「微分・積分」の勉強
(1)なめらかな曲線の接線は、微分を使って見通し良く正しく定義できる。
(2)接点の座標の計算だけで2曲線の接触を判定する場合は、接点(x,y)が重解を持つか否かで判定する。接点(x,y)のx座標かy座標の一方の座標だけでの重解の有無で判定してはいけない。
【問1】放物線y=x2/4と円x2+(y-1)2=1は接するか?
【問2】円x2+(y+1)2=1と円x2+(y-1)2=1は接するか?
以下で、この2つの問題を考えてみる。
【問1】放物線y=x2/4と円x2+(y-1)2=1は接するか?
(方程式が重根を持つかで解析する方法)
放物線 y=x2/4 (式1)
円 x2+(y-1)2=1 (式2)
この2つの図形は、(0,0)で接することが図から明らかである。
そして、接線は、
接線 y=0 (式3)
であることが明らかである。
実際に、式1の放物線と式3の直線を連立させて、方程式からyを消去すると、
0=x2/4
xは0となる重根を持ち、式1の放物線は式3の接線と(0,0)で接する。
次に、式2の円と式3の直線を連立させて、方程式からyを消去すると、
x2+(0-1)2=1
x2=0
xは0となる重根を持ち、式2の円は式3の接線と(0,0)で接する。
【この問題で注意する点】
以下では、式3の接線の式が分からないで、この問題1を解こうとする場合に、接点(x,y)が重解を持つか否かで判定するべきであり、接点(x,y)のx座標かy座標の一方の座標だけで重解の有無を判定してはいけないことを示す。
式1の放物線と式2の円の方程式を連立させる。
放物線 y=x2/4 (式1)
円 x2+(y-1)2=1 (式2)
式1から、
x2=4y (式4)
式4を式2に代入してxを消去する。
4y+(y-1)2=1
y2+2y=0
y(y+2)=0 (式5)
ここで、『この式は重根を持たないので、式1の曲線と式2の曲線は接さない?』
と考えるのは、明らかに間違っている。
(問題を解くポイント)
上の接線を求める計算においては、接線の式が多重根の解を持つという判定条件を、y座標の値の解だけで判断したため間違ったのです。
接点(x,y)が多重の解を持つかどうかはx座標も確認しないといけないのです。
上の計算で得た式5に式4を代入して、x座標であらわした以下の式6に書き直す。
(x2/4)(x2/4+2)=0 (式6)
(x2)(x2+8)=0 (式7)
(x2+8)≠0 なので、
x2=0 (式8)
が得られる。
式8から、xの値が重根の値0を持つことがわかり、
「多重根ができるから接する」と判定することができる。
すなわち、接点(0,0) の x 座標が重根になるのであって、重解の2点のy座標は同じになるため、 x 座標が重根になる事を確認しなければならない。
(注意)
ここで、この問題のグラフの x 座標を、
t ≡ x2
で定義されるt座標を使い、 t,y 座標系での曲線の接点を求める問題と考えたらどうなるか。
t ≧ 0,
(式1)→ y=t/4 (式1b)
(式2)→ t+(y-1)2=1 (式2b)
この場合は、式2bに式1bを代入すると、
t+((t/4)-1)2=1,
16t+((t-4)2=16,
t2 +8t=0,
t(t+8)=0,
t=0
このように、t座標の解も重根を持たない。
それでは、2つのグラフが接しないという解になってしまう。
一方、与えられた2つのグラフの t,y 座標系に写像した2つのグラフは、下図のようになり、この2つのグラフは接しない。
よって、 t,y 座標系では、この2つの曲線は接しないという結論は正しい。
2つのグラフが接するという事は、 x,y 座標系でのみ成り立つ現象である。変数変換をしたら、グラフが接するかどうかは不明になる。
(結論)
曲線の式と曲線の式を連立させて方程式を解く場合には、
曲線が接する判定条件は、(x,y)の座標点が重解になるかどうかで判定するべきである。
(補足)
以上の計算における曲線の接触の判定の計算は、「この式8が得られることで正しく重解の存在を判定できるのか?」 という疑問が湧くという、接点の判定条件が怪しげで不明瞭であるという問題がある。
この不明瞭さを解消するには、式の微分を用いることで明瞭な判定ができる。その判定方法は、このページの後のページの例題で例示する。
(補足)
《交差している2つのグラフが、変数変換すると互いに接する2つのグラフに変わる例:変数変換をするときの注意点》
上図のように、変数tの関数f(t)とg(t)との2つの関数値をY=f(t)、及びY=g(t)とする。
f(t)=t
g(t)=t/2
とする。 この場合に、上図のように、2つのグラフが、tY座標平面上では互いに交差しているだけで、接していない。
このグラフの変数tを以下のグラフの関数であらわす媒介変数xを考える。
変数tをこのグラフの関数であらわす媒介変数Xを使うと、
XY平面上で先の2つのグラフをあらわすと以下の図の様になる。
x≧0の場合に:
関数f(t)=x2
関数g(t)=x2/2
になる。
この様にXY座標平面上では、互いに接する2つのグラフに変換されてしまった。
すなわち、接さずに単に交差しているだけの2つのグラフが、互い接するグラフに変わってしまった。
tY座標平面上の2つのグラフがある変数値において接するか否かを調べている時に、そのように変わってしまわないようにするための、行なって良い変数tの媒介変数xへの変数変換は、その2つのグラフが交差する点の位置の変数値において:
dt/dx ≠ 0
となることが必要です。
また、その関数が”微分可能”であることも必要で、すなわち、その2つのグラフが交差する点の位置の変数値において:
dt/dx ≠ ±∞
も必要です。
【問2】円x2+(y+1)2=1と円x2+(y-1)2=1は接するか?
(方程式が重根を持つかで解析する方法)
円 x2+(y+1)2=1 (式1)
円 x2+(y-1)2=1 (式2)
式1の円と式2の円の方程式を連立させる。
式1から式2を引き算する。
4y=0
y=0 (式3)
この式3はまだ接線とは限らない。
この式3も重根を持っていないことに注意すること。
--(接点(x,y)が重解を持つ判定の注意)--
座標xの解を求める式は、式3を式1又は式2に代入することで得られ、その式は以下の式になる。
x2=0 (式4)
この式4は、xが重解の値0になることを示す。
そのため、接点(x,y)が重解を持つことが言える。
----------------------------------------------
この式3の直線と式1の円が接すれば、この式3の直線は式2の円とも接し、
式1の円と式2の円が同じ式3の直線との接点で接することになる。
式1の円と式3の直線を連立させて、方程式からyを消去すると、
x2+(0+1)2=1
x2=0 (式4)
xは0となる重根を持ち、式1の円は式3の直線と(0,0)で接する。
同様にして、式2の円も式3の直線と(0,0)で接する。
(解答おわり)
(補足)
以上の計算における曲線の接触の判定の計算も、「この式4が得られることで正しく重解の存在を判定できるのか?」 という疑問が湧くという、接点の判定条件が怪しげで不明瞭であるという問題がある。
また、以下のグラフの接点Aを求める場合:
このグラフの接線の傾きkを求める方程式を、重解を利用して得る計算方法の見通しが悪いです。
この不明瞭さを解消するには、式の微分を用いることで明瞭な判定ができる。その判定方法は、このページの後のページの例題で例示する。
リンク:
高校数学の目次
(1)なめらかな曲線の接線は、微分を使って見通し良く正しく定義できる。
(2)接点の座標の計算だけで2曲線の接触を判定する場合は、接点(x,y)が重解を持つか否かで判定する。接点(x,y)のx座標かy座標の一方の座標だけでの重解の有無で判定してはいけない。
【問1】放物線y=x2/4と円x2+(y-1)2=1は接するか?
以下で、この2つの問題を考えてみる。
【問1】放物線y=x2/4と円x2+(y-1)2=1は接するか?
(方程式が重根を持つかで解析する方法)
放物線 y=x2/4 (式1)
円 x2+(y-1)2=1 (式2)
この2つの図形は、(0,0)で接することが図から明らかである。
そして、接線は、
接線 y=0 (式3)
であることが明らかである。
実際に、式1の放物線と式3の直線を連立させて、方程式からyを消去すると、
0=x2/4
xは0となる重根を持ち、式1の放物線は式3の接線と(0,0)で接する。
次に、式2の円と式3の直線を連立させて、方程式からyを消去すると、
x2+(0-1)2=1
x2=0
xは0となる重根を持ち、式2の円は式3の接線と(0,0)で接する。
【この問題で注意する点】
以下では、式3の接線の式が分からないで、この問題1を解こうとする場合に、接点(x,y)が重解を持つか否かで判定するべきであり、接点(x,y)のx座標かy座標の一方の座標だけで重解の有無を判定してはいけないことを示す。
式1の放物線と式2の円の方程式を連立させる。
放物線 y=x2/4 (式1)
円 x2+(y-1)2=1 (式2)
式1から、
x2=4y (式4)
式4を式2に代入してxを消去する。
4y+(y-1)2=1
y2+2y=0
y(y+2)=0 (式5)
ここで、『この式は重根を持たないので、式1の曲線と式2の曲線は接さない?』
と考えるのは、明らかに間違っている。
(問題を解くポイント)
上の接線を求める計算においては、接線の式が多重根の解を持つという判定条件を、y座標の値の解だけで判断したため間違ったのです。
接点(x,y)が多重の解を持つかどうかはx座標も確認しないといけないのです。
上の計算で得た式5に式4を代入して、x座標であらわした以下の式6に書き直す。
(x2/4)(x2/4+2)=0 (式6)
(x2)(x2+8)=0 (式7)
(x2+8)≠0 なので、
x2=0 (式8)
が得られる。
式8から、xの値が重根の値0を持つことがわかり、
「多重根ができるから接する」と判定することができる。
すなわち、接点(0,0) の x 座標が重根になるのであって、重解の2点のy座標は同じになるため、 x 座標が重根になる事を確認しなければならない。
(注意)
ここで、この問題のグラフの x 座標を、
t ≡ x2
で定義されるt座標を使い、 t,y 座標系での曲線の接点を求める問題と考えたらどうなるか。
t ≧ 0,
(式1)→ y=t/4 (式1b)
(式2)→ t+(y-1)2=1 (式2b)
この場合は、式2bに式1bを代入すると、
t+((t/4)-1)2=1,
16t+((t-4)2=16,
t2 +8t=0,
t(t+8)=0,
t=0
このように、t座標の解も重根を持たない。
それでは、2つのグラフが接しないという解になってしまう。
一方、与えられた2つのグラフの t,y 座標系に写像した2つのグラフは、下図のようになり、この2つのグラフは接しない。
よって、 t,y 座標系では、この2つの曲線は接しないという結論は正しい。
2つのグラフが接するという事は、 x,y 座標系でのみ成り立つ現象である。変数変換をしたら、グラフが接するかどうかは不明になる。
(結論)
曲線の式と曲線の式を連立させて方程式を解く場合には、
曲線が接する判定条件は、(x,y)の座標点が重解になるかどうかで判定するべきである。
(補足)
以上の計算における曲線の接触の判定の計算は、「この式8が得られることで正しく重解の存在を判定できるのか?」 という疑問が湧くという、接点の判定条件が怪しげで不明瞭であるという問題がある。
この不明瞭さを解消するには、式の微分を用いることで明瞭な判定ができる。その判定方法は、このページの後のページの例題で例示する。
(補足)
《交差している2つのグラフが、変数変換すると互いに接する2つのグラフに変わる例:変数変換をするときの注意点》
上図のように、変数tの関数f(t)とg(t)との2つの関数値をY=f(t)、及びY=g(t)とする。
f(t)=t
g(t)=t/2
とする。 この場合に、上図のように、2つのグラフが、tY座標平面上では互いに交差しているだけで、接していない。
このグラフの変数tを以下のグラフの関数であらわす媒介変数xを考える。
変数tをこのグラフの関数であらわす媒介変数Xを使うと、
XY平面上で先の2つのグラフをあらわすと以下の図の様になる。
x≧0の場合に:
関数f(t)=x2
関数g(t)=x2/2
になる。
この様にXY座標平面上では、互いに接する2つのグラフに変換されてしまった。
すなわち、接さずに単に交差しているだけの2つのグラフが、互い接するグラフに変わってしまった。
tY座標平面上の2つのグラフがある変数値において接するか否かを調べている時に、そのように変わってしまわないようにするための、行なって良い変数tの媒介変数xへの変数変換は、その2つのグラフが交差する点の位置の変数値において:
dt/dx ≠ 0
となることが必要です。
また、その関数が”微分可能”であることも必要で、すなわち、その2つのグラフが交差する点の位置の変数値において:
dt/dx ≠ ±∞
も必要です。
【問2】円x2+(y+1)2=1と円x2+(y-1)2=1は接するか?
(方程式が重根を持つかで解析する方法)
円 x2+(y+1)2=1 (式1)
円 x2+(y-1)2=1 (式2)
式1の円と式2の円の方程式を連立させる。
式1から式2を引き算する。
4y=0
y=0 (式3)
この式3はまだ接線とは限らない。
この式3も重根を持っていないことに注意すること。
--(接点(x,y)が重解を持つ判定の注意)--
座標xの解を求める式は、式3を式1又は式2に代入することで得られ、その式は以下の式になる。
x2=0 (式4)
この式4は、xが重解の値0になることを示す。
そのため、接点(x,y)が重解を持つことが言える。
----------------------------------------------
この式3の直線と式1の円が接すれば、この式3の直線は式2の円とも接し、
式1の円と式2の円が同じ式3の直線との接点で接することになる。
式1の円と式3の直線を連立させて、方程式からyを消去すると、
x2+(0+1)2=1
x2=0 (式4)
xは0となる重根を持ち、式1の円は式3の直線と(0,0)で接する。
同様にして、式2の円も式3の直線と(0,0)で接する。
(解答おわり)
(補足)
以上の計算における曲線の接触の判定の計算も、「この式4が得られることで正しく重解の存在を判定できるのか?」 という疑問が湧くという、接点の判定条件が怪しげで不明瞭であるという問題がある。
また、以下のグラフの接点Aを求める場合:
このグラフの接線の傾きkを求める方程式を、重解を利用して得る計算方法の見通しが悪いです。
この不明瞭さを解消するには、式の微分を用いることで明瞭な判定ができる。その判定方法は、このページの後のページの例題で例示する。
リンク:
高校数学の目次
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