2018年7月18日水曜日

ベクトル方程式の意味

《ベクトルの定義》
下の図のようにXY平面上に2点A,Bがある。

今、動点PがAからBまで移動したとすると、この移動量は、
「X方向に+3,Y方向に+4」
である。これを、
「点Pは

だけ移動した。」
と書くことにし、AからBまでの移動量を、

と表現できる。この点の座標の複数の成分の移動量の集合をベクトルABと呼ぶ。また、もっと一般的には、複数の数の集合をベクトルと呼ぶ。
(ベクトルの定義おわり)

【連立方程式(その1)】
 以下の1つのベクトル方程式6は、以下の式1と式2の連立方程式を1つにまとめた式です。

そのため、2つの未知数sとuを、1つのベクトル方程式6から求めることができます。

 別の観点から説明すると、ベクトルa、b、eは2次元のベクトルです。全ての2次元ベクトルは、2つの独立したベクトルの合成であらわすことができ、1つのベクトル方程式で、2つの未知数を求めることができます。
 このベクトル方程式(6)の解は、以下の式のように、ベクトルeをベクトルaとbの合成ベクトルに分解する係数を求めることを意味します。

以下で、この解の、ベクトル方程式にかかわる意味を説明する。この解により、以下の式が成り立つ。

一次独立なベクトルでは、その合成ベクトルが0ベクトルになる場合は、各ベクトルの係数が各々0になるという特徴がある。

【連立方程式(その2)】
 以下の1つのベクトル方程式8は、以下の式1から式3の3つの式の連立方程式を1つにまとめた式です。

この1つのベクトル方程式8は、3つの式(式1と式2と式3)ですので、未知数3つを求めることができます。
そのため、未知数sとtとuを、式8から求めることができます。

  別の観点から説明すると、ベクトルa、b、c、eは3次元のベクトルです。全ての3次元ベクトルは、3つの独立したベクトルの合成であらわすことができ、1つのベクトル方程式で、3つの未知数を求めることができます。

このように、ベクトル方程式は、1つの式だけで、それが使うベクトルの次元の数だけ、未知数を求めることができます。

【(その3)ベクトル方程式を連立方程式で解く】
以下のベクトル方程式を連立方程式で解く。

このベクトル方程式は、以下の連立方程式を解けば良い。

この連立方程式を、ベクトルの概念を使って、以下のように工夫して解く。

すなわち、ベクトルb’とc’を使った以下の連立方程式を作って、未知数sを求める。

以下の連立方程式ができた。

この連立方程式では、以下のようにして、未知数sが楽に計算できる。

こうして求まった未知数sを式(1)(3)に代入して、残りの未知数wとuを求める連立方程式を作る。


以上の式(9)(12)(13)の通りに、最初のベクトル方程式の未知数s,w,uが求まった。
(解答おわり)

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2018年7月16日月曜日

三角関数を勉強する意味と加法定理が速やかに学べる手順

三角関数は、単位ベクトルのx成分とy成分を表わす関数です。
 三角関数を勉強する意味は、単位ベクトルの成分の間の関係を学ぶという意味を持ちます。
もし、三角関数という表現を使わない単位ベクトルの成分の関係をあらわす公式があれば、それは三角関数の公式でもあるという意味を持ちます。

また、三角関数の公式をベクトルの成分の記号を使って表わすと分かり易く表現できることもあります。

 高校生は、大人として完成する時期にいます。そのため、高校生は、もう大人として、自らで学ぶべき適切な知識を自ら発見して学んでいくのが良いと考えます。
 ベクトルの概念を教えない風潮がありますが、高校生になった学生は、そういう風潮に押し流されず自ら学び、単位ベクトルの成分を表わす三角関数を学んでいくのが良いと考えます。

《加法定理を速やかに学べる手順》
 加法定理を最も速やかに学べる手順は、「急がば回れ」の考えで、先ずはベクトルの定義を学び、そして、ベクトルの分野でベクトルの内積だけを学ぶのが良いと考えます。その次に、余弦定理を復習した上で、加法定理を学ぶのが最も速く加法定理を修得できる道だと考えます。

《ベクトルの定義》

点AからBまでの点の座標の複数の成分の移動量の集合をベクトルABと呼ぶ。
また、もっと一般的には、複数の数の集合をベクトルと呼ぶ。


《ベクトルaに垂直なベクトル》
ベクトルa=(a1,a2)
に垂直なベクトルav
av=(-a2,a1)
で求めることができる



《ベクトルPと単位ベクトルの内積はベクトルPの単位ベクトルへの正射影》

ただし、AHの方向がABの方向と反対の方向を向く場合は、上の式の左辺の項にマイナスが付きます。

〔【基本】ベクトルの内積の性質(ここをクリック)〕

《ベクトルによる三角形の余弦定理のやさしい覚え方》

上図の式のように、ベクトルの内積の使い方は、ベクトルの内積の分配法則を利用して使うのが最も一般的な使い方になります。

《加法定理の覚え方の注意》
 公式をごろ合わせで覚えるのは公式の間違った覚え方です。毎回式を展開して、必要な公式を導き出して使うのが、正しい公式の覚え方だと思います。


 式を展開する毎に、解に到達する式の展開手順を無意識に覚えているのです。そういうふうに公式を覚えるのが、 高校生になった後でも数学の学習から脱落しない公式の正しい覚え方だと思います。

加法定理も、計算用紙に図を書いて速やかに加法定理を導き出すやりかたを覚えてください。

《三角関数の加法定理は、ベクトルの内積の式である》
 ベクトルの内積の概念を使うと、
三角関数の加法定理の公式が、
ベクトルの内積の計算の式であると理解できる。
(下図でベクトルBvはベクトルBに垂直なベクトルである)

このcosの式とsinの式が三角形の加法定理を表している。

《ベクトルの回転移動と三角関数の加法定理》
(三角関数の加法定理)
 ベクトル(X,Y)がX座標軸から角度アルファで回転していた場合を考える。
その場合に、ベクトル(X’,Y’)が、それよりも更にθ回転している場合は、ベクトルの回転移動の公式(1)(2)から、以下の式6と7が導き出せる。
この式6と7によって、三角関数の2つの加法定理が導けた。


(三角関数の加法定理の覚え方)
sin(α+β)=sc+cs=sin(α)cos(β)+cos(α)sin(β)
cos(α-β)=cos(β-α)=cc+ss=cos(α)cos(β)+sin(α)sin(β)
cos(α+β)=cc-ss=cos(α)cos(β)-sin(α)sin(β)


《(3)複素数の掛け算で三角関数の加法定理を導く》
 
以下で、複素数wとzの掛け算を計算して、その結果を複素数sと比較します。
ここで、加法定理との関係を分かり易くするため、複素数wとzの絶対値の
|w|=|z|=|s|=1
とする。

複素数(w)(z)と、それに等しい複素数sとは、その実数部分が等しいので、その関係をあらわす1つの式を導き、更に、その虚数部分が等しいので、その関係をあらわす1つの式を導きます。それにより、以下の2つの関係式が導き出せます。
角αについて(式1)の関係があるので、それを代入して上の2つの式を書き直します。
α=β+θ   (式1)

上の式6がcosの加法定理であり、式7がsinの加法定理です。
cosの加法定理とsinの加法定理を、以上の手順で素早く導き出せるように、以上の導き方を覚えておきましょう。
そうすれば、覚えるのにとても苦労する三角関数の加法定理が、覚えやすくなります。

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2018年7月11日水曜日

連立方程式の計算をやさしくする

連立方程式は、以下の様にすると計算が易しくなります

【問題1】
以下の連立方程式を解け。

【通常の解き方】
以上の式3と式4でxとyが求められた。
(解答おわり)

【工夫した解き方】
先ず、式1と式2の連立方程式から、以下の式5を作ります。
この式5と式1の連立方程式を解きます。
以上の式6と式7でxとyが求められた。
特に、この式7の計算は、楽に計算できた。
(解答おわり)

このように、連立方程式の係数を小さくする式の変換をしてから解くことで、連立方程式の計算が楽になりました。

【変数xとyの比を先に求める解き方】
式8で、変数xとyの比が求まった。
この式8を式2に代入する。
式9と式10が解である。
(解答おわり)

【問題2】
以下の連立方程式を解け。

【工夫した解き方】
 先ず、式1と式2の連立方程式から、以下の式3を作ります。
 この式3と式1の連立方程式を解きます。
以上の式4と式5でxとyが求められた。
特に、この式5の計算は、大きな分母を持つ分数の計算でしたが、楽に計算できました。
(解答おわり)

(補足)
 以上の計算において、最後のyの計算が楽にできたのは、先に得たxの値を代入する式(問題2の式3等)のyの係数が1にしてあったからです。 

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2018年7月7日土曜日

裏正弦定理

正弦定理の裏の定理の、裏正弦定理があります

下図のように三角形の周りに、その外接円とその円の中心(外心)とを描きます。
上の図で、三角形の頂点の角度∠A=θが外接円の円周角であり、それは中心角∠BOCの2分の1であることに注目すると、
三角形の外接円の半径Rと、三角形の頂点の角度∠A=θとその頂点Aへの対辺BCに対する外接円の中心Oの高さmとの間に、以下の関係式が成り立つことがわかります。
すなわち、∠A=θであらわすと、
この式を変形すると、
です。
同様に、
が成り立ちます。
       
これらが裏正弦定理です。
裏正弦定理は、上の図の様に、円周角の定理と密接に結びついた定理です。
 なお、裏正弦定理は、下図の様に、三角形ABCの頂点から垂心H までの長さで表現すると、その式の下に書いた正弦定理の式と形がほとんど同じで、いかにも裏正弦定理だという形で表せます。


 円周角に関係が深い問題は正弦定理又は裏正弦定理を使って解きましょう。

(後に学ぶ余弦定理は円周角に関する問題を解くのが苦手で、高校2年で学ぶベクトル方程式も円周角に関する問題を解くのが苦手です。それらの問題に正弦定理を使って解いてください。)

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変則正弦定理
三角形の垂心の図の全ての線分を三角関数の積で表す
三角形の外心の高さ

余弦定理
正弦定理の応用(三角形の面積)
sinθとcosθの連立方程式で式からθを除去する方法

三角形の重心
三角形の垂心
三角形の内心
高校数学(三角比・図形)一覧
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2018年7月2日月曜日

ベクトルの張る三角形の面積

 2つのベクトルaとbの張る三角形の面積はベクトルの外積で計算できます。
 しかし、その三角形の面積をベクトルの内積であらわそうとする場合は、ベクトルaを反時計回りに90度回転させたベクトルa又はベクトルbを反時計回りに90度回転させたベクトルbを考えて、内積
・b=-b ・a
の2分の1で三角形の面積をあらわす事が望ましいです。
各ベクトルの成分は以下の通りです。

 ベクトルの内積演算には、三角形の面積をあらわすことが不得意だという弱点があります。
 その弱点を補うために、与えられたベクトルaやbに加えて、それらを90度回転させたベクトル又はベクトルを追加して計算に用います。その新たに加えたベクトルを使った内積の計算によって三角形の面積があらわせるのです。
  そうしないで、すなわち、ベクトル又はベクトルbを追加しないで、無理やりにベクトルの内積で三角形の面積を表わそうとすると計算が難しくなります。

リンク:
ベクトルの直線と点との距離及びベクトルの張る三角形の面積
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三角形の3頂点のベクトルの張る三角形の面積比の公式

【問】
上図の三角形ABC内の点Xから頂点A,B,Cに引いたベクトルa,b,cの間に式1の関係が成り立つ場合に、
そのベクトルの張る三角形の面積の間に式2の関係が成り立つことを証明せよ。

この問題の解答は、ここをクリックした先にあります。

リンク:
三角形内の点Pからのベクトルの式と三角形の面積比と点Pの位置
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2018年7月1日日曜日

ベクトルの概念の範囲

 ベクトルの概念により、先ずは、
座標(x,y)を2次元ベクトルであらわすことができます。
座標(x,y,z)も3次元ベクトルであらわすことができます。

しかし、ベクトルの概念の適用範囲は、この種の座標の表現手段に留まりません。
(ベクトルの定義)
複数の成分の集合がベクトルです。


ベクトルことはじめ(数学)のサイト:「ベクトルが,いつも矢印だとは限らない.」
 例えば,ベクトルの加法やスカラー積の概念を抽象化したベクトル空間という集合では,関数,多項式,演算子,行列など,色々なものが元(ベクトルの単位要素を「元」と呼ぶ)になる可能性があります.とても,矢印のイメージで対応しきれるものではありません.


多項式:
1+2x+3x+4x
は、
(1,2,3,4,0,0,0,0,0,0,・・・・)
という無限次元のベクトルであらわすことができ、
多項式:
9+8x+7x+6x+5x+4x+3x+2x+x
は、
(9,8,7,6,5,4,3,2,1,0,0,・・・・)
という無限次元のベクトルであらわすことができます。

また、
三角関数群の多項式:
9+8sinθ+7sin(2θ)+6sin(3θ)+5sin(4θ)+4sin(5θ)+3sin(6θ)
も、
(9,8,7,6,5,4,3,0,0,0,・・・・)
という無限次元のベクトルであらわすことができます。


(補足)
 そもそも、三角関数も、以下の式であらわすことができます。
https://schoolhmath.blogspot.com/2017/06/blog-post_35.html
(マクローリン展開とオイラーの公式参照)

 また、複素数平面であらわした複素数は、実数成分と虚数成分との2つの要素をまとめて表した2次元ベクトルです。
(実際、ベクトルPを複素数x+iyと等号で結ぶ表現をすることもあります。)



 このように、ベクトルを表わす場合、そのベクトルの要素が何を表わしているかという前提条件が必須な条件として存在します。

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