2025年5月13日火曜日

3次方程式の問題

【問1】
以下の式を証明せよ。



【問2】
以下の式を証明せよ。

以下の式が成り立つことも証明せよ。



《実数の3乗根の解の求め方》

の解の式が簡単な場合は、その解の式は以下の手順で求められる。

上の式(4b)を満足する簡単な値のαがあれば、その値を求める。(たとえばα=1で式(4b)が成り立つかを確認する)。
その値αが求められれば、以下の値Nに関して以下の式が成り立つ。


【問3】
以下の式を証明せよ。


《虚数の3乗根の解の求め方》

の解の式が簡単な場合は、その解の式は以下の手順で求められる。

上の式(5b)を満足する簡単な値のαがあれば、その値を求める。(例えばα=1/4 で式(5b)が成り立つかを確認する)。
その値αが求められれば、以下の値Nに関して以下の式が成り立つ。


【適用例1】

に適用する。

【計算開始】


こうして、αが求まった。
そして、以下の式(6c)の値Nを、立方根の中の式に掛け算した式(6d)が成り立つ。



【適用例2】

に適用する。

【計算開始】



こうして、α=9/4が求まった。
そして、以下の式(7c)の値Nを、立方根の中の式に掛け算した式(7d)が成り立つ。

(解答おわり)

【以下の公式を用いる解き方が本命である】

 以下で説明するように、xの3次方程式の解xが有理数である場合に限り、この3乗根が簡単な解になる。その事実とこの公式とが密接な関係がある。そのため、この公式を用いて3乗根を求めることが望ましい。


《実数の3乗根の解の求め方(その2)》

の解の式は以下の手順で求められる。

この方程式の解のxの値を使って以下のようにsとtが計算できる。
sとtを含む以下のwの式からsとtを求める。


【適用例】

に適用する。

【計算開始】

この3次方程式のxの解はx=2である。

(解答おわり)

《虚数の3乗根の解の求め方(その2)》

の解の式は以下の手順で求められる。

この方程式の解のxの値を使って以下のようにsとtが計算できる。
sとtを含む以下のwの式からsとtを求める。


【適用例】

に適用する。

【計算開始】

この3次方程式のxの解はx=8である。

(解答おわり)

リンク: 
カルダノの公式を使った三乗根号(立方根)外し問題の作成
3次方程式の一般解
高校数学の目次


2025年5月5日月曜日

ε-δ論法の論理式の意味

【問1】
数列 (a_n) の極限αを定義する式に関して:
∀ε>0, ∃N∈ℕ, ∀n∈ℕ[(n>N)⇒(|(a_n)−α|<ε)]… (1)
∀ε>0, ∃M∈ℕ, ∀n∈ℕ[(n≧M)⇒(|(a_n)−α|<ε)]… (2)
(1) ⇔ (2)を証明せよ。

【証明開始】
∀ε>0, ∃N∈ℕ, ∀n∈ℕ[(n>N)⇒(|(a_n)−α|<ε)]… (1)

∀ε>0, ∃N∈ℕ, ∀n∈ℕ[(n≦N)∪(|(a_n)−α|<ε)]… (1b)
である。
また、
∀ε>0, ∃M∈ℕ, ∀n∈ℕ[(n≧M)⇒(|(a_n)−α|<ε)]… (2)

∀ε>0, ∃M∈ℕ, ∀n∈ℕ[(n<M)∪(|(a_n)−α|<ε)]… (2b)
である。

先ず、式(1b)を同値変形する。
任意のN個の命題P1,P2,・・・PNに対して、
(∀n∊{1,2,・・・N},{Pn})⇔(P1∩P2∩・・・PN)
が成り立つ。すなわち、命題P1から命題PNが連立される。

そのため、
∀ε>0, ∃N∈ℕ, ∀n∈ℕ[(n≦N)∪(|(a_n)−α|<ε)]… (1b)
という論理式は、以下の連立論理式を意味する。
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=1[(1≦N)]
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=2[(2≦N)]
・・・
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=N[(N≦N)]
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=N+1[(N+1≦N)∪(|(a_n)−α|<ε)]
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=N+2[ |(a_n)−α|<ε]
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=N+3[ |(a_n)−α|<ε]
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=N+4[ |(a_n)−α|<ε]
・・・
という連立論理式全てが成り立つという意味である。
これは、以下の連立論理式と同値。

∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=N+1[(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=N+2[(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=N+3[(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃N∈ℕ, n=N+4[(|a_n−α|<ε)]
・・・

任意のN個の命題P1,P2,・・・PNに対して、
(∃n∊{1,2,・・・N},{Pn})⇔(P1∪P2∪・・・PN)
が成り立つ。すなわち、命題P1から命題PNの和集合になる。

そのため、
上の連立論理式は、以下の連立論理式の和集合と同値。
「∀ε>0, N=1, n=2[ |(a_2)−α|<ε]
∀ε>0, N=1, n=3[ |(a_3)−α|<ε]
∀ε>0, N=1, n=4[ |(a_4)−α|<ε]
・・・」

「∀ε>0, N=2, n=3[(|(a_3)−α|<ε)]
∀ε>0, N=2, n=4[(|(a_4)−α|<ε)]
∀ε>0, N=2, n=5[(|(a_5)−α|<ε)]
・・・」

「∀ε>0, N=3, n=4[(|(a_4)−α|<ε)]
∀ε>0, N=3, n=5[(|(a_5)−α|<ε)]
∀ε>0, N=3, n=6[(|(a_6)−α|<ε)]
・・・」

・・・

この論理式は、以下の連立論理式の和集合と同値。
「∀ε>0, N=100, n=101[(|(a_101)−α|<ε)]
∀ε>0, N=100, n=102[(|(a_102)−α|<ε)]
∀ε>0, N=100, n=103[(|(a_103)−α|<ε)]
・・・」

「∀ε>0, N=101, n=102[(|(a_102)−α|<ε)]
∀ε>0, N=101, n=103[(|(a_103)−α|<ε)]
∀ε>0, N=101, n=104[(|(a_104)−α|<ε)]
・・・」

・・・

更に、この論理式は、以下の連立論理式の和集合と同値。
「∀ε>0, n=101[|(a_101)−α|<ε]
∀ε>0, n=102[|(a_102)−α|<ε]
∀ε>0, n=103[|(a_103)−α|<ε]
・・・」

「∀ε>0, n=102[(|(a_102)−α|<ε)]
∀ε>0, n=103[(|(a_103)−α|<ε)]
∀ε>0, n=104[(|(a_104)−α|<ε)]
・・・」

・・・

この連立論理式の和集合を、第1の論理式とする。


次に、式(2b)を同値変形する。
任意のN個の命題P1,P2,・・・PNに対して、
(∀n∊{1,2,・・・N},{Pn})⇔(P1∩P2∩・・・PN)
が成り立つ。すなわち、命題P1から命題PNが連立される。

そのため、
∀ε>0, ∃M∈ℕ, ∀n∈ℕ[(n<M)∪(|(a_n)−α|<ε)]… (2b)
という論理式は、以下の連立論理式を意味する。
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=1[(1<M)]
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=2[(2<M)]
・・・
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M[(n<M)∪(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M+1[(M+1<M)∪(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M+2[(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M+3[(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M+4[(|a_n−α|<ε)]
・・・
という連立論理式全てが成り立つという意味である。
これは、以下の連立論理式と同値。

∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M[(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M+1[(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M+2[(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M+3[(|a_n−α|<ε)]
∀ε>0, ∃M∈ℕ, n=M+4[(|a_n−α|<ε)]
・・・

任意のN個の命題P1,P2,・・・PNに対して、
(∃n∊{1,2,・・・N},{Pn})⇔(P1∪P2∪・・・PN)
が成り立つ。すなわち、命題P1から命題PNの和集合になる。

そのため、
上の連立論理式は、以下の連立論理式の和集合と同値。
「∀ε>0, M=1, n=1[|(a_1)−α|<ε]
∀ε>0, M=1, n=2[|(a_2)−α|<ε]
∀ε>0, M=1, n=3[|(a_3)−α|<ε]
・・・」

「∀ε>0, M=2, n=2[|(a_2)−α|<ε]
∀ε>0, M=2, n=3[|(a_3)−α|<ε]
∀ε>0, M=2, n=4[|(a_4)−α|<ε]
・・・」

「∀ε>0, M=3, n=3[|(a_3)−α|<ε]
∀ε>0, M=3, n=4[|(a_4)−α|<ε]
∀ε>0, M=3, n=5[|(a_5)−α|<ε]
・・・」

・・・

この論理式は、以下の連立論理式の和集合と同値。
「∀ε>0, M=101, n=101[(|(a_101)−α|<ε)]
∀ε>0, M=101, n=102[(|(a_102)−α|<ε)]
∀ε>0, M=101, n=103[(|(a_103)−α|<ε)]
・・・」

「∀ε>0, M=102, n=102[(|(a_102)−α|<ε)]
∀ε>0, M=102, n=103[(|(a_103)−α|<ε)]
∀ε>0, M=102, n=104[(|(a_104)−α|<ε)]
・・・」

・・・

更に、この論理式は、以下の連立論理式の和集合と同値。
「∀ε>0, n=101[(|(a_101)−α|<ε)]
∀ε>0, n=102[(|(a_102)−α|<ε)]
∀ε>0, n=103[(|(a_103)−α|<ε)]
・・・」

「∀ε>0, n=102[(|(a_102)−α|<ε)]
∀ε>0, n=103[(|(a_103)−α|<ε)]
∀ε>0, n=104[(|(a_104)−α|<ε)]
・・・」

・・・

この連立論理式の和集合は、第1の論理式と同値である。
よって、
(1) ⇔ (2)が証明された。
(証明おわり)

(補足)
 以上で考察したε-N論法で極限を定義する論理式を展開して得た「連立論理式の和集合」の持つ意味は、ある点αのまわりの”開区間”に、n≧Nなる点列a_nが収納されていることを「連立論理式の和集合」によってあらわしていると捉えることができる。


リンク: 
19世紀の解析学における「厳密化革命」とは何か
ε-δ論法の誕生
【ε論法】関数の連続性とδのテクニック
連続関数の定義
高校数学の目次