2017年7月24日月曜日

逆関数の微分の公式

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「微分・積分」の勉強

【逆関数の微分の公式の定義】
変数xのある連結区間の全ての実数xに対して定義されている関数:
という関数f(x)があるものとする。
また、その区間内の全ての実数の変数xで f(x)が微分可能であるものとする。
また、その区間内では、以下の条件:
を満足するものとする。
その場合は、その変数xの区間では、
関数f(x)は単調増加関数か単調減少関数になる。
そのため、その変数xを変数yの関数とする逆関数:
が存在する。
そして、そのxの区間での逆関数g(y)の微分を、関数f(x)の微分を用いて、以下の式:

で表す事ができる。
(注意)df(x)/dxは、有限の値である場合のみが定義されていて、無限大にはならない。そのため、この公式において、dg(y)/dy≠0の場合に限って公式が定義されている。すなわち、この公式は、f'(x)≠0とg'(y)≠0を前提にした公式である。


 また、先ず、関数f(x)=yとその逆関数g(y)=xを考え、その後で関数の微分の関係を考える場合には、下図のように、変数xのある値でf’(x)=0となる事もあり得る。
(そのように、f’(x)=0となる変数xの点での関数値f(x)=yの値yを変数値yの1つに持つ逆関数値g(y)=xもあり得る)

その場合は、その変数yの値に対応する関数g(y)の微分g'(y)の値が無限大に発散する。そのため、その点では、関数f(x)の微分f '(x)と関数g(y)の微分g'(y)の関係は定義できない。
(y=0で逆関数の微分の公式が定義できない逆関数g(y)の例)


(逆関数の例おわり)
 すなわち、下図の関数f(x)の集合の図に示すように、全ての点で逆関数の微分の公式が成り立つ関数の集合は、逆関数を持つ関数の集合の中の一部なのである。


恒等式の両辺を微分する演算》
 上の例の逆関数の式では:
x=g(y)
が成立している場合に、その式の両辺をxで微分した式:
1=dg(y)/dx
を求める計算をすることがある。
(ただし、y=f(x)の関数f(x)の逆関数x=g(y)が存在することが大前提である)
▷(演算結果の有効性の条件1:微分可能であること)
 両辺をxで微分する計算をする場合に、その結果得られた等式は、全ての項が微分可能な場合のみに、得られた等式が有効になる。
上記の例の等式の両辺を微分する場合は、
関数f(x)に逆関数g(y)があっても、逆関数g(y)が微分できない点(dy/dx=f '(x)=0となる点で、x=g(y)はyで微分できない)があるので、その点では右辺の項が微分可能ではない。その点では、得られた式は無効である。

▷(演算結果の有効性の条件2:元の等式の変数yに、xの関数f(x)を代入した等式 x=g(f(x))が恒等式になること。(「円の接線の公式を微分で導く」のページも参照

(変数xの恒等式ではない例)
例えば、
x=5,
という式の両辺をxで微分した式:
1=0,
は間違った式である。
この式は、元の式が変数xの恒等式ではなかったからである。そういう、変数xの恒等式ではない元の式の両辺を微分した式は、以上の式のように間違った式になる、無効な式である。
式の両辺を微分する計算には要注意。
(両辺の微分演算の前提条件おわり)

条件2(恒等式)については、
x=g(y),  (1)
の式の関数g(y)は、y=f(x)という関数の逆関数であって、変数 y にxの関数f(x)を代入すると、式1の右辺が恒等的にxになる場合に式(1)が変数xの恒等式とみなせる。
すなわち、式(1)のyにf(x)を代入した以下の式(2)の右辺も左辺と同じxになる。
x=g(f(x)),  (2)
例えば、先の例の関数f(x)及び逆関数g(y)では、前提条件をx≧0,y≧0,とした場合は、式(2)の右辺が以下のように変換される。

上記のように、x=xという、変数xの恒等式になる。
(これが成り立つ前提条件として、f(x)に対する逆関数g(y)が存在することが必須な条件である)
式(2)が変数xの恒等式ならば、その恒等式をxで微分した結果も1=1になり、その式は正しい式になる。
この式(2)の両辺をxで微分した結果、右辺の微分を合成関数の微分の公式であらわすと、以下の式(3)を得る。
1= g'(f(x))f '(x),  (3)
条件1(微分可能)については、
g(y)がyで微分可能であり、f(x)がxで微分可能である必要がある。
g(y)がyで微分可能である条件は、
f(x)の微分が0で無い
f'(x)≠0
となることが前提条件に必要である。
f(x)がxで微分可能である条件は、
g(y)の微分が0で無い
g'(y)≠0
となることが前提条件に必要である。
その2つの前提条件を満足する式が有効な式である。
例えば、
式(3)で、x=0において、f '(x)=0であっても、その場合に、逆関数g(y)がyで微分可能ではないので、x=0での式(3)は成立できず、無効である。そのため、x=0において式(3)から、
1=0,
という式が出て来ることはない。

 もっと具体的に、逆関数の微分の公式が成り立つ前提条件を、論理的帰結を組み込んで整理して記載すると、
「xの所定区間で、f(x)が微分可能であって、かつ、逆関数g(y)=xが存在してg(y)が変数yで微分可能である。そのために、f '(x)≠0 であること」
が前提条件に必要である。その結果、
「f(x)が狭義の単調増加関数であるか単調減少関数である。」
その前提条件によって、
「f(x)=yの値域もyの値が連結された区間になり、その区間の値域を定義域とする逆関数x=g(y)が狭義の単調関数であり、g(y)が微分可能でありg'(y)≠0である」
ということが前提条件に必要である。
 この前提条件(逆関数の微分の公式が成り立つ関数の限定範囲)を明示しないで記述された逆関数の微分の公式の説明にはごまかしがある。
 その前提条件の下で、式(3)の両辺が微分されて式(3)が得られる。そして、その式(3)を変形する事で、先の逆関数の微分の公式:

と、以下の形の逆関数の微分の公式とが成り立つ。


(逆関数の微分の公式の定義おわり)
 このように逆関数の微分の公式が成り立つための関数の条件は、この関数を使って関数を変換するならば、微分不可能な関数が微分可能な関数に変換することがない、節度のある関数の条件でもある。

(補足)
以下の関数f(x)で:
(df(x)/dx)=0となっているグラフの部分(y=0の部分)については、以下の逆関数g(y)のグラフの様に:
y=0となっているグラフの部分では、逆関数g(y)が存在しない。 そして、g(y)のy=0での右側極限と左側極限が一致しない。そのため、Δy→0の場合にΔx→0とはならない。
 一方、y=f(x)のグラフにおいて、(df(x)/dx)=0となるのは点だけであって幅のある区間ではそうならない、単調増加(又は単調減少)な関数f(x)には逆関数g(y)が存在する。
 (df(x)/dx)=0となる点で関数を切って分割してしまって、そのように分割した個々の関数毎に逆関数の微分の公式を考えれば良い。


【逆関数の微分の公式の証明】
 以下で、逆関数の微分の公式を、もう少し厳密に証明する。
(証明開始)
(1)先ず、逆関数の微分の公式の前提条件を明確にしておく。

(2)次に、逆関数の微分の公式が成り立ち得る、微分可能な逆関数を持つ、微分可能な関数f(x)の条件を明確にしておく。

で表せる、1つながりに連続な関数f(x)が微分可能((Δf(x)/Δx)の極限が有限の値になる)である場合であって、
その関数の微分が、
を満足する変数xの区間では、関数f(x)が単調増加か単調減少である。
その区間では、その変数xを変数yの関数と考えた逆関数
が存在する。
(3)そして、この種の逆関数x=g(y)をyで微分する式を求める。
y=f(x)がxで微分可能であるので、
Δyが以下の式であらわされる。
ここで、 Δy/Δx=Δf(x)/Δx≠0
なので、
Δy→0の場合に、Δx=Δy/(Δf(x)/Δx)→0になる。
(4)以上の前提条件が成り立つ場合に、以下の式が計算できる。Δy≡Δf(x)という関数を対象にしていて、また、逆関数のΔx≡Δg(y)という関数を対象にしていることをしっかり認識して計算する。(また、Δg(y)≡Δx≠0であることに注意する)


(証明おわり)

 こう考えれば逆関数の微分の公式が自然に証明できます。

上の公式は、下のグラフのように、逆関数は、元の関数に対して、直線y=xに関して対称なので、その傾きが元の関数の傾きに対して、対称な傾きである、逆数の値の傾きになる、
ということを意味している。

 ここで、逆関数の微分の公式の縛り(成立条件)である
「xのyによる微分が存在する(確定した有限値になる)」、 
という前提条件は、
「式を0で割り算する計算をしてはいけない」
という計算の縛りと同じ様な意味を持っています。

 すなわち、「微分可能」という前提条件は、
「0で割り算しない場合に限る」という前提条件 、
言いかえると、
「計算の違反が無い計算に限る」という前提条件、
を加えて微分の式を書くことです。

 そういう「万能の条件」を正しく組み込んで計算するならば、どの様な計算もできてしまいます。
その通りに、どの様な計算もできるのが、逆関数の微分の公式やその他の公式が成り立つ根拠だと考えます。

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