2013年8月31日土曜日

ベクトル方程式で三角形の垂心の位置ベクトルを求める

これは、ここをクリックした先の問題の解答です。 

大学への数学「ベクトル」編の勉強

【問1】
 三角形OABCの垂心Dの位置ベクトルを、ベクトルOAと、それに垂直なベクトルhとであらわせ。
なお、点Oは原点、頂点A,Bの座標は、

点A(a,0)、点B(a,h)とする。
【一番簡単な解き方の秘訣】
 (あるベクトルbとqとが互いに垂直であるという条件のある図形の問題を解くときは、
(1)それらのベクトルbとqを、互いに垂直な単位ベクトルxとyの合成であらわして、
(2)そして、ベクトルbとqが垂直である条件として内積が0であるというベクトル方程式を作って計算すると、
計算が一番簡単になります。)

しかし、以下では(1)の秘訣は使わずに問題を解いてみます。

【解答】
ベクトルOBを、ベクトルOA=aと、それに垂直なベクトルhとであらわす。

ここで、

である。
そして、

でもある。
求める位置ベクトルODは、以下の式(2)であらわせ、更に、式(3)でベクトルaとhであらわせます。この式で係数kが未知数です。 

三角形の点AからDまでいたるベクトルqは、以下の式で計算できる。
三角形の一辺OBのベクトルbとそれに垂直なベクトルqの間には、以下の式(5)の関係がある。この式(5)に式(1)と(4)を代入して計算する。
式(6)を更に変形する。

式(7)で求めた未知数kを式(2)に代入して求める位置ベクトルdが式8で得られた。
ここで、

である。
(第1の解答)

(補足1) この第1の解答の式(8)を変形して整理すると、以下の式になる。


 一方、式8であらわした解を、更に、互いに垂直なベクトルaとベクトルhを使ってあらわすように変形する。
上の式(8)の形の式は見た目はわかりやすい形に見えたが、式(9)の形にまで変形すると、垂心のベクトルa上の高さの公式が見えてくる、より多くの情報が得られるより優れた式9が得られた。
 この式(9)の方が良い表わし方の式であることを理解するには、この問題を解く前に答えを予測する計算をする事が望ましい。
(解答おわり)


(補足2)図形を平行移動させる
 以上の解答は、三角形OABの頂点Oが原点にある場合の解答でした。
三角形が平行移動して頂点O(頂点C)が原点から外れた位置に平行移動した場合の解に変換してみます。

ベクトルAは点Aの位置ベクトル、
ベクトルBは点Bの位置ベクトルとして、
ベクトルDは点Dの位置ベクトルとして、
その解の変換は、式8は以下の式8aに変換できます。
 この式8aの左辺と右辺の各点の位置ベクトルは、点Cの位置ベクトルとの差であると解釈できます。
こうして、点Cの位置を原点以外の点に平行移動した場合の点Dの位置ベクトルを与える式8cが導かれた。

【位置ベクトルA,B,Cのみで垂心Dの位置ベクトルを表す】
式8aは、更に、以下の式に変形できる。
とおいて、
以下の計算ができる。
(補足3)この式(11)から、式(11)の第2項によって垂心Dの頂点Bからの距離|p|が以下の式で表されることがわかる。


ここで、ベクトルhは以下の式であらわせる。

ベクトルavはベクトルaを左回りに90度回転させたベクトルである。
この式12と式13を式11に代入して計算する。
(計算おわり)
こうして、垂心Dの位置ベクトルを三角形の頂点A,B,Cの位置ベクトルであらわすことができた。

(補足4)
この式は、ベクトルの名前を付け替えてあらわすと以下の図の式になる。


この式41は、以下の意味を持つ式に変形できる。


また、式41は、正弦定理を使って変形することもできる。

次に、「タンジェントの美しい関係式」 を使って変形を進めることができる。


【問2】
 下図で、点Aから垂心HまでのベクトルAHをベクトルABとベクトルACとであらわせ。


この問題の解答は、ここをクリックした先にあります。

リンク:
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2013年8月30日金曜日

ベクトルで三角形の外心を表す種々の式

ベクトル方程式で三角形の外接円の中心の位置ベクトルを求める

これは、ここをクリックした先の問題の解答です。

以下の解答を見るよりも先に、
ここをクリックして「三角形の外接円の中心の位置ベクトルの公式を初めて学ぶ方法」を見た方が良いのではないかとも思います

《解答の式の一覧》

以下の解答の式で覚えるべき最も重要な式は第23の解の式です。
(最も重要な式を最初に書かなかった事をお詫びします)
▽第1の解(ベクトルaとbであらわす)
▽第2の解(ベクトルaとbと面積Sであらわす)
▽第3の解(解を三角関数であらわす)
▽第4の解(第2の解と同じaとbと面積S)
▽第5の解(aとcと高さhで)
▽第20の解(ベクトルaとそれに垂直なベクトルgで)
▽第21の解(第20の解と等価aとgで)
▽第6の解(第5の解と同じaとcと高さhで)
▽第22の解(第20の解と同等cとcvで)
▽第23の解(第20の解と同等aとavで)
▽第30の解(ベクトルavとbvであらわす)
▽第31の解(同じavとcvで)
▽第32の解(同じavとcv)
▽第33の解(第30の解と等価)


【問1】三角形OABの外心(外接円の中心)Dの位置ベクトルをもとめよ。
なお、点Oは原点、頂点A,Bの座標は、点A(a,0)、点B(b,b)とする。

【解答方針】
ベクトル方程式の問題は、
「2次元空間の全てのベクトルは、2つの独立なベクトルの係数倍の和であらわすことができる」
という基本原理を用いて、2つのベクトルを決めて、そのベクトルの係数を計算することで求める。


【一番簡単な解き方の秘訣】
 (あるベクトルbとqとが互いに垂直であるという条件のある図形の問題を解くときは、
(1)それらのベクトルbとqを、互いに垂直な単位ベクトルxとyの合成であらわして、
(2)そして、ベクトルbとqが垂直である条件として内積が0であるというベクトル方程式を作って計算すると、
計算が一番簡単になります。)

しかし、以下では(1)の秘訣は使わずに問題を解いてみます。

【解答】
2つの独立なベクトルとして、ベクトルOAとベクトルOBを用いることにする。
そして、求めるベクトルODを以下の式(1)であらわす。

外接円の中心Dの位置ベクトルODは、線分ABの垂直二等分線と線分BCの垂直二等分線との交点であるので、以下の式(2)(3)(4)の関係がある。
式(3)に順次に式(2)と(1)を代入して計算する。
式(4)に順次に式(2)と(1)を代入して計算する。
式(5)と(6)を連立して係数sとtを計算する。
式(7)と(8)を式(1)に代入してベクトルODをあらわす。


(解答おわり)
(▽以上が第1の解)

【第2の解】
 この式9は、ベクトルaとベクトルbだけで解をあらわそうとしたので複雑になった。
しかし、以下の図のベクトルcも使って良いならば、式がもっと単純になります。

 を、式9に代入する。

この様に式が単純化できる。
更に、ベクトルaを左回りに90°回転させたベクトルavも使って良いならば、
《2つのベクトルの大きさの積の三平方の定理》
を使って、以下の式にまで単純化できる。


(注意おわり)
(▽以上が第2の解)
この解は、ベクトルの分解の公式を使って、以下の様にして求める事もできる。

(第2の解おわり)

【第3の解】
第1の解の式9は、以下の図を考えて変形することができます。
 を、式9bに代入する。

この式9b2を、正弦定理の以下の式を利用して変形する。


 この式9cの分母は、三角形ABCの面積をSとし、以下の式に変形します。
この式を式9cに代入する。


(変形おわり)
(△以上が第3の解)

 この変形で、ベクトルODをあらわす式9を、単純な形の式9dに変形できた。
この変形は、予め、三角関数を使って、この式9dの形に変形しようという解答者の意思があって初めて可能であり、この形にするのは解答者の裁量に依存しました。
すなわち、必ずこの形に解を変形しなければならないという事は無いのです。
式9のままでも解として十分な価値があります。

   解の形の式9dの方が、式9よりも単純な式になりました。しかし、式9を変形して式9dのように単純な式を得るには、ベクトル方程式の計算パターンだけではわかりません。三角関数も使っていますし・・
  式9dを見出すには、ベクトルODの答えをどういう視点でとらえようとするかの、解答者の意思に依存します。

【第4の解】
 実際、第1の解の式9の変形でベクトルcを使って良く三角形ABCの面積Sを使っても良い場合は、第2の解が得られた。第2の解は、面積Sを、以下のように導入して求めることもできる。
 (変形おわり)
(▽以上が第4の解)

まさに、解答者の裁量によって、解の式の形が決まります。

【第5の解】
以下の図を使って考える。原点は外心に置く。各頂点の、外心を中心にした位置ベクトルをA,B,Cとする。

この図を使って、ベクトルの分解の公式を使って、ベクトルBO=-ベクトルBをベクトルaとcであらわす。

ベクトルBOがベクトルaとcで表せた。
(▽以上が第5の解)

【解をベクトルaとそれに垂直なベクトルgで表す】
 第1の解の式9を、ベクトルaと、それに垂直なベクトルgとであらわしてみます。
ベクトルbは以下の式(10)であらわされます。式(10)を(9)に代入して計算します。

この式(11)のベクトルaとベクトルbの内積にベクトルの要素を代入して計算する。
(▽以上が第20の解)

式(12)で、ベクトルODが、ベクトルaと、それに垂直なベクトルgとであらわせました。

ベクトルgの係数が0になる場合は、三角形OABの∠Bが直角の場合です。
∠Bが90°より小さいと、ベクトルgの係数が0より大きくなり、
∠Bが90°より大きいと、ベクトルgの係数が0より小さくなります。

 式(12)であらわした方が、式(9)の解答よりも単純な式になりました。しかし、式(9)を変形して式(12)のように単純な式を得るには、ベクトル方程式の計算パターンだけではわかりません。
 式(12)を見出すには、ベクトルODをどのベクトルであらわそうとするかの、答えをどういう視点でとらえようとするかの、解答者の意思に依存します。


 以下の問題2では、解答者の「意思」を定めた後の解き方を示します。

【問2】
 三角形OABの外心(外接円の中心)Dの位置ベクトルを、ベクトルOAと、それに垂直なベクトルgとであらわせ。
なお、点Oは原点、頂点A,Bの座標は、点A(a,0)、点B(b,b)とする。

求める位置ベクトルODは、以下の式(13)で、ベクトルaとgとであらわせます。この式で係数kが未知数です。 
三角形の一辺のベクトルOBは、以下の式(14)で、ベクトルaとgとであらわせる。
三角形の一辺OBの垂直二等分線でDまでいたるベクトルqは、以下の式で計算できる。
三角形の一辺OBのベクトルbとそれに垂直なベクトルqの間には、以下の式(16)の関係がある。この式(16)に式(15)と(14)を代入して計算する。
式(17)で求めた未知数kを更に変形する。
式(18)で求めた未知数kを式(13)に代入して求める位置ベクトルdが得られた。
(解答おわり)
(▽以上が第21の解)

【第6の解】
この式19の形の解を以下の図を参照して変形してみます。
 ベクトルBOを以下の様に変形します。
 ここで、ベクトルaの係数を以下の様に変形します。
 この式を、「三角形の高さhの公式」を適用して変形します。
この結果を使って、ベクトルBOを表す。
(▽以上が第6の解)
「三角形の高さhの公式」を使うことで、
 ベクトルBOがベクトルcとベクトルaとのきれいな式であらわせた。


【問2b】
 頂点Bが原点Oにある三角形ABCの外心Pの位置ベクトルPを、位置ベクトルAとCと、その位置ベクトルに垂直なベクトルであらわせ。


【解答】
求める位置ベクトルPは、以下の式1と式2との2つの式であらわせます。この式で係数kとmが未知数です。 


この式で求めた未知数mを位置ベクトルPの式2に代入する。
位置ベクトルPが式5で得られた。
(ベクトルcvは、図で上向きのベクトルであるものとする)
(解答おわり)
(▽以上が第22の解)

 上の解答の式5は、互いに直交するベクトルで解をあらわした、有意義な情報に富む意味のある解だと考えます。
【研究1】
 この問題の解が分かっている場合は、
ベクトル方程式を使わないでも、
以下の図を考えて、
ベクトルbとベクトルcの内積の式を以下の様に変形することで証明できる。
ベクトルbとベクトルcの内積を以下の式で計算する。
ひし形の対角線の直交の公式により、以下の式が成り立つ事を利用する。
以下の様にベクトルbとベクトルcの内積を、三角形の高さベクトルhを導入して、計算する。
この計算の結果は、以下の関係をあらわす。
この式によって、 
(外心の高さm)が、
(ベクトルbとベクトルcの内積)/(2h)
で求められる。
この計算の詳しい説明は、
三角形の高さベクトルhの公式 」を参照してください。

【第23の解】
ベクトルBOは、以下の式でもあらわせる。
(▽以上が第23の解)

【解を、90°回転したベクトル系であらわす】
式9を、ベクトルaとbを左に90度回転したベクトル系であらわしてみます。
以下の式の様に、第1の解の結果の式にベクトルの分解の公式を使います。
式9の分母は上の式であらわせます。
(▽以上が第30の解)

この変換の結果、簡単な形の式に変換できました。

 また、このように簡単な形の式で表せることは、解答者の意思によるベクトル系の選択に依存します。
ベクトルの計算の法則がこの簡単な形の式を導き出すわけでは無いと考えます。 

【第31の解を始める】
 第22の解の式(5)を、ベクトルCvとベクトルAvとであらわしてみます。


この式のベクトルCを、ベクトルの分解の公式を使って、ベクトルCvとベクトルAvとであらわします。
この式を式5に代入する。
(変形おわり)
(▽以上が第31の解)
この形の式6の解は、以下の図のベクトルCvに平行なベクトルと、ベクトルAvに平行なベクトルを合成してベクトルBPがあらわされる事を示している。
【第32の解:ベクトル方程式で式6の解を求める】
(解答開始)
 以下の図の様に、ベクトルBCをベクトルCと定義し、
ベクトルBAをベクトルAと定義する。
そして、それらのベクトルを左回りに90°回転させたベクトルを、ベクトルCv及びベクトルAvと定義して使う。
未知数kとmを使った、以下の式1のベクトル方程式を立てて解く。
以上の計算において、2次元ベクトルの分解の公式での【究極の方法】、すなわち、2つの直交ベクトルへの分解の公式を使った
(▽以上が第32の解)

【第33の解】
 外接円から三角形の頂点までの距離が等しいという条件を使って外接円の中心の位置ベクトルを求めてみます。
式7と式8をベクトルであらわすため、以下の垂直ベクトルを定義する。
(解答おわり)
(▽以上が第33の解)

 複素数平面を使うと、問2の解(その4)として、この式11の解を容易に求めることができる。

(まとめ)
 以上で、三角形の外心をベクトルで表す式を複数求めた。これらの複数の式は、最終的な解をどの式が表すかということは決められない、対等の価値を持つ式である。
 同じ答えを表す解が、解答者によるベクトル系の選択の違いによって、複数の解がある。そのどの解も対等な価値を持つ。解の形を定めることになるベクトル系の選択は、解答者の裁量に依存する。

リンク:
高校数学の目次
三角形の高さベクトルhの公式