2024年11月2日土曜日

連続関数とは何か

やさしい微分積分
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《連続関数》

 微分積分の命綱を握っているのが連続関数の概念です。

【1つながりに連続する関数】
 微分積分で扱う関数は、均質な基本的な要素の関数を単位にして考える。具体的には、1つながりに連続する関数を単位にして考える。その1つながりに連続する関数が、正しく定義された連続関数である。 連続関数は、グラフが途切れることなくつながっている関数です。

〔連続関数の定義の役割〕
 連続関数とは、第1の条件として、関数の定義域が連結していること、第2の条件として、定義域の点毎に関数f(x) の値域が連結していること。その2つの条件が成り立ちグラフが1つながりに連結している関数f(x) をどのように表すかが連続関数の定義の役割である。

【区間とは】
 関数のグラフが途切れる、すなわグラフがちちぎれる場合は、下図のように、関数 f(x) のy=f(x) のグラフのy軸の方向にすき間を空けてちぎれる場合と、

下図のように、変数xのx軸の方向にすき間を空けてちぎれる場合と

の2通りのちぎれ方がある。
 区間とは、x軸上で実数がすき間なくつまって連結しているx軸上の領域を区間と呼ぶ。
 上図の2通りのちぎれ方をともに判定できるようにするために、x軸の数直線上の実数がすき間なくつまった区間内の点毎に、ちぎれているか、連続であるかを把握する。
 区間内の点とはx軸の数直線上の点である。

《実数とは》
 例えば、以下の図の規則によってx=1から、x=2、次にx=3/2 というように有理数の値を変えてくと、限りなく近づく先の数が有理数の中には無い。しかし、そのように限りなく近づく先の数が存在すると考えた。その数を実数と呼ぶ。

 このように、「限りなく近づける」操作(極限の操作)が、数の概念を拡張することを要請し、そうして拡張された新たな数が実数であった。この拡張された数である実数から成るとされる数直線には数の連続性があるとされた。このように極限の操作によって数の概念が実数にまで拡張され、それが数の連続性と微分積分の礎になった。

《数列の極限》
 項が限りなく続く数列x1, x2, x3, ・・・, xn, ・・・を無限数列と言う。xnをその第n項といい、この無限数列を{xn}であらわす。また、an を自然数nの式であらわしたものを数列{xn} の一般項という。
 「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の定義は、数の集合Aにおいて、以下のことが成り立つこととして、極限を定義する。
【数列の極限の定義】
 以下の図で、「数の集合Aの要素で、点a以外の値の、変数xの無限数列{xn}を考える。

この数列{xn}では、自然数nが限りなく大きくなるとき、第n項は限りなく値aに近づく。
 一般に、数列{xn}において、nが限りなく大きくなるにつれて、xn が一定の値aに限りなく近づくとき、数列{xn}はaに収束する、または、数列{xn}の極限はaであるという。その値aを数列{xn}の極限値であるという。(点aは数の集合Aの要素で無くても良い)。
 数列{xn}の極限値がaであるとき、次のように書く。

(ここで、記号∞は”無限大”と読む。∞は数をあらわすものではない)
 すなわち、「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の概念を、点aに収束する、数の集合Aの要素のxの無限数列を使って数学的に定義した。
 その結果、変数xが限りなく近づく先の数の点aは、すなわち、変数xの極限の数の点aは、
数の集合Aの要素の点xの無限数列の集積点であるという結論が得られる。
--(集積点の定義)--
  実数の集合Rの部分集合の数の集合Aを考える。
(1)実数の点aが数の集合Aの集積点であるとは、
点aの値以外の数の集合Aの要素の点xn による、点aに収束する無限数列 {xn}が存在すること(点aは実数ではあるが、数の集合Aの要素とは限らない)である。
(2)数の集合Aの要素のある数の点yが集積点ではないとき、その点yを数の集合Aの孤立点と呼ぶ。

--(集積点の定義おわり)---

《関数の極限の概念》
 「変数xが限りなく点aに近づく」極限の定義と、その極限の定義を基礎にした関数f(x) の極限の定義は、関数f(x) の定義域Aに以下の条件が成り立つことを前提にしている。
(1)第1に、「変数xの無限数列が点aへ収束すること」そして、「そのxの無限数列の値xで関数f(x) が定義されていなければならない」、という条件がある。その結果、xが限りなく近づく先の点aは、関数f(x) の定義域Aの変数xの集積点である。
 つまり、関数f(x) の定義域のxの数の集合Aから、aと異なる数x1, x2, x3, ・・・, xn, ・・・ を選んで、点aに収束するxの無限数列{xn}を作った場合に、その無限数列{xn}が点aに収束するのにともなってf(x) が値Cに収束することが、x→aで関数f(x)に極限値Cが存在するための基礎条件である。

(2)次に、点aに収束する全てのxの無限数列で、その無限数列で定義される関数f(x) の値が同じ値に収束することが、点aで関数f(x) が収束する(極限値が存在する)ことの基本的条件である。

 そう定義する理由は、関数f(x) によっては、点aに収束する各無限数列{xn}毎に、関数f(x) が異なる値Cに収束したり、収束しなかったりすることがあるからである。

(3)こうして、「変数xが限りなく点aに近づく」という極限の概念を、点aに収束するxの無限数列を使って数学的に定義した。そして、「変数xの極限の点aは、xの無限数列の集積点である」という結論が得られる。
(4)先の条件(2)は、「点aの近傍のどの実数に対してもf(x) の値が定義されていなければならない」という条件と、および、変数xがどのような無限数列で点aに収束する場合にも、関数f(x) が極限値Cに収束することとに同値である。
 すなわち、古典的(基礎的)微分積分学では、 点aが集積点であるとし、点aに収束する点xのどの無限数列においても関数f(x) が同じ値Cに収束することを、関数の極限値が存在する基本的条件とした。そして、その基本的条件を満足する関数の定義域Aは、aの近傍の全ての実数(区間)であると定義した。
そのことを、x→aのときf(x) の極限値がCである。
といい、次のように書く。


 そのように関数の極限Cを定義した上で、その収束する値C=f(a) になることを、点aで関数f(x) が連続であると定義した。

 連続関数の定義は、1817年にBolzanoが中間値の定理を証明する前提条件に定義した連続関数の定義により、歴史上初めて連続関数が正しく定義された(その定義は関数の連続性を区間で定義するものである)。

 日本の大学数学では、1817年にBolzanoが定義した連続関数を、「区間で連続な関数」と呼んでいる。

 関数の連続性に係る定理には、必ず「区間で連続な関数」という言葉が使われる。

(補足)
 高校数学の数Ⅲの教科書「数学Ⅲ Advanced」(東京書籍)では、1817年にBolzanoが正しく定義した連続関数を、以下のように正しく定義している。
「関数f(x) がある区間Iに属するすべての値xで連続であるとき、f(x) は区間Iで連続である。」

 関数f(x)の連続性は、x軸でのxの点毎に、各点の近傍に微小区間(xの点が連結している領域)を定めてその微小区間で関数の連続性を判定する。
 更に、x軸での所定の幅の広がりがある区間において、その区間内の全ての実数のxの点で関数f(x)が連続である場合に、その区間で定義された関数f(x)が連続関数であるという。

 下図の3つの区間で定義された3つの関数F1(x), F2(x), F3(x)が3つの連続関数です。
1つながりのグラフが1つの連続関数です。

【区間の定義】
「区間」という数学用語は、変数xの数直線上の1つの範囲内の、実数のすき間がなく連結している1かたまりの数の集合をあらわす数学用語である。「隙間が無い」大前提のために、連続性の公理を満足する実数の集合でなければならない。

 a, b を実数とする. a≦x≦b の実数xをすべて集めた集合を [a, b] と書き, これを閉区間と呼ぶ.
 a<x<b の実数xをすべて集めた集合を (a, b) と書き, これを開区間と呼ぶ.

 変数xの「区間」の大切な特徴は、「区間」は、所定の1かたまりのxの範囲内での隙間が無い全ての実数の集合が「区間」である。

【連続でない点】

y=f(x) ≡ 1/xは、x=0でグラフが途切れた関数です。
 関数の連続性は、x軸上の点毎に判定する。x軸上のx=0という点が存在します。その点で f(x) の値が無いので、x=0の点では関数 f(x) は連続ではない。x=0の点は、関数 f(x) が「連続でない点」と呼ぶ。

 連続関数とは、関数の定義域が実数の区間で連結していて、
その連結区間の点毎に関数の値域が連結することで、関数のグラフが1つながりに連結している関数の事である。


《連続関数の定義域の指定》
 連続関数は、関数の定義域が連結するために、所定の区間とセットにして定義される。
上図の y=f(x) であらわされたグラフは、X=0とX=2で不連続ですが、
0≦x≦2の閉区間 [0,2] で定義された関数 f(x) は連続関数です。

 高校数学で学ぶ初等関数はすべて、区間の全ての点で関数が連続な区間を選び、その区間とセットにして区間で連続な関数が作れる
例えば、

は、2つの区間(-∞,2)、(2,∞)で連続である。
すなわち、2つの、「区間で連続な関数」が作れる。
その個別の「区間で連続な関数」を単位にして微分積分を考える。

 このサイトでは、以降では、1817年にBolzanoが正しく定義した連続関数を、誤って定義された連続関数と区別するために、「区間で連続な関数」と呼ぶ。

《位相空間論に注意すること》
 大学数学で登場する現代数学の位相空間論に係わる関数f(x) の連続性の定義では、実数の区間に限定されない(例えば有理数を定義域とする)関数f(x) の、点aでの連続性が定義される。しかし、その関数f(x) は、積分可能ではない。また、その関数f(x) は、〔連続関数の定義の役割〕の第1の条件を満足していないから、千切れている。
また、位相空間論に係わる関数の極限の定義では、古典的(基礎的)微分積分学の変数xの極限に必須な条件の「変数xが限りなく近づく先の点aが、関数f(x) の定義域の変数xの集積点である」を否定して、集積点では無い孤立点aを変数xの極限にしている。
 そういう現代数学の位相空間論に係わる連続関数を学ぶ以前に、微分積分の基礎知識として、古典的(基礎的)微分積分学の極限の概念と連続関数(区間で連続な関数)の概念をしっかり学んでおく必要がある。
 区間で連続な関数の性質を、位相空間論では、「位相空間論に係わる関数の(値域の)連続性(関数が定義域で千切れていても良い)」と、関数の(定義域の)連結性、という2つの要素に分けて解析している。その位相空間論を理解する以前の基礎知識として、区間で連続な関数(千切れていない関数)の概念を学んでおく必要がある。

 大学数学で学ぶ位相空間論に係わる微分積分学を学ぶには、
「嶺幸太郎 著「微分積分学の試練」」を学ぶと良い。
 最近の大学数学の微分積分の講義は、微分積分を0から学び始めた初心者向けの古典的な(基礎的な)微分積分の概念は教えなくなっているようです。「微分積分の概念の正しい基礎は高校数学で学んで来たハズだから、大学では現代数学の位相空間論に係わる微分積分を教える」という大学の数学の講義の方針があるように思います。
(位相空間論に係わる微分積分学の教科書には、《杉浦光夫著「解析入門Ⅰ」》 https://bookmeter.com/books/4078 がある)
しかし、古典的な(基礎的な)微分積分の概念を知らずして位相空間論に係わる微分積分は理解できないと思います。 そういう状況なので、高校数学を学ぶ中で、古典的な(基礎的な)微分積分の概念を自力でしっかり学ぶしかないようです。
(古典的微分積分学の教科書には、《高木貞治著「増訂解析概論」》
https://linesegment.web.fc2.com/books/mathematics/zouteikaisekigairon/index.html がある)
(ここをクリックした先の大学では古典的(基礎的)微分積分学の知識から教えてくれます。)

《位相空間論の不連続点の意味》
 位相空間論が定義する「不連続点」は、古典的(基礎的)微分積分学が点と関数との関係によって点の性質を分類して与えた「不連続点」、とは異なる概念である。正しくは、位相空間論の「不連続点」とは、
「関数が位相空間論での不連続性を持つ関数の定義域の点」
を指す数学用語である。
 また、位相空間論の「連続点」とは、
「関数が位相空間論での連続性を持つ関数の定義域の点」
を指す数学用語である。
 古典的微分積分学で使っている数学用語と同じ言葉(連続点、不連続点)を使っていても、その元の概念とは異なる概念・対象を位相空間論で定義している。(例えば、極限点(集積点)ではない孤立点を「連続点」とする等、古典的微分積分学とは異なる対象を位相空間論が定義している)
(注意) 位相空間論の関数の連続性の定義から、「関数fがそもそも点aにおいて定義されていない場合、すなわちa∉定義域Aである場合、関数fは点aにおいて連続ではない」という結論になる。位相空間論の「不連続点」の定義はその結論とも整合しない。そのため、「不連続点」と呼ぶよりは「定義域における不連続点」と呼んだ方が良い。

《位相空間論に係わる微分積分学を見た感想》
 位相空間論に係わる微分積分学では、そもそも、点aでの関数f(x) の極限を定義する上での大前提の「点aが集積点であるときにのみ、点aでの関数f(x) の極限が定義できる」を否定している。すなわち、集積点でなければならないという条件を否定して「関数の連続性」を再構築した。「極限の概念から乖離して定義した位相空間論に係わる関数の連続性」の性質が不自然なのはあたり前なのだろう。現時点での位相空間論は、一旦捨てた「極限の概念」を必死に理論の中に取り戻そうとしている課程の途上にあるのだろう。

 古典的(基礎的)微分積分学は、位相空間の数の集合を実数全体にした上で、実数の区間を定義域とする関数f(x) の微分積分学である。しかし、「連続点」と「不連続点」の数学用語は、位相空間論と古典的微分積分学とでは異なる対象を指す言葉になっている。

リンク:
関数が連続であるとは
やさしい微分積分
連続関数の定義
連続性公理と実数を定義する3つの方法 (初学者向けの話)
関数の極限の定義
実数はどう定義される?|実数の連続性公理から理解する
コンパクトであれば有界な閉区間である
『増訂解析概論』高木 貞治 著の現代仮名遣い版
高校数学の目次

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