2021年4月25日日曜日

複数の玉を同時に取り出す確率の問題とコンビネーションを用いて良い定理

〔ページ内リンク〕
▷複数の玉を同時に取り出す確率
▷コンビネーション(組み合わせ)を用いて良い定理

《複数の玉を同時に取り出す確率》

【問題1】
 白玉が5個、赤玉が3個入った袋の中から、玉を同時に2個取り出す。白玉と赤玉を1個ずつ取り出す確率を求めよ。

【注意】
 以下の解答は、この問題を例にして、複数の玉を同時に取り出す問題の解き方の例を詳しく解説する事を目的として、このページに書いたものです。
 そのため、先ずこの問題を自力で解いてみたい人は、以下の解答を見ずに問題を解いてから、このページに戻って来てください。

【複数の玉を同時に取り出す操作の意味】
 この問題で、2つの玉を同時に取り出す操作がどのように行なわれるかを考えます。
完全に同時に取り出す操作は、以下の様にして実現できると考えます。
 あらかじめ2つの玉を選んで準備しておいて、「その2つの玉を取り出す指令」を出します。その指令が発令された時刻が2つの玉を同時に取り出す時刻です。
 それでは、あらかじめ2つの玉を選んでおく操作はどうすれば実現するかを考えます。
 2つの玉を選ぶという事は、当然な事ですが、選ばれる玉が、同じ玉を2回選ぶのでは無く、異なる2つの玉を選ぶ必要があります。

 1つの選定方法は:
 他の玉に何が選ばれているかという情報無しに、同時にもう1つの玉を選んでしまうと、同じ玉が重ねて選ばれてしまいます。
 そのため、2つの玉を区別して異なる玉を選ぶために、先ず、1つの玉を選び、
 次に、その選ばれた玉が何であったかの情報を使って、その玉以外の残った玉から、もう1つの玉を選びます。
 これによって、同じ玉が重ねて選ばれる事が無く、異なる2つの玉を選ぶ事ができます。
 この作業によって、最終的に、白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ確率が、同時に白玉と赤玉を1個ずつ取り出す確率になります。
 この操作による2つの玉の選定作業は、順番に玉を選ぶ作業です。この操作によって2つの玉を選定する確率が、求める確率になります。

 2つ目の「同時に2つ選ぶ」玉の選定方法は:
 全部の玉を、両端に玉の出口があるパイプに入れて、そのパイプを回転させてパイプの両端に遠心力によって出て来る玉を選ぶことで「同時に2つ選ぶ」方法があります。
(このパイプは、玉の出口の両端以外では直径が太くてパイプの中で玉の順番を入れ替えて玉が混ぜられるパイプとする。そのパイプの中で玉を十分に混ぜた後で両端から玉を取り出す。)
その場合は、パイプの左端にある玉を1つ目の玉と名付け、パイプの右端にある玉を2つ目の玉と名付ける。

【解答】
2つの玉を選定する作業によって:
(1)
1つ目の玉に白玉を選び、2つ目の玉に赤玉を選ぶ確率=


(2)
1つ目の玉に赤玉を選び、2つ目の玉に白玉を選ぶ確率=


(集計)
  結局、白玉1つと赤玉1つを同時に取り出す確率は、上の2つの場合を合わせた確率であり、


です。
(解答おわり)

【別解】
 上の解答の論理が正しい事を確認するために、この問題を別の視点から見て解きます。
 白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ場合の確率は、
同じように確からしい事象の数の比で求められます。
 8つの玉から2つの玉を選ぶ、同じように確からしい場合の数は、


個あります。
 そのうち、白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ場合の数は、


個あります。
 そのため、
白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ場合の確率は、白玉と赤玉を1個ずつ選ぶ場合の数を8つの玉から2つの玉を選ぶ場合の数で割り算した数であり、


で求められます。
(解答おわり)

別解でも同じ答えになった。

「同時に取り出して」
という言葉は、2つの玉を取り出す玉同士の取り出す時間差、あるいは、2つの玉を選ぶ玉同士の、選ぶ時間差が僅かにあって、「同時にとりだした」と言っても、その時間差が大きくなった場合と確率が同じになり、結局、
「順番に2回選ぶ」のと同じ確率が計算される。

すなわち、
時間差があるので、「元に戻さず2回とる」
というのと確率が同じになると考えて解きます。

 結論を言うと、時間差が必ずあると考えても、同時に取り出すと考えて計算しても、同じ結論、同じ確率が計算されます。そのため、時間差があると考えて計算するのが正しいのです。更に言うと、物理学の相対性原理では、異なる位置の間の時刻の差は、一定速度で運動する慣性系毎に異なって観測される。そのため、絶対的な同時刻というものは有り得ないということが分かっている。

 順番を考えない組み合わせの数を考えるというのは発想がしにくいものです。特に、事象の連鎖の概念を使って問題を解こうとする場合には、事象の連鎖では事象の順番を考えるので、事象の連鎖の概念が使いにくいです。同時に発生する事象は、「順番」に発生する事象であると考えて良いので、事象の連鎖の表現を使って問題を解き易くできる。(樹形図の基本ルール(その2)参照)

 以下では、同時に取り出す、(と言うよりも、取り出す時刻をあいまいにして同時とみなして計算する方法を考えます。その計算方法であっても、結局は、時間差を持って玉を確認するという操作によって時間差が導入されることを示します。

 例えば、パイプの両端にある玉を取り出すことによって「取り出す時刻をあいまいにすることで、同時に取り出すように見える」操作をする場合を考えます。
 そのように「同時に取り出すとみなす」操作をする場合も、同時に2つ取り出した後で、以下で考えるように、その2つの玉が何であったかを時間差を持って順番に1つずつ玉を見て確認することを考えると、「同時に取り出す」ことが「順番に取り出す」ことと等価になることが理解できると考えます。

(研究課題)
 特に、全部の玉を両端に玉の出口があるパイプに入れてパイプの中で玉を十分に混ぜた後で、パイプを回転させる遠心力でパイプの両端の出口に玉を寄せる。そのパイプの両端の玉が白玉と赤玉になる確率を計算する場合は、別解の方法で考えた方が解き方が分かり易い。
 そして面白い研究課題として、パイプの左端の玉が白になり、右端の玉が赤になる確率が、


というように、左端の玉が白になる確率の次に右端の玉が赤になる確率を計算して両者の積で求められる。その計算では、右端の玉が赤になる確率は、左端の玉が白である条件の下に右端の玉が赤になる「条件付き確率」を計算する必要がある事が、この計算式から顕わに見える。一方で、パイプの左端と右端とは等価であって、どちらの端の確率を先に計算しても良いとも考える。

「2つ同時に取り出して」白玉と赤玉を得る確率の問題は、
取り出した2つの玉それぞれを、第1の玉、第2の玉、と名付けて玉を把握でき、以下の樹形図で表せる。その第1の玉と第2の玉の区別の実体は、以下のように考えられる。
 すなわち、袋から同時に2つの玉を取り出した後で、その2つの玉が何であったかを確認するために順番に玉を見る。その見る順番が2つの玉の区別であると考える。


『上図の樹形図は「樹形図の基本ルール」に従って、事象の連鎖の糸(太さ1s)を束ねて枝を作る。樹形図を横断する枝の太さの総和は事象の連鎖の糸の総数であり常に一定の太さ(56s)である。また、第1の玉が赤である糸が21本ある一方、第2の玉が赤である糸も21本あり、第1の玉と第2の玉のバラエティが同じという特徴がある。』
 「2つ同時に取り出して」白玉と赤玉を得る確率の問題は、上の樹形図から読み取れる:
(1)第1の玉が白になる確率に、第1の玉とは異なる第2の玉が赤になる条件付き確率を掛け算して得た確率と、
(2)第1の玉が赤になる確率に、第1の玉とは異なる第2の玉が白になる条件付き確率を掛け算して得た確率と、
の2つを足し算して確率が計算できる。

《玉を順番に取り出す場合》
 また、玉を順番に取り出す問題の場合でも、上の樹形図で、第1の玉が何か(例えば白)である確率に、その第1の玉の場合において第2の玉が何か(例えば赤)になる条件付き確率を計算する。その確率が、第1の玉を先に取り出した後に第2の玉を取り出す確率を計算することであると考えて確率が計算できる。

 更に、上図の樹形図が表す取り出した玉を見る順番が、玉を取り出す順番とは逆の場合は、上図の樹形図は、第2の玉を先に取り出した後に第1の玉を取り出す確率の問題の樹形図になります。
 樹形図は、事象の連鎖の糸を自由に枝に束ねて、しかも事象の発生順に従う必要も無く、再編成して樹形図を書くことができる自由があるからです。
 そのため、「玉を順番に取り出す問題の確率の答えは、その玉の取り出し順を逆にした問題の確率の答えと同じになる定理」も成り立っています。

 この定理は、確率の《くじ引きの公平性》の定理と同様な性格を持つ定理です。

《玉の取り出し順に係わらず玉を取り出す確率が同じである原理》
【問題】
 玉1、玉2、玉3が入っている袋から、
1回目に玉を取り出して玉を戻さずに2回目に玉を取り出す場合に、2回目に玉1を取り出す確率を求める。

【解答】
(1回目の玉,2回目の玉)の事象を連鎖を全て書く。
(1,2)
(1,3)
(2,1)
(2,3)
(3,1)
(3,2)
この6つの事象の連鎖が同様に起こり得る事象の連鎖である。
1回目に玉1を取り出す確率=2/6
である。

この6つの事象の連鎖は以下の順に並べ替えることができる。
(2,1)
(3,1)
(1,2)
(3,2)
(1,3)
(2,3)
2回目に玉1を取り出す確率=2/6
である。

すなわち、事象の連鎖を並べる順を並べ替えて考えると、
1回目に玉1を取り出す確率=2回目に玉1を取り出す確率
が成り立っている。玉の取り出し順に係わらず玉を取り出す確率が同じであることがわかる。

《確率の解法にコンビネーション(組み合わせ)を用いて良い定理》

【問題2】
 赤玉が4個、白玉が5個入った袋の中から、玉を順番に2個取り出す。その2個のどちらも赤玉である確率を求めよ。
(問題おわり)

 この問題2を例にして、コンビネーション(組み合わせ)を用いて解く解き方を詳しく解説します。

【解答方針】
 赤1,赤2,赤3,赤4, 白1,白2,白3,白4,白5の合わせて9個の玉から2個取りだしてどちらも赤である確率を求める。
1番目の玉が赤である確率

そうして赤玉を取り出してしまったら、
2番目の玉が赤である確率
=(残った赤玉の数)/(残った玉の数)


よって、1番目の玉が赤であり、2番目の玉が赤である確率


これが求める解ですが、この計算式を変形してみます。


です。
 この式の右辺は、

です。
 すなわち、
赤1,赤2,赤3,赤4, 白1,白2,白3,白4,白5の合わせて9個の玉から2個取りだしてどちらも赤である確率
=(順番に2個の赤玉を取り出す場合の数)/(順番に2個の玉を取り出すあらゆる場合の数),
という場合の数の比で求める確率が計算できます。

ここで、
(順番に2個の赤玉を取り出す場合の数)から、順番のバラエティをなくした数が、であり、

です。
(順番に2個の玉を取り出すあらゆる場合の数)から、順番のバラエティをなくした数が、であり、

です。
2個の順番のバラエティをなくすには、いずれの場合も 2! で割り算すれば良いのです。

分母も分子も同じ2! で割り算するのですから、

=(2個の赤玉を選ぶ場合の数)/(全体から2個の玉を選ぶ数)
になります。
 すなわち、
赤1,赤2,赤3,赤4, 白1,白2,白3,白4,白5の合わせて9個の玉から2個取りだしてどちらも赤である確率
=(2個の赤玉を選ぶ場合の数)/(全体から2個の玉を選ぶ数)

という、組合せの数の比で求める確率が計算できます。

この計算で分かったこととして、
  確率を、玉を選ぶ組合せの数の比だけで計算して良いという定理(コンビネーションを用いて良い定理)が成り立ちます。
 すなわち、「玉を順番に取り出す確率の問題」は、「玉を同時に(順番を考えずに)取り出す確率の問題」と等価であると考えて解いても良いことになります。


【問題3】
 白球が2個、赤球が3個入った袋の中から、球を順番に2個取り出す。白球と赤球を1個ずつ取り出す確率を求めよ。
(問題おわり)

 更に、問題3も例にして、コンビネーション(組み合わせ)を用いて解く解き方を詳しく解説します。

【解答方針】
 あらゆる取り出し方の組み合わせの数は、
与えられた球の群れの中で、選ばれた球の群を作り、
選ばれた球の群の各メンバーにあらゆる並び方をさせた数です。

3個ある赤球の中から1個取って、2個ある白球から1個取って作った球の群れの作り方の組み合わせの数は、

です。
その2個の群の球の群れのメンバーにあらゆる並び方をさせる場合の数は、

です。

一方で、
5個ある球から2個の球の群れを作るあらゆる球の群れの作り方の組み合わせの数は、

です。
その2個の群の球の群れのメンバーにあらゆる並び方をさせる場合の数は、

です。このように考えて導き出したこの式は、白球2個と赤球3個を合わせた異なる5個の球を順番に2個取り出すあらゆる場合の数=5×4と同じ式です。

3個ある赤球の中から1個取って、2個ある白球から1個取って作った球の群れのあらゆる並び方をさせる場合の数を、
5個ある球から2個の球の群れを作った球の群れのあらゆる並び方をさせる場合の数で割り算すると、

になります。これが、求める確率です。あとは、この式を詳しく計算するだけで良いです。この計算において:
2個の球にあらゆる並び方をさせる数(2!)が共通項としてあるので、
その共通項が約分されて消えました。


という計算式は、
3個ある赤玉の中から1個取って、2個ある白玉から1個取って作った球の群れの数を、
5個ある球から2個の球の群れを作った球の群れの数、
で割り算する式です。

この計算で分かったこととして、2個の球にあらゆる並び方をさせる数(2!)の共通項が約分されて消えるので、
 確率を、球の群れの組合せの数の計算だけで(その球の取り出し順の順列の数の計算は省いて)、球の群れの組合せの数の比だけで計算して良いという定理(コンビネーションを用いて良い定理)が成り立ちます。
 すなわち、「球を順番に取り出す確率の問題」は、「球を同時に(順番を考えずに)取り出す確率の問題」と等価であると考えて解いても良いことになります。

《コンビネーションの確率を順列の確率に対応させる定理》

という式で選ばれた玉の組合せの比の確率は、
以下の式により、5つの玉のうち、選ばれた3つの玉のあらゆる順列(玉の並びの順)の確率に変換できる定理が成り立つ。

すなわち、この式は、分子の組合せに限定して選ばれた2+1=3個の玉のあらゆる並び方の順列の、5個のうちの3個の玉のあらゆる並び方の順列との比で表される確率をあらわす。
 言い換えると、「分子があらわす組合せに限定して選ばれた2+1=3個のあらゆる並び方の確率をあらわす」定理が成り立つ。

リンク:
複数のサイコロを同時に投げる問題は、そのサイコロを順番に投げる問題と等価である
くじ引きの公平性
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2021年4月17日土曜日

部分集合の概念の問題点

【部分集合の定義】
「集合 A の要素が全て集合 B の要素になっている」とき、つまり A⊂B のとき、集合 A は集合 B の部分集合(subset) といいます。

 少し変な書き方ですが A⊂A が成り立ちます。 A の要素は、すべて A に属しているからです。
(部分集合の定義おわり)

【部分集合の定義(集合の包含関係による)】
定義 1.5 (集合の包含関係)
元を1つも含まない集合を空集合(empty set)といい, X=Φと表記する.
集合 XとYに含まれる元が全て等しいとき X=Yと表記する.X=Yではないとき X≠Yと書く.
Xに含まれる全ての元(Xが1つ以上の元を持つ場合)がYに含まれるとき(あるいは、Xが元を持たない場合も), Yは Xを含む(contain), または,XはYの部分集合(subset)といい,X⊂Yと表記する.X ⊂Y ではないとき X ⊄ Yと書く.

注意 1.6 (真部分集合) X⊂Yは定義より X=Yの意味も含む.X⊂Y でありかつ X≠Yのときは, XはYの真部分集合(proper subset)という. 書物によっては部分集合に を用い, 真部分集合に ⊂を用いる場合もあるので注意が必要である.

(補足)
ある集合Bとある集合Cが共通の元を持たない場合、
B∩C=Φ,
という集合Φ(空集合)を定義する.

いかなる集合BとCに対しても、
(B∩C)⊂B,
が成り立つものとして、集合の包含関係を定義する.

空集合ではないどの集合Bに対しても、共通の元を持たない集合Cが存在する。(少なくとも集合Φは集合Bと共通の元を持たない)
その場合に、
B∩C=Φ,

B∩C=Φ,
の場合も、
(B∩C)⊂B,
∴ Φ⊂B,

 先の、2つの、部分集合の定義がおかしいと思う。以下のように定義しないといけないと思う。
【部分集合の正しい定義】
全ての集合の元xに対して、
「その元xが集合Aに含まれる場合に、元xが集合Bに含まれる」
が成り立っているならば、
集合Bは 集合Aを含む(contain), または,集合Aは集合Bの部分集合(subset)といい,A⊂Bと表記する.
(部分集合の定義おわり)

《補足》
 命題の前提条件を何にするかによって、命題の対偶の表現も変わってくる。そのため、命題の前提条件を何にするかが大事である。

部分集合の関係「 A⊂B」とは:
「 全ての集合の元xに対して: x∈Aが成り立つならば ⟹ x∈B 」
それを言い換えると:
「全ての集合の元xに対して: (x∉A)または (x∈B)である」
これがどのような元xを持つ集合Bに対しても成り立つ集合Aとは、
「全ての集合の元xに対して: (x∉A)」
となる集合であり、
集合A=Φ(空集合)
がそれに該当する。
よって、
Φ(空集合)は、どのような集合Bに対しても
Φ⊂B
が成り立つ。

集合{1,2}
の部分集合を全て挙げると、
{1}
{2}
{1,2}
{}=Φ 空集合
という、
4つの部分集合があります。

《部分集合の集合》
部分集合の集合は、
上記の全ての集合を要素にした、集合の集合です。

【空集合の部分集合と、部分集合の集合】
例えば1個のリンゴ(リンゴa)の集合は、
{リンゴa}
ですが、
0個のリンゴの集合は、
{}=Φ 空集合です。
{}=Φ 空集合
の部分集合は
{}=Φだけです。
それ自身と同じです。

その(1つの)部分集合の集合(A集合と名付ける)は:
{{}}={Φ}
です。

A集合の部分集合は、
{{}}={Φ}と、
{}=Φ
との2つです。
ここで、
集合{Φ}は、Φという集合を1つの要素として持ちますが、
集合{}=Φは要素を1つも持ちません。
A集合の部分集合の集合(B集合と名付ける)は:
{{Φ},Φ}
です。

B集合の部分集合は、
{}=Φ,
{Φ}
{{Φ}}
{Φ,{Φ}}
との4つです。
B集合の部分集合の集合(C集合と名付ける)は:
{ Φ,{Φ},{{Φ}},{Φ,{Φ}} }
です。

この様に、「部分集合」を作ると、要素が何も無いところから、
空集合=Φという1つの集合という1つの要素を生みだします。
その空集合=Φは、しっかりと1つと数えられる要素になります。

この様に、「部分集合」を作る操作は、要素が何も無いところから、空集合=Φという1つの要素を生み出して、それを1つの要素とする(要素が1つは有る)集合を生み出すという循環を生じるので要注意です。

「偶数でもあり、奇数でもある数の集合」=空集合Φ,
です。
こう言ってしまうと、偶数でもあり、奇数でもある数が存在するかの印象を受けますが、そうでは無く、「空集合」と言った時点で、「あり得ない事」と判断すべきなのです。
あらゆる「あり得ない事象」を、空集合Φという表現手段を用いて表す事ができます。

例えば、
集合{1,2}
の部分集合には、 {}=Φ 空集合
がありましたが、
空集合は、「あり得ない事の集合」です。
「部分集合」の集合は、
「あり得ない事の集合」
を部分に含むという意味で、
「あり得ない事」を排除していないので、
問題の解をもつれさせて、単純な解を求めるのとは逆の方向に論理を進める事もできる手段と言えます。

集合{ {1},{2},{1,2},Φ }
の部分集合を全て挙げると、
{}=Φ
{{1}}
{{2}}
{{1,2}}
{Φ}
{{1},{2}}
{{1},{1,2}}
{{1},Φ}
{{2},{1,2}}
{{2},Φ}
{{1,2},Φ}
{ {2},{1,2},Φ }
{ {1},{1,2},Φ }
{ {1},{2},Φ }
{ {1},{2},{1,2}}
{ {1},{2},{1,2},Φ }
との16個の部分集合があります。

空集合Φに係る集合を全部排除して問題を記述すると、以下の様に、問題の解がスッキリします。
集合{ {1},{2},{1,2} }
の、空集合Φ以外の部分集合を全て挙げると、
{{1}}
{{2}}
{{1,2}}
{{1},{2}}
{{1},{1,2}}
{{2},{1,2}}
{ {1},{2},{1,2}}
との7つの集合のみになって、解がスッキリします。
「部分集合」の集合を使って問題を解く場合は、「部分集合」から空集合を除外した集合を考えると、それは、問題を解くために使いものになる手段になると思います。

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2021年3月5日金曜日

内角が二等分される点の軌跡

【問1】
原点をOとするxy平面上に点A(-2,0)と点B(1,0)がある。∠OPA=∠OPBを満たす点Pの軌跡を求めよ。(ただし、∠OPA=0の場合も含めること)



【注意】この問題の解答には注意を要します。その注意点を書いたので、この問題を自力で解いた後で、ここをクリックした先の解答も読んでください。

リンク:
高校数学の目次

2020年12月24日木曜日

複素数平面で円周角の定理を示す

【課題】
 円周角の定理をあらわす以下の複素数平面の図を考えて、以下の式の形で円周角の定理があらわされることを計算して試してみましょう。

(注意) オイラーの定理「exp(iβ)=(cosβ+isinβ)」は、前提条件として使ってください。
この問題の目的はオイラーの定理を証明することでは無く、
(cosβ+isinβ)をexp(iβ)であらわした方が式が簡潔だからです。

【解答方針】
 図形の考察によって問題を解き、次に、「複素数と共役複素数の比が単位円上にある公式」を利用して、図形の考察で得た解をなぞって複素数の計算をします。
 
複素数と共役複素数の比が単位円上にある公式
 複素数αとそれに共役な複素数との比の値(複素数)は、以下の式のように、実数Φの媒介変数で表される、複素数平面の単位円上の点です。

(公式おわり)
この式は、「共役複素数の役割」のページで表した、複素数の単位ベクトルの偏角を−2倍にした単位ベクトルを表します。

【解答】
 図形の考察によって、ベクトル(zg)とベクトル(zh)の成す角βの2倍が、ベクトルgとベクトルhの成す角度になる事を知っています。
その図形の定理を複素数平面の計算の形で表します。
 それは、以下のように、複素数の偏角のみの性質を持つ単位ベクトルの式(共役複素数との比で表せる)で表します。

以上の計算によって、ベクトル(zg)とベクトル(zh)の成す角βの2倍を計算した結果が、ベクトルgとベクトルhの成す角度になった。
すなわち、ベクトルzの位置にかかわりなく一定の角度になり、円周角が一定である事を示した。
(解答おわり)

(補足)
 この問題は、図形の考察で問題が解け、その解を複素数の計算の形で示したものである。複素数の式を計算する前に図形問題の解を得ているからこそ、あたかも複素数の計算で解が得られたように解が表現できた事に注意すること。
 すなわち、先ず、円の中心からのベクトルを使った図形の考察で円周角の定理が証明できたからこそ、円の中心を原点にした複素数で問題をあらわした。
 また、円周角の2倍がベクトルgとベクトルhの成す角であるからこそ、円周角の2倍の角度が得られる複素数の式を記述して式を計算した。その式の答えが(g/h)になるハズだから、
(g/h)とその他の項の積で式を記述し、その他の式が1になるまで式を変形しただけである
 そうせずに、複素数平面の複素数の計算式をただ変形するだけの試行錯誤の計算の道を進むことで円周角の定理を証明しようと、計算の見通しが悪く、計算の森で迷子になってしまう事が多く、そのやり方で円周角の定理を証明しようとするのはとても難しい。
 このように、(1)どの複素数で問題を記述するべきかの知識や、(2)どの式を計算に使うべきか、そして、(3)どの様に計算を進めるべきであるかの知識は、図形の考察によって先行して与えられている。複素数の計算よりも図形の考察の方が視野が広く融通性があり、常に先行するものである。
 複素数平面の複素数の式の計算は、その図形の、補助線を引いて図形の性質を導き出す考察プロセスを、複素数の加減乗除を計算するという抽象化したプロセスで表現しているだけと解釈でき、問題の答えを導き出す発想の源泉は、図形の考察から生み出される。

リンク:
ベクトルの内積で円周角の定理を確認する
高校数学の目次


2020年12月19日土曜日

複素数と共役複素数の比が単位円上にある公式

複素数αとそれに共役な複素数との比の値(複素数)は、以下の式のように、実数Φの媒介変数で表される、複素数平面の単位円上の点です。

この式は、「共役複素数の役割」のページで表した、複素数の単位ベクトルの偏角を−2倍にした単位ベクトルを表します。

【問1】

複素数平面上の原点以外の相異なる2点P(α),Q(β)を考える。
P(α),Q(β)を通る直線をm,原点から直線mに引いた垂線と直線mとの交点をR(w)とする。
(wは点Rを表す複素数である)
このとき、
「w=αβであるための必要十分条件は,P(α),Q(β)が中心A(1/2),半径(1/2)の円周上にあることである。」
を示せ。
(2000年:東京大学)

【注意】
以下の解答例は、上記の公式の適用例とするために、このページに記載します。
この問題を自力で解きたい人は、以下を見ずに自力で問題を解いた後で、このページに戻って来てください。

【解答例】
原点Oから直線mへ下した垂線の足Rの複素数wは、
垂線の足までの複素数のベクトルの公式によって、
以下の式で表せる。

(解答には、wがこの式で表される根拠をもう少し詳しく書いてください)
そのため、w=αβの場合に以下の式が成り立つ。


(ここで、θとΦは、上記の公式によって導入した実数のパラメータです。)
この式によって、βは、中心A(1/2),半径(1/2)の円周上にある。

 同様にして、αも、中心A(1/2),半径(1/2)の円周上にある。
 
 この解答の続き:
逆に、「αとβが、中心A(1/2),半径(1/2)の円周上にある場合にw=αβが成り立つ」事は、
各自で証明してください。

リンク:
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2020年12月5日土曜日

さいころの目で作る直線の方程式

以下の問題は、注意深く数えあげないと答えを間違え易い問題です。
【問1】

1個のさいころを3回なげる。そのさいころの目の数を順にa,b,cとする。
そのさいころの目の数を使って直線の方程式:
ax+by=c,
を作る。
この直線の方程式は、係数をk倍した直線の方程式:
akx+bky=ck,
と同じになります。
k≠1とした係数ak,bk,ckがさいころの目には当てはまらない場合の確率を求めよ。

この問題の解答はここをクリックした先にあります。

リンク:
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2020年11月30日月曜日

ベクトルの外積同士の内積の公式

【ベクトルの外積同士の内積の公式の証明(その1)】
ベクトルの外積同士の内積を変換する以下の公式があります。
(公式の証明(その1)おわり)
 この式1の公式は、以下の計算のように、2つのベクトルa,bの外積の大きさが、その2つのベクトルa,bの大きさの積と、ベクトルaとbの成す角θのsin(θ)との積であるという公式を満足する。
この計算によって、式1が検算できる。

《べクトルの外積同士の内積の公式の証明(その2)》

 この公式は、以下の様にして段階的に証明することができます。
先ず、以下の図の様に、XYZの3次元座標系の各座標軸方向の単位ベクトルX,Y,Zを考える。

この座標系で、以下の式が成り立つ。

この式が成り立つので、この式の対称性を守ってXYZを交換した以下の式も成り立つ。

これらの式が成り立つので、以下の式が成り立つ。

この式が成り立つので、この式の対称性を守ってXYZを交換した以下の式も成り立つ。

これらの式が成り立つので、以下の式が成り立つ。

この式が成り立つので、この式の対称性を守ってXYZを交換した以下の式も成り立つ。

これらの式が成り立つので、以下の式が成り立つ。

(公式の証明(その2)おわり)


《ベクトルの外積同士の内積の公式の証明(その3)》
この公式は、ベクトルhを用いて以下の様に計算して証明することもできます。


下図のように、ベクトルAとベクトルBの外積を単位ベクトルhを使って表し、直交ベクトル系hとaとavを定義する。


そして、公式の左辺の式を、以下の様にベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルaとベクトルavであらわして計算する。


次に、公式の右辺の式を、ベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルAとベクトルBであらわして計算する。

式11と式12の値が等しいので、以下の式が成り立つ。

(公式の証明(その3)おわり)

【公式の証明(その4)】
その3の証明とほとんど同じ証明ですが、以下の形の計算を行って証明することができます。
(1)ベクトルAの方向の単位ベクトルをベクトルXとする。
(2)ベクトルAとベクトルBの張る平面上のベクトルで、ベクトルAに垂直な単位ベクトルをベクトルYとする。
(3)ベクトルXとベクトルYの外積をベクトルZとする。ベクトルZは単位ベクトルになる。
直交ベクトル系、X,Y,Zで、ベクトルA,B,C,Dが以下の図のように表せる。

このとき、以下の式1が成り立つ。

また、以下の式2が成り立つ。

式1の値と式2の値が等しいので式3の関係が成り立つ。

(公式の証明(その4)おわり)

(補足)
 外積したベクトルは、外積の形のままであらわした式の方が基本的な式になるように思います。
 2次元ベクトルでは、2次元ベクトルaとbを90度回転したベクトルaとbをベクトルaとbで表すよりも、ベクトルaとbのみで単純に表す方が優れた表現でした。
 それと同様に、3次元ベクトルa,b,cでも、3次元ベクトルの外積をベクトルaとbとcで表すよりも、外積の形のままの式を使って計算する方が良いように思います。
その外積の形の式同士の内積は、「ベクトルの外積同士の内積の公式」を使って、ベクトルa,b,cの単純な内積であらわせますので、問題無いと思います。
 
 実際、ベクトルの外積同士の内積の公式(式1)の第3の証明においても、2つのベクトルの外積を、そのままの形で1つのベクトルhと考えて計算を進めて証明できました。

また、「ベクトルの外積の3重積の公式」のページの、【ベクトルの外積同士の内積の公式】に、アインシュタインの縮約記法を使った、この公式の証明方法が書いてあります。

空間ベクトルの外積の公式は、ここをクリックした先のサイトのページが参考になります。


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