1の2乗根の基本単位の値は、1とするよりは、以下の式で表した方が良いかもしれないと仮定できます。

そうすれば、以下の演算ができます。

そのため、以下の様に、1の2乗根は基本単位で表して計算すると良いかもしれないと仮定する。そう仮定した場合は、√ は正の値を表すものとした表現ルールに合わなくなる(そもそも正の数では無い虚数を√ 記号で表した時点でルール違反)。そのため、√ 記号は使わず2分の1乗記号で表した1の2乗根の基本単位を使って計算した方が良いかもしれないと思われました。

しかし、指数法則

が使えるためには、

と展開しても矛盾させないために、

(1の有理数乗や実数乗は全て1)とせざるを得ません。なぜならば、1の2乗根は、1と-1との2つの解がある。しかし、1の(1/2)乗で1の2乗根の2つの数があらわせてしまうと、実数の指数法則が崩壊する。そのため、その2つの解のうちの1つだけ、すなわち1しか解として選べない。これは悩ましい問題です。
 さらに、


という矛盾を起こさないようにする必要もあります。

という矛盾もだめです。

【有理数および実数の指数法則】
 それらの矛盾を回避するためには、有理数または実数sとtを使った指数法則


と、

は、
a>0, b>0, (指数の底は必ず正にする)
の場合に限って使えるように制限することによって、上記の式で矛盾が生じ得る問題を回避します。これが、有理数または実数の指数法則です。
 一方、虚数iの演算は、虚数記号iを使って、その記号の演算ルールで計算することにし、実数の指数法則は虚数の演算には関与させない(複素数の指数法則は後で説明する)ことで問題を回避します。
 なお、先に以下のような表現を使いました。

この表現はルール違反です。根号の中には、虚数は入れてはいけません。それどころか、実は、根号の中には負の数を入れてもいけなかったのです。根号の中に負の数を入れて虚数を表す表現は誰もが犯しているルール違反ではありますが、、、。もっとおおらかに考えて、根号の中には負の数を入れても良く、虚数を入れても良いことにすれば良いとも思います。
「ルートの中は正(またはゼロ)でなければならない。」は、もう少し詳しく正確に言うと
「計算する時には、ルートの中は正(またはゼロ)でなければならない。」ということです。


実数の指数法則を使った計算は、正の底の実数乗という数のみに適用できるという計算の注意だけすれば、その計算以前の一時的な表現違反は許される(計算をする前までに表現を正しておけば良い)と思います。
 負の数の指数については、以下に説明する複素数の指数法則で扱えます。なお、負の数の3分の1乗とか5分の1乗が実数の範囲の指数関数で定義されて扱われています。そのように定義されて扱われている指数での、負の数の奇数分の1乗の数には、指数法則を使わないよう(どの法則が使えるか確認した上で使う)注意する必要があります。そういう数は、底が正の指数関数と(-1)との積の形の式に変換して扱えば良い。

【複素数の指数法則】
(注意)高校数学を学ぶ上で悩ましいことは、複素数を理解するのに、複素数の法則の根拠になっている数学の定理を、証明を先にせずに使って良いのか(良くは無い)という問題があります。しかし、その定理を使って先に進まないと複素数が理解できないという矛盾があります。数学を学ぶ上で、定理の証明を先にすべきであり、根拠のある(証明を理解した)定理のみを使って数学を学ぶべきなのです。
 しかし、以下では、複素数の理解のために、あえて、その原則を破って、未だ証明していない定理を使った結果得られた数学の技術を説明します。そのため、以下の技術は理解できなくても良いと思います。中途半端に理解するよりも、むしろ、証明されるまで、理解し難いものとみなされ方が、数学センスからすれば健全ではないかとも思います。以下が理解できない人は、自分の数学センスが健全である、と認識して良いと思います。そのため、以下の説明を理解する必要はありません。

 複素数の指数法則は、以下の様に実数の指数法則を拡張します。複素数zは、以下の式のようにネイピア数(正の実数です)を底にし、その底の複素数乗であらわします。


この式で、aとbは実数です。
この形で表した複素数は、ネイピア数が正の数なので、指数の底が正の実数であるという指数法則の基本条件を満足しています。指数関数の底は正の実数のままにして、指数だけを複素数まで拡張して指数法則を拡張します。
なお、複素数の指数法則の下でも、1の複素数乗は1になります。1の2乗根を1の2分の1乗という表現ではあらわしません。1の2分の1乗は1と定義します。
 そして、1の2つの2乗根を求めるためには、1を以下の数のように、ネイピア数を底に持ち、指数を純虚数にした複数の数で表現します。そのようにして1を2つの数で表現します。
ネイピア数の0乗で表した1の2分の1乗は1です。
一方で、ネイピア数の2πi乗で表した1の2分の1乗は、もう1つの1の2乗根を表します。


すなわち、指数法則を使って1の2乗根を2つ求めるために使う1は、底がeであって、指数が異なる2つの表現に分けて、1という数が2種類あるものとして扱います。
こうすれば、1の2乗根の1つを-1にでき、もう1つを1にできます。
1の2乗根は1とー1との2つがあり、1つの1から2つの値が出て来ても指数法則を成り立たせるために、1を2つの数に分けて扱います。
 同様に、ー1は、複素数の指数法則の表現では、-1を以下の2つの数に分けて扱います。


 このように数の表現を整えると、以下の計算のように指数が複素数まで拡張された指数法則を、矛盾を生じないように使うことができます。ただし、以下の式の一番左側の式にした(-1)の2分の1乗は、√(-1)という表現と同じく間違った表現です(式の2番目以降の式が正しい)。(-1という数は、上の2つの式のように、指数が異なる2つの数に分けて扱うべき)。しかし、(-1)の2乗根を表すために、あえて間違った使い方をしました。

上の式で(-1)をeのπi乗であらわしましたが、(-1)は、eの(-πi)乗でも表されます。そのように表された2つ目の(-1)の2分の1乗は、以下の計算で示すように、-iになります。

以上の計算のように、(-1)を2種類に分けて扱い、それら2種類の(-1)の2分の1乗、の1つずつの合わせて2つの値になる。その2つの値、すなわち、2つの異なる2乗根の値を、1つの(-1)という数から得られたからという理由で同じ値であるとしてしまうと以下の矛盾を生じます。計算上は、
(-1)の2分の1乗=-{(-1)の2分の1乗}
という計算になってしまう(それらの値が等しいなら、その値は0という間違いに至る)。
 2乗根を2つ計算すると2つの異なる数になるにもかかわらず、その2つの数が1つの(-1)の2分の1乗であるからという理由で同じ数であるとするのは間違いです。そのようになるので、(-1)の2分の1乗で虚数iを表すのはルール違反です。その表現よりは、指数法則との結びつきが弱い√(-1)という表現で虚数iを表現する方がまだましだと思います。その表現を許すなら、√(i)という表現で虚数iの平方根の1つを表す表現も良いのではないかと思います。

 以下のように、1の2乗根の2つを、指数法則を使って寄り道して計算することもできます。(以下の計算式の一番左側の式の、1の2分の1乗はいつでも1ですので、それを使った式は正しくありません。しかし、1の2乗根を表すために、あえて間違った使い方をしました)。以下の2つの式の、各式の2番目の項以降の計算のように、指数が複素数の指数法則の計算をする場合は、矛盾が生じない。


ここで、複素数のこの指数方法では、1を異なる2つの式で表すので、その様に複数の異なる式で表した1を、その異なる複数の式が区別できなくなる演算をする場合は、その都度、その演算の正当性を吟味しなければない。
 また、以下の3つの式が等しいとは言えない。

例えば:

 また、複素数αとβに係る以下の2つの式が表す多価の複素数の集合同士が等しいとも言えない。

例えば以下の2種の多価の複素数の集合同士は等しく無い。
(第1の集合)

(第2の集合)

そのように、複素数の指数法則は一般的には成り立たない。

(蛇足)ちなみに底が0の場合は、以下のようになると考えられる。



【指数法則の例外:指数が整数に限られた指数法則】
 指数を(0や負の数を含む)整数sとtに限った指数法則


と、

は、
底の a と b が0で無い限り、底の値が負の値であっても成り立ちます。更に、底の値が複素数であっても成り立ちます。

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「n乗根1」大学入試から学ぶ高校数学
複素数の指数関数・対数関数・べき関数