2024年11月6日水曜日

微分とは何か

やさしい微分積分
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《グラフの傾き》
 以下では、区間で連続な関数のグラフの傾きを考える。例えば、xの実数全体の区間で連続な放物線の関数f(x) を考える。下図の放物線のグラフy=f(x) の各点での傾きを調べる。

 y=f(x) の放物線のグラフの曲線の点Cでの傾きは、点Cでグラフの曲線に接する直線DEの傾きと同じである。直線DEの傾きは、その直線に平行な直線ABの傾きと等しい。
すなわち、放物線の点Cでの傾きは、点Cの近くの曲線上の2つの点AとBを結ぶ直線の傾きと等しい。このように、放物線の点Cでの傾きは、点Cの近くの曲線上の2点を通る直線の傾きとして求めることができる。

 2点を定めて点Cでの放物線の傾きを計算するときは、以下の図のように、2点のうちの1つを点Cとし、もう1つの点を点Cの近くの曲線上の点Pとする方が計算がし易いので、その2点で計算する。

 上図のグラフで、点Cから点Pまで独立変数xが変化する幅をxの増分と呼び、Δx とあらわす。
これに対応して点Aから点Bまで従属変数yが変化する幅の、(点Pの高さ)-(点Cの高さ) をyの増分と呼び、Δy とあらわす。
放物線の微小部分の傾きは、微小なxの増分Δx に対する放物線の微小なyの増分Δyの比Δy/Δx としてあらわすことができる。
(注意: Δx やΔy は、これでまとまった記号で、Δ×(x)やΔ×(y) を意味するのではありません。そのため分母と分子のΔを約分してはいけません。)

 上図のように、点Cと右の点P2(Δx>0)との傾きと、点Cと左の点P1(Δx<0)との傾きとはわずかに異なる。直線CP2の傾きと、直線P1Cの傾きとは、Δx を0に近くすればするほど、変化していく。そして、点Pが限りなく点Cに近づくと、直線CPは点Cにおける接線DEに近づいていく。このとき、直線CPが接線DEに収束する、と言う。
その直線CPの傾きは、上図の式であらわすことができる。

《極限値》
 増分Δx が0とは異なる値をとりながら限りなく0に近づくとき、Δy/Δx の値がある定数kに限りなく近づくならば、
Δx →0のとき、(Δy/Δx)→k
とか、

とあらわす。
そして、その定数kを、
Δx →0のときのΔy/Δx の極限値、または、極限と呼ぶ。
(注意: 限りなく近づくとは「最終的には一致する」ことを意味しない。Δy/Δx が限りなくkに近づくだけで永遠にkに一致しないでも、「極限値がkである」と言うのです。)

 ここで、増分Δx をhとあらわすことにする。そして、増分hを限りなく0に近づけた式は、以下の図の式であらわす。


点C(x0,y0) におけるこの式の極限値のことを、f'(x0)と表して、関数f(x) の定義域Aの点x0における微分係数という。

《数列の極限》
 項が限りなく続く数列x1, x2, x3, ・・・, xn, ・・・を無限数列と言う。xnをその第n項といい、この無限数列を{xn}であらわす。また、an を自然数nの式であらわしたものを数列{xn} の一般項という。
 「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の定義は、数の集合Aにおいて、以下のことが成り立つこととして、極限を定義する。
【数列の極限の定義】
以下の図で、「数の集合Aの要素で、点a以外の値の、変数xの無限数列{xn}を考える。

この数列{xn}では、自然数nが限りなく大きくなるとき、第n項は限りなく値aに近づく。
 一般に、数列{xn}において、nが限りなく大きくなるにつれて、xn が一定の値aに限りなく近づくとき、数列{xn}はaに収束する、または、数列{xn}の極限はaであるという。その値aを数列{xn}の極限値であるという。(点aは数の集合Aの要素で無くても良い)。
 数列{xn}の極限値がaであるとき、次のように書く。

(ここで、記号∞は”無限大”と読む。∞は数をあらわすものではない)
 すなわち、「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の概念を、点aに収束する、数の集合Aの要素のxの無限数列を使って数学的に定義した。
 その結果、変数xが限りなく近づく先の数の点aは、すなわち、変数xの極限の数の点aは、
数の集合Aの要素の点xの無限数列の集積点であるという結論が得られる。
--(集積点の定義)--
  実数の集合Rの部分集合の数の集合Aを考える。
(1)実数の点aが数の集合Aの集積点であるとは、
点aの値以外の数の集合Aの要素の点xn による、点aに収束する無限数列 {xn}が存在すること(点aは実数ではあるが、数の集合Aの要素とは限らない)である。
(2)数の集合Aの要素のある数の点yが集積点ではないとき、その点yを数の集合Aの孤立点と呼ぶ。

--(集積点の定義おわり)---

《関数の極限》
 関数f(x) の定義域Aが区間であるものとする。定義域Aのxの点から、aと異なる数x1, x2, x3, ・・・, xn, ・・・ を選んで、点aに収束するxの無限数列{xn}を作り、同時に、h=x-aで定義した変数hの無限数列{hn}を作った場合に、その無限数列{xn}が点aに収束する({hn}が0に収束する)のにともなって関数g(x,a)≡(f(x)-f(a))/(x-a) が値Cに収束することが、x→aで関数g(x,a)=(f(x)-f(a))/(x-a) に極限値Cが存在するための基礎条件である。(ここで、関数g(x,a)の変数xの定義域は、点a以外の区間Aの点の集合であることに注意する)。
 関数g(x,a) において、変数xがaと異なる値をとりながら限りなくaに近づくとき、関数g(x,a)=(f(x) -f(a))/(x-a) の値が一定の値Cに限りなく近づくならば、
x→aのときg(x,a)=(f(x)-f(a))/(x-a) の極限値がCである。
といい、次のように書く。

また、この場合、”x→aのとき関数g(x,a)=(f(x)-f(a)) /(x-a)はCに収束する”という。

【関数の極限の定義】
 変数xがaと異なる値をとりながら限りなくaに近づくとき、関数g(x,a)=(f(x)-f(a)) /(x-a) の値が一定の値Cに限りなく近づくという関数g(x,a) の極限は、以下のように定義する。関数g(x,a) の定義域は、関数f(x) の定義域A(区間であるとする)から点aを除いた点xの集合である。
 「変数xが限りなくaに近づくとき関数g(x,a)=(f(x) -f(a))/(x-a) に極限値Cが存在する」ことの数学的定義を:
「区間A内の点aに関して、点a以外の区間Aの点xの、点aに収束する全ての無限数列{xn}で共通して、関数g(x,a)=(f(x)-f(a))/(x-a) が同じ値Cに収束する」ことと定義する。
 そう定義する理由は、関数g(x,a) によっては、点aに収束する各無限数列{xn}毎に、関数g(x,a) が異なる値Cに収束したり、収束しなかったりすることがあるからである。

【関数の極限の定義の論理的帰結】
(区間Aの内点での極限)区間Aの内点a(ただし点aでは関数g(x,a) は定義されていない)での関数g(x,a) の変数xに係わる極限は、点aの右側極限と左側極限との両側でg(x,a) の極限値Cが存在して、両側の極限値Cが一致することが点aで関数g(x,a) の変数xに係わる極限が存在する条件である。(区間Aの内点とは、区間Aの端点以外の、区間A内の点のことである)。
 xが、区間Aの内点aの値よりも大きい値をとりながら限りなくaに近づくときg(x,a) の値が限りなくCに近づくならば、Cを点aでのg(x,a) の右側極限値といい、次のようにあらわす。

 xが、区間Aの内点aの値よりも小さい値をとりながら限りなくaに近づくときg(x,a) の値が限りなくCに近づくならば、Cを点aでのg(x,a) の左側極限値といい、次のようにあらわす。


〔極限が存在する条件〕点aが区間Aの内点の場合は、関数g(x,a) の極限が存在する条件は、点a以外の区間Aの点xの、点aに収束するどの無限数列{xn}であっても関数g(x,a) が同じ値Cに収束することである。
 ▷そのため、区間A内の点xの、点aより大きい数の無限数列{xn}による右側極限でも値Cに収束する。
 ▷また、区間A内の点xの、点aより小さい数の無限数列{xn}による左側極限でも同じ値Cに収束する。
 すなわち、右側極限も存在し、左側極限も存在して、両者の極限値Cが一致することが区間Aの内点aで関数g(x,a) に極限が存在するために必要十分な条件である。

〔区間Aでの、点aより小さい値と大きい値のxn が混ざった数列で点aに収束する無限数列{xn}でも、関数g(x,a) が同じ極限値Cに収束する〕

(区間Aの端点での極限) 区間Aの端点aでの関数g(x,a) の極限は、点a以外の区間Aの点xの、点aに収束するどの無限数列{xn}であっても関数g(x,a) が同じ値Cに収束することである。
 ▷そして、区間Aの左側の端点aでは、無限数列{xn}は、点a以外の区間Aの点xの、点aより大きい数の無限数列{xn}による右側極限しか無いので、右側極限値が存在するだけで、端点aでのg(x,a) の極限値(端点でのf(x) の微分係数)が存在する条件になる。
 ▷また、区間Aの右側の端点aでは、無限数列{xn}は、点a以外の区間Aの点xの、点aより小さい数の無限数列{xn}による左側極限しか無いので、左側極限値が存在するだけで、端点aでのg(x,a) の極限値(端点でのf(x) の微分係数)が存在する条件になる。


《閉区間を定義域Aとする関数f(x) は、その閉区間の端でも微分可能性が定義できる》
 ある区間Aを定義域とする関数f(x) において、その区間Aの境界点(端点)以外の区間Aの点a(内点)の左右にxの点がある。その内点aに対する関数y=f(x) の微分では、点aの左右のxの点を平等に考えて傾きを計算する。関数g(x,a) のxの点は、点aより小さい点から点aよりも大きい点までの全部のxの点を見て内点aでの傾きを計算する。

 高校数学では、関数の定義域Aの区間の内点での微分だけが詳しく教えられている。高校数学は、内点での微分の条件があたかも全ての微分の条件であるかのように教えていて、閉区間の端点では微分の条件が満足されないかのように教えている。しかし、閉区間の端点でも(傾きが無限大でなければ)微分可能である。
 大学数学では、f(x) の微分係数を計算する点aが、閉区間Aを定義域とする関数f(x) の区間Aの端にある場合も詳しく学べる。


 上図の関数f(x) =xが0≦x≦2の閉区間 [0,2] で定義されている場合を考える。
 この関数f(x) =x は、定義域の閉区間の端点x=0やx=2で微分することが可能である。この関数f(x) の微分係数f'(x) は、閉区間[0,2]の端点とその間の内点とで1である。

【導関数とは何か】
 上記のように、区間で連続な関数f(x) の定義域Aの区間の点aにおける微分係数を1つ求めた。しかし、関数f(x) の定義域Aの各点における微分係数を毎回求めるのはかなり面倒なので、関数f(x)の定義域Aの区間の任意の点xでの微分係数を全部求める。つまり、関数f(x) の定義域Aの区間の点xでの微分係数f’(x) を計算する。

ここで、zの関数g(z,x)≡(f(z)-f(x))/(z-x)の変数zの定義域は、xの値以外の区間A(実数の集合)の点zである。変数zが点xを目指した関数g(z,x) の極限は、その変数zの定義域の点zの、点xに収束する無限数列{zn} を使って求める。なお、変数zを収束させて関数g(z,x) の極限を求める際には、極限を求める前段階で変数z以外の変数xの値を止めて(変化させないで)、極限を求める。
 区間Aで連続な関数f(x) の微分係数f’(x) があらわす関数を、関数f(x)の導関数と言う。
 下図の式のように、変数hを使って関数f(x)の導関数f’(x) を定義することもできる。

ここで、関数f(x) の定義域の区間A= [a, b] に対して、hの関数g(h, x)≡(f(x+h)-f(x))/h の変数h の定義域は、上図のように、区間[a-x, b-x] からh=0となる点を除いた点hの集合である。変数hが値0を目指した関数g(h, x) の極限は、その点hの、値0に収束する無限数列{hn} を使って求める。なお、変数hを0に収束させて関数g(h, x) の極限を求める際には、極限を求める前段階で変数xの値を止めて(変化させないで)、結局、変数hの定義域を固定した上で極限を求める。

 以下の図の関数f(x) の導関数f’(x) は微分の公式により計算でき下図の式になる。

導関数f’(x) を求めることを、関数f(x) を微分すると言う。
また、関数f(x) の導関数f'(x) をdf/dxと書くこともある。更に、導関数f’(x) をdy/dx と書いたり、y’ と書くこともある。

【関数f(x) の微分係数が定まらない場合もある】
 ここで、関数f(x) によっては、定義域Aの区間の内点aの左右の点を平等に考えて傾きを計算する場合に、内点aの左側の微分係数と右側の微分係数との2つの微分係数の値が一致しない関数f(x) もある。
以下の図の関数f(x)=|x| の定義域Aの内点a =0の点Oで、左側微分係数が(-1)であるが右側微分係数が(1)であり、その2つの微分係数の値が異なる。

この場合には、その内点Oでは、微分係数が定まらず微分ができない。(ただし、関数f(x) が閉区間[0,2]で定義された関数f(x) =xであって、点Oがその閉区間の端点の場合は、その端点Oで片側微分係数が1つの値に定まるので微分できる)。
(注意)
 独立変数xの実数全体の区間で連続な関数f(x) =|x| の導関数f’(x) は、以下のグラフであらわされる。

この導関数f’(x) は、a=0の点では定義されず、その点でグラフが千切れるため、実数全体の区間で連続な関数ではない。この導関数f’(x) は、x<0の区間の連続関数とx>0の区間の連続関数とを合わせた、複合区間を定義域とする関数である。

以下の図の関数の例で先に微分を説明した。

 上図の関数f(x) =xが0≦x≦2の閉区間 [0,2] で定義されている。この関数f(x) =x を微分すると閉区間 [0,2] で定義されている導関数f'(x) が得られた。この導関数f'(x) を積分すると元の関数f(x) が得られる。元の関数f(x) を関数f’(x) の原始関数と呼ぶ。原始関数は関数f’(x) の不定積分の1つである。区間で連続な被積分関数の積分(不定積分)は、それを微分すると元の関数に戻る。

リンク: 
やさしい微分積分
微分可能の定義
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