2020年12月24日木曜日

複素数平面で円周角の定理を示す

【課題】
 円周角の定理をあらわす以下の複素数平面の図を考えて、以下の式の形で円周角の定理があらわされることを計算して試してみましょう。

(注意) オイラーの定理「exp(iβ)=(cosβ+isinβ)」は、前提条件として使ってください。
この問題の目的はオイラーの定理を証明することでは無く、
(cosβ+isinβ)をexp(iβ)であらわした方が式が簡潔だからです。

【解答方針】
 図形の考察によって問題を解き、次に、「複素数と共役複素数の比が単位円上にある公式」を利用して、図形の考察で得た解をなぞって複素数の計算をします。
 
複素数と共役複素数の比が単位円上にある公式
 複素数αとそれに共役な複素数との比の値(複素数)は、以下の式のように、実数Φの媒介変数で表される、複素数平面の単位円上の点です。

(公式おわり)
この式は、「共役複素数の役割」のページで表した、複素数の単位ベクトルの偏角を−2倍にした単位ベクトルを表します。

【解答】
 図形の考察によって、ベクトル(zg)とベクトル(zh)の成す角βの2倍が、ベクトルgとベクトルhの成す角度になる事を知っています。
その図形の定理を複素数平面の計算の形で表します。
 それは、以下のように、複素数の偏角のみの性質を持つ単位ベクトルの式(共役複素数との比で表せる)で表します。

以上の計算によって、ベクトル(zg)とベクトル(zh)の成す角βの2倍を計算した結果が、ベクトルgとベクトルhの成す角度になった。
すなわち、ベクトルzの位置にかかわりなく一定の角度になり、円周角が一定である事を示した。
(解答おわり)

(補足)
 この問題は、図形の考察で問題が解け、その解を複素数の計算の形で示したものである。複素数の式を計算する前に図形問題の解を得ているからこそ、あたかも複素数の計算で解が得られたように解が表現できた事に注意すること。
 すなわち、先ず、円の中心からのベクトルを使った図形の考察で円周角の定理が証明できたからこそ、円の中心を原点にした複素数で問題をあらわした。
 また、円周角の2倍がベクトルgとベクトルhの成す角であるからこそ、円周角の2倍の角度が得られる複素数の式を記述して式を計算した。その式の答えが(g/h)になるハズだから、
(g/h)とその他の項の積で式を記述し、その他の式が1になるまで式を変形しただけである
 そうせずに、複素数平面の複素数の計算式をただ変形するだけの試行錯誤の計算の道を進むことで円周角の定理を証明しようと、計算の見通しが悪く、計算の森で迷子になってしまう事が多く、そのやり方で円周角の定理を証明しようとするのはとても難しい。
 このように、(1)どの複素数で問題を記述するべきかの知識や、(2)どの式を計算に使うべきか、そして、(3)どの様に計算を進めるべきであるかの知識は、図形の考察によって先行して与えられている。複素数の計算よりも図形の考察の方が視野が広く融通性があり、常に先行するものである。
 複素数平面の複素数の式の計算は、その図形の、補助線を引いて図形の性質を導き出す考察プロセスを、複素数の加減乗除を計算するという抽象化したプロセスで表現しているだけと解釈でき、問題の答えを導き出す発想の源泉は、図形の考察から生み出される。

リンク:
ベクトルの内積で円周角の定理を確認する
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2020年12月19日土曜日

複素数と共役複素数の比が単位円上にある公式

複素数αとそれに共役な複素数との比の値(複素数)は、以下の式のように、実数Φの媒介変数で表される、複素数平面の単位円上の点です。

この式は、「共役複素数の役割」のページで表した、複素数の単位ベクトルの偏角を−2倍にした単位ベクトルを表します。

【問1】

複素数平面上の原点以外の相異なる2点P(α),Q(β)を考える。
P(α),Q(β)を通る直線をm,原点から直線mに引いた垂線と直線mとの交点をR(w)とする。
(wは点Rを表す複素数である)
このとき、
「w=αβであるための必要十分条件は,P(α),Q(β)が中心A(1/2),半径(1/2)の円周上にあることである。」
を示せ。
(2000年:東京大学)

【注意】
以下の解答例は、上記の公式の適用例とするために、このページに記載します。
この問題を自力で解きたい人は、以下を見ずに自力で問題を解いた後で、このページに戻って来てください。

【解答例】
原点Oから直線mへ下した垂線の足Rの複素数wは、
垂線の足までの複素数のベクトルの公式によって、
以下の式で表せる。

(解答には、wがこの式で表される根拠をもう少し詳しく書いてください)
そのため、w=αβの場合に以下の式が成り立つ。


(ここで、θとΦは、上記の公式によって導入した実数のパラメータです。)
この式によって、βは、中心A(1/2),半径(1/2)の円周上にある。

 同様にして、αも、中心A(1/2),半径(1/2)の円周上にある。
 
 この解答の続き:
逆に、「αとβが、中心A(1/2),半径(1/2)の円周上にある場合にw=αβが成り立つ」事は、
各自で証明してください。

リンク:
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2020年12月5日土曜日

さいころの目で作る直線の方程式

以下の問題は、注意深く数えあげないと答えを間違え易い問題です。
【問1】

1個のさいころを3回なげる。そのさいころの目の数を順にa,b,cとする。
そのさいころの目の数を使って直線の方程式:
ax+by=c,
を作る。
この直線の方程式は、係数をk倍した直線の方程式:
akx+bky=ck,
と同じになります。
k≠1とした係数ak,bk,ckがさいころの目には当てはまらない場合の確率を求めよ。

この問題の解答はここをクリックした先にあります。

リンク:
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2020年11月30日月曜日

ベクトルの外積同士の内積の公式

【ベクトルの外積同士の内積の公式の証明(その1)】
ベクトルの外積同士の内積を変換する以下の公式があります。
(公式の証明(その1)おわり)
 この式1の公式は、以下の計算のように、2つのベクトルa,bの外積の大きさが、その2つのベクトルa,bの大きさの積と、ベクトルaとbの成す角θのsin(θ)との積であるという公式を満足する。
この計算によって、式1が検算できる。

《べクトルの外積同士の内積の公式の証明(その2)》

 この公式は、以下の様にして段階的に証明することができます。
先ず、以下の図の様に、XYZの3次元座標系の各座標軸方向の単位ベクトルX,Y,Zを考える。

この座標系で、以下の式が成り立つ。

この式が成り立つので、この式の対称性を守ってXYZを交換した以下の式も成り立つ。

これらの式が成り立つので、以下の式が成り立つ。

この式が成り立つので、この式の対称性を守ってXYZを交換した以下の式も成り立つ。

これらの式が成り立つので、以下の式が成り立つ。

この式が成り立つので、この式の対称性を守ってXYZを交換した以下の式も成り立つ。

これらの式が成り立つので、以下の式が成り立つ。

(公式の証明(その2)おわり)


《ベクトルの外積同士の内積の公式の証明(その3)》
この公式は、ベクトルhを用いて以下の様に計算して証明することもできます。


下図のように、ベクトルAとベクトルBの外積を単位ベクトルhを使って表し、直交ベクトル系hとaとavを定義する。


そして、公式の左辺の式を、以下の様にベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルaとベクトルavであらわして計算する。


次に、公式の右辺の式を、ベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルAとベクトルBであらわして計算する。

式11と式12の値が等しいので、以下の式が成り立つ。

(公式の証明(その3)おわり)

【公式の証明(その4)】
その3の証明とほとんど同じ証明ですが、以下の形の計算を行って証明することができます。
(1)ベクトルAの方向の単位ベクトルをベクトルXとする。
(2)ベクトルAとベクトルBの張る平面上のベクトルで、ベクトルAに垂直な単位ベクトルをベクトルYとする。
(3)ベクトルXとベクトルYの外積をベクトルZとする。ベクトルZは単位ベクトルになる。
直交ベクトル系、X,Y,Zで、ベクトルA,B,C,Dが以下の図のように表せる。

このとき、以下の式1が成り立つ。

また、以下の式2が成り立つ。

式1の値と式2の値が等しいので式3の関係が成り立つ。

(公式の証明(その4)おわり)

(補足)
 外積したベクトルは、外積の形のままであらわした式の方が基本的な式になるように思います。
 2次元ベクトルでは、2次元ベクトルaとbを90度回転したベクトルaとbをベクトルaとbで表すよりも、ベクトルaとbのみで単純に表す方が優れた表現でした。
 それと同様に、3次元ベクトルa,b,cでも、3次元ベクトルの外積をベクトルaとbとcで表すよりも、外積の形のままの式を使って計算する方が良いように思います。
その外積の形の式同士の内積は、「ベクトルの外積同士の内積の公式」を使って、ベクトルa,b,cの単純な内積であらわせますので、問題無いと思います。
 
 実際、ベクトルの外積同士の内積の公式(式1)の第3の証明においても、2つのベクトルの外積を、そのままの形で1つのベクトルhと考えて計算を進めて証明できました。

また、「ベクトルの外積の3重積の公式」のページの、【ベクトルの外積同士の内積の公式】に、アインシュタインの縮約記法を使った、この公式の証明方法が書いてあります。

空間ベクトルの外積の公式は、ここをクリックした先のサイトのページが参考になります。


リンク:

2020年11月4日水曜日

センター試験向け数学の勉強をすると二次試験の問題が解けなくなる




以下のサイトがあります。
【二次試験の数学ができない】不合格圏の人の逆転勉強法

 そもそも二次試験の数学とセンター数学で求められている力は違います。
 二次試験の数学で高得点を取りたいのに、センター数学で求められている能力を伸ばしても全く意味がないわけです。

《センター試験で求められる力》
①誘導に乗る力
②誘導から逸れたら軌道修正する力

《二次試験数学で求められる力》
①解答の流れを自分で作り出す力
②計算が途中で間違っていると気がつく力
③部分点をもぎとる力

《二次試験の数学ができない人の共通点》
  二次試験が苦手な人に共通する特徴は、わからない問題をすぐに丸暗記する点です。
 というのも、解答という完璧な答案を丸暗記しても、
二次試験で求められる力が一切つかないからです。

 共通テスト=センター試験の点数が高すぎる人は、(その人の大学での成績との相関関係から)それは、数学センスが無い証拠だと判定されるかもしれない。「共通テストの点数が高いと大学入試の総合評価が悪くなる」ぐらいに考えて、共通テストの成績を上げ過ぎないようにした方が良いだろうとも思います。

《共通テストの問題の解き方》
 共通テスト向けの「勉強?」は、数学の基本的問題の解き方の形を崩すので、数学の力を低下させていくと思います。
 共通テストの問題の解き方も、数学の基本の形に合わせて問題を解く方が計算ミスが少なく解けると思います。

 共通テストというのは計算用紙が配布されない、
おかしい試験です。
 数学的センスのある人にはとても嫌われる形の試験と思います。

 共通テストは、計算用紙が使えない結果、解答者自身が計算を進める正しい数学の解き方を止めさせます。そして、共通テストの問題用紙の式に数値を書き加えた見ずらい式を解答者が見て計算を進めるような(計算が遅く、ミスも多くなる)解き方に計算パターンを変えさせる誘導をしています。共通テストは、そのようなミスが多い解き方に受験者を誘導することによって、共通テストの平均点が下がるようにしています。そういうテストは、受験者の数学の力を測るテストとは到底言い難いテストだと思います。

 計算用紙が無いので、問題用紙のスペースを計算用紙として使って計算します。
 その際に、大きな字で計算式を書き込むようにしてください。
 以下のタイプのセンター試験の計算問題は、以下のように、なるべく広い空きスペースを使って計算するようにしましょう。
 その際に分断された計算式は、線で結んで、スペースの島から遠くの島まで自由に計算式が行き来できるようにしましょう。
 スペースが無くても、計算式の字は大きな字で書きましょう。
計算式の続きを別のページに飛んで行って行なわせるときは、ジャンプ点の番号①、②等の目印で別のページの計算式と結びつけましょう。

 以下のセンター試験の計算問題があります。 



この問題は、先ず、問題を以下の図に写し取る。
この図を見るだけで、もはや問題の文章を読まないでも問題が把握できるようになります。
「問題をやさしくする」ことが問題を解く秘訣ですが、
その第1歩が、問題文を図に書き写すことで、問題文を読み直す作業を無くして問題をやさしくすることです。


 共通テストの問題用紙の計算式を見ながら自分の計算を進めると自分の計算のリズムが乱れます。そのため、そうせずに計算します。
 すなわち、
以下の様に計算式を全て計算用紙(問題用紙)に書いて、その自分で書いた計算式を見て計算する。そうすれば、計算ミスが少なく速く問題を解くことができます。
(計算用紙が配布されないので、問題用紙の空きスペースに書きます)


(ⅰ)
(ⅱ)





(式の左右に共通項が掛かっているときは、共通項を早めに割り算して無くすとミスが少なくなる)







このように計算した、3点を通る放物線の式を求める式は連立方程式を解くことで放物線の式を求めます。しかし、連立方程式は、計算ミスし易いので、連立する式の数が少ない方が良い。
 以下で、連立する式の数を減らす、微分を利用する方法を説明します。


放物線の点の傾きΔy’は、その点のx座標がΔxずれると以下の式のようにずれる。

また、上図の放物線で、線分OPと同じ傾きの放物線上の点のx座標は、線分OPの中点のx座標であることがわかっている(覚えておいてください)。
 そのため、以下の式が成り立つ。


これでtの値がわかったので、このtの値を放物線の点Qでの式に代入して放物線の式を以下のように求める。


「共テ数学が全く得点できません」
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10291367635
のページの質問者のコメントが参考になります。

「先ほど回答者様のおっしゃっている、問題を見て進めるのではなく自身で計算を進めるようにして先ほど解いてみたのですが、

2021の第1日程がIA88/100、
ⅡB89/100になりました!!!

前回やったのが2022だったのもあってか、驚くほど点数伸びました。
共テのペースに足掬われてただけみたいです。
これで何とかなりそうです本当にありがとうございました!」

リンク:
計算ミス対策:センター試験の計算問題(2)
高校数学の目次