やさしい微分積分
〔前のページ〕〔次のページ〕〔微分積分の目次〕
《グラフの傾き》
以下では、区間で連続な関数のグラフの傾きを考える。例えば、xの実数全体の区間で連続な放物線の関数f(x) を考える。下図の放物線のグラフy=f(x) の各点での傾きを調べる。

y=f(x) の放物線のグラフの曲線の点Cでの傾きは、点Cでグラフの曲線に接する直線DEの傾きと同じである。直線DEの傾きは、その直線に平行な直線ABの傾きと等しい。
すなわち、放物線の点Cでの傾きは、点Cの近くの曲線上の2つの点AとBを結ぶ直線の傾きと等しい。このように、放物線の点Cでの傾きは、点Cの近くの曲線上の2点を通る直線の傾きとして求めることができる。
2点を定めて点Cでの放物線の傾きを計算するときは、以下の図のように、2点のうちの1つを点Cとし、もう1つの点を点Cの近くの曲線上の点Pとする方が計算がし易いので、その2点で計算する。

上図のグラフで、点Cから点Pまで独立変数xが変化する幅をxの増分と呼び、Δx とあらわす。
これに対応して点Aから点Bまで従属変数yが変化する幅の、(点Pの高さ)-(点Cの高さ) をyの増分と呼び、Δy とあらわす。
放物線の微小部分の傾きは、微小なxの増分Δx に対する放物線の微小なyの増分Δyの比Δy/Δx としてあらわすことができる。
(注意: Δx やΔy は、これでまとまった記号で、Δ×(x)やΔ×(y) を意味するのではありません。そのため分母と分子のΔを約分してはいけません。)
上図のように、点Cと右の点P2(Δx>0)との傾きと、点Cと左の点P1(Δx<0)との傾きとはわずかに異なる。直線CP2の傾きと、直線P1Cの傾きとは、Δx を0に近くすればするほど、変化していく。そして、点Pが限りなく点Cに近づくと、直線CPは点Cにおける接線DEに近づいていく。このとき、直線CPが接線DEに収束する、と言う。
その直線CPの傾きは、上図の式であらわすことができる。
《極限値》
増分Δx が0とは異なる値をとりながら限りなく0に近づくとき、Δy/Δx の値がある定数kに限りなく近づくならば、
Δx →0のとき、(Δy/Δx)→k
とか、

とあらわす。
そして、その定数kを、
Δx →0のときのΔy/Δx の極限値、または、極限と呼ぶ。
(注意: 限りなく近づくとは「最終的には一致する」ことを意味しない。Δy/Δx が限りなくkに近づくだけで永遠にkに一致しないでも、「極限値がkである」と言うのです。)
ここで、増分Δx をhとあらわすことにする。そして、増分hを限りなく0に近づけた式は、以下の図の式であらわす。

点C(x0,y0) におけるこの式の極限値のことを、f'(x0)と表して、独立変数の数直線上のx=x0の点における微分係数という。
《数列の極限》
項が限りなく続く数列x1, x2, x3, ・・・, xn, ・・・を無限数列と言う。xnをその第n項といい、この無限数列を{xn}であらわす。また、an を自然数nの式であらわしたものを数列{xn} の一般項という。
「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の定義は、数の集合Aにおいて、以下のことが成り立つこととして、極限を定義する。
【数列の極限の定義】
以下の図で、「数の集合Aの要素で、点a以外の値の、変数xの無限数列{xn}を考える。

この数列{xn}では、自然数nが限りなく大きくなるとき、第n項は限りなく値aに近づく。
一般に、数列{xn}において、nが限りなく大きくなるにつれて、xn が一定の値aに限りなく近づくとき、数列{xn}はaに収束する、または、数列{xn}の極限はaであるという。その値aを数列{xn}の極限値であるという。(点aは数の集合Aの要素で無くても良い)。
数列{xn}の極限値がaであるとき、次のように書く。

(ここで、記号∞は”無限大”と読む。∞は数をあらわすものではない)
すなわち、「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の概念を、点aに収束する、数の集合Aの要素のxの無限数列を使って数学的に定義した。
その結果、変数xが限りなく近づく先の数の点aは、すなわち、変数xの極限の数の点aは、
数の集合Aの要素の点xの無限数列の集積点であるという結論が得られる。
--(集積点の定義)--
実数の集合Rの部分集合の数の集合Aを考える。
(1)実数の点aが数の集合Aの集積点であるとは、
点aの値以外の数の集合Aの要素の点xn による、点aに収束する無限数列 {xn}が存在すること(点aは実数ではあるが、数の集合Aの要素とは限らない)である。
(2)数の集合Aの要素のある数の点yが集積点ではないとき、その点yを数の集合Aの孤立点と呼ぶ。
--(集積点の定義おわり)---
《関数の極限》
関数f(x) の定義域のxの数の集合Aから、aと異なる数x1, x2, x3, ・・・, xn, ・・・ を選んで、点aに収束するxの無限数列{xn}を作り、同時に、h=x-aで定義した変数hの無限数列{hn}を作った場合に、その無限数列{xn}が点aに収束する({hn}が0に収束する)のにともなって(f(x)-f(a))/(x-a) が値Cに収束することが、x→aで関数(f(x)-f(a))/(x-a) に極限値Cが存在するための基礎条件である。
関数f(x) において、変数xがaと異なる値をとりながら限りなくaに近づくとき、(f(x) -f(a))/(x-a) の値が一定の値Cに限りなく近づくならば、
x→aのとき(f(x)-f(a))/(x-a) の極限値がCである。
といい、次のように書く。

また、この場合、”x→aのとき(f(x)-f(a)) /(x-a)はCに収束する”という。
【関数の極限の定義】
変数xがaと異なる値をとりながら限りなくaに近づくとき、関数(f(x)-f(a)) /(x-a) の値が一定の値Cに限りなく近づくという関数の極限は、以下のように定義する。
関数f(x) の定義域の集合Aと点aとの和集合を区間A’とする。そして、「変数xが限りなくaに近づくとき関数(f(x) -f(a))/(x-a) に極限値Cが存在する」ことの数学的定義を:
「区間A’内のaで無い点xの、点aに収束する全ての無限数列{xn}で共通して、関数(f(x)-f(a))/(x-a) ≡g(x,a) が同じ値Cに収束する」ことと定義する。
そう定義する理由は、関数g(x,a) によっては、点aに収束する各無限数列{xn}毎に、関数g(x,a) が異なる値Cに収束したり、収束しなかったりすることがあるからである。
【関数の極限の定義の論理的帰結】
(区間A’の内点での極限)関数g(x,a) のxの定義域の集合と点aとの和集合から成る区間A’の内点a(ただし点x=aでは関数g(x,a) は定義されていない)での極限は、点aの右側極限と左側極限との両側で極限値Cが存在して、両側の極限値Cが一致することが内点aで極限が存在する条件である。(区間A’の内点とは、区間A’の端点以外の、区間内の点のことである)。
xが、内点aの値よりも大きい値をとりながら限りなくaに近づくときg(x,a) の値が限りなくCに近づくならば、Cを点aでのg(x,a) の右側極限値といい、次のようにあらわす。

xが、内点aの値よりも小さい値をとりながら限りなくaに近づくときf(x) の値が限りなくCに近づくならば、Cを点aでのg(x,a) の左側極限値といい、次のようにあらわす。

〔極限が存在する条件〕区間A’の内点aでは、極限が存在する条件は、区間A’内のaで無い点xの、点aに収束するどの無限数列{xn}であっても関数f(x) が同じ値Cに収束することである。
▷そのため、区間A’内の点xの、点aより大きい数の無限数列{xn}による右側極限でも値Cに収束する。
▷また、区間A’内の点xの、点aより小さい数の無限数列{xn}による左側極限でも同じ値Cに収束する。
すなわち、右側極限も存在し、左側極限も存在して、両者の極限値Cが一致することが区間A’の内点aで極限が存在するために必要十分な条件である。

〔関数f(x) の定義域の区間での、点aより小さい値と大きい値のxn が混ざった数列で点aに収束する無限数列{xn}でも、関数g(x,a) が同じ極限値Cに収束する〕
(区間A’の端点での極限) 関数f(x) の定義域の集合と点aとの和集合から成る区間A’の端点aでの極限は、区間A’内の点xの、点aに収束するどの無限数列{xn}であっても関数g(x,a) が同じ値Cに収束することである。
▷そして、区間A’の左側の端点aでは、無限数列{xn}は、区間A’内の点xの、点aより大きい数の無限数列{xn}による右側極限しか無いので、右側極限値が存在するだけで、端点aでのg(x,a) の極限値(端点でのf(x) の微分係数)が存在する条件になる。
▷また、区間A’の右側の端点aでは、無限数列{xn}は、区間A’内の点xの、点aより小さい数の無限数列{xn}による左側極限しか無いので、左側極限値が存在するだけで、端点aでのg(x,a) の極限値(端点でのf(x) の微分係数)が存在する条件になる。
《閉区間を定義域とする関数f(x) は、その閉区間の端でも微分可能性が定義できる》
ある区間を定義域とする関数f(x) において、その区間の境界点を含まないxの区間の内点Cのx座標x0 に対する関数y=f(x) の微分は、その内点Cのx座標x0 の左右のxの点を平等に考えて傾きを計算する。内点Cのx座標x0 に対する他の1つのxの点は、x0 より小さい点からx0 よりも大きい点までの全部のxの点を見てx0 の位置(内点C)での傾きを計算する。
高校数学では、関数の定義域の区間の内点(区間の境界点以外の点)での微分だけが詳しく教えられている。高校数学は、内点での微分の条件があたかも全ての微分の条件であるかのように教えていて、閉区間の端点では条件が満足されないので微分不可能であるかのように教えている。しかし、閉区間の端点でも(傾きが無限大でなければ)微分可能である。
大学数学では、微分係数を計算するx座標の値x0 が、閉区間を定義域とする関数f(x) の区間の端にある場合も詳しく学べる。

上図の関数f(x) =xが0≦x≦2の閉区間 [0,2] で定義されている場合を考える。
この関数f(x) =x は、定義域の閉区間の端点x=0やx=2で微分することが可能である。この関数f(x) の微分係数f'(x) は、閉区間[0,2]の端点とその間の内点とで1である。
【導関数とは何か】
上記のように、区間で連続な関数f(x) の独立変数xの数直線上のx=x0の点における微分係数を1つ求めた。しかし、独立変数xの数直線上の各点における微分係数を毎回求めるのはかなり面倒なので、関数f(x)の独立変数xの区間の内部の任意のxの点での微分係数を全部求める。つまり、関数f(x) のxの区間の点での微分係数f’(x) を計算する。

ここで、区間で連続な関数f(x) の微分係数f’(x) があらわす関数を、関数f(x)の導関数と言う。以下の図の関数f(x) の導関数f’(x) は微分の公式により計算でき下図の式になる。
導関数f’(x) を求めることを、関数f(x) を微分すると言う。
また、関数f(x) の導関数f'(x) をdf/dxと書くこともある。更に、導関数f’(x) をdy/dx と書いたり、y’ と書くこともある。
【関数f(x) の微分係数が定まらない場合もある】
ここで、関数f(x) によっては、所定の点Cの左右の点を平等に考えて傾きを計算する場合に、内点Cの左側の微分係数と右側の微分係数との2つの微分係数の値が一致しない関数f(x) もある。
以下の図の関数f(x)=|x| のx=0の点Oで、左側微分係数が(-1)であるが右側微分係数が(1)であり、その2つの微分係数の値が異なる。

この場合には、その点Oでは、微分係数が定まらず微分ができない。(ただし、関数f(x) が閉区間[0,2]で定義された関数f(x) =xであって、点Oがその閉区間の端点x=0の場合は、その端点Oで片側微分係数が1つの値に定まるので、微分できる)。
(注意)
独立変数xの実数全体の区間で連続な関数f(x) =|x| の導関数f’(x) は、以下のグラフであらわされる。

この導関数f’(x) は、x=0の点では定義されず、その点でグラフが千切れるため、実数全体の区間で連続な関数ではない。この導関数f’(x) は、x<0の区間の連続関数とx>0の区間の連続関数とを合わせた、複合区間を定義域とする関数である。
以下の図の関数の例で先に微分を説明した。

上図の関数f(x) =xが0≦x≦2の閉区間 [0,2] で定義されている。この関数f(x) =x を微分すると閉区間 [0,2] で定義されている導関数f'(x) が得られた。この導関数f'(x) を積分すると元の関数f(x) が得られる。元の関数f(x) を関数f’(x) の原始関数と呼ぶ。原始関数は関数f’(x) の不定積分の1つである。区間で連続な被積分関数の積分(不定積分)は、それを微分すると元の関数に戻る。
リンク:
やさしい微分積分
微分可能の定義
高校数学の目次
〔前のページ〕〔次のページ〕〔微分積分の目次〕
《グラフの傾き》
以下では、区間で連続な関数のグラフの傾きを考える。例えば、xの実数全体の区間で連続な放物線の関数f(x) を考える。下図の放物線のグラフy=f(x) の各点での傾きを調べる。

y=f(x) の放物線のグラフの曲線の点Cでの傾きは、点Cでグラフの曲線に接する直線DEの傾きと同じである。直線DEの傾きは、その直線に平行な直線ABの傾きと等しい。
すなわち、放物線の点Cでの傾きは、点Cの近くの曲線上の2つの点AとBを結ぶ直線の傾きと等しい。このように、放物線の点Cでの傾きは、点Cの近くの曲線上の2点を通る直線の傾きとして求めることができる。
2点を定めて点Cでの放物線の傾きを計算するときは、以下の図のように、2点のうちの1つを点Cとし、もう1つの点を点Cの近くの曲線上の点Pとする方が計算がし易いので、その2点で計算する。

上図のグラフで、点Cから点Pまで独立変数xが変化する幅をxの増分と呼び、Δx とあらわす。
これに対応して点Aから点Bまで従属変数yが変化する幅の、(点Pの高さ)-(点Cの高さ) をyの増分と呼び、Δy とあらわす。
放物線の微小部分の傾きは、微小なxの増分Δx に対する放物線の微小なyの増分Δyの比Δy/Δx としてあらわすことができる。
(注意: Δx やΔy は、これでまとまった記号で、Δ×(x)やΔ×(y) を意味するのではありません。そのため分母と分子のΔを約分してはいけません。)
上図のように、点Cと右の点P2(Δx>0)との傾きと、点Cと左の点P1(Δx<0)との傾きとはわずかに異なる。直線CP2の傾きと、直線P1Cの傾きとは、Δx を0に近くすればするほど、変化していく。そして、点Pが限りなく点Cに近づくと、直線CPは点Cにおける接線DEに近づいていく。このとき、直線CPが接線DEに収束する、と言う。
その直線CPの傾きは、上図の式であらわすことができる。
《極限値》
増分Δx が0とは異なる値をとりながら限りなく0に近づくとき、Δy/Δx の値がある定数kに限りなく近づくならば、
Δx →0のとき、(Δy/Δx)→k
とか、

とあらわす。
そして、その定数kを、
Δx →0のときのΔy/Δx の極限値、または、極限と呼ぶ。
(注意: 限りなく近づくとは「最終的には一致する」ことを意味しない。Δy/Δx が限りなくkに近づくだけで永遠にkに一致しないでも、「極限値がkである」と言うのです。)
ここで、増分Δx をhとあらわすことにする。そして、増分hを限りなく0に近づけた式は、以下の図の式であらわす。

点C(x0,y0) におけるこの式の極限値のことを、f'(x0)と表して、独立変数の数直線上のx=x0の点における微分係数という。
《数列の極限》
項が限りなく続く数列x1, x2, x3, ・・・, xn, ・・・を無限数列と言う。xnをその第n項といい、この無限数列を{xn}であらわす。また、an を自然数nの式であらわしたものを数列{xn} の一般項という。
「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の定義は、数の集合Aにおいて、以下のことが成り立つこととして、極限を定義する。
【数列の極限の定義】
以下の図で、「数の集合Aの要素で、点a以外の値の、変数xの無限数列{xn}を考える。

この数列{xn}では、自然数nが限りなく大きくなるとき、第n項は限りなく値aに近づく。
一般に、数列{xn}において、nが限りなく大きくなるにつれて、xn が一定の値aに限りなく近づくとき、数列{xn}はaに収束する、または、数列{xn}の極限はaであるという。その値aを数列{xn}の極限値であるという。(点aは数の集合Aの要素で無くても良い)。
数列{xn}の極限値がaであるとき、次のように書く。

(ここで、記号∞は”無限大”と読む。∞は数をあらわすものではない)
すなわち、「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の概念を、点aに収束する、数の集合Aの要素のxの無限数列を使って数学的に定義した。
その結果、変数xが限りなく近づく先の数の点aは、すなわち、変数xの極限の数の点aは、
数の集合Aの要素の点xの無限数列の集積点であるという結論が得られる。
--(集積点の定義)--
実数の集合Rの部分集合の数の集合Aを考える。
(1)実数の点aが数の集合Aの集積点であるとは、
点aの値以外の数の集合Aの要素の点xn による、点aに収束する無限数列 {xn}が存在すること(点aは実数ではあるが、数の集合Aの要素とは限らない)である。
(2)数の集合Aの要素のある数の点yが集積点ではないとき、その点yを数の集合Aの孤立点と呼ぶ。
--(集積点の定義おわり)---
《関数の極限》
関数f(x) の定義域のxの数の集合Aから、aと異なる数x1, x2, x3, ・・・, xn, ・・・ を選んで、点aに収束するxの無限数列{xn}を作り、同時に、h=x-aで定義した変数hの無限数列{hn}を作った場合に、その無限数列{xn}が点aに収束する({hn}が0に収束する)のにともなって(f(x)-f(a))/(x-a) が値Cに収束することが、x→aで関数(f(x)-f(a))/(x-a) に極限値Cが存在するための基礎条件である。
関数f(x) において、変数xがaと異なる値をとりながら限りなくaに近づくとき、(f(x) -f(a))/(x-a) の値が一定の値Cに限りなく近づくならば、
x→aのとき(f(x)-f(a))/(x-a) の極限値がCである。
といい、次のように書く。

また、この場合、”x→aのとき(f(x)-f(a)) /(x-a)はCに収束する”という。
【関数の極限の定義】
変数xがaと異なる値をとりながら限りなくaに近づくとき、関数(f(x)-f(a)) /(x-a) の値が一定の値Cに限りなく近づくという関数の極限は、以下のように定義する。
関数f(x) の定義域の集合Aと点aとの和集合を区間A’とする。そして、「変数xが限りなくaに近づくとき関数(f(x) -f(a))/(x-a) に極限値Cが存在する」ことの数学的定義を:
「区間A’内のaで無い点xの、点aに収束する全ての無限数列{xn}で共通して、関数(f(x)-f(a))/(x-a) ≡g(x,a) が同じ値Cに収束する」ことと定義する。
そう定義する理由は、関数g(x,a) によっては、点aに収束する各無限数列{xn}毎に、関数g(x,a) が異なる値Cに収束したり、収束しなかったりすることがあるからである。
【関数の極限の定義の論理的帰結】
(区間A’の内点での極限)関数g(x,a) のxの定義域の集合と点aとの和集合から成る区間A’の内点a(ただし点x=aでは関数g(x,a) は定義されていない)での極限は、点aの右側極限と左側極限との両側で極限値Cが存在して、両側の極限値Cが一致することが内点aで極限が存在する条件である。(区間A’の内点とは、区間A’の端点以外の、区間内の点のことである)。
xが、内点aの値よりも大きい値をとりながら限りなくaに近づくときg(x,a) の値が限りなくCに近づくならば、Cを点aでのg(x,a) の右側極限値といい、次のようにあらわす。

xが、内点aの値よりも小さい値をとりながら限りなくaに近づくときf(x) の値が限りなくCに近づくならば、Cを点aでのg(x,a) の左側極限値といい、次のようにあらわす。

〔極限が存在する条件〕区間A’の内点aでは、極限が存在する条件は、区間A’内のaで無い点xの、点aに収束するどの無限数列{xn}であっても関数f(x) が同じ値Cに収束することである。
▷そのため、区間A’内の点xの、点aより大きい数の無限数列{xn}による右側極限でも値Cに収束する。
▷また、区間A’内の点xの、点aより小さい数の無限数列{xn}による左側極限でも同じ値Cに収束する。
すなわち、右側極限も存在し、左側極限も存在して、両者の極限値Cが一致することが区間A’の内点aで極限が存在するために必要十分な条件である。

〔関数f(x) の定義域の区間での、点aより小さい値と大きい値のxn が混ざった数列で点aに収束する無限数列{xn}でも、関数g(x,a) が同じ極限値Cに収束する〕
(区間A’の端点での極限) 関数f(x) の定義域の集合と点aとの和集合から成る区間A’の端点aでの極限は、区間A’内の点xの、点aに収束するどの無限数列{xn}であっても関数g(x,a) が同じ値Cに収束することである。
▷そして、区間A’の左側の端点aでは、無限数列{xn}は、区間A’内の点xの、点aより大きい数の無限数列{xn}による右側極限しか無いので、右側極限値が存在するだけで、端点aでのg(x,a) の極限値(端点でのf(x) の微分係数)が存在する条件になる。
▷また、区間A’の右側の端点aでは、無限数列{xn}は、区間A’内の点xの、点aより小さい数の無限数列{xn}による左側極限しか無いので、左側極限値が存在するだけで、端点aでのg(x,a) の極限値(端点でのf(x) の微分係数)が存在する条件になる。
《閉区間を定義域とする関数f(x) は、その閉区間の端でも微分可能性が定義できる》
ある区間を定義域とする関数f(x) において、その区間の境界点を含まないxの区間の内点Cのx座標x0 に対する関数y=f(x) の微分は、その内点Cのx座標x0 の左右のxの点を平等に考えて傾きを計算する。内点Cのx座標x0 に対する他の1つのxの点は、x0 より小さい点からx0 よりも大きい点までの全部のxの点を見てx0 の位置(内点C)での傾きを計算する。
高校数学では、関数の定義域の区間の内点(区間の境界点以外の点)での微分だけが詳しく教えられている。高校数学は、内点での微分の条件があたかも全ての微分の条件であるかのように教えていて、閉区間の端点では条件が満足されないので微分不可能であるかのように教えている。しかし、閉区間の端点でも(傾きが無限大でなければ)微分可能である。
大学数学では、微分係数を計算するx座標の値x0 が、閉区間を定義域とする関数f(x) の区間の端にある場合も詳しく学べる。

上図の関数f(x) =xが0≦x≦2の閉区間 [0,2] で定義されている場合を考える。
この関数f(x) =x は、定義域の閉区間の端点x=0やx=2で微分することが可能である。この関数f(x) の微分係数f'(x) は、閉区間[0,2]の端点とその間の内点とで1である。
【導関数とは何か】
上記のように、区間で連続な関数f(x) の独立変数xの数直線上のx=x0の点における微分係数を1つ求めた。しかし、独立変数xの数直線上の各点における微分係数を毎回求めるのはかなり面倒なので、関数f(x)の独立変数xの区間の内部の任意のxの点での微分係数を全部求める。つまり、関数f(x) のxの区間の点での微分係数f’(x) を計算する。
ここで、区間で連続な関数f(x) の微分係数f’(x) があらわす関数を、関数f(x)の導関数と言う。以下の図の関数f(x) の導関数f’(x) は微分の公式により計算でき下図の式になる。
導関数f’(x) を求めることを、関数f(x) を微分すると言う。
また、関数f(x) の導関数f'(x) をdf/dxと書くこともある。更に、導関数f’(x) をdy/dx と書いたり、y’ と書くこともある。
【関数f(x) の微分係数が定まらない場合もある】
ここで、関数f(x) によっては、所定の点Cの左右の点を平等に考えて傾きを計算する場合に、内点Cの左側の微分係数と右側の微分係数との2つの微分係数の値が一致しない関数f(x) もある。
以下の図の関数f(x)=|x| のx=0の点Oで、左側微分係数が(-1)であるが右側微分係数が(1)であり、その2つの微分係数の値が異なる。
この場合には、その点Oでは、微分係数が定まらず微分ができない。(ただし、関数f(x) が閉区間[0,2]で定義された関数f(x) =xであって、点Oがその閉区間の端点x=0の場合は、その端点Oで片側微分係数が1つの値に定まるので、微分できる)。
(注意)
独立変数xの実数全体の区間で連続な関数f(x) =|x| の導関数f’(x) は、以下のグラフであらわされる。

この導関数f’(x) は、x=0の点では定義されず、その点でグラフが千切れるため、実数全体の区間で連続な関数ではない。この導関数f’(x) は、x<0の区間の連続関数とx>0の区間の連続関数とを合わせた、複合区間を定義域とする関数である。
以下の図の関数の例で先に微分を説明した。

上図の関数f(x) =xが0≦x≦2の閉区間 [0,2] で定義されている。この関数f(x) =x を微分すると閉区間 [0,2] で定義されている導関数f'(x) が得られた。この導関数f'(x) を積分すると元の関数f(x) が得られる。元の関数f(x) を関数f’(x) の原始関数と呼ぶ。原始関数は関数f’(x) の不定積分の1つである。区間で連続な被積分関数の積分(不定積分)は、それを微分すると元の関数に戻る。
リンク:
やさしい微分積分
微分可能の定義
高校数学の目次
0 件のコメント:
コメントを投稿