(ベクトルの内積の定義)
単位ベクトルA=ベクトルOA=(a1,a2)の長さの2乗は、(a1・a1)+(a2・a2)=1 (式1)
であらわすことができる。
その値は、単位ベクトルAがどの方向を向いていても1になる。
この式1を拡張して、
ベクトルP=ベクトルOP=(p1,p2)があり、単位ベクトルA=ベクトルOA=(a1,a2)がある場合に、
ベクトルPとベクトルAの内積演算を、以下の式2で定義する。
その定義の結果、以下の式4が成り立つ。
この式のθは、ベクトルPがベクトルAと成す角度です。
ベクトルOPと単位ベクトルOAの内積は、ベクトルOPの、直線OBへの正射影の長さOBをあらわす。(ベクトルOPを直径とする円と、ベクトルOAを含む直線との交点が点B)
(注意)
大学や、おそらく世界中の数学者は、式2でベクトルの内積を定義しています。しかし、日本の高校では、式4によってベクトルの内積を定義しています。
日本の大学の教科書・参考書を見ると、日本の大学では、学生が高校で教わった式4の定義も認めた上で、式2の定義を示し式2の定義の適用の広さを教えることで、学生に式2の定義の方が優れている事を諭しています。
この式2の内積の定義は、各ベクトルを
x方向の単位ベクトル
と、
y方向の単位ベクトル
を使って以下の式の様に表して、
以下の式の様に単位ベクトル同士の内積の演算を基礎にしてベクトルの内積を定義しています。
(補足)
上記のベクトルの計算では、以下のように計算するベクトルの内積の分配の法則を利用しています。
式2で定義した内積を使うことで、余弦定理も証明できます。その証明において特に注意すべきことは、式4では内積を定義せず、式2で内積を定義することから証明を開始しなければなりません。その証明には、
「式2で内積を定義する」
と明記して、証明をしてください。
詳しくは:
「ベクトルpとベクトルaの内積の演算を、
(p1,p2)・(a1,a2)=p1・a1+p2・a2
で定義する。
その定義の結果、ベクトルの内積が、ベクトルの長さの積と、ベクトル同士が成す角度θの余弦cosθとの積であらわされる。」
と明記して、証明をしてください。
「式4で内積を定義しても、余弦定理を使って式2が導き出せるので問題無い」という誤った認識が流通しているので注意して下さい。
式2は余弦定理が無ければ成り立たない式では無く、逆に、式2を用いて余弦定理も証明でき、かつ、式4も導き出せるのです。
式4で内積を定義してしまったら、式4の根拠付けに余弦定理が使われていますので、内積を使って余弦定理を導き出すのは、その定義の根拠になった公式を導き出すという循環論法になるので、内積で余弦定理を導き出してはいけない事になってしまいます。しかし、それは正しくはありません。
そういう真実も、高校時代から学んで欲しいと考えます。
なお、高校生になった学生は、心身ともに大人として完成する時期に入ったので、もう中学生時代のように受け身で勉強や生きる道を選択するのでは無く、自分から積極的に広く情報を集めて取捨選択して信頼できる情報を手に入れるようにして欲しいと思います。
世間に流通している情報には、誤った情報の方が多く、正しい情報が少ないです。誤った情報しか手に入らないと、誤った情報は問題解決の役に立たないので自信が無くなり、どうしても受け身で勉強する姿勢になり易いです。
正しい情報の貴重さを認識する経験を積んで欲しいと思います。そして、手に入れた正しい情報に基づいた確信と、生きる勇気を手に入れて、人生の永い道に乗り出して行って欲しいと思います。
(1)式2で内積を定義すると、
互いに垂直なベクトル同士の内積=0
になる。
実際、
単位ベクトルA(a1,a2)と
それに垂直なベクトルAv(-a2,a1)
との内積の式3:
になる。
(2)下図の様に、ベクトルPを、ベクトルAに平行なベクトルPaと、ベクトルAに垂直なベクトルPbに分解し、両ベクトルを合成したベクトルと考える。
すると、ベクトルAに垂直なベクトルPbとベクトルAの内積は0になる。
そのため、ベクトルPとベクトルAの内積は、ベクトルPからベクトルAに垂直なベクトルPbを除去して、残ったベクトルAに平行なベクトルPaとベクトルAとの内積になる。
ベクトルPaはベクトルPのベクトルAへの正射影である。
単位ベクトルAの大きさは1だから、ベクトルPとベクトルAの内積は、ベクトルPにおけるベクトルAに平行な部分のベクトルPaの大きさ(長さ)になる。
(3)ベクトルPと単位ベクトルAの内積は、
ベクトルPから単位ベクトルAに垂直なベクトルPbを除去して、残ったベクトルAに平行なベクトルPaの長さに等しい。
すなわち、ベクトルPと単位ベクトルAの内積は、
ベクトルPの、ベクトルAに平行な直線への正射影の長さPaに等しい。
例えば、ベクトルPがベクトルAと成す角度がθの場合、
ベクトルPの、ベクトルAに平行な直線への正射影の長さ=|P|cosθである。
よって、
こうして、ベクトルPと単位ベクトルAとの内積によって、
ベクトルPの、単位ベクトルAに平行な直線上への正射影の長さをあらわすことができます。
このベクトルの内積の持つ性質(式4)は重要な性質なので、心に銘記して覚えるべき事と思います。
高校の数学教育では、ベクトルの内積のこの重要な性質(式4)を学生が忘れないようにする配慮から、いっその事、ベクトルの内積のこの性質(式4)を、「ベクトルの内積の定義」として教えているのだろうと考えます。
(3次元空間のベクトルでも同じ)
このベクトルの内積の持つ性質(式4)は、3次元空間のベクトルの間の内積の場合にも成り立ちます。そして、
3次元空間でも、ベクトルPと単位ベクトルAの内積は、
ベクトルPの、ベクトルAに平行な直線への正射影の長さPaに等しい。
《ベクトルACのベクトルABへの正射影》
下図の関係も成り立ちます。
下図のACベクトルが、正射影ベクトルAHに変換されます。
ただし、AHの方向がABの方向と反対の方向を向く場合は、上の式の右辺の項にマイナスが付きます。
(4)もう1つ大切な事を付け加えておきます。それは、ベクトルの内積の値は、座標系を回転させても変わらないことです。
これは、ベクトルPと単位ベクトルAとの内積の値は、ベクトルPの、単位ベクトルAに平行な直線上への正射影の長さを表わすので、その値が座標系を回転させても変わらないのは当たり前のことです。
しかし、式2で定義した内積を計算するためのベクトルの成分は座標系によって定められるので座標系の回転変換によって変化します。それにもかかわらず、内積の値は変わらないという事は不思議で面白いことです。
(ベクトルの成す角度はベクトルの内積を使って定義される)
また、4次元空間における2つのベクトルの成す角度θの余弦=cosθを、2つのベクトルの内積の値を使って定義することができます。
単位ベクトルP(p1,p2,p3,p4)があり、
単位ベクトルA(a1,a2,a3,a4)がある場合に、
4次元空間での単位ベクトルPと単位ベクトルAが成す角度θの余弦=cosθを、
cosθ=(p1・a1)+(p2・a2)+(p3・a3)+(p4・a4 )
で定義することができます。
この例の様に、ベクトルの成す角度θというものは、ベクトルの成分を使って測られ、ベクトルの内積などで定義されるものであって、角度θはベクトルの成分に従属するものです。
そのため、何かを定義するとき、それをベクトルの成す角度θを使って定義するよりは、そのθも定義する要素である、ベクトルの成分のp1,p2,p3,p4等を使って定義する方が、より根源的なしっかりした定義であると言えます。
《複素数成分のベクトルの内積》
複素数成分を持つベクトルzとベクトルwの内積は、各成分毎の、ベクトルzの成分と、ベクトルwの成分の共役複素数の積、の和になります。
《角度とcosとsinの対応》角度βに1:1対応する量a
《ベクトルの概念の歴史》
ベクトルの概念は,ある一人の数学者によって完成されたものではなく,様々な数学者や物理学者の考えが合わさり,生み出されたものである.
18 世紀までに,ベクトルにつながるような概念はいくつかあったようである.中でも,複 素数平面に関する考えは,のちにベクトルの概念に繋がっていくことになる.
1840年 グラスマンが内積(式(2))や外積を定義
彼は『線型拡張の理論』という本を出し、内積と外積という言葉を初めて使います。
しかし折角のこの論文は日の目を見ませんでした。
提出先の教授が理解できなかったからです。
1843年 ハミルトンがベクトルとベクトル解析の発展を刺激した四元数を発見
1867年 テイトが『四元数の初等的理論』という本を出版し、ベクトルの内積(式(2))が、式(4)で表せることを示した。
リンク:
高校数学の目次
この例の様に、ベクトルの成す角度θというものは、ベクトルの成分を使って測られ、ベクトルの内積などで定義されるものであって、角度θはベクトルの成分に従属するものです。
そのため、何かを定義するとき、それをベクトルの成す角度θを使って定義するよりは、そのθも定義する要素である、ベクトルの成分のp1,p2,p3,p4等を使って定義する方が、より根源的なしっかりした定義であると言えます。
《複素数成分のベクトルの内積》
複素数成分を持つベクトルzとベクトルwの内積は、各成分毎の、ベクトルzの成分と、ベクトルwの成分の共役複素数の積、の和になります。
《角度とcosとsinの対応》角度βに1:1対応する量a
《ベクトルの概念の歴史》
ベクトルの概念は,ある一人の数学者によって完成されたものではなく,様々な数学者や物理学者の考えが合わさり,生み出されたものである.
18 世紀までに,ベクトルにつながるような概念はいくつかあったようである.中でも,複 素数平面に関する考えは,のちにベクトルの概念に繋がっていくことになる.
1840年 グラスマンが内積(式(2))や外積を定義
彼は『線型拡張の理論』という本を出し、内積と外積という言葉を初めて使います。
しかし折角のこの論文は日の目を見ませんでした。
提出先の教授が理解できなかったからです。
1843年 ハミルトンがベクトルとベクトル解析の発展を刺激した四元数を発見
1867年 テイトが『四元数の初等的理論』という本を出版し、ベクトルの内積(式(2))が、式(4)で表せることを示した。
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